デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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フランと仲直りします!

フランと仲直りします!

 

Sideフラン

 

私にとって龍神空という少年はとても大切な存在だ。

自分の口からはっきり友達だと胸を張って言える。

例えるならすべてを受け止めてくれる青空。

吸血鬼という体質上、あまり見たことはないがお日様というのも似合うと思う。

でも、

 

 

―――そんな彼を私は手にかけた。

 

 

 

変な女の能力に掛かってから、私は激しい破壊衝動に駆られた。

目の前にあるもの全てを壊さなくちゃ気が済まないほどだ。大切な空でさえも壊したくて仕方がなかった。いや、あの時の私は空を見て、大切だと感じてはいなかった。ただ壊すべき対象としか思わなかったのだ。

 

あの女は私の心に闇があると言っていた。

口では否定していたけれど、心当たりがないわけじゃなかった。

 

情緒不安定。

昔から自分でも抑えようのないものだった。

だからお姉様達からは遠ざけられていたし、部屋に閉じ込められていた。自分から出ようなんて気も起らなかった。

 

異世界で彼と出会ったときにも、何でもないようなときに無性に何かを壊したいと思ったことがあった。

その時は体を張って空が止めてくれた。

正気に戻った時に傷付いた空を見て罪悪感に苛まれた。

体中傷だらけなのに「気にしないで」って無理して笑う彼を見て余計に胸が苦しくなる。

時間が経つにつれて少しずつ和らいでゆくが、完全には消え去らない。

心の奥で今もあり続けているのだ。

 

もう二度とあんなことはしたくない。大切な空を傷つけたくない。

そう思う度に自分の心を強くしようとする。けど、その度に彼の優しさに甘えようとする醜い私がいた。

空なら私を助けてくれる。空ならいくら傷ついても私を見捨てたりしない。

優しい彼のことだから、私が助けを求めれば、いや、求めなくともきっと助けてくれることだろう。

頭の中で同じことを何度も何度も繰り返して考える。

 

そんな私の弱さが、また空を傷つけることになった。

 

 

 

 

 

「……空……ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」

 

私の状態が元に戻ってから数時間後、布団に横たわる傷だらけの空を見て謝る。

 

「フラン様は何も悪くないですよ!」

 

「そ、そうズラ……」

 

「悪いのはあの変な女だニャ!」

 

「……それでも、私が空を傷つけたことに変わりはないの……」

 

「ええ、そうですね。あなたが彼を傷つけたんです」

 

部屋に入って来たのは桃色の髪色の妖怪だ。

年齢はともかく見た目は私や空と同じくらい。

ジバニャン達から聞いたが、彼女が空を助けてくれたらしい。ついでに倒れていた私やお姉様もだ。

彼女が手に持っていたのは空の服だ。

戦闘の際に私がボロボロにしてしまったが、彼女が直してくれたようだ。

自分でも理解しているが他人にこうもはっきり言われると心に来る。

 

「でも、フランだって空を傷つけたくて傷つけたわけじゃないのニャ!」

 

「私は事実を述べたまでです。それよりもそこをどいてください。看病の邪魔です」

 

「そ、そんな言い方しなくても―――」

 

「ウィスパー!」

 

私が声を張るとウィスパーは体を震わせた。

 

「彼女の言う通り私達に出来ることはないの。行きましょ」

 

「っ! わかりました……」

 

納得のいかない顔をしたジバニャン達を連れて部屋を出た。

 

「私のために怒ってくれてありがと」

 

誰にも顔を合わせずそう呟いたのだった。

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side空

 

「……っ……」

 

冷たい何かが額に触れて目が覚めた。

目を何度か擦り、周囲を見渡す。

 

ここは木造の家かな? んー、全く知らない場所だ。

 

そしてすぐ傍に桃色の髪をした少女がいた。

狐耳に露出の多い藍色の巫女服。

他には誰もいないことから彼女が倒れた俺を看病してくれたと考えてよさそうだ。

 

視界が霞んでたから朧気にしか覚えてないけど、気を失う前に見たのはこの女の子……だと思う。

 

「君が助けてくれたってことでいいのかな?」

 

「はい、そうです♪」

 

「そっか。ありがと。おかげで助かったよ」

 

「いえいえ、これも良妻狐として当たり前のことですから」

 

良妻? 誰かの奥さんってことか。俺と同い年位の見た目だけど、人……というか妖怪は見かけによらないんだね。

 

「ところでお体の方はどうですか?」

 

そう言われて思い出した。

 

俺、腹刺されたんじゃん!

