戻った俺がやり直す   作:独辛

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ようやくテスト週間が終わり、達成感に満ちている天チクです。

作者自身何が書きたいのか迷走中ですが、書きながら考えていきたいと思うので暖かい目で見てくれれば幸いです。

ではどうぞ。


その道には影がさす

たとえどんな失敗や後悔があったとしても時間は止まらないものである。道を踏み外した人間が更生しようとも過去の出来事は消えないように、一生の親友になるかもしれなかった友をたった一言で失うように、時間は進み止まらず、戻ることはできない。

言葉の刃で相手を傷つけてしまったら、その傷は薄れても、小さくあとは残る。

これからも俺があの子に言った言葉は残るのだろう。心のどこかで破片が燻るのだろう。

だからこそ言葉は選ばなければならなかった。失敗してはならなかった。何も知らないまま感情まかせに言ってなどいけなかったのだ。

失敗してもいいだなんて次がある奴のセリフだ。確かに失敗を糧に成長することもある、それは間違いではないだろう。

でもこの世界にはたった一度の出来事なんてのがありふれている。

次がないなんてことは大して珍しいことではない。

 

考えていても、悩んでいても世界は回る。俺を中心に世界は動かない。世界は世界を中心に動くのだ。たかだか70億分の1程度の存在にかまけている暇などない。

1年が過ぎ、2年の秋。クラスは変わらず、外面では和気藹々と俺も過ごしていた。

「ここはもう少しバッファをとるべきだと思うんだけど、どうかな? …朝霧君どうしたんだい?」

考えごとをしていた俺は班会議に集中していなかった。そのことを玉縄に気付かれる。

「あー、悪い。ボーッとしてたわ」

現在の時間は修学旅行の班ごとに見学ルートを決めようという定番のアレだ。

各班男女6人制で動くが部屋割りはもちろんの事違う。男子3人部屋だ。べ、べつに残念とか思ってないから本当だから。

「ミーティングには全員でパーティケーションしないと意味がないよ」

「了解。今からちゃんとやるさ」

今のは玉縄。おれがこのクラスで1番接触回数が多い奴だ。そのおかげか知らんが班決めでは特に悩むことなく玉縄からお誘いがかかり今に至る。

「じゃあ、ブレインストーミングからやっていこうか。初めはビジョンを広く持っていこう」

この独特な話し方がこいつの持ち味である。

ぶっちゃけ時々うざく感じるのは俺だけではないはずだ。

 

会議は時間一杯続いたが具体的なことは決まらなかった。

だがまぁ、初回の会議なんてこんなもんだろ。

ここで1つ、修学旅行の行き先について語ろうと思う。

旅行先は北海道。日本の最北端であり俺たちが過ごす千葉より断然寒いと噂される場所だ。

有名なのは赤レンガ倉庫群や百万ドルの夜景などだろう。

百万ドルの夜景とか価値観わかりにくいからせめて円にして欲しい。

他にも北陸は海鮮料理が美味しいと聴く。美味しい物が好きなオレはこれが密かに楽しみで仕方ない。

それに加えてもう6年以上会っていなかった奴にも会える。

【鷲巣ただひと】覚えているだろうか、猿人類の特徴が顔に色濃く出てる男である。

幼稚園卒園いらい、ずっとあっていなかった彼だが、彼の母親と俺の母親が連絡を取っていたらしく、携帯を買った直人(ただひと)のアドレスが俺に送られてきた。

直人からのメールによると自分が通っている中学も行き先が北海道で日程も被るらしい。

直人が通う中学は総武中央中学。バスケ部に所属しているらしく日頃休みが取れない生活を送っているとか。直に会っていろいろと語りたいものだ。

 

ここまで俺の修学旅行に対する期待感を語ったが不安も存在する。四葉詩音、再び。である。

俺達の班には彼女がいるのである。あー、一気にテンション下がるわー。

あれ以来必要最低限の会話しかしていないし、俺達は大して親しくもない、むしろ苦手まである。

そんな俺達が一緒になったのは玉縄のせいだろう。ロープ君べつに四葉と俺を繋がなくてもいいのに。

どうか何事もなく過ごせることを祈るしかない。

 

