悔しいです……ッ!
そして美鈴ちゃんのキャラがつかめないです……ッ!何なのこの子!?
作者の予定にない言動しかしないんですけど!手に負えないんですけどこの子!誰だ、こんなキャラを考えて書きだしたのは!ぶん殴ってやる!
「さて、それでは」
『いただきます』
あの後、葵ちゃんと美鈴ちゃんが母さんと電話している間に布団三セットを運び終え、全員でテーブルについて夕食の時間となった。この段階でまだ風呂に入っていないことを思い出したんだけど……まあ、食後でいいか。そのまま自室に引きこもってしまえばいいし。
「おー、今日もしっかり料理されてる。また手作りだよね?」
「まあ、一応な。そんな手の込んだものじゃないけど、そこは許してくれ」
「全くもって気にしていない。むしろ私の食生活に比べれば十分なレベル」
そういってもらえるとホッと一息つくことができる。今日はいつもに比べて手抜きをした自覚があるのだ。お客さん相手に出すものとしてはどうなのだろうかとも、ちょっぴり思っていたりする。あとヴィキの料理レベルが高いので、その点でも不安なのだ。
……また時間があるときに、隠れて練習しようかな。うん。
「なんなら、唐突な嵐で帰れなくなった、なんてイベント発生なんだからインスタントですらオッケーだったレベル」
「あー……言われてみれば、その手があったか。全く思いつかなかった」
「幹也先輩、インスタントは使わないんですか?」
と、美鈴ちゃんの隣から質問が。うーむ、どう答えたものか……
「俺一人が食べるだけ、ってときは使ってたかな。母さんが仕事で泊まってくる、とかそんな感じだと」
「ということは、これから先はないということ?」
「?……あー、どうなんだろう?」
どういうことだろうと考えていると、美鈴ちゃんの視線が俺の隣に移った。それにつられて視線を動かすと、両手でお椀を持って味噌汁を飲むヴィキの姿が。
うーむ……
「まあ、そうなるのかな?おかげで料理自体も二人でやるから楽になったし、手抜きをする機会は減ったのかも」
「私はたまにならインスタントでもいいですよ?あれ、たまーに無性に食べたくなりますし」
「確かに、たまに食べるインスタントは至高」
「ハンバーガーとかカップラーメンとか、たま~に食べたくなるよね~」
と、女の子三人で話が盛り上がってきた様子なので俺は黙って箸を動かすことにした。自画自賛になってしまうけど、まあそれなりにはなっていると思う。うん、美味しい。
「……ねえ幹也。一つ質問、いい?」
「……美鈴ちゃんがわざわざそう断ってくるとか、怖くて仕方ないんだけど」
箸を動かしていたら唐突にこれである。普段の彼女との対比もあって、正直怖い。何が飛び出してくるのか非常に怖い。
「あー、うん。こう、ほら。さっきさ。ヴィキがあの格好で飛び出してきたではないですか」
「ブホッ!?」
どうにか口の前に手を持ってきて吹き出すことは抑えられたが、それでも少し噎せてしまった。一通りせき込んでからヴィキの渡してくれたグラスを取り一口、二口と飲む。どうにか落ち着くことができた。
「唐突になんだ、一体……」
「そうですよ、美鈴。せっかく忘れてきていたのに……」
その言葉に隣を見ると、頬を染めて箸を動かすヴィキの姿が。やっぱりあれは恥ずかしかったらしい。あれ、でもそれにしてはあの時、ここまでじゃなかった気が……
「まあ、それについては謝ります。ごめんなさい」
と、そういって食器を置いて頭を下げられてしまった。しっかり態度で見せられるとこれ以上責められなくなる。
「だから葵、その振り上げた手も下ろしてください」
躊躇うことなく物理的に口をふさごうとしていたのか、葵ちゃんは。立った二日でかなり印象が変わっていく気がするよ。
「それで、その時のことなんだけども。下品な言い方をすれば、それなりに興奮してたよね?私の時も、ヴィキの時も」
「ねえ、それ俺答えなきゃいけないの?出来ることなら今すぐにでも顔を隠して部屋に帰りたいんだけど」
顔が熱くなってきている気がする。つい片手で顔を覆いたくなったところでシャッター音が聞こえてきたので、そうもいかなくなったんだけど。
「……何をしているのかな、美鈴ちゃん?」
「や、こう、つい反射的に」
「葵ちゃん、ゴー」
「ひ、卑怯者―!」
なんとでも言うがいい。その写真だけは何が何でも消させてやる。
と、席を立ってスマホを奪い合っている二人から目を外して隣を見ると、未だに顔を赤くしているヴィキの姿が。ネグリジェはセーフでも、やっぱりあれはアウトらしい。やっぱり服かどうか、ってところに違いがあるのだろうか。水着はセーフで下着はアウト、ってのからもあんまり肌面積関係ないだろうし。
「あー、その。なんか悪いな、ヴィキ」
「ナイン、兄さんが悪いわけじゃありませんから。全て美鈴が悪いです」
「それについては同感なんだけど、それでもやっぱり、さ」
興奮してしまったことについては否定できない事実なので、どうにも罪悪感が酷い。
「……興奮、したんですね」
「まあ……ハイ、大変申し訳ございません」
「できるだけ早く忘れてください」
「かしこまりました」
