三人寄れば文殊の知恵…だけじゃなくて派閥も出来る。
それはうちのクラスも同じで、俺も一つのグループに所属している。と言うか、いつの間にか俺を中心にしたグループが出来上がっていた。本来なら、事故で三週間越しに出席した俺は一番の新参者の筈なんだけど…まぁ細かい事はいいか。
さて、そんな俺達のグループは、男子は俺や戸部達を含めた4人で女子は結衣の他に優美子と姫菜の2人だ。
三浦優美子は結衣の中学時代からの同級生だ。
髪を染めてメイクを決めた姿は如何にも今風な女子って感じがする。
今でこそ一見ギャルっぽく見えるけど、意外な事に中学時代はテニス部に所属して、そしてその腕前はなんと県大会に出場。そのまま県の選抜選手に選ばれるくらいだ。本人は体育会系じゃないって言っても、一度ラケットを握ったらなかなか離さないし、負けた時はとても悔しそうだ。今はお洒落に夢中でも、やっぱり根はテニス少女なんだろうな。
性格だってキツそうに見えて、実は結構面倒見がいい。
一度、戸塚君の特訓中に割り込んで来た時はどうしようかと思ったけど、こっちの事情を説明すると俺のラケットを引っ手繰って直々に彼を指導し始めたからな。その内、家からマイラケットを持参してきて彼に手ほどきを始めた。その甲斐あって、今では戸塚君も自信がついてきたみたいだ。この前の昼休みだって、すっかりリードされっぱなしだったからな。
きっと、中学の後輩達にとっては厳しくもいい先輩だったと思う。
…一度、練習の後に結衣から優美子が現役時代の頃の写メ(すっぴん)を見せて貰った。
本人は大慌てで今見たのは忘れろと迫って来たけど…充分イケルと思うぞ?
『・・・』ジーッ ??が仲間になりたそうな目でこっちを見ている!
―――と、気付けばそんな俺達のやり取りを比企谷が見つめていた。
…普段、昼休みに姿を見掛けないと思っていたけどあんな所で飯を食べていたのか。
…普通に教室で食べればいいのに。
『・・・』トボトボ ※八幡は寂しそうに去って行った。
・・・一体、何だったんだろう…。
―――話を戻そう。
そしてそんな優美子とは反対に、姫菜は黒髪のまま染めていない。
男女問わず髪を染めたり制服を改造したりする生徒が多い中で、どちらかと言えば大人しめ。悪くいうと少し地味な印象を受ける。
だが……その中身は全然大人しくない。
姫菜の本性は、所謂腐女子だったのだ。
一度、二人で一緒に帰った時に…それはもう大層な講釈を賜った。
女子と二人きりで下校するのは俺達みたいな年頃の男子にとっては浪漫なのかもしれない。でも、だからって延々とあっち系の話しをされると気分も滅入る。
とは言え、姫菜を無碍にする様なことは出来ない。…断っておくが、俺はノーマルだ。
ただ、それはつまり健全な男子という事で、俺だって戸部達とは相応にそっち系の話しはするし、一人でそういう事をする時だってある。
そして、そういう時に思い浮かべるのは雪乃ちゃんや結衣、優美子や姫菜だ。
…本人達に失礼極まりない事は自覚しているけど、それでも皆、学年トップクラスの美少女だからな。
そんなわけで、俺はお世話になっているお礼も兼ねて姫菜の聞き役に徹している。
姫菜に限らず、人なら誰だって自分の趣味について語りたいはずだ。でも、BLはまだそうもいかない。それなら、俺と居る時は存分に語り尽くせばいいさ。
それに、内容はアレでもBLを語る時の姫菜は活き活きしてるしな。
その顔が見れるだけで儲けものだと思う。
それに、最近ではそっち方面の友達も出来た。
俺が姫奈に紹介した材木座君とは、似たような趣味で話も合うみたいだ。
彼とはラノベを買いに本屋に行った時、お互い最後の一冊を取ろうとして手をぶつけたのが切っ掛けで知り合った。俺は元々ライトノベルとかにはそれ程興味は無かった方だけど、入院中に暇潰しに見ていたアニメが意外と面白くて、退院したら原作にも手を出すようになった。そういった縁で知り合い、今では定期的に彼の依頼を引き受けている。
