拝啓、妹が出来ました   作:biwanosin

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週間オリジナル作品ランキングの10位にいてびっくりしました。まさか、趣味十二割で書いてこうなれるとは思ってもいなかったものでして。どうもありがとうございます。今後も最低趣味十二割、最大趣味百割くらいになる作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
と、ヴィキを書き足りなくて眠れなかった作者でした。


第十話 弁当

「ふぅ……これで昼休みだぁ……」

「まだ後二つ授業は残ってるって言うのに、ミーはずいぶんとホッとしているもんだね」

「そうだとしても、こうして休みに入るってのにはなにかこう、あるんだよ」

「全く説明になってないぞ、幹也」

 

と、俺が説明になっていない説明をしていたら弘樹がすぐ後ろまで来ていた。今朝のことと言いこれまでの心当たりと言い、何だろうこいつは。人の後ろにいつの間にかいないと気が済まないのか?

 

「さて、では昼食の時間なわけだけども。今日は二人は?」

「俺は購買か学食でも、って感じだな」

「右に同じく、だ。鈴は今日も……」

「弁当持参だよ。こうして少しくらいは女子だということを表現していかないと、本格的に男子扱いされてしまいかねない」

 

うーむ、そこまで大きな効果はないと思うのだけれど。ってか、これはこれで女子からの告白率が上がってしまう気がする。

 

「さて、そう言うわけなら俺と幹也はさっさと購買に行ってくるか」

「そうしてくれたまえよ。私はここで待っているから」

「毎度思うんだけどな、男子と一緒に飯食ってていいのか?」

「ハブられているわけではないよ。ただ、こっちの方が絵になるそうだ」

 

これ、マジでハブられてるわけじゃなくなんだろうなぁって辺りに、コイツの特殊性を感じられる。そこそこキャラが濃い連中が色んなベクトルで集まってる気がするこのクラスなのにそう言ったものが見られないんだ。まず間違いない。

 

「ねー幹也君。お客さんだよー」

「客?」

「うん。なんだかこう、お人形さんみたいな子が」

 

教室の入り口からそんな形で呼ばれた。お人形さん、ねえ……こんな言い方をされるってなると同級生じゃなさそうだし、かといって他の学年に……そもそも同級生含めて、人形見たいって表現される知り合いは……

 

「兄さん、こっちです」

「あ……」

 

そう言えばいたな、ヴィキが。今日から転入してるんだっけか。と、なんだかざわっとしたクラスの現状から必死に目を逸らしつつ、ヴィキのところへ向かう。

 

「どうしたんだ、ここまで。何かあったか?」

「ナイン、それなら携帯ですませます」

「そらそうだ。ってことは……?」

「お届け物を。朝、すっかり私も忘れていました」

 

そういってヴィキが後ろに回していた手を前に持ってくる。そうして出てきたのは布の包みで……

 

「……えっと、お弁当?」

「ヤー。朝作っていたのですが、今言ったようにすっかり忘れていました」

「それでわざわざ持ってきてくれたのか。言ってくれれば俺が取りに行ったのに」

 

そうしたらまず間違いなく、クラス内もここまで大変なことにはならなかったのに。

 

「ナイン、持ってきたのは私の方の都合です」

「と、言うと?まさかとは思うけど、クラス内で何か‥…」

「……ナイン、そう言うわけではなく、ですね……皆さんよくしてくださるのですが、まだその、質問大会が続いておりまして……一休みを、と」

 

なんてこった。確実に興味絶大で質問大会は実行されると思ってたけど、まさか昼休みになってまだ続けられているとは思ってもいなかった。そして同時に、俺としてはヴィキみたいな美少女が来たら時間全く足りないな、とも思う。スッゲー……

 

「そう言うことなら、よくわかった。大変だな」

「楽しいのですが、少々……今も『兄……になるかもしれない人に弁当を届けてきます』と言って出てきてしまったので、少し後悔しています」

 

それは間違いなく質問攻め大会延長戦が確定した瞬間でしたな、うん。なんだか本当にいたたまれなくなってきて、ついつい頭を撫でてしまう。嫌がられたらどうしようかと思ったけど、これといって反応もないし大丈夫だと判断したい。

 

「さて……では、私も教室に戻りますね。お弁当食べないとですし」

「ああ、そうだな。俺もこれ、ありがたくいただくよ。それと……頑張れ、ヴィキ」

「ヤー。兄さんも頑張ってください」

「……ヤ、ヤー」

 

ヴィキの言葉で、俺も目を逸らすことをあきらめる。なんせ後ろから『金髪美少女に兄さん、だって!?』『オイお前ら、落ち着け。こんな面白そうな状況質問攻めにしない方が間違っている』『逃亡防止のためにも全員で行おう。弁当組は陣形準備、購買組は今すぐダッシュ!窓から行け!』『押忍!』とか聞こえてきてるし。あれ、これってそんな熱血ものだったっけ?それともギャグ?どっちにせよそんなものじゃなかったと思うんだけどな、俺。

と、互いに手を振って別れると、一つ深呼吸して振り返る。陣形とか言われたから怖かったんだけど、机の位置は元のままだな。

 

「さて、ミー。全部話してもらうよ?」

「アハハー、ミーナンノコトダカワカラナイ」

「うん、流石にそれは無理があるんじゃないかな?」

 

だよなー、と思いながら永遠の後ろに座ると、クラスメイトの視線が一気に俺に集まる。うんうん、その気持ちは痛いほどわかるぞ。ただ、俺が当事者でさえなければな。

 

「はぁ……若干理解するのがメンドクセエと思うぞ?俺としては」

「ふむ、身内のちょっと外に話せない複雑なお話だったりするのかな?だとすればこの場は私が治めるが」

「そう言うもんじゃないよ。無いけど……説明が難しい」

「それくらいなら頑張ってくれたまえよ。ほら、丁度購買組も帰ってきた」

 

あ、ホントだ。帰ってきてる。この時間で帰ってこれるってことは、購買戦争完全勝利か。明日以降の戦場が怖いんだけど……弁当作ればいいか。

 

「さあ、キリキリ話したまえ」

「はいはい、分かりましたよ……質問とかは全部後回しで、途中で口挟まないでくれな、皆」

『合点承知の助!』

「なんなんだよその無駄な連体は!」

 

ってかいつの時代!?

