ヴァーリの友人です!
Side空
闇の書の闇が復活しようとするのを阻止してから一日が経った。
アースラの人達は管理局の本部からの命令でしばらくは地球に留まるらしい。なんでも、事件が立て続けに起こったことと、高い魔力を持つ人が多くて調査をすることになったとのことだ。それとついでにアースラの職員は休暇を貰うこととなり、海に行く旅行にも参加してくれることになった。
そして、今日はヴァーリに誘われて、とある場所に向かっていた。
「―――で、いい加減目的地を教えてもらいたんだけど」
誘われてから何度か同じようなことを質問していたが、ヴァーリは答える気がないのか、「あとで」、とか「もう少しで分かる」の一点張りだ。
「んー、まあいいか。ヴァーリが変なところに誘うとは思えないし、気楽に待つとするさ」
「ああ、そうしてくれ。といっても大したところじゃないがな。…………着いたぞ。今日の目的地はここだ」
ヴァーリの視線の先にあったのは、古びた赤い鳥居と神社の境内へと続く石段だ。
「神社? ここに何か…………ってヴァーリ、悪魔なのに大丈夫なの?」
「問題ない。ここは堕天使―――アザゼルの知り合いが管理してるところで、
「へぇー、そんなことも出来るのか」
二人で石段を登ると神社があり、ヴァーリはそのまま直進すると消えた。
……え、消えた?
「え!? あれ!? どうなってんの!?」
『今のは……恐らく空間移動の術式でしょうね』
驚いている俺をよそに、ヤハウェが冷静に分析してくれた。
「空、そのまま真っ直ぐ入って来い」
俺が来ないことに気が付いたヴァーリが、空間の変わる境目から生首だけの状態で顔を出して言ってきた。
見方によってはホラーになってくる!
「う、うん」
多少不安になりながらも真っ直ぐ進むと、一瞬だけ眩暈がしたがすぐに収まった。
俺が通った先にあったものは先程と変わらない神社の境内なのだが、神社の奥に続く道があった。
「こっちだ」
ヴァーリは俺が来たことを確認すると、その道を歩き始めた。はぐれないように付いて行くと一軒の家が目に映った。
「ここが今日の目的地?」
「ああ」
ヴァーリが玄関のチャイムを鳴らすと、家の中から「はーい、今行きまーす」と女性の声が聞こえた。数秒ほどして声の主と思われる女性が玄関のドアを開けた。
「はーい、どな―――――あら、ヴァーリ君? 久しぶりね? 今日はどうしたの?」
出て来たのは艶やかな黒髪を一つに束ねた美人だった。
……この人って確か……。
「久しぶりだな、朱璃。今日は友人をあいつらに紹介しに来たんだ」
あ! そうだ、この人ってバラキエルさんの奥さんで姫島朱乃のお母さん――――姫島朱璃だ! 原作では姫島朱乃が幼い時に亡くなってたはず…………だったと思う。……最近原作のことが上手く思い出せないでいるから仕方のないことなんだけど。
「じゃあ、そっちの子がヴァーリ君のお友達なのね? お名前は何て言うのかしら?」
「俺は龍神空っていいます。ヴァーリの友達です」
「空君ね。私は姫島朱璃っていうの。よろしくね」
「はい、こちらこそ」
「さ、立ち話もなんだから家の中に入って。あの子達がヴァーリ君が来るのを首を長くして待ってたから」
家の中に入り、この家の居間に通される。
居間では、一人の少女と黒と白の毛並みの二匹の猫が戯れていた。
少女と猫達がこちらに気が付くと駆け寄って来た。
「ヴァーリ君! 久しぶり!」
「ああ、久しぶりだな、朱乃。黒歌と白音も元気そうだな」
うわーお。ここには姫島朱乃だけじゃなくて黒歌と白音もいるのか。そういえば、バラキエルさんに初めて会った時にそんなこと言ってたな。娘や猫又姉妹が会いたがってるって。
朱乃と呼ばれた少女は、和服で朱璃さんと同じように髪を一つに束ねてポニーテールにしていた。
「ホントに久しぶり過ぎるよ! この前来たのって一か月くらい前だもん!」
一か月、ってことは魔力集めやらなんやらで忙しかったからか。
「すまない。ここのところ忙しくてなかなか行くことが出来なかったんだ」
「ふーんだ、謝っても許してあげません」
朱乃は頬を膨らませてそっぽを向いた。猫二匹も揃ってそっぽを向いていた。どうやら長期間ヴァーリに会えなかったのが余程嫌だったらしい。
「これはどうしたものか……」
ヴァーリは困ったように頬をポリポリと掻いて、こちらに助けを求める視線を向けてきた。
「さあね。お願いでも聞いてあげたら?」
ぶっちゃけてしまうとこれぐらいしか俺には思い浮かばない。
だって、皆が突然拗ねたり怒る理由が全く分かんないんだもん! だから俺に出来ることを何でも一つどうぞ、という形で機嫌を直してきた……のだけど、実は皆が俺に命令することって恥ずかしくてすごく大変なんだよ!
