官僚達の艦隊これくしょん   作:高山 蓮

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『佐武 駿人』様、『オグロ』様『ヲッちゃん』様お気に入りを入れてくださりありがとうございます。それに加えて前回感想をお寄せいただいた『万年デルタ』様、『BFer』様、『HIRANOKORO』様、『皇国臣民』様ありがとうございます。また、いつも読んでくださっている皆様に感謝いたします。



3話・上

「今、暇かい?」

「暇ではないですね」

「さっき防衛省から届いた案件なんだけどさ、横須賀地方隊燃料不足らしくてね。調達頼むね?」

 

 経済産業省資源運用特別調整室総合政策部長の職についている男、徳田 三弥の口から総合政策部調整課長、山崎 貴志へと伝わる。

 

「はい? 徳田部長。それは私達がやるべき案件なのですか?」

「まぁまぁ、そんなこと言わず頼むよ?それに設立当初からの仲じゃないか。頼むよ」

 

 中年の人懐っこそうな顔をした徳田は申し訳なさそうに手を合わせて言う。

 

「……はぁ……日頃から部長にはお世話になっていますからね。引き受けます。で、当案件はどういった経緯で?」

 

 山崎が頭を掻きながらそう言うと嬉しそうに顔を綻ばせてうなずく。

 

「持つべきものは頼れる部下だね。経緯をざっと説明すると横須賀地方隊の管轄内で出撃が重なったことやついこないだの横須賀への小規模空襲のあれで基地内の燃料タンクに損傷を受けたらしくてね、不足しているらしいんだ」

「で、他施設や他自衛隊からも調達出来ない、防衛省と契約している企業からの調達も無理だったのでしょう。更に資運室の資源計画にも問題が出てくる。結果、こちらに報告のついでに調達の依頼もしてきたということですね」

 

 如何にも面倒くさそうに紺色フレームのメガネの奥で二つの目が徳田を見る。

 

「うん、そうそう。ご名答。普通なら外聞に悪いはずだけどそうも言ってられないようだね。まぁ、それでも取り敢えず体裁は整えてくるとは思うけどね」

「了解しました。資源運用特別調整室総合政策部調整課当案件を正式に受諾します」

「うんじゃあ、頼むね」

 

 

 

 

 

「———という訳だ。守田、今手空いているか?」

 

 調整課に戻った山崎は課員に向かってこれまでの顛末を簡単に説明していた。

 

「他には誰が?」

「俺が今手空きだから、守田が空いてれば俺と二人でと考えていんだが……」

「了解しました、後20分程度で今の仕事終わるのですがいいですかな?」

「あぁ、大丈夫だ」

 

 説明し終わった山崎は自分のデスクに戻り調整課のガントに案件を追加する。みっちり詰まったガントに若干眩暈を覚えつつ山崎は自席に戻る。

 

「関東圏の燃料会社を当たるしかないな」

 

 そう呟きつつPCを———勿論富士通のPCである。———立ち上げてデータベースから関東圏の石油会社をリストアップする。

 

———今は5月。石油需要は低いが、冬の内に備蓄が少なくなっている可能性もあるな……

 

 リストアップが終わりデータをローカルに落とした後、どう当たっていくか思案する。

 

 もちろん護衛艦用の天然ガスや石油は必要である。他には必要なのは艦娘用の燃料であるが、原材料は今現在燃料として使われているものだったらなんでも良いのである。と、言うのも艦娘が使用する燃料は全て妖精による精製を経て初めて使えるのである。

 しかもこの方法には利点があり多少の品質は補正され、あまりにも悪質だと精製量が減り、高質だと精製量が増えたりするのである。勿論元にする燃料の種類でも精製量を増減が存在するのではあるが。

 

「先方からの要望は無し……取り敢えずメタンハイドレートで確保するか」

「課長、終わりましたぞ」

 

 ブツブツと呟いていた山崎は顔を上げ守田を見る。

 

「あぁ、御苦労さん。取り敢えず守田のPCにリストを送っとく、片っ端から確認をかけてみてくれ。メモも同時に送信しとく。俺も同じくその仕事に当たる。頼むぞ」

「えぇ!私の古巣です。しっかりとやらせてもらいます」

 

