デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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深緑 風龍さんとのコラボです。





番外編

番外編

 

Side空

 

《奴ら》独特の呻き声が聞こえる。かなり近い。

廃墟となった建物の廊下で《奴ら》に見つからないように身を潜めて様子を窺う。

 

数は……三体か。ギリギリだな。

 

残弾は心許ない。体力だって限界が近い。芳しくない状況に思わず舌打ちしそうになるが堪える。

隣にいる年上の少年も俺と同じようで表情はあまり良くない。

 

「ここらで弾を手に入れないと厳しいですね」

 

「僕もそう思う。それに二人とも早く合流しないと」

 

俺達二人以外にも二人の仲間がいるが《奴ら》との戦闘中にバラけてしまった。都合上仕方のない事だったのだが。

一刻も早く合流してこんな廃墟から脱出したいところ。しかし、《奴ら》の読めない動きが俺達の行動を阻んでくる。そう簡単には行かせてくれない。

 

「3カウントで行きましょう」

 

「オッケー」

 

「3……2……1……GO」

 

二人同時に静かに曲がり角から飛び出し、《奴ら》の弱点である頭を拳銃で狙い撃つ。

三体の内二体を倒した。

銃声に気が付いた一体が振り向く。

残りは一体。いける―――と思われたが壁や天井から他にも《奴ら》が姿を現した。

 

ッ! 弾切れ!

 

新たに追加された敵に向けて拳銃の引き金を引くがカチカチなるだけで銃口からは何も出てこない。

苦肉の策として拳銃を投げつける。

頭に当たったものの、弾丸程の威力がないことは言わずもがな。怯ませることも出来ず、《奴ら》の接近を許してしまう。

これ以上はどうすることも出来ずに俺はただ《奴ら》にやられるがままであった。目の前が真っ赤に染まっていく中で相棒の少年も《奴ら》に喰われていく姿が映った。

やがて赤に染まりきった後は黒くなり、赤い文字でGAMEOVERの文字が出されたのだった。

 

 

 

 

 

接続が切れたのを確認して頭に被っていたナーヴギアを取り外した。

 

「お疲れ様。ミッションに失敗したようだね」

 

声を掛けてきたのはナーヴギア開発者で、ソードアート・オンライン―――通称SAOというゲームを開発中の茅場さんだ。

いつもの茅場さんであればSAOのテストプレイをお願いされると思っていたが、今回は茅場さんが暇潰しとテストプレイのお礼を兼ねて作ったというゲームをやっていた。ナーヴギアの改良点を見つけるためでもあるそうだ。

今やっていたのはバイオハザードを基にして作ったゲームだ。元ネタの完成度が十分だったから鞠亜の協力によって作るのはさほど難しくなかったらしい。

著作権の問題があるので販売するつもりはないようだ。

 

ゲーマーなら喉から手が出る程欲しがるだろうに。

 

少し勿体ないとは思うが本人にその意思が無いなら仕方ない。そもそもナーヴギア自体が一般に販売されているわけでも無いのだからプレイすることすら不可能な状態だ。

 

「くっそー! 難しいな!」

 

俺の横でナーヴギアを外した少年が悔しさを叫んだ。

名前はラーク・バスター・ガルッチ。

中学生くらいの見た目の少年だ。見かけによらず途轍もなく長く生きているとは本人から聞かされている。

異世界から家族旅行でやってきた人―――というか元魔神とのこと―――でしばらくは海鳴市に滞在するそうだ。

勿論彼にはヴァーリ共々勝負を挑ませてもらった。

龍精霊化や龍神化しても全く歯が立たない相手だったので、『勝てばよかろうなのだ精神』で使用後の反動なんかないふり構わず蒼き革新の箱(イノベート・クリア)究極の羯磨(テロス・カルマ)を使って何とか一勝もぎ取れた。

 

勝負というよりは最早赤子扱いされていた気もしないでもないが、修行も付けてもらえたからいいか。

 

そして、勝負が一通り終わって一段落してから、偶々茅場さんが来ていたので彼にもVRを体験してもらおう、ということになって一緒にゲームをしていたわけだ。

他の皆も別のゲームで楽しんでいるところだ。

 

「でも凄いな、このナーヴギアって。僕の旅してきた世界にはここまで発達したゲームは存在しなかったから、まるで映画の世界に入ってるか、二次元が現実になったみたいだったよ」

 

「ですよね! 俺も初めてやった時驚きましたよ!」

 

ガルッチさんの呟きの思わず共感してしまう。

茅場さん曰く、まだまだ改良点が多いらしいが時間が解決してくれるだろう。

 

「もう一回やります?」

 

「もちろん。負けたままで終わるなんて嫌だからね」

 

俺達はナーヴギアを被り直して横になる。

 

『リンクスタート!』

 

リベンジに燃える二人のフルダイブが再び始まった。

 

 

 

 

 

