管理局来ました!
Side空
サッカーの試合をした休日明けの月曜日、放課後に俺は翠屋で手伝いをしていた。
いつもの皆はジュエルシードの探索をしている。
これは決してサボリではない! 戦力的休暇というやつだ!
「ご注文は何になさいますか?」
「シュークリーム一つとオレンジジュース一つで」
「私はシュークリーム一つとミルクティー」
「かしこまりました。少々お待ちください」
注文を受けてから厨房にいる桃子さんに伝えて、用意されたものをテーブルへと運んで行く。
「お待たせしました。シュークリーム二つとオレンジジュース、ミルクティーです」
そらからも接客を続けていった途中、フェイトからの念話が入った。
『〈空! ジュエルシードが発動した! すぐに来て!〉』
「(タイミング悪……。)〈分かった。これから向かうよ〉」
ジュエルシードに軽く悪態を吐きながら、桃子さんに抜けることを言って、店を出た。
そして、俺は現場に着いたのだが―――
「どういう状況?」
俺が来る前に封印が終わってしまったらしい。
その場には皆がいたのだが、他にも見知らぬ少年と正田がいた。
ていうか終わってるなら俺来た意味ないじゃんか……。それと王城君がケガしてるのは何で? 丈夫なはずだから服が汚れてるだけだと思うけどそんなに手こずった? でも、その割には早く片付いてるな。
「君は彼女達の仲間か?」
見知らぬ黒髪の少年が俺に聞いてきた。
恰好から見て少年はバリアジャケットを着ているようだ。持っている機械的な形状の杖がデバイスだろう。
「いえ違います。赤の他人です」
『嘘吐くな!』
チッ……メンドそうだから逃げたかったのに……。
「えっと、知り合いってことでいいんだな?」
「彼女達は俺の友達の友達です。要するに知らない人です」
『おい!』
「というのは嘘で、彼女達は友達ですよ」
これ以上冗談を続けるとなのはから桃色の砲撃が来そうなので真面目に答えた。
「そうか。紹介が遅れたが、僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ」
黒髪の少年はクロノという名前だ。いかにも真面目ですっていう雰囲気がある。
「あ、これはどうもご丁寧に。俺は龍神空です」
管理局。プレシアさんに以前聞いたことある組織の名前だったことを思い出した。
もし、管理局がジュエルシードを探すのであれば、あんまり
「ところで、君は彼女達と同じ魔導師なのか?」
「一応は」
「それなら君も一緒にアースラ来てくれ。聞きたいことがあるんだ」
”も”ってことは皆も行くのか。アースラが何なのかはわからないけど、警戒しておくことに変わりはない。
「はぁ……それじゃあ、お邪魔します、なのか?」
それからアースラと呼ばれる大きな艦船に転移した。
「へぇ~。ここがアースラか……SF映画みたいな場所だね」
未来を思わせるような内装にそんな言葉が漏れた。
「君達からするとそんな風なのか……。ああ、それからバリアジャケットは解除していいぞ。そこのフェレットもどきも人間に戻ったらどうだ?」
「うん、そうさせてもらうよ」
皆はバリアジャケットを解除して、ユーノは人間に戻った。
「それでは僕に付いて来てくれ。艦長室に案内する」
クロノ君の指示に従い、後ろから付いて行った。
「艦長、連れてきました」
『ご苦労様です。中に入れて下さい』
扉越しに女性の声が聞こえた。
クロノは「失礼します」と言って、俺達を通した。
中に入ると、部屋を見て俺達は言葉を失った。畳や盆栽、鹿威しなどが置かれたまさかの和室だった。未来感があるアースラにこの和室は合わさっていない。
「こんにちは、艦長のリンディ・ハラオウンです。こちらに座って下さい」
素直に向かい合うように畳の上に座った。
「それでは、詳しい事情を聞かせてくるかしら」
代表してユーノが今回のことを説明した。
説明を終えるとクロノに色々厳しいことを言われた。
クロノ君の言う通り、子供だけでやろうとするなんて無理があるよね。
「話は分かりました。これよりジュエルシードの回収は管理局が全権を持ちます」
「君達は今回のことを忘れて元の生活に戻るといい」
どうやら、俺達はお役御免らしい。専門家でもない俺達がこれ以上関わるのは管理局の邪魔になってしまうのかな? まあ、暇になったなら冥界で修行してみたいし、丁度いいかな……。
なんてことを呑気に考えていたら皆は不満そうにしていた。
「お願いです! 私にも手伝わせてください!」
「私もお願いします!」
他の人も手伝いと言いだした。一度やり始めたら最後までやり遂げたいのだろう。
「次元干渉に関わる事件だ。民間人や部外者に介入してもらうレベルじゃない」
だが、皆の熱意はクロノの一言で一蹴されてしまった。それでも納得のいかない皆は食い下がった。