「それしかないか。朱乃、俺に出来ることならなんでもする。だから、機嫌を直してくれないか?」
ヴァーリが「何でも」と言った瞬間に朱乃の肩がピクっと動いた。
「今、何でもって言った?」
「ああ、そう言った」
「じゃ、じゃあ……―――――」
何かを決意したように強い意志を感じる眼だった。そして言った。
「―――――将来、朱乃のことヴァーリ君のお嫁さんにして!」
…………………………はい?
「いいぞ」
…………………………………………………はい?
「(えーっと…………今何が起きたのかどなたか説明してくれません?)」
『ヴァーリ・ルシファーが姫島朱乃にプロポーズされてOKした』
俺の質問に中にいる全員が揃って答えてくれた。
文字にすると三十字にも満たないが、それだけでも十分理解できた。
そ、そっか、プロポーズかぁ…………え? ええッ!? ええええええぇぇぇェェェエエエエエエッッッ!?
あまりに突然の出来事に驚き過ぎて何を言えばいいのか分からずにいたら―――
「ちょっと待つにゃ!」
「……待ってください」
―――いつの間にか見知らぬ少女が二人いた、といっても正体は予想が付くのだが。
「何か文句でもあるの?」
「あるに決まってるにゃ! むしろない方がおかしいにゃ!」
「……そうです。……抜け駆けはあれほど禁止と言っていたのに」
「いいじゃない! ヴァーリ君が何でもいいって言ったんだから!」
「いくらなんでもそれは行き過ぎだってことにゃ!」
確かに、いきなり結婚ってどうなんだろうか……。
「それだったら制限をせずに何でもいいと言ったヴァーリ君が悪いもの!」
それを言われると、提案を出した俺も悪くなってくるんだけどなぁ……。
しばらく三人のいがみ合いが続きそうなので、廊下に退避。
「三人は何故ケンカし出したんだ?」
「それは、ほら…………何でだろ? 俺にも分かんないや」
『(ダメだこいつら……早く何とかしないと……)』
あれ? 今、ドライグ達に呆れられた気がする……。
「まあ、とりあえず、あの二人の娘にも聞いてあげたら? というかあの二人って何者?」
一応、知ってるけど聞いておかないとね。
「……そうするしかなさそうだな。それとあの二人は妖怪で、猫又の中でも強い力を持つ「
悪魔、天使、堕天使、ドラゴン、魔法少女には会ったけど妖怪はこれが初めてになるわけだ。
「更に言うと、仙術が使えるにゃ」
ヴァーリの話に耳を傾けていると別の声が混ざってきた。
どうやら三人のいがみ合いは終わったみたいだ。
「それでだにゃ、朱乃だけじゃ不公平だと思うにゃ。ウチらも会えなくて寂しかったので、朱乃と同じことを要求するにゃ!」
同じこと。つまり、朱乃だけでなく黒歌や白音とも将来結婚ってことになる。
流石に二度目ともなれば、この龍神さんも驚きませんことよ。
「ああ、わかった。将来、結婚すればいいんだな?」
「……そうです。……ところでそちらにいる人は誰ですか?」
「誰だろうね? 黒歌ちゃんは知ってる?」
「知らないにゃ」
まさか、今の今まで気づかれてなかった!?