俺達が立っているのはチュートリアルを終えてすぐの場所―――廃墟の一室だった。まさかの最初からである。

一応最初からということはガルッチさんの他に仲間―――NPCが二人いるのだが、物語の都合上、後で離れ離れになる。

さっき俺達が進んだところまででは二人と合流はしていない。この先で合流できるかどうかは今のところ不明だ。

ちなみに物語の設定としては大学サークルのメンバーで巷で噂の廃墟の調査とのことだ。

 

「まずはさっきゲームオーバーになったところまで行こう」

 

「ですね。特に弾薬は念入りに探しましょう」

 

大まかな方針を決めてから拳銃を構えて部屋から出た。

これで二度目になるが《奴ら》が徘徊する廃墟は異質で不気味な雰囲気は本当にゲームなのか、と疑いたくなるほどのクオリティだ。

 

「よし、弾薬ゲット」

 

棚やら引き出しを漁ると弾薬を入手した。

壁を突き破ってきた敵に向けてガルッチさんが早速引き金を引く。

《奴ら》にはヘッドショットが一番効くのだが、拳銃では威力が弱いのか一撃では倒せない。

 

「ショットガンでも欲しいな」

 

数発の弾を消費してガルッチさんが呟く。

 

「多分どっかにあると思うんですけど。とにかく探しましょう」

 

茅場さんのことだから、見つけたとしても入手するには鍵とか見つけないとできなくしてそうだけど。

 

イベントによってNPC二人が強制的に離れてからしばらくして、ようやく元の場所まで戻ってこれた。

さっきと違い弾は十分にある。出てくる敵も把握してる。

 

「行きましょう」

 

カウントダウンなしで廊下から飛び出した。

元からいる三体を素早く片付け、あとから現れる二体を余裕をもって撃ち抜く。

倒された《奴ら》がドロドロの物体となって床に消えてゆくのを見送りながら、素早くリロードを済ませる。

周囲を見回して、廊下の左側に扉を発見した。

《奴ら》の身体が邪魔をして見つけにくかったようだ。

 

「他にも扉はあるけどひとまずここに入ろう」

 

ガルッチさんの意見に賛成して扉を開ける。

扉の先は書斎のようだ。

廃墟にしては本が綺麗に保存されていた。

 

……何かあるとみてよさそうかな。

 

こういう怪しい場所を見るとフランと出会った館を思い出す。

本棚に本を嵌めるか、特定の本を押すか。大方そんなところだろう。

 

「ガルッチさんは何か怪しい物見つけました?」

 

「この本かな」

 

そう言って持っていた本を俺に渡してきた。

本の題名は『白雪姫』。

ゲーム攻略に関係してるようにはとても思えないがガルッチさんが怪しいと言った以上何かあるのだろう。パラパラページを捲っていると、とあるページで止まった。

 

「これは……メモ?」

 

「そう。いかにも怪しそうだろ?」

 

確かにページの合間に挟むのは怪しい。

メモをタップしてみると書かれている内容が空間ウィンドウに映される。

 

『隠し扉は本棚』

 

本棚を見やると本が収まっている場所に不自然に本一冊分ほどの隙間があった。恐らくあそこに何かしらの本を入れると隠し扉が開くのだろう。

試しに『白雪姫』の本を入れてみたが厚さが違うようで上手く収まらない。

他にも書斎にある本を手当たり次第に入れてみたのだが、どれも違うようだ。

こうなるとこの広い廃墟から探し出さねばならない。しかもどんな題名の本を見つければいいかもわからないから実に面倒だ。

 

「空、これ見てくれ。題名のところ」

 

ガルッチさんが本棚の隙間の両横にある本を指示した。

筆記体で書かれた題名は俺には読み取れず、ガルッチさんに何と書いてあるのか尋ねた。

 

「『はじめの一歩』って題名だよ」

 

判明した二冊の本の題名は『はじめの一歩』。その1巻と3巻だった。

 

「ボクシング漫画じゃん!」

 

《奴ら》に居場所が知れ渡る危険性を忘れて叫んでしまった。

小説か題名が同じだけで中身は別物だろうと思って本を開いてみたら、紛れもなく本物だ。

高そうなブックカバーに包まれていたから漫画らしさは微塵もなかったせいで題名にまでは意識が行かなかったみたいだ。

 

茅場さんの趣味かな? 世代的には外れていると思うんだけど。……それはともかく何の本を見つけてくればいいか分かっただけでも十分な収穫だ。

 

「ひょっとしてここにあるの……ほとんど漫画?」

 

「ザっと見た限りだとそのようだ。メジャー、マイナーな関わらず結構な数が揃ってる」

 

ちょっと興味があったがゲームクリアを優先して『はじめの一歩』の2巻を探しに部屋を出た。

廃墟を隈なく探して漫画を見つけ、隠し扉のある本棚に戻って来た。

行って帰って来る途中に当然《奴ら》が出てきた。だが、徐々に仮想世界になれてきたガルッチさんの動きが良くなり、俺達のコンビネーションも上手くいくようになったおかげで攻略は順調だ。

