明けましておめでとうございます。
今年も作品共々よろしくお願いします。
時を止めます!
時を止めます!
Sideヴァーリ
かるたを片付けてから一時間程経過したが空がどこかに行ったきり戻ってこない。
周りの奴らの顔には戻ってこない空のことを心配しているのが見て取れた。
「空ってば新年早々どっか行ったの?」
「でも、何も言わずにどこか行くようなことはないと思うんだけど……」
最近の空は付き合いが悪いことがしばしばあったが、俺達の誰かしらに必ず出かけることを一言言っていた。今回のように何も言わないことは初めてのことだから皆は困惑しているのだろう。
しかも今の空にはデバイスのブレイブやドライグ達がいない状態だ。
「……そのうちひょっこり戻ってくるわよ」
七罪の呟きは俺達の不安を少しだけ和らげる―――
「……どっかでフラグ建てたりしてそうだけどね」
―――ことはなく、不安がより募るだけだった。
お前は今どこで何をしてるんだ、空?
Sideout
Side空
不思議な穴に吸い込まれ、抜けた先には森林。そして金髪の少女。
彼女が言うには、ここは幻想郷だそうだ。
ならば彼女に聞かなければならないことがある。
「紅魔館という場所を知ってますか?」
「知ってるわ」
「ホントですか!?」
これは幸先が良さそうだ。
「ええ、嘘なんかじゃないわ。もしよかったら案内してあげるけどどうする?」
「ぜひお願いします!」
そんなのお願いするに決まっている。
即座に頭を下げて彼女と行動を共にすることになった。
「私は八雲紫。親しみを込めてゆかりんと呼んでくれて構わないわ」
「俺は龍神空です。よろしくお願いします、ゆかりん」
「……ごめんなさい。自分で言っておいてあれなのだけれどやっぱり紫でいいわ」
「? はい、わかりました」
呼び方を訂正した理由は良くわからないまま森の中を歩き出した。
―――…………!
すると、どこからか声が聞こえた。
周りを見渡しても視界に映るのは隣にいる紫さんだけだ。
上手く聞き取れなかったのだが、助けを求める声ではなさそうだ。
―――…………ま……せ!
徐々に声が近くなり、聞き取りやすくなってくる。
「……あっちね」
紫さんにも声は聞こえているらしく、発信源と思われる方向に歩き出した。
人が通るために整備されてない森の道を俺は何も言わずに紫さんに付いて行く。
しばらく歩き続ければ森を抜けて広いところに出た。そこには一本の大木があった。
「これはなにかしら?」
大木の根本付近に寄ると四角い箱があり、中には丸いものがいくつか入っていた。
―――そいつを回せ!
とうとう声がはっきり聞こえた。
回せ、というのは四角い箱についてる取っ手のようなもののことだろう。
くぼみがあることからここにはなにかを入れて回す仕組みのようだ。
「ガシャポン……?」
土や錆によって汚れていてわかりずらかったが、汚れを払ってからよく見ればデパートやゲームセンターに置いてあるガシャポンに似ている。
ということはくぼみに入れるのはお金ということになる。
お金がないかとポケットを探ってみたら五百円玉が一枚あった。十香から貰ったお年玉だ。
「ありゃ、入んない」
くぼみに五百円玉を入れようとしたが、入らなかった。
幻想郷の通貨が日本で使われるものと同じなのかはわからないが、恐らく一般的なガシャポンと同じで百円玉入れなければならないのだろう。
……そもそも律義に払う必要もないか。
「あー、手が滑ったー」
わざとらしく棒読みでセリフを言いながら
―――うおおおおおおいっ!? お金はどうした!? 今持ってたよな!? 何で入れなかった!?
謎の声がツッコんでくるが無視してガシャポンの玉を取り出す。※良い子は真似しちゃだめだぞ。
全部取ろうかと思ったが、持ちきれそうにないので五百円分の五個だけ取ってお金をガシャポンの中に置いておいた。
―――……へぇ、最初はヤバい奴かと思ったけど、案外欲がないんだな。
取り出した玉の一つが微かに震えていた。この中に先程から五月蝿い声の主がいるのだろう。
いい加減正体が見えないのに嫌気がさしてきたのでこの玉から先に開けることにした。
「ぐぐぐ……! 開かない!」
―――おい待てよ! 謎キャラっぽい俺が普通最後だろ!?