自分の存在感の無さに若干ショックを受ける。
「俺の友人だ」
『ゆ、友人!?』
今度は三人が驚いていた。
「あ、えっと、龍神空です。ヴァーリの友人やってます」
「あのヴァーリに友人……ッ!」
「……目出度いです」
「今夜は赤飯だね!」
三人の目尻に光るもんなんて無かったんや。それはきっとワイが見た幻なんや。
「……俺って友達がいないと思われてたんだな」
「あ、アハハ……」
すまない、親友よ。否定できる言葉が見つからない。本当にすまない。
その場は苦笑いで誤魔化すしか出来なかった。
「私は黒歌っていうにゃん。よろしくにゃ、空」
黒い髪に黒い着物をはだけさせた少女、黒歌。
「……妹の白音です」
白い「……銀髪です」……銀髪で白い着物を着た少女、白音。
「姫島朱乃だよ! よろしくね!」
先程も紹介した少女、姫島朱乃。朱璃さんの娘さん。
「うん、よろしく」
自己紹介を終えた後で黒歌から質問をされた。
「空はヴァーリの友達だけど、正体とか知ってるかにゃ?」
「知ってる。半分悪魔でしょ?」
それぐらい知ってなきゃ親友は名乗れないよ。
「それなら話は早いにゃ。ウチらは妖怪で朱乃は半分堕天使だからそこんとこよろしく♪」
「はーい」
と言っても俺も普通の人間じゃないけどね。
正確なことは何も分からないので無駄に言う必要もない。
「さてと、自己紹介も終わったことだし遊ばない?」
四人は快く了承して、最初は白音の提案でかくれんぼから遊ぶことにした。
「皆、お茶が入ったわよ」
次に何して遊ぼうか考えていたら、朱璃さんがお菓子とお茶を持ってきてくれた。
丁度小腹がすいてきたのでいったん休憩に入ることにした。
「黒歌って仙術使えるんだよね? それって俺も使えるの?」
かくれんぼで使われると黒歌が鬼の時こっちの位置はまるわかりだし、逆にこっちが鬼の時黒歌の居場所が分かり辛くて黒歌の圧勝だった。
仙術チートですやん……。
「才能次第にゃ。本来なら仙人とか猫魈のウチらぐらいにしか使えないんだけど、極稀に使える奴もいるにゃ」
極稀か……望みは薄そう……。でも、使えるようにして九喇嘛モードを完成させたいんだけど、どうにかなんないかなぁ。夏休み中に闘戦勝仏でも探そうかな? 会ったところで教えてくれるかどうかは分からないけど。
結局、仙術の話はそこで終わりにした。
「今年は海に行ってみないか?」
『海!? 行きたい!』
ヴァーリが海の話題を出すと、三人の食いつきぶりは相当なものだった。
今年は……龍神家が俺、シエラ、凜祢、十香、美九、耶俱矢、夕弦、七罪、六喰、琴里、四糸乃、狂三、二亜、折紙、フェイト、アリシア、プレシアさん、リニス、アルフの19人。高町家が士郎さん、桃子さん、恭也さん、美由希さん、なのはの5人。バニングス家がアリサと鮫島さんの2人。月村家が忍さん、すずか、ノエルさん、ファリンさんの4人。八神家がはやて、あかり、シグナムさん、シャマルさん、ヴィータ、ザフィーラさん、リインフォースさんの7人。結城家が明日奈、京子さん、彰三さん、浩一郎さん4人。王城家が雄人、雄人の妹、母親、父親の4人。天河家が愛衣、愛衣の姉、母親、父親の4人。衛宮家が兄さん、イリヤ、セラさん、リズさんの4人。天界がシアとユーストマさんの2人。冥界がネリネとリコリス、フォーベシイさん、サーゼクスさん、グレイフィアさん、リアスの6人。堕天使がヴァーリ、アザゼルさん、朱乃、黒歌、白音、朱璃さん、バラキエルさんの7人。
この時点で68人。多すぎだなー。それに加えてアースラ組とユーノを入れると100人近いんじゃない?