 

いつの間にか着替えさせられていた服を捲くり、傷口を確認する。

包帯でぐるぐるに巻かれていたが触った感じほぼ塞がってると見てよさそうだ。

 

「あれ? 問題なさそう……。君、凄いね! あんな傷だったのにもう塞がってる!」

 

「確かに私は治療を施しましたが、あの場では応急処置程度のものでした。その後は私が何もせずともものすごい回復力で勝手に癒えていったのです」

 

ってことは俺の体は徐々にそういう体になって来てるわけだ。いや、()()()()の方が正しいか。

 

「あなたは一体何者ですか?」

 

似たような質問を何回もされた。

今までは転生したと答えればそれで良かったが、最近ではそれも変わり始めた。

 

「元人間の龍の神様ってとこかな」

 

 

 

 

 

三か月前のこと。

数日の間だけ俺が俺じゃなかった時間があった。

アザゼルさんの作った若返りの銃で俺は五年前の姿に戻されたのだが、俺が転生したのは四年前。それ以上前のことは何も覚えていない。

結果的に若返りの光線を浴びて現れたのは転生する前の俺だったのだ。

何故姿が戻っていたはずの俺がそんなことを知っているのか、その理由は実に単純。

桜木遥が俺宛に手紙を残していたのだ。

詳細は省くが、書かれていた内容は自分の素性と力、そしてとある約束についてだった。

その手紙を読んだ日から俺は一度自分の精神世界に潜り、いるはずの彼を探した。

そして見つけた。

以前ドライグ達が現れたと言っていた扉の向こうに彼はいたのだ。

 

『一応、初めましてかな。自分に言うのもなんか変な気分だけど』

 

なんて前世の自分と話すという不思議な体験をした日から彼と日常的に会話が出来るようになった。

 

「っ!? 禁手(バランス・ブレイカー)が……!」

 

とある日の修行の際に発覚したことがあった。

それは禁手を使った途端に体に激痛が走る現象が起きた。

 

『本来神器(セイクリッド・ギア)ってのは人間が使う力なんだろ? だったら人間じゃないお前が使ってダメージが入るのも考えられないことじゃないと思うんだ』

 

そこで俺は全部の神器で同じなのか調べるために一通りの神器を使うことにしてみた。

調べた結果、大なり小なりではあったが痛みが発生したのは神滅具(ロンギヌス)の禁手を使った時だった。

でも、ついこの間までは問題なく使うことが出来てた。それなのに急にこんなことになるのかな?

 

『神滅具ってのは神を滅ぼす可能性を秘めた神器。つまり、神格のあるお前が使うってことに神器のシステムが異常だと判断したから、と考えるべきじゃないか?』

 

ううん、それだったら最初から使えないはず。

あ、でも俺に最初から神格はなかったと考えれば遥の推理に筋は通る。

となると……自分が何なのか理解したからなのかな。

これまでにも自分が人間じゃないと思うことはあったけど、心のどこかでは自分は人間だって思ってたからさっきのような異常はなかった。

徐々に力が上がってる、というよりも桜木遥としての本来の力が戻りつつある。

 

『神器がまともに使えないならお前()本来の力を教えてやるさ』

 

そこから神器の修行よりも龍神の力を使いこなすための修行が始まったのだった。

 

 

 

 

 

「龍の神様……ですか。ということは、寿命は妖怪並みに長いはず。一緒にいられる時間は長い!