なんと、材木座君は作家志望だ。
正直、添削を頼まれた原稿は商業としてやっていくにはまだまだだけど、進んで流行や幅広い設定を詰め込んでいく姿勢は評価出来る。専門知識を深めるために、彼は進路選択も理数系を選ぶらしい。雪乃ちゃんはその動機に懐疑的だけど、俺は良いと思う。自分のやりたい事の為に進路を選ぶのはいい事だし、その為に努力する姿は見ていて格好いいじゃないか。この先俺に協力できることがあれば、是非手伝わせてもらいたい。
と、まぁそんな個性的なクラスメイトとの交流も交えながらも有意義な青春を謳歌している。
「隼人君、今度の職場見学は何処に行く?」
「特に決めてないなぁ」
「そうなん?!じゃあさ、俺らと一緒に――」
「あ~ゴメン。俺はもう組む奴を決めてるんだ」
「えぇ~ッ?!そうなん隼人くん!もっと早く言ってよぉ…」
「悪い悪い。また今度な」
「お待たせ、戸塚君」
「あ、葉山君!」
グループの皆には悪いけど、俺は戸塚君と一緒の班になるのを約束してたからな。
彼とは退院して直後の体育の授業で知り合い、その時に色々と気遣って貰った。
俺がサッカー部に復帰する決意が着いたのも、戸塚君からのアドバイスや励ましの言葉があってこそだ。
「ごめんね葉山君。折角、グループの皆から誘われてたのに…」
「気にしないでくれ。俺だって、最初から戸塚君と組むつもりだったからさ」
「…へへ//そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとう」
つまり、俺にとって戸塚君は挫けた心を持ち直してくれた恩人でもある。グループやクラスの友達は大事だけど、それでも、やっぱり彼だけは特別だ。テニスが強くなれるよう相談を受けた時は是が非でも応じたかった。その所為で奉仕部の理念を捻じ曲げそうになったけど、雪乃ちゃんも結衣も賛成してくれた。ホント、あの二人には頭が上がらないや。
「それで、あと1人だけど…どうしようか」
「う~ん。そうだなぁ…」
グループの誰かを誘う手も考えたけど、それじゃ意味がない。
一度雪乃ちゃんや結衣に言われて気付いたけど、俺がいない時にあいつらが話し合っているのを見たことが無い。…これを機に、あいつ等が本当の意味で友達同士になってくれれば有り難い。
「・・・・あ」
そう思っていると、バレバレの演技で周りの様子を伺っている彼と目が合った。
また、いつもの寝たふりをしているけど…丁度いいか。
「―――ヒキタニ君」
「!!」ガバッ
…いや、そんなに慌てて起きなくてもいいじゃない。
「今度の職場見学だけど、一緒に行かないかい?」
「お、…おう」
そこまで噛み噛みになる程の事じゃないと思うけど…まぁいいか。
「でさ、今度のモーターサークルでね!」
「うんうん」
「・・・」
今度開かれるモーターサークルに見学先の○×重工が出展する。
その事に戸塚君は興奮気味だ。彼は華奢に見えるけど、結構ワイルドな趣味だからな。
車やバイク、その他モーターサークル全般に造詣が深い。
かく言う俺も、戸塚君程じゃないけどバイクや車には興味がある。
やっぱり、男なら一度は憧れるものな。
「ヒキタニくんはどう思う?」
「お、おう。俺はまぁ……いつガン○ムが出来るのか気になるなぁ」
「「・・・」」
うん…そうだな。
当日。流石は○×重工とでも言えばいいのか、最新機械の駆動は男心にグッとくる物があった。他の班の連中も、皆似たような反応だ。戸塚君も目を輝かせて、帰りもなかなか興奮が醒めなかった。
…比企谷も来れば良かったのに。
※その頃の八幡・・・
「なに、日本人が新しい元素を発見だと?!詳細は…んだよ、ミノ○スキー粒子じゃねぇのか」
○×重工に見学希望が殺到した事を受け、急遽見学先を『自宅』に変更。
後日、白衣の悪魔にぶっ飛ばされたのは言うまでもない。
~続~
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