そして、手に入れた本を本棚に収めると本棚が横にスライドして扉が出現した。

扉の先は小部屋となっていて弾薬や回復薬。果ては探していたショットガンが壁に掛けてあったのを発見した。

 

「……ん? これは……」

 

ガルッチさんが机の中を漁っている時に無造作に置かれていた本を手に取った。

使用可能アイテムらしい。

 

『猿でもわかる北斗神拳 ~入門編~』

 

題名を見て頭を抱える。

 

これは……なんでこんな本があるのか、とか、バイオハザード要素はどこいった、とかツッコむべき? 見なかったことにするべき? それとも読んで憶えて《奴ら》相手に使えってことなの? あのゾンビみたいなのに秘孔を突いて効くのか甚だ疑問なのだけど……。

 

茅場さんが暇潰しで作ったにしてははっちゃけ過ぎだと思うんだけど。もしくは手伝った鞠亜のおふざけも考えられる。

まあ覚えておいて損はないだろうと思い、恐る恐る本の表紙を人差し指でタップ。

 

《エクストラスキル“北斗神拳”を獲得しますか?》

 

機械音声と共にYESとNOのアイコンも現れた。

ガルッチさんが今ので気が付いたようで俺の方に寄って来る。事情を理解すると苦笑いした。

なるようになるかと思いつつ、YESのアイコンをタップした。

 

《エクストラスキル“北斗神拳”を獲得しました》

 

システムウィンドウを開いてスキルを確認すると使える技は今のところ《北斗百裂拳》のみ。

 

『北斗百裂拳 効果:相手は死ぬ』

 

雑な説明はさておき、SAOのソードスキルみたいに使えば使うほどスキルの熟練度が上がり、技の威力や使用後の反動も抑えられるようだ。

入門編となっていたから続編を見つけるとさらに技を覚えられるのだろう。

 

「……ガルッチさん」

 

「断る!」

 

「まだ何も言ってないじゃないですか」

 

「どうせ僕に対して技を試したいとか言うんだろ!? 現実だったらまだしもここは仮想世界なんだから喰らったら即ゲームオーバーになるっての!」

 

「そんなのやってみないとわからないじゃないですか! ここで諦めたらゲームクリアなんて不可能ですよ!」

 

「今君自身の手でそれを不可能にしようとしてるんだよ!」

 

「ガルッチさん」

 

「な、なんだい?」

 

「死んでもいいゲームなんて楽勝ですよ」

 

「決め顔で言えば承諾するなんて思うなよ!?」

 

結局ガルッチさんには北斗百裂拳を試すことはなく進むことになったのだが、俺が北斗神拳を手に入れてからの戦闘はそれはもう楽だった。例えるなら、ゴジータのスーパーサイヤ人4がラディッツと戦うようなもの。ラディッツが「戦闘力……たったの1500か……ゴミめ……」と言われる側になるレベルだ。

スキル使用後の硬直というデメリットも存在するが、ガルッチさんがカバーしてくれるので大したデメリットにもならずにすんだ。

で、なんやかんやで謎解きやらストーリーを進めていくとNPC二人を助けることに成功し、ついにボスと対面。

 

『キサマラモ―――グォォォオオオオオオオオオオオオオッ!?」

 

《奴ら》の集合体のようなグロテスクな姿のボスが何か話しているのを遮って、ガルッチさんが容赦なくグレネードランチャーをぶちかます。

北斗神拳もえげつないが、ガルッチさんの戦法も相当だと思う。

 

「ホォォォゥ……アタタタタタタタタタタタタッ!」

 

怯んている隙に北斗百裂拳を叩き込んでダメージを与え、硬直中はガルッチさんがヘイトを集める。また怯んだらスキルを放つという無限ループで呆気なくボスは倒れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「そうか。ゲームクリアおめでとう。どうだったかな?」

 

茅場さんにゲームをクリアしたことを伝えると感想を尋ねてきた。

 

「なんというか、中盤辺りからはゲームがおかしい気がしたんですが。北斗神拳とか何で入れたんですか」

 

どう考えてもチートとしかいいようがない程にゲームバランスが完全に崩壊していた。さっきゲームの販売云々話したがこれでは売れなさそうだ。

 

「おや、アレを見つけたのか。作っている時に北斗の拳の漫画が目に入ってね、気まぐれで入れてみたんだ」

 

気まぐれでモーションを組み込めるとかどんだけ頭いいんだよ。

それを聞いた俺とガルッチさんは顔を見合わせて苦笑いしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「マリオや恋愛ゲームなども作ってみたんだがどうかな?」

 

『結構です!』

 

ちなみに今回俺が使った北斗神拳を基に作った《体術》スキルを数年後に完成するSAOに組み込んだ結果、アインクラッドの一部地域がモヒカンで溢れる世紀末と化したとかなんとか。

 

 

 

 

 

To be continued……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 






なんか思いついたらまた番外編書こうかなと思います。
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