衝撃が強すぎて忘れられるか自信がないのだけれど、それでも何とかしよう。というかするしかない。美鈴ちゃんにあれだけはっきり言われちゃったから、忘れるか最低でも整理を付けないと、ヴィキの顔をまともに見れる気がしない。
「せんぱーい!今削除しました!」
「買収に失敗してしまうとは……」
「何をしようとしてたんだ、美鈴ちゃんは……」
と、そのタイミングでそちらの件も終わったらしいので、意識をそちらに向けてごまかす方向に。
「はぁ……それで?美鈴ちゃんはなんでまた、そんな話題を引っ張り出したのかな?」
「んー……一応、ヴィキの友人として心配になったから、かな?部外者が口出しすることじゃないし、もうお母さんとかに言われてるかもしれないんだけど」
と、そう言いながら席についた美鈴ちゃんを見る。うーん、何となく見えてきた気はする。
「まず、幹也はこの私クラスでもヴィキレベルでも興奮できる、それなりに広い感性の持ち主。たぶん葵でもイケるだろうし、まあ変な性癖はなさそうでそこは安心したんだけど」
「ねえ葵ちゃん、後輩女子へ抱く感情じゃないかもしれないんだけど、すっごく殴りたい、この子」
「大丈夫です、全部終わったら殴っちゃってください」
「待って二人とも、それはさすがに女子として辛い」
そんな感情を抱かれてもおかしくない発言だったと思うのだけれど、個人的には。
「ま、まあそれは置いといて。正直、同じ家にほぼ二人きりで暮らしてて、大丈夫なのかな、って。さすがにそう思わずにはいられないかなぁ、と。……本当に、部外者が口を出すことじゃないけど」
「やっぱり、そこだよなー……」
確かに家族になるならないの問題だし、あんまり部外者が口を出すことではない。けれどお互いの子供の年齢的に、部外者が勘繰りをせずにいられる内容でもないわけだ。実際にこうして泊まることになって、生活圏とかも見ての発言だろう。そう考えると、さっきの奇行にもそういった部分を探ろうという思惑があったのかもしれない。
……彼女のことだから、無いかもしれないけど。本当にペースがつかめない。
そんなことを考えながら、さてどう話したものかと考えていると美鈴ちゃんを止めようとした葵ちゃんをヴィキが手で制して、先に発言していた。
「そういう点については、お互いに問題が多いとは、正直思います」
「やっぱり、ある?」
「兄さんが気付いていないことも含めてですけどね。新米兄妹として、それなりに問題点は発生しますから」
そんなにたくさんは気付いていなかった。できることなら、話せる範囲で俺にも教えてほしい。
「でも、少なくとも私は、ですけど。パパには幸せになってほしいですから。私からそれに問題が起こるようなことはしません。たぶん、兄さんも」
「……どうしよう、ヴィキが同意するにはだいぶこっぱずかしいことを言ってる」
「やめてください兄さん、そう言われると恥ずかしくなりますので……」
宣言通り頬を赤くしているヴィキを見るとちょっと和むが、まあそうも言ってられない。はてどう発言したものかとちょっぴり考えて、さすがに後輩女子二人にこたえるにはこっぱずかしいので、どうにかいい塩梅を目指す。
「まあ、俺も母さんには幸せになってほしいし、なにより奥手なことに定評のある日本人なもので。今後兄妹になるかもしれない相手に手を出すのは、さすがになぁ、って」
「さすが日本人、据え膳がどうこうって言うくせにその辺どうしようもない国民性なだけはある」
「オイことの発端」
まさかの美鈴ちゃん本人が乗ってきた。そして葵ちゃんは情報がキャパオーバーしたのかフリーズしている。大丈夫かな、あれ。
まあ、お泊りイベントで話すことではないよね。美鈴ちゃんがその辺り無神経になれるからこそ出た話題だし。
「とまあ、そんな感じで。そもそも兄妹にならないって可能性もあるわけだから、今後が未定過ぎて難しいよ」
「その時はなんて呼びましょうか。今さら兄さん以外の呼び方も難しいのですけど」
「その時は頑張って名前で読んでくださいな」
「頑張ります」
と、ヴィキと謎の会話をして、どうにか今回の話題を終わりにする。そういう雰囲気を出していると、美鈴ちゃんが席を立っておれの隣まで来て、なぜか床に正座する。
ねえ葵ちゃん、本当にこの子分からないんだけど。フリーズしてないで復活して説明してくれないでしょうか。
「……えっと、なんでしょう?」
「や、謝罪の気持ちくらいはなぁ、って。さあ、なんでもしてこーい!」
「男らしいなぁ!」
はっきりそう言われてしまった。この子どう扱ったらいいの、本当に。
「……じゃあ、そのまま目をつむって」
「ん、こう?」
本当に目をつむった。危機感……は、二人も他の人がいる以上、大丈夫なのか。さて、どうしたものかな……
と、1つ思いついた。なので俺も席を立って美鈴ちゃんの前にしゃがみ、両手をのばして……柔らかそうな頬を引っ張ってみる。
「おー、思ってた以上にモチモチ」
「本当ですか、兄さん?」
「うん、これは触り心地抜群」
「それは興味があります。変わってください」
「
そう言われても、楽しいのだから仕方ない。
なお葵ちゃんはこの後、しばらくヴィキと二人で美鈴ちゃんの頬で遊んでいたら復活した。そしてそのまま再び混乱しそうになったので、遊ぶのをやめた。
仕方ないじゃない、思ったより楽しかったんだもの。