 

 

 

 ♢

 

 

 

「と、現状を説明するとこうなるな」

「……や、本当に理解するのが難しい話だったな。や、ないことではないだろうが、それでも非日常的すぎて……」

「永遠のそんな表情とか珍しいな」

 

といっても、思案顔になっているのは永遠だけではない。クラスにいるほとんど全員が似た表情だ。そもそもこの歳になって母親の再婚、ってスタートからして衝撃的だしな。

 

「ふむ……つまり、金髪巨乳美少女義妹が出来る、と。そう言うことでいいのかな?」

「間違っちゃいないがその言い方ヤメロ。俺の中に芽生え始めてる兄心の限界になる前に」

「三日もたっていない、そもそもまだ義妹になっていないのに何を……というところなんだろうが、自分でもキモイと思ったので謝ろう。正直すまない」

 

と、そんな中で特に頭の中を整理している様子もないグループがあった。通称オタグループ。集まってるメンツの特徴は通称で察してくれ。分かりやすいから。

 

「ひとまず言っておこう。SNR(それなんてラノベ)?」

SNE(それなんてエロゲ)?」

「よし黙れ。ってか現実だよ今見てただろ」

 

コイツら、ちゃんと自分たちの好きなものに対する熱意が若干外から見ているとキモイと理解してくれており、時と場所を選んで盛り上がる内容を決めているためクラス内であれ、とかはない。無いのだが、たまに会話がめんどくさい。

で、今回はあれだな。仕方ない話題だが、めんどくさくなること間違いなしだ。

 

「だがまあ、空想の世界の方が近い状況がある現象なのは事実だろう?だったらほら、ラノベの中の現象が実際に起こっているのかとか、気になるじゃないか」

「気になるのか……」

「気になる。実に気になる。さすがに現実で起こることではないとわかっているが、それでも好奇心が抑えられない」

「頼むから抑えてくれねえ?」

「なお、抑えられていないのは我々だけでは無いようだぞ?」

 

眼鏡をくいっとしながらそう言ってくるので周りを見てみると、悔しいことにその通りのようだった。あー、この外側から見てる側に回りたい……

 

「いいだろう、ヴィキの方に迷惑がかからない範囲で答えてやろうじゃないか。変な質問をして来たら窓から投げる」

「窓から投げられた程度なら着地できる、問題ない」

 

何なの、コイツの身体能力。オタクってもっとモヤシなんじゃないの?偏見だけども。

 

「例えば、寝坊していたら優しく起こしに来てくれたり」

「したな」

「手料理朝ご飯が準備されていたり」

「したな」

「一緒にお買い物に行って全部持とうとしたら『それは駄目です』と拒否されたり」

「したな」

「仲良く一緒にご飯を作ったり」

「したな」

「なんてことだ……」

 

あ、崩れ落ちた。

 

「やー、本当に漫画とかの世界みたいだね。どうしてそうなったのだか」

「あー……日本の兄妹、の参考として漫画とかラノベを選んだらしいんだよ」

「なるほど、幹也の妹(仮)は天然なのか」

 

妹(仮)て。的確に表現しているが、何かこう、あれな感じがしてしまうのはどうにかならないのか。

 

「と、あー。俺も昼めし食い始めていいか?」

「わざわざ許可を取る必要もないだろう」

「や、質問され続けるなら食いながらはめんどくさいなぁと思ってな。それなら遠慮なく……」

 

と、ヴィキが持ってきてくれた弁当箱を開ける。ちょっと小ぶりなそれの包みを取り、重ねられていた箸を取ってから蓋を少しだけ開けて……一瞬で閉じた。

 

「うん?どうしたのかな、ミー。さすがにそろそろ食べだした方がいいぞ?」

「あ、ああ。そうだな。うん……」

「もしかして、だが。今一瞬だけ見えたのだが、ご飯の上に何か書いて」

 

次の瞬間、俺は弁当箱を再び包み、箸を咥え、弁当箱を持って走り出した。入り口に向かっていき、教室を出てから考える。このままただ逃げるだけ、というのも芸がない。であればどうするか……

廊下の窓から飛び降りた。

 

「あ、逃げた!」

 

永遠の声が聞こえてきたがスルーして、飛び移った倉庫の屋根から再び跳び下りる。一度に地面まで降りられる身体能力はないが、段階を踏めば俺でも耐えられないことはない。ついでに、ガチで逃げ出してなお追ってくる連中もクラスにはない。そんなことを考えながらそれでももう少し移動して、ようやく座る。

 

「あー……これは、予想しておくべきだったな……」

 

と、再び弁当箱を開けてそのご飯の上を見る。今は懐かしい桜でんぶで『I love 兄さん』と。

 

「そこはドイツ語じゃないんですね、ヴィキさん……」

 

なんか的外れなことを考えてる自分もいる気がするけど、ヴィキの的外れ感に比べれば何でもないはずだ。

 

「何でもない、よな……」

 

拝啓、天国の父さんへ。

お弁当のことについては、ヴィキとしっかりお話をしないといけなさそうです。

 




ヴィキ!書けた―!!あと幹也スマン!
そして一部の知り合いにあっさりばれた!匿名の意味とは!!
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