「回せとか言っておいて最後にしろとか我が儘か!」
本人にその気がない上にどうやっても開きそうにないから他の四つを先に開けた。
一つ目を開けると見たことのない青い文字列が螺旋状に飛び出した。その中心になにかがいた。
「これは……」
紫さんは何かを考える仕草をして出てきたものを観察していた。
時間が経って文字列が消え、そこにいたのは白くてニョロニョロしたやつだ。
「うぃっす! ワタクシは執事妖怪のウィスパーと申します。以後お見知りおき」
ウィスパーと名乗った執事妖怪(?)はうやうやしく一礼してきた。
「そっか。じゃあ、次ね」
「ええっ!? ワタクシ、スルーですか!?」
「ごめんね。先に他のも開けさせて」
「わ、わかりました……」
ウィスパーに待ってもらい、他の玉を開けていく。
「オレっちはジバニャンだニャン! よろしくするニャン!」
二つ目からは尻尾が二つあり、腹巻きを巻いている赤い猫だ。
すごく可愛いというのが第一印象。
「は、初めまして。オラはコマさんズラ」
三つ目からは風呂敷を持っていて、青い火が額から二つ出ている白い体毛の犬。(最初は羊かと思っていたが、本人から違うと言われた)。
ジバニャン同様に可愛い。
「封印を解いてくれたこと感謝する。さらばだ!」
四つ目からは筋肉隆々の赤い猫が出てきたのだが、名前も告げずにガシャポンの箱を持ってどこかへと走り去ってしまった。
「あ、行っちゃった」
引き留める理由はなかったのでそのまま流した。
それよりも気になるのはあの赤い猫が言っていた“封印”という単語だ。
ウィスパー達はこの中で封印されていたってことか。悪さでもしたのかな?
それはあとで本人達に聞くとして、残るは最後の一つだ。
―――おし! ようやく俺の出番だな! さ、いつでもいいぜ!
本来なら待ちわびた瞬間なのだろうけど、さっきから我が儘なことばかり言っているコイツに従うのは癪だ。
開けないまま黙ってポケットにしまった。
―――嘘だろおい!
声が余計に騒がしくなる。
「これ以上五月蝿くしたら、手が滑って肥溜めにでも捨てちゃうかもね」
―――…………。
軽く脅してみれば静かになった。中に入った状態では抵抗は一切できないし、流石に肥溜めは嫌なのだろう。
「さて、色々あったけど今度はこっちの自己紹介するね。俺は空っていうんだ。よろしく、ウィスパー。ジバニャン、コマさん」
「私は紫よ」
「紫? もしや八雲紫……ですか?」
「そうよ」
『っ!?』
三体の目が驚愕に染まった。幻想郷では彼女の名前は有名なのだろうか。
「紫さんのこと知ってるの?」
「知ってるも何も彼女の名前を知らない妖怪はこの幻想郷にはいませんよ! 神隠しの主犯だったり、スキマ妖怪の異名を持つ大妖怪です! ちなみに少女の姿をしてますけど年齢は―――」
「ねぇ、あなた達に聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」
ニコニコ笑顔の紫さんがウィスパーを遮った。
自分に向けられていないのはわかっているけどとっても怖い。
「は、はいぃっ! なんでございましょう!?」
「あなた達、かなり前に博麗の巫女に封印された妖怪よね?」
「そうだニャン!」
「でも、オラ達はなにも悪いことしてないズラ……」
詳しい話を聞くと、その博麗の巫女は妖怪なら悪さをしてなくても問答無用で封印したのだそうだ。
妖怪はすべて悪だと決めつけているのは少し気に入らないな。友人に妖怪の黒歌や白音がいるから尚更にだ。
その人に文句の一つでも言ってやりたいところなのだが、紫さんが言うには当の本人はもう数百年も昔に亡くなっている故人だ。
「ま、特に仕返しがしたいわけじゃニャいニャン」
それに三体の妖怪はそれほど怒っているわけではなかった。
愛らしい見た目通り、誰かを憎んだり、恨んだりはしないのかもしれない。
「それでジバニャン達はこれからどうする?」
ジバニャンとコマさんを両手に抱えてこれからのことを聞いてみた。
「自由にのんびりと過ごしたいニャン」
「いろんなもんげーものを見てみたいズラ~」
コマさんが使う“もんげー”とは岡山弁で“すごい”という意味だ。
「ワタクシは封印を解いてくれた空君に仕えたいです」
仕えたいって言われてもなあ……。
俺は構わないんだけど龍神家の皆がなんて言うのか心配だ。
それにおばけが苦手な明日奈がいる。可愛いジバニャンやコマさんならともかく、ウィスパーはアウトだろう。
とりあえず返事は保留にして紅魔館に…………それだ!