 直ぐに守田は自分の机に戻りPCを操作し始める。それを見届けた山崎もPCに向き直る。

 

「さてと、仕事を始めよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

———19:30

 

「なぁ、守田」

「なんですかい? 課長さん」

「全滅だったか?」

「……そうですな」

 

 スーツ一人とシャツ一人。資運室では疎らにまだ人は残っていたが、調整課のメンバーは殆ど、彼ら二人以外退庁済みであった。

 

 彼らは途中から他の課員の手も借り、関東以外の燃料会社にあたったが全て無理か微々たる量でしかなかったのである。

 

「メタンハイドレートはなんとかなったが、他はあの所為だな……こないだの輸送船団の半壊……」

「どこも民間需要で手一杯なそうですな……特種害獣予防法の臨時特別買取を適応すれば……」

 

 正式名称『深海棲特種危険害獣被害事前予防特別措置法』深海棲特種危険害獣(しんかいせいかん)三法の一つである。この一般通称深海棲艦予防法は有事法に分類され、所謂徴用をする事が認められた法律であり。臨時特別買取はまさにその中核の徴用の事である。

 

「一応、閣議決定で通るレベルだが……先方は望んでないだろう。臨時特別借用か」

 

 臨時特別借用とはこちらも予防法からであり、臨時特別買取は強制的に現金で買い取る事であるが、臨時借用は強制的に借り、現物で返すものである。こちらは臨時買取よりは規制も緩く、総量も多く確保可能ではある。

 

「取り敢えずは防衛省との調整が必要だ、一応石油備蓄基地の解放も視野に入れておくぞ……守田、いまアポ取れるか?」

「えぇ、いまからとりますわ」

「ありがとう」

 

 山崎はデスクに戻り、自分自身も備蓄基地の解放への働きかけを開始する。

 

「エネ庁とJOGMECあたりを当たらないといけないか……」

「課長さん、アポ午後取れました」

「すまん、守田ありがとう。午前中は備蓄基地の解放への動きをやるから頼むな」

「了解」

「俺は少しやってから帰る。守田は先に帰っていいぞ」

 

 山崎はメガネを拭きながら守田に言う。すると守田は立ち上がり山崎の机へと向かう。

 

「いや、課長さんのを手伝いますわ」

「悪いな……助かる。JOGMEC向けの資料の作成を頼む。予想必要量を纏めてな……俺はエネ庁向けと防衛省用のテンプレ作るからそれで終わりだ」

「あぁ、私が資料をまとめるので先にテンプレを作っといてくださいな。その方が効率良いでしょう」

「おぅ、そうだな。じゃあそれでいこう」

 

 再び調整課にタイプ音が響き始めた。

 

 

 

 

 

 

———23:39

 

 山崎は電車に揺られていた。彼の根城は神奈川県鎌倉市であり、遠いのではある……が、彼は鎌倉から引っ越す予定はいま現在もない。

 

 東海道線で約40分かかる遠さではあるが本当にいざという時は寝袋を持ち込んで資運室に泊まる考えを持っている彼には本当に引っ越す意味は無かった。

 

「大船―大船、御出口は左側です。乗り換えは横須賀線、根岸線、湘南モノレール……」

 

 いつも通りの車内アナウンスが流れ、立ち上がる。

 ゆっくりと電車が止まり、ドアが開く。山崎は階段を大股で登って行きあの銀と緑とペンギンの非接触交通系ICカードを改札でタッチしてすでにシャッターが下ろされているルミネを傍目にしつつ階段を降りて地上へ。そのまま家へ向かって歩いて行く。

 

深夜の街は暗く影を落としていた。

 

 




ほぼ1ヶ月間が空いて申し訳御座いません。取り敢えず色々言いたい事がありますので、書かせてもらいます。

「前回いつも趣向を変えると言ったな、あれは嘘だ。」→様子見つつやりたいと思っております。

「今、暇かい?」→変化球な相棒ネタです。ハイ。

「深海棲特種危険害獣三法」→オリジナルの法律です。中身を詳細まで考えようとは思ってましたが取り敢えず今は諦めました。

「突然の鎌倉(AA略」→私の第二の故郷と言っても間違いないところです。なんとなく出したくなったのです。(きっとシン・ゴジラ効果)
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