拝啓、妹が出来ました   作:biwanosin

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たぶん、少しだけ書いてエタります。何分思い付きなんで。


第一話 邂逅

人生には、何らかの分岐点というものが存在するという。それは小さなものであれば高校受験であったり部活動をどこにするかであったりする。大きなものなら就職とか結婚とか、そんなところだろう。少なくとも、俺がパっと思いつくような分岐点はそれくらいのものだった。ただ・・・

 

「早く選んでください。こちらとしてもどれがいいのか分からないんですから」

「や、普通に呼んでくれればそれでいいから・・・」

「兄がこれまでいなかったのに普通が分かるわけないじゃないですか」

 

ここまでの分岐点が現れるとは、さすがに思ってなかったんだけどなぁ・・・

 

 

 

 ♢

 

 

 

「ただいまー」

 

部活(という名の駄弁りの時間)が終わりちょっと遅めの時間に帰宅する。気まぐれに参加するだけの文化部なのだが、今日は母さんに少し遅く帰ってくるよう言われたから参加してきた。そういうわけで何かあったのかと気持ち早足でリビングに入る。

 

「あら、お帰りなさい。ごめんね、少し遅く帰ってきて、なんて言っちゃって」

「別にいいよ、そんなことは気にしなくて。でも、できれば何があったのかくらいは教えてほしいかなぁ」

 

そう言いながら鞄から弁当箱と水筒を取り出して渡すと、母さんは「まあ、それも含めて説明するから座って座って」と促される。なんだ、とは思いながら鞄と学ランだけ玄関脇に置いてくると、紅茶が二人分淹れられている。

 

「さて、どこから説明しようかしら・・・」

「そんなにたくさんあるの?」

「う~ん、言っちゃえば一個だけなんだけどねぇ・・・よし」

 

紅茶を一口飲み、心を決めたように声を出す。そしてそのまま俺の方を見ると、脅すかのように前置き。

 

「今から、超重大発表があります。なので、心して聞くように」

「なんだよ、急に。んで?何なのさ、その超重大発表とやらは」

「いいから、ホントにすごいことだから。カモミール飲んで」

 

よっぽどなのか紅茶を飲め飲めといわれるので仕方なく一口口にする。いつも通りインスタントなのだけど、やっぱり飲み馴れてるから美味しく感じる。この家金はあるはずなのに、どうにも貧乏根性が染みついてる気がするなぁ・・・

 

「で、なんなのさ?」

「この度私ことあなたの母親は、再婚することと相成りました」

「……………………」

 

さすがに、絶句した。というか、高二の息子に対して何を言ってるのかとか、そう思った。ぶっちゃけ「ハァ!?」とか叫びたかったんだけど、もう一口、さらに一口紅茶を飲んで無理矢理に自分を落ち着かせる。ついでに出されていたお茶菓子らしきクッキーにも手を出して、食べなれない味に驚いて、ようやっと落ち着いた。

 

「さて、母さ……いや、ババア」

「ちょっと待って、それは酷くない?」

「唯一の子供である息子に対してこんな大切なことを隠してたアンタが悪い」

 

せめてもの抵抗、ってやつだ。これくらいは許してほしいもんだね、まったく。

 

「それで、なんでそんなことに?少なくともウチは母さんの稼ぎがちょっと謎なくらい多いから、家計的な理由ではないよね?」

「そんな理由で好きでもない人と再婚したりしないわよ。あの人とも『僕のことは忘れて再婚してくれていい。ただ、僕くらい好きになった人とね』って言われてるもの」

 

たぶん、父さんが病死する少し前くらいなんだろうな。そう言うことを言っちゃえる人だったし、あの人。

 

「そう言うってことはつまり、ちゃんと好きになった人なんだね?」

「そうねー。大体三年前くらいから付き合って、再婚、って話になったわね」

「ここ数年帰りがたまに遅いと思ったらそう言うことかよ。ってか、そんだけの間があったのに息子に話もしないって……」

「母親の惚気話とか、聞きたくないだろうなー、って」

「絶対に聞きたくねぇな……」

「それにほら、ちゃんと受験期は職場以外で会ってないのよ?」

 

今サラッと、職場の同僚がお相手みたいなことを暴露された。でもまあ、確かにこの歳の母さんに出会いがあるとすれば職場くらいのものなのか。下手にナンパとかだったとしたら断固反対しないといけなくなるところだった。

 

「はぁ……で、そのおよそ三年間のお付き合いの末に、婚姻届けなるものをお役所に届ける作業をすることに相成りました、と」

「うん、そう言うこと。まだ出してきてないけどねー」

「息子に何の断りもなくやってきやがったら親子の縁斬るまであるぞ」

 

なんせ、俺の知らないところで俺の父親(祖父母もか?)が増やされるってんだ。ふざけんな、と思ったとしても仕方のないことだと思う。

 

「えーっと、つまり……俺の承諾だけ取れたら提出してきます、とかそういう展開?」

「んーん、ちょっと違うかなー。仮にも家族を増やすことになるわけだから、ちゃんと互いの子供の承諾を取って、お互いに会ってみてから、ってことに」

「あ、向こうも離婚歴あるんだ」

 