 

少女は顎に手を当てて考え込む仕草をしながら呟いた。ついでに小声の部分もはっきり聞こえた。

 

この子、俺と一緒にいたいの? あ、友達になりたいのか。

 

「そう言えば自己紹介まだだったね。俺は龍神空。気軽に空って呼んで」

 

「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。私のことはタマモとお呼びくださいませ、ご主人様♪」

 

「ご、ご主人様? そんな畏まらなくても空で全然―――」

 

「いいえ、全然よくありません! ご主人様に譲れない何かがあるように私にだってあるのです! その一つがあなた様をご主人様とお呼びすることなのです!」

 

一つってことは他にも何かあるのね。

なーんかめんどくさそうな子に出会ったなぁ……。

 

「うん、普通にごめん。そういうのは他のヒトに当たってください」

 

「まあ! なんてことでしょう! 私は必死にご主人様をお助けしたというのに褒美ももらえないのですか? ああ、強請っているつもりは全然なくてですね? でもでもぉ、やっぱり頑張ってお助けした分なにかお情け的な何かを貰いたいなーって思う私もいましてー」

 

なんだろう、この子が美少女じゃなかったら今の言い回しにイラっときて殴ってたかもしれない。

 

はぁ……。確かに助けてもらったのは事実だし、お礼をしないのも失礼か。

 

「わかった。呼び方は任せるよ。……ところでフランやレミリアのこと知らない? 俺のすぐそばに倒れてたと思うんだけど。ってか戦いは!? 今どんな状況!? 俺が倒れてからどのくらい時間が経った!?」

 

タマモとのんびり話している場合ではなかったことに気が付いた。

妖怪の大群を霊夢さんや魔理沙に任せっきりで、俺はフランと戦って意識を失ってしまった。

ここが戦いの場から離れているのか、特殊な場所や結界でも張られているのかはわからないが、近くで戦闘している様子はない。

 

「わわわっ! 一旦、落ち着いてくださいな。私の知る限りではありますが順を追って説明させていただきますから」

 

まくし立てて質問する俺を宥めながらタマモは語ってくれた。

 

「まず、フランさんと赤い猫さん達は近くに居ます。レミリアさんという方は存じ上げないですが、ご主人様のお傍にいらっしゃった方々でしたら一緒にここに運んで休ませています。治療も済んでいますのでご安心を」

 

とりあえずフランやレミリア達が無事と聞いて一安心だ。

 

「戦いの方ですが、ご主人様が倒れてからおよそ二時間程です。私が見た限りではありますが、博麗の巫女とそのお仲間さんは大量の妖怪達相手に苦戦を強いられている様子はありませんでした。今頃妖怪達が野原の上で白目向いてるんじゃないですかね?」

 

うわーお……あの少人数で無双したのね。霊夢さん達強すぎでしょ。

 

「……敵の親玉も倒れた?」

 

「親玉、ですか?」

 

タマモには心当たりがないのか首をかしげる。

その様子だと霊夢さんに倒されたか、レミリア達と戦ってからはどこかに移動していたか。

 

「人里の方にも被害はなし。……カイラの目的は一体……」

 

ここで考えていても答えは出なさそうだ。

それなら、霊夢さん達と一刻も早く合流してもっと詳しい情報を手に入れないと。

 

「タマモ、俺―――」

 

「わかっております。ご主人様はまた戦いに赴く気なのでしょう? 本心で言えば行って欲しくないですが、どうせ止めたって聞かないでしょうから」

 

「あはは、ありがと。……あ、でも、その前にフランに声かけないと」

 

「……あの吸血鬼はご主人様を傷つけたのですよ? それでも会いたいと? また襲い掛かってこない保証はどこにもございませんよ?」

 

「それでもいいさ」

 

「……何故、でしょうか?」

 

タマモが俺を見定めるようにジッと見つめてくる。

 

「―――大切な友達だからさ、ちゃんと仲直りしたいんだよ」

 

「…………そう、ですか。そこまでのお覚悟があるなら私はこれ以上の口出しは致しません」

 

タマモが修繕してくれた服に着替えて、フランの気配を探る。この家の外にいるようだ。

襖を開けて外に出る。

竹林に囲まれた場所にこの家はある。

 

割と隠れ家的な場所?