 

「ただいまー」

帰宅して即服を脱ぎ、だる着を装備する。スウェットは神。基本的に家にいるときはこの格好で生活している。

部屋から降りて下に行こうとすると母が俺を見つけるなり、心なしかウキウキしながら話しかけてきた。

「あんたにお客さんっ。きてるわよ」

え? 先に言えよ。俺もう着替えちゃったじゃん、もろプライベート丸出しじゃん。

何故こんなにも機嫌がいいのかわからないまま、リビングへと入ると、

「あら、ようやく帰ってきたのね。貴方が遅いからせっかくいれた紅茶が冷めてしまったわ」

それは俺のせいではないのでは? 直帰してきたんですけど。……じゃなくてなんでいんの?

「固まっていないで早く座ったらどうかしら」

あれ、このくだり前にもなかった? なんかデジャブ。

「てかなにお前寛いでんの? ここ一応俺の家なんだけど」

ほんと、なに住人より住人らしくしてんの。

「言葉は正確に使うべきよ朝霧君。ここは貴方が買った家ではないわ。貴方のご両親の家よ」

面倒くせーよ、こまけーよ。それいったらお前親族ですらないじゃん赤の他人じゃん。

「で? お前なにしにきたわけ? てかなんで家知ってんの」

「秋沢君から聞いたのよ。以前に連絡先を交換したのが役に立ったわ」

え? なにそれ知らない呼ばれてない。

「あー、家に関してわわかった。それで要件は?」

「特にないわ」

は? え、なに? 用がないのにきたの? しかもなんでこの時期?

「なんて?」

「特に理由はないわ」

ふー。落ち着け俺。俺の認識ではプライベートへの干渉はお互いにおこなっていなかったし、まして家を行き来するような仲でもなかった。

…なにか家にいられない事情でもできたのか? それとも本当に唯の気まぐれなのだろうか。

「…どうしたんだ?」

「どうもしないわ。ただ、ここの近くを通ったから少し寄っただけよ」

それは苦しいだろう。初めて家に入るのに俺がいることも確認せずにこようだなんてどんな強者だよ。メンタル強すぎだろ。

「いやそれだいぶ無理あるから。俺とお前そんな気安く家に来るような仲だった記憶はないんですけど」

そもそも、最終的に"友人"であったのかすらわからん。

「ふふ。懐かしいわね、貴方とよくこうして会話してたものね」

いやまだ1年しか経ってないから、そんな遠くを見つめるほどじゃないから。

別段変わった話題もないまま、時間は穏やかに過ぎていった。

その後、彼女は最後まで理由を告げることなく帰っていった。

 

 

まったく、帰ってきていきなりのサプライズとかキツいわ。おまけに雪ノ下と話してるとなんか背筋が伸びるから尚更疲れた。

「あんたも隅に置けないわね〜」

母ちゃんがなんか言ってくるがそんなんじゃない。

「いやべつに違うから、そういうんじゃないから」

アレと付き合う男は間違いなく苦労するだろう。とりあえず両親に挨拶に行く時点で俺なら挫折する。

「それで。どんな話したのよ」

いやなんでそんなグイグイきてんの。なに若さ取り戻した気になってんの、皺の数は変わらないから。

「別にお互いの近況報告みたいなものだけ」

「ふーん、本当にそれだけ? つまらないわねー」

なに期待してんのか知らないけど雪ノ下と付き合うとかないから。俺もうちょっと明るい子が好きだから。

「でもおかしいわね〜。彼女ここに来た時はどこか思い詰めた顔してたから大事な用事があると思ったのに」

…なんだって。俺の前では微塵もそんな様子なかったぞ。

「ねえ、本当になにもなかったの?」

真剣な瞳で見てくる姿に俺はもう一度振り返ってみた。

…考える。今までの雪ノ下とのやりとりになにか疑問点はなかったか?