と思ったけど、離婚歴無い相手だとしたら向うの年齢がどこなのかとても怖い。若い人だったりしたらなんでこれを選んだのかという問題も出てくるわけだし。

 

「そう言うわけなので、お母さんと、あの人と、あの人のお子さんの三人で話し合った結果」

「ちょっと待て俺だけのけものかよ」

「問題は以下の三つになるという結論が出ました」

 

スルーかよ。聞き流すのかよ。一人仲間外れにしていた息子に対する謝罪すらなしかよ。

 

「まず一つ目。互いの子供が親が再婚するという事実を受け入れてくれるかどうか」

「まあ確かに、それは重要だよな。俺はいいって言ってるんだけど、向こうのお子さんはどうなの?」

「いいって言ってくれてるわ。むしろ自分にばかりかまってなくてもいいって言ってるわ」

 

なるほど、であるのならばその一つ目の問題はつい先ほど解決したということになるわけだ。

 

「次に二つ目。お互いの子供が新しい親と相性が悪かったりしないかどうか」

「相性ってーと?」

「話してみて『こんな親は嫌だ』って思う要素があったり、あと『何となく無理』ってなったりしたら困るでしょう?いずれ同じ家で暮らすことになるわけだもの」

 

ふむ、確かにその通りだ。俺としてもまあ、同じ家に暮らす相手が嫌だと思う現状が出来上がってしまったらストレスがマッハである。

 

「これについては、結婚する前に同じ家で暮らす、と言う対処を取ることにしました。ほら、あってみて分かることと同じ家で暮らしてみて分かることって違うじゃない?」

「違うじゃない?とか言われてもそんな経験ないからわからないんだけど」

「……言われてみれば、母さんにもよくわからないかもしれない」

 

なんだそりゃ。っと、そんなことを言ってる場合でもないか。それに、そう言う面があるというのも事実なのかもしれないし。

 

「それで三つめは、互いの子供が相性がいいか悪いか」

「あ、それ重要。俺的には一番」

「あれ、母親の一大事だよ?あなたの母さんのお相手のこととか気にしてくれないの?」

「子供同士のコミュニケーション問題なめんな」

 

もし仮に同年代だとすればまた面倒な事態になるんだぞ。親同士が再婚して急に兄弟になってしまうとかなんだその複雑極まりない関係は。

 

「こちらの問題に関しても、一度同じ家で暮らしてもらってどうなるかで判断する、ということになりました」

「まあ、確かにそれが分かりやすいよな、結局」

「それで、ですね。ちょうど向うのお父さんの方が、仕事の都合で一月ほど家に帰れないそうで」

 

……ホントに謎なんだけど、ウチの母親はどんな仕事についているんだろう?基本毎日スーツ姿で出掛けていくから会社勤めだとは思うんだけど、たまに超本格的な作業着に道具を持って帰ってくることとかあるし、と思えばリビングで複雑そうなプログラミングしてたりするし……

 

「あー、つまり、あれですか?ちょうどいいから向うのお子さんを預かってみましょう、みたいな」

「そうなの。ひとまず一月一緒に暮らしてもらって、お互いにどんな感じになるのかを見たりしてみようかな、というお話になりました」

 

ふむ、まあ状況は理解した。一ヶ月の間同居人が増えるわけだ。それ以降も増えるかどうかはそれ次第になるわけだけど、まあ、うん。

 

「いいんじゃない?家族になるかもしれない、ってんなら仕方ないことだし」

「思考が柔軟な息子を持ってお母さんうれしい」

「現実味がなさ過ぎて流されてる、とも言うけどな」

 

なんにせよ、もうそのまま流されてみるしかないわけだ。

 

「それで、いつからなの?」

「今日」

「ハァ!?」

「というか、実はもう最低限の荷物だけもって来てたりするのよねー。そのクッキーもその子が焼いてくれたのよ?」

 

ちょっと、嫌な予感がしてきた。いや、クッキーを焼ける男もそらいるんだろうけど、でも、それでも印象としては、だな……

 

「というわけで!今から二階にいるその子を呼ぶので、初対面とあいなってくださいな!」

 

そう言いながら呆然としている息子を前にスマホを弄る母親。無料通話アプリであろうそれに一つメッセージを打ち込むと、階段を下る音が。つまり、マジでこの家の二階にずっといた、ということになるわけか。そうと知ってればもう少し言葉を選んだってのに……どうせ聞こえなかっただろうけど、それはまあ置いといて。

もう既に心構えをするだけの時間すらない。であればと体をリビングの入口へと向け、少し待つ。すると、扉が開き、一人の少女が入ってきた。

 

「どうも、初めまして。ヴィクトリアと言います。長い付き合いになれたらいいな、と思っています」

 

一切のくせのない、サラッと腰辺りまで流れる金髪に、日本人では中々見られない胸の大きさ。身長も高めであるし、瞳の色も碧だ。思いっきり外国人だ。

……異性ってだけでも色々と思うところがあるのに、しかも見て分かる外国人なんですか……

 

「あー、幹也、だ。こちらこそ、よろしく」

「はい、どうぞよろしくお願いします」

 

拝啓、天国の父さんへ。

綺麗な妹が出来るかもしれません。新しい父親もできるかもしれません。

どうなんのかなー、これ……

 

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