「ウィスパー、紅魔館に行こう!」
「紅魔館? 聞いたことがない名前ですね」
ウィスパーが紅魔館を知らないのは封印されている間に色々この幻想郷も変わってしまったからだと思う。
ともかくだ、そこに行けばウィスパーへの返事も何とかなりそうだ。
三体を連れて紅魔館へと改めて向かい始めた。
「あそこが紅魔館よ」
紫さんが指差した方向には紅い煉瓦の建物があった。中世のイギリスにでもありそうな大きな時計がついた館だ。
「私の役目はここまで。あとはあなた次第よ」
別れを告げる間もなく、紫さんは俺がここに来るときに通った穴の中に消えてしまった。
彼女が俺をここに連れてきたのか。
理由は何であれ連れてきてもらったこと感謝だ。
ここまで来るのに時間はかかったがようやく彼女に会える。
紅魔館の門へと続く石橋を進んで行くと、華人服とチャイナドレスを足して二で割ったような緑色の服装の女性が門の前に立っていた。
佇まいだけでも彼女が強者であることがわかる。
「お待ちしておりました、龍神空君。私は紅魔館の門番をしている
俺の名前をすでに知っているのは、あの子が話したからだと思う。
「じゃあ、通してもらっても?」
「ええ、いいですよ。ただし―――」
紅さんが拳を構えた。
それが意味するのは“ここを通りたければ、私を倒せ”ということだろう。
「はい、お願いします」
ジバニャン達を遠ざけてこちらも拳を構える。
友達に会うために戦うことに不満がないわけじゃないが、幻想郷という未知の世界の人達の実力を知るいい機会だ。
「さあ、掛かってきなさい」
魔力を全身に巡らせ、軽い準備運動をするつもりで拳を一発叩き込む。
腕をクロスして防がれた。彼女からの反撃はない。
反撃が来ないことを疑問に思いながらも一度距離を取り、拳をまた構える。
「……良い拳です。では、今度は私から」
彼女が静かに一歩踏み出す。
たった一歩。それなのにあまりに綺麗に洗練された動作に目を奪われていたら相手は俺の目の前にいた。
「はあっ!」
彼女の美脚が側頭部を狙ってくる。
咄嗟に這いつくばるようにしゃがみ込んで回避。
空を切った蹴りはその衝撃だけで地面を抉っていた。
見聞色の覇気がなければ確実に今の一撃でやられていたことだろう。
こりゃ出し惜しみしてる場合じゃないな。
跳ねるように飛び上がり、右回し蹴り。
片手で防がれるがこれでいい。
「
俺の影から黒い刃が彼女の脚目掛けて飛び出す。
「影から!?」
突然の死角からの攻撃に驚きを禁じ得ない様子だ。
完全に不意を突いた一撃が決まる―――
「効きませんよッ!」
―――かと思いきや、刃は彼女の脚を掠めるだけで貫くことはなかった。
不可視の壁? いや、何か膜のようなもので覆われてると言った方がしっくりくる。まあ、次は斬るけど。
刃を消して接近戦を続ける。
その中で黒刃の狗神を相手が嫌がるであろうタイミングで出し、彼女に攻撃の隙を与えさせない。
確かに俺の攻撃は膜を斬っている。それに彼女が防戦一方で間違いない。しかし、彼女の反射神経が鋭いのかまたは直感なのか、斬った瞬間に服や肌を掠める程度に終わる。どうにも決定打に欠けているのだ。
イチかバチかでやってみよう……!