…明確に不自然だったところはなかったように思える。話し方も別段変わってはいなかった、けれど、動機はおかしかったように思える。

まずおかしいのは雪ノ下の行動。今までなかった家に来るという行動を何故小学校在学中ではなく疎遠になった後に来たのか。

そこで雪ノ下の言葉を思いだす。

 

『ふふ。懐かしいわね、貴方とよくこうして会話してたものね』

 

『懐かしい』俺はこの部分に違和感を感じていた。確かに人によっては1年合わなければ懐かしいというかもしれない。

だが相手は雪ノ下。はたして前を向き歩き続ける彼女が過去に未練があるかのような台詞をそう簡単に吐くだろうか。

現に俺は雪ノ下にあってもそこまで懐かしいという思いはしなかった。

ならどうして彼女はあんな言葉を残したのか。

根拠はない……が、可能性としては…ある。

俺に会いにきたのはなにかしらの繋がりを確認するため。

俺にあの言葉を残したのは過去に未練を感じていたから。

あの雪ノ下が? 確かにこう思うだろう。でも可能性は0ではない。

俺達と出会い彼女は少しだけ、変わったと思うから。

小学校時代、俺は彼女をイジメから解き放った。そこから俺達との交流が始まった。雪ノ下と新平、戒、綾。初めは緊張していたみんなも徐々に雪ノ下がいることに慣れていった。

いつしか俺達にとっては当たり前であったが雪ノ下はどうだったのだろうか。

普通の友人とは少し距離が遠かったのかもしれないが、それは決してお互いを嫌っていたわけではなかったと思える。俺達は俺達なりの付き合い方をできたように感じていた。

楽しいと感じていた。けれど毎日のようにみんなが顔を会わせることはそう多くはない。

俺達はこのグループ以外にも友達はいた。

しかし雪ノ下にはそれがない。

だとしたら、雪ノ下にとってあの空間が心地良いものだったとしたら。

それを失った時、はたしてどんな気持ちになるのだろうか。

 

それに加えて彼女の進学先に親しい知り合いはいない。新天地でまた1人。

人間は繰り返し失敗を犯すことは歴史が証明している。つまるところイジメの再発が起きた可能性は……極めて高い。

『懐かしい』 思い出を呼び起こす言葉。

彼女はきっと安心したかったのかもしれない。俺と話すことによって変わらないものがあると思いたかったのかもしれない。私達の関係は変わらないと。あの空間はなくなってしまったわけではないと。

しかし、確認をとろうにもここに彼女の姿はもうない。今のは俺の推測であり、本当はただたんに会いにきただけかもしれない。

 

けれど一抹の不安が残るのだ、もしもまた虐めにあっていたのだとしたら、彼女は昔のようにまた"1人"で乗り切れるのだろうかと。

目の前には冷え切ったティーカップだけが残っていた。

 

 

 

「そう言えば聞いたか?」

翌日のLHRの班会議の途中、直人から貰った情報をみんなにも教えた。

「へぇ。珍しいね、近場の学校の旅行日程が重なるなんてなかなかあるものじゃないよ」

「そうだよねー。てかもしかしたら出会いとかあるかも!」

同じ班員の奴らが盛り上がる。思春期真っ只中の年頃なのはわかるがこれだけの話題で出会いまで考えれるのは少し飛びすぎな気がする。

そもそもあるわけないだろ。そうそう出会いなんてあるもんじゃない。それこそ俺みたく昔の友人がいない限り他校との接点なんて普通はないのではなかろうか。

「さて、今日もブレインストーミングから始めていこうか」

会議はつつがなく進み、日が経つごとに案も固まり計画は完成する。

 

いよいよーー修学旅行が始まる。

 




いかがだったでしょうか。

中学編はあと3、4話ぐらいで終わりにしようかと思ってます。

主人公最強設定だけど最強してない(怒) とか言わないでください。これから活躍するんです。

感想、評価お願いしますm(__)m

次回、原作キャラ登場

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