今思い返すと誘い過ぎたなぁと思ったが今更のこと過ぎてどうしようもない。
ちなみにフォーベシイさんが所有する島のホテルに全員無料で泊めさせてもらうことになってる。正直、それぞれの親御さんに説明するのが大変だったけど、フォーベシイさんに手伝ってもらって何とかなった。
―――――ネリネちゃんとリコリスちゃんと結婚したら空ちゃんにあげるよ。
なんてこともサラッと言われたが聞かなかったことにした。
というか、子供の立てた計画がここまでになるとは予想だにしなかった……。もうちょっと先の考えて行動すべきだ、という戒めにもなったからよかったのかもしれないけどね。
「そろそろ帰ると――――――? (何か家の周囲が変な感じしない?)」
『ああ、俺達も感じた。あの空間を越えて来るということは只者ではあるまい』
帰ろうとして立ち上がった時に不穏な気配を感じ取った。中にいる奴らに聞いても俺と同じく感じ取ったようだ。
「〈ブレイブ、反応からして人間?〉」
《〈はい。人数は……ざっと30は下らないかと〉》
只者じゃない人間が30。
「……どうかしたんですか、空さん?」
「ううん、何でもないよ。俺はそろそろお暇させてもらうね」
「それなら俺は入り口まで送る」
「また遊びに来てね!」
「二人共気を付けてにゃん」
白音と朱乃は分かってないようだが、ヴァーリと黒歌は気が付いていたようだ。
玄関で靴を履くと、朱璃さんに声を掛けられた。
「待ちなさい。今出るのは危険よ。家にいなさい」
それは大人としての心配だった。外にいる人たちとは何かしらの因縁があって、そのことに子供を巻き込みたくないというのが、目を見て理解できた。
朱璃さん、いい人だな。
「大丈夫です。ヴァーリと俺がいれば大抵の奴らに負けないんで」
「その通りだ。朱璃はアイツらのそばにいてやってくれ。それとバラキエルを呼んでおけ」
『……………………』
「…………………。はぁ、わかったわ。……その代わり約束よ。絶対に死なないで。いい?」
数秒ほど視線をぶつけ合った結果、先に朱璃さんが折れた。
『はい(ああ)!』
了承を貰い、元気よく返事を返して玄関のドアを開ける。
玄関から10mぐらい離れた辺りに刀や槍、お札らしきものを持った人がたくさんいた。
「おじさん達、不法侵入って知ってる?」
「小僧共、ここに住む者の関係者か?」
ここにいる人たちのリーダーらしき人物が問い掛けて来る。
俺の質問はスルーですかそうですか。
ということはあれだよね、人の話聞かないんならこっちに何されても文句は言えないわけだ(暴論)。
「(力借りるよ、七罪)」
『……一々許可何てとんなんくていいわよ』
いやいや、力を借りるわけだし、親しき中にも礼儀ありっていうから、こういうのはちゃんとしておかないとね。
「―――――〈
周囲の空間が歪み、体に纏わりつく。それはやがて霊力で編まれた鎧である霊装になる。
頭にはエメラルドの宝石が散りばめられたとんがり帽子、橙色と夜色で構成されたマント付きの服。髪は七罪と同じ緑色で、セミロングぐらいの長さになる。
七罪の霊装が一番女装に近いんだよね……。
そして、手には七罪の天使―――〈
相方のヴァーリもすでに
「さあ、俺達の
「ヴァーリ」
「任せろ」
《Half dimension‼》
名前を呼ぶだけで俺のして欲しいことが伝わったようだ。
