亡き王女と青髪の吸血鬼   作:根本

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運命を操るのは彼女なのか?

吹き抜ける砂と風。

彼方まで続く砂と岩。

既に日は暮れ風は冷たい。

月の光が荒野を照らす。

周辺の岩々は影を伸ばすが、2人の影は存在しない。

それは2人が人間ではない、妖異であることを意味する。

お互いに赤いコートを身に纏い、相対峙している。

強い風が二人のフードをめくりあげる。

 

片方は青髪、もう片方は金髪の少女。

背格好はどちらも10歳くらいなのだが、鋭い爪と赤い目は明らかに人間のそれではない。

二人とも人外の王たる吸血鬼の正統だ。

青髪の吸血鬼はレミリア・スカーレット。

金髪の悪魔はフランドール・スカーレット。

 

 

紅い悪魔、フランドール・スカーレット!

 

 

その名を聞いた人間は皆が皆、震えあがり、恐れ慄くだろう。

 

「いたずらをする悪い子は紅い悪魔に食べられてしまうぞ」

 

そんな風に育てられた子は、血相を変えて逃げ出すに違いない。

2体の紅い悪魔は覇気とか瘴気といった類の、ここにいたくない、いられない空気のようなものを発していた。

そしてその空気をレミリア自身がヒシヒシと感じている。

 

(フランドール……。なんて恐ろしい子なのかしら)

 

吸血鬼は本来は恐怖を感じない。

食物連鎖の頂点、最も強靭であるはずの吸血鬼のそのロード種。

レミリアこそがその頂点に君臨するはずなのだが、目の前にいる妹のフランドールはそれすらも超える存在になろうとしているようだ。

 

(それとも人まねごっこを続けた結果なのか……)

 

吸血鬼がその圧倒的な力そのままに人間界で暴れまわれば、運命が大きく揺らぐ。

家を飛び出し暴れまわるフランを連れ帰るためとはいえ、不必要な運命への干渉は極力避けたかった。

それ故、吸血鬼の力を極力抑え、人間の如く銃を携えここまできた。

がしかし……、フランの圧倒的な覇気をうけてレミリアの首筋を汗が伝う。

それは冷や汗と言えるものなのだが、本来吸血鬼が流すものではない。

もはや流転する運命の終着先は誰も知るすべがないのかもしれない。

 

「ご機嫌麗しゅうございます、お姉さま」

 

睨み合ってどれだけの時間が流れたか、先に口を開いたのはフランの方だった。

フランが殺気をそのままに仰々しく頭は下げるが、赤い目はレミリアを捉えて離さない。

口を開き犬歯をむき出しにしたニタリ顔を見て、レミリアははっとした。

 

「……フランドール、元気そうね」

 

なんとか声を絞り出す。喉がカラカラだ。

ああ、血が欲しい。

ここまで血を欲するのは初めてのことかもしれない。

 

「ここで終わりにするわよ」

 

レミリアは自分に言い聞かせるように声を捻り出した。

 

「いいえ、まだまだもっともっと世界を壊すの。そしてお姉さまは私を追い続けるのよ。私の圧倒的な力にひれ伏すまでずっとずっと。ずっとよ」

 

フランは両手を広げ、月の光を一杯に浴びて踊り狂い、一層嬉しそうに白い歯をみせた。

 

「子供みたいな駄々をこねるのもいい加減になさい。ツェペシ公から始まるスカーレット家八代の血脈と時間と運命をそんな下らないことに費やすのはやめなさい!」

 

余りにも子供じみた言い分と振舞いにレミリアは思わず声を荒げた。

フランの顔が恐ろしくアシンメトリーに歪む。

 

「お姉さまはいつだってそう。わたしを子供扱いして。5歳違うだけでそんなに偉そうにして!」

 

周囲の山のような大きさの岩々がフランの怒りに同調するかのように砕けて弾け飛ぶ。

 

「正統たる証である『運命を操る力』はその長子に継承される。証とは即ち紅し(あかし)。それがスカーレットたる由縁。それは時間の長短ではない。それをフラン、あなたも知らないとは言わせないわ」

 

「どうやって!」

 

フランが、はちきれんばかりの怒声で叫ぶ。

砕けて砂と化してなお、フランに同調する岩と大地。

 

「それでどうやって決着をつけるの? レミリア!」

 

フランがあくまでも、スカーレットの正統たるレミリア・スカーレットに仇名す賊として存在を主張するらしい。

 

「銃で決着をつけましょう。ただただ暴れまわる吸血鬼を抑えるだけなら人の力で十分よ」

 

迷いの消えたレミリアは大きく腕を突き出した。

 

「弾幕ごっこって訳ね。結構よ、お相手してさしあげるわわ」

フランは55口径の大砲を2門を取り出しのそりと両手に構えた。

 

レミリアは懐から自動小銃をとりだす。

弾は能力を込めた特別性だ。

右足を前に出し、半身の右手で銃を静かに構えた。

 

もう迷いはない。

 

2体のヒトならざる吸血鬼が、初めて優劣なく対峙した。

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