「わかりました。それではあなた達に協力を要請します」
最終的にはリンディさんが折れてしまった。管理局としても、子供とは言え、魔力量がすごいなのは達に手伝ってもらった方が効率がいいと判断したのだろう。
なのは達ってスゲー頑固だね。それにしても管理局って人手不足なのかな? 魔力が高いのってクロノ君とリンディさんくらいだし、他はそこまで強そうには見えない。
そのあと色々今後の予定を話し合いをして解散。
ずっと気になったことを王城君に聞いた。
「なんで王城君はそんなにボロボロになったの?」
「聞いてくれよ! 正田の奴が襲って来たんだよ!」
「どうして?」
「いきなり現れて「邪魔をするな! 王城!」とか言って攻撃したの」
「それで王城が吹き飛ばされて正田が戦ったんだけど……」
「逆にあいつが私達の邪魔にしかならなかったんだよ!」
皆の話を聞いて、なんじゃそりゃ? としか言えなかった。
とりあえず、今回の一件は正田が悪いでいいらしい。
「で、当の本人は一切悪気はないと?」
「ああ、謝りもしなかったね」
邪魔するなって言うぐらいなら、自分が間違ってるとは思ってないみたいだし、謝んないだろうね。
「しかも終わった後に「大丈夫か?」なんてよく言えたものね……」
「なるほどね……。ちょっと本人に聞いてくるから皆は帰ってて」
なのは達は何か言いたそうにしていたが、何も言わず転移した。
正田は探してみるとすぐに見つかった。
「あ、いたいた。ねぇ正田、王城君を攻撃したのってホント?」
俺に気付くと苛立った様に反応した。この間のことを根に持っているに違いない。
まだ九尾を盗られたこと気付いてないんだね……。それに魔力に変化がないから、あんまり修行もしてないみたい。
「……そうだが、それがどうかしたのか?」
「なんで攻撃したのかなって思ったんだよ。彼はなのは達と協力してたのにさ」
「……協力? ハッ……あいつがそんなことするわけないじゃないか。僕というオリ主が活躍するための踏み台だよ! もちろんお前もだ。そして、なのは達は最後に僕の活躍を見て惚れるだろうな! ああ、それからアリシアもいるのは助かった。これでフェイトを落としやすくなったはずだからな」
あかりの言う通りだったね……。何というか、うん、バカだ。ろくに関わってもないお前になのは達が惚れるとは思えないんだけど。それに、ハーレムって最終的に尻に敷かれるだけじゃない……?
「どうした? 自分がオリ主じゃないと分かって絶望したか? お前達は最初から選ばれた僕のための踏み台でしかないんだよ!」
正田は愉快そうに、見下すように俺を笑っていた。でも、特に何か言われてもムカつくとかは思わない。
『お前はやはり馬鹿だな……』
「なッ!? この声は九尾!? どこから!?」
突如、正田にも聞こえる様に九喇嘛がしゃべりだした。正田は九尾の声が聞こえて驚いていた。九喇嘛から聞く限りでは彼とは一度も会話したことが無いらしい。
『てめえの目の前だよ』
「龍神が!? なんで!? お前! 僕から盗んだのか!?」
正田の目の前、つまり、俺の中にいるということを伝えたらさらに驚いていた。
『おいおい。盗んだとは人聞きの悪いこと言うんじゃねえよ。ワシ自らこいつの中に入ったに決まってるだろ』
そうです。合意のもとです。
「ふざけるな! お前は僕の特典なんだぞ! 勝手にどっかに行くな!」
『断る。お前の中は今までで一番退屈でつまらんし居心地最悪だ』
「それに九喇嘛にだって意思はある。だから九喇嘛は悪くないよ」
「クソッ! 返せ! 今すぐに!」
『だから、嫌だって言ってんだろうがァッ! 噛み殺すぞッ!』
「ヒッ!」
九喇嘛の叫びに腰を抜かした正田は怯えていた。
「……出来れば俺達にはもう関わらないで欲しいな。それと次王城君に何かしたらただじゃ置かないから……。……じゃあね」
それだけ言って自宅に戻った。
家に入ると心配していたのかフェイトとアリシアに抱き着かれた。
「ど、どうしたの?」
「正田に何かされなかった心配で……」
「大丈夫だよ。俺は何もされてないよ。だからご飯食べて風呂入って寝よ?」
『……うん。ご飯食べて一緒にお風呂入って寝る』
……え?
「俺と……?」
『うん』
「……」
むむむ……。これはどうしたもんか。
『ハッハッハ! やっぱり最高だな空は!』
「(いやいや、全然笑い事じゃないから!)」
今度は俺だけに聞こえるようにした九喇嘛の笑い声が響いた。
「ダメ……?」
「私達のこと……嫌い?」
グッ! 涙目で俺を見ないで! 罪悪感がハンパないから!
「…………はい、一緒に入ります…………」
結局俺が折れました。
どうしてこういうのに弱いかなぁ……?
『フフフ……計画通り……』
フェイトとアリシアが俺の見えないところでニヤリとしていたことを俺が知ることは無かった。