あまり黒刃の狗神は使い慣れて無いから不安はあるが、きっと俺の想いに応えてくれるはずだ。
彼女の蹴りを武装色の覇気を纏い両腕でガード。
両腕に奔る激痛に耐えながら距離を開け、体勢を立て直すと同時に駆け出した。
迎え撃つ構えを取る紅さん。
「黒刃の狗神!」
「ワン!」
「刃ではなく犬!?」
名前を呼べば、影から今度は刃ではなく黒い毛並の子犬が俺と紅さんの間に飛び出す。
一瞬の躊躇を見せたのち、黒刃の狗神に向かって脚を振り上げた。
「
俺の声に呼応するように黒刃の狗神が細く長く姿を歪ませ、一本の黒い刀へと変形する。
形が細くなった黒刃の狗神は脚を躱し、俺は柄を掴み取って喉元を狙って刀を突きつけた。
「……お見事です」
喉元に刀を突きつけられた紅さんが両手を上げた。
この勝負、俺の勝ちだ。
「進んでも?」
「ええ、どうぞ。あなたの実力十分にわかりました。あの方が認めるだけ……ガクッ……」
紅さんはわざとらしくその場に倒れた。
あれー? 最後の攻撃って当たってないよね?
「ジバニャン、コマさん、ウィスパー、行こう」
よくわからない行動に首を傾げながらもジバニャン達を連れて紅魔館へと入った。
「ごめんくださーい!」
玄関の大きな扉を開けてみれば、館内を何本もの蝋燭が照らしていた。光源が小さいためか薄暗い。
返事がないので誰もいないかと思いきや、誰かが歩いてくる音が中央にある階段から聴こえた。
「……美鈴を倒してきましたか……」
姿を現したのはメイド服を着た銀髪の少女だ。十香ぐらいの年頃で懐中時計が腰についているのが特徴的。
さっきのジバニャン達や紅さんとは違い、纏う雰囲気が人間のものだ。
どことなくグレイフィアさんに似てる気がする。……まあ、血縁者ってわけでもなさそうだけど。
「ですが、美鈴は紅魔館四天王のなかでも最弱。彼女のように私を簡単に倒せるとは思わない方がいいですよ」
……なんか今のセリフで色々シリアスなはずの雰囲気がぶち壊しになった気がするんだけど……。ってか、四天王最弱なんて言葉を実際に使う人いたんだ。
「あなたも倒さないと通れないってことですか?」
「そうです」
当然そうなるか。でも、最低でもこの人を含めてあと三人倒せばいいことはわかった。
「逃げるなら今の内ですよ?」
「いや、逃げるなんて選択肢は俺の中にないんで」
魔剣と聖剣を両手に握りしめ突貫。
メイドさんはどこからともなくナイフを取り出し投擲。
ナイフを斬り払う―――刹那、俺の動きが止まった。いや、時が止まったというべきだ。
蝋燭が溶けていないことやジバニャン達が動いていないことからそう考えた。
普通なら動けないどころか意識がないはずだ。そうじゃないのは神器のおかげだ。
「悪く思わないでください。私と勝負する時点で勝者は決まっていたのですから」
メイドさんがゆったりとした足取りで近づいてくる。
俺に意識がある事には気が付いてないようだ。体が動かないのだから簡単にはバレないだろう。
大量のナイフすべてを俺に当たるように設置。
あとは彼女が時を動かすのを待つだけになる。
「これで終わり―――」
「(―――なわけあるか。
解除する瞬間を狙って神器を発動。突き刺さるはずのナイフは止まったまま。
「な、何故……? 何故あたなは動けるのです!? 時は止まったはずです! ……それに私の方が動けなくなってる?」
自分の置かれた状況を理解したようだ。
意識があるのは俺と同じ理由と考えてよさそうだ。
「単純なことですよ。―――俺が時を止めただけですから」
空条承太郎がDIO相手にやってのけたことと同じことを再現したまでだ。
簡単に言ってるけどタイミングを見誤っていたら全身穴だらけになる、中々危険な賭けでもあった。
「ならッ、もう一度…………できない……?」
「今は俺の時間です。そして、あなたの時間はもう来ない」
魔剣と聖剣を視界を覆い尽くす程の量を、彼女が動けばいつでも刺せる位置に創り出した。
「降参します?」
「……します。私ではあなたを止めることは出来ないでしょうから」
敗北宣言を聞き入れ、剣を消す。
「行きなさい。たとえどんな結末になろうとも諦めることは決して……ガクッ……」
「だからなんなのさ、そのわざとらしい演技は!」
倒れたメイドさんは俺の叫びをただひたすらに無視し続ける。
これは何を言っても反応しなさそうだと思い、先に進むことにしたのだった。
紅魔館四天王
1、紅美鈴
2、銀髪メイド(皆さんが知ってるあの人)
3、???
4、???