 

部屋を出てしばらく歩くと、フランとジバニャン達が川の近くの大岩の日陰になっている部分の上に座っていた。

 

「おはよう、フラン、ジバニャン、コマさん、ウィスパー」

 

『空(君)!?』

 

近づいて声をかけるとフラン達が一斉に振り返った。フランだけはすぐに目を逸らしてしまったが。

 

「もう体は大丈夫なんですか!?」

 

「そうみたい。ほら」

 

軽く体を動かしても痛みはほとんどない。

それを見たジバニャン達が一斉に安堵の息を吐く。

 

「フラン」

 

「っ! な、なに?」

 

出来るだけ優しい声音で話しかけたつもりだったが、フランは俺の声にビクッと肩を震わせ、怯えたように返事をした。目も未だ合わせない。

 

うーんと、えーっと……こういう時は……。

 

どうするべきか考えて行動に移した。

 

「フラン」

 

もう一度名前を呼んで後ろから優しく抱きしめた。フランに抵抗はなく、ただ成されるがまま。

 

「フラン、俺はもう平気だよ。さっきのことは気にしてない」

 

「あなたが……空が良くてもっ、私が良くないっ!」

 

「フランは操られたくて操られたわけじゃないでしょ?」

 

「そんなの当たり前よ! 誰が好き好んで友達を傷つけるのよ! でもね、あれは紛れもない私の心の奥にあった闇なの! それなのに私は……私は……っ! 空なら傷ついても助けてくれるって最低な考えしてた! しかもこれで二回目! ……どう? これでも私をまだ友達って言える? 言えるわけないわ!」

 

全てを吐き出すようにフランが叫ぶ。

それに対して俺はフランを俺と向かい合わせになるように向きを変えて、真っすぐに言ってやった。

 

「それでも友達さ」

 

「っ!? なんでよ! なんでなのよ! どうしてそこまでして私に拘るの!? 空なら引きこもりの私と違って友達なんてたくさんいるでしょ!? だったら私のことなんて忘れてよ!」

 

確かに友達はそれなりにいると思う。けど、フランを忘れろなんて無理な話だ。

中々強烈な出会いからのホラー体験。一か月という短い間とはいえ、同じ部屋で生活して、同じご飯を食べた。

それだけで十分にかけがえのない存在。

 

「フランは忘れられて嬉しいの?」

 

「嬉しいわけない! もっと一緒にいたい! たくさん遊びたい! 空の世界のこと知りたい! だけど、私にはそんな資格はない! 私がいない方が空のためなの! 私みたいな迷惑かけるだけの奴なんかが空と一緒にいない方がいいの!」

 

「俺もフランと一緒にいたい。色んな事したい。でも、フランがそう言うならもういない方が良い、か……」

 

「……っ!」

 

フランの顔が絶望や後悔で歪む。

やっぱり自分で言っていて辛くないわけがないか。

 

「なーんてね」

 

「え……?」

 

「友達の定義って人それぞれだと思うんだけど、俺は迷惑掛けられたくらいじゃ友達を辞めるつもりはないよ。フランがまた暴走するなら止めるだけだしね。というか友達を助けるのに理由がいるかい?」

 

全快の状態の龍神化なら絶対に負けない!

 

「俺はフランドール・スカーレットの良いところも悪いところも変なところも全部受け入れます。だから、これからも傍にいてください」

 

「……一杯迷惑かけるかもしれないのに?」

 

「暴走以外でだったらちゃんと叱る。甘やかすところは甘やかすけどね」

 

「私がどんなに酷いことしても見捨てたりしない? ずっと一緒にいてくれる?」

 

「応ともさ」

 

「はぁ……空ってずるい」

 

「どこが?」

 

「全部! まるでダメ女製造機よ!」

 

ダメ女製造機とな。これは初めて言われた。

まあ、それはともかくフランの様子が大分マシになって来た。

 

「今更やっぱ無しなんて許さないから」

 

「もちろん」

 

「責任、取ってよね」

 

「出来る範囲でね」

 

「……ごめんなさい」

 

「うん、もう大丈夫。というか元々怒ってない。さ、タマモのとこ戻ろう」

 

彼女の謝罪を受け入れ、立ち上がらせて手を引く。

ずっと見守ってくれたジバニャン達にも声をかけることを忘れずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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