ヴァーリを中心にありとあらゆるものが半減する空間が広がっていく。
向こうで違和感に気が付き始めた人が出てきた。
「これは……白き龍の力かッ!」
「正解でーすっ。ご褒美に服をプレゼントいたしましょう♪」
〈贋造魔女〉を振るうと、答えた人の服装が変化する。――――ピエロの服装に。
「ハハハッ! 中々お似合いじゃないですかっ♪」
「な、なんだこれは!? 貴様、一体何をした!?」
「残念ながらその質問はお答えできませんね」
「クソッ! お、おい、お前達もさっさと動かんか! あの小僧共を捕まえろ!」
『は、はいッ!』
リーダーらしき人が命令を下すと、周りの人達が慌てて動き出した。しかし、半減している空間では動きは鈍くなる。こちらのやりたい放題だ。
「はい、皆さんご注目ー」
足元に落ちていた木の枝を拾って、その場にいる全員に見えるように高く掲げる。
「こちらの何の変哲もないただの木の枝です。ですが、指を弾くと……あら、不思議! 鉄の槍になってしまいましたー!」
わざとらしく大袈裟に演技する。
「さらにさらに、周りに落ちている石や葉っぱなんかも変えちゃいましょうか!」
再び指を弾くと、石は苦無に、葉っぱは手裏剣に変化した。
「あらら、いつの間にか大量の武器が!」
「き、貴様、それをまさか……!」
「そのまさかですよー。でも、それじゃあ面白くないので……そうですね、三秒数えるまで待ちましょうか♪ いーち―――――」
「今の内に小僧共を――――」
「ハイ発射ー」
〈贋造魔女〉を振り下ろすと、大量の武器が浮かび上がり、侵入者に向けて凶器の雨が容赦なく降り注がれる。
『二と三はどこいったッ!?』
「そんなものがなくても生きていけるから問題ないよネ!」
人のこと無視したんだから、そのくらい許して欲しいんだけど。
幸い、急所は外してる……と思いたい。とりあえず、ヴァーリの半減の力があの凶器の雨にも働き、誰も殺すほどのダメージは与えてないはず。それに、無駄に殺して問題にされても困るからね。
「ヴァーリ、あとは縛っておくか」
「ああ、そうだな」
動けない侵入者達が暴れないように縄で縛る。
「朱璃! 朱乃! 皆無事――――――何だこれは!?」
縛り終えると同時に、大粒の汗を迸らせたバラキエルさんがやって来た。
「ヴァ、ヴァーリ? それに君は確かあの時の……。これはお前達がやったのか?」
どうやらバラキエルさんは俺のことを覚えていたみたいだ。
「そうだ。恐らくこいつらの目的は朱乃や朱璃だろうな」
「となると、姫島家の者か……」
一旦家に戻ってから理由を尋ねると、バラキエルさんと朱璃さんの結婚は親族にとっては快くないと思われていた。さらには、二人の間に朱乃という娘も産まれたことによって、姫島家との関係が余計に悪化したそうだ。
そして、姫島家は忌むべき存在である朱璃さん達の居場所を突き止め、バラキエルさんがいない日を狙って襲撃したのだろう。
「なるほど。そうなるとここも危ないですね」
侵入者たちは
「それはそうなのだが……ここ以外に住むとなると……」
「冥界は?」
「あそこも少なからず危険が多い。それに朱乃は半分堕天使の血が流れているが、朱璃は人間だ。生活を続けるには、冥界の環境では厳しいやもしれん」
「では、海鳴市でどうでしょうか?」
「海鳴市? そこはヴァーリが住んでる街だったか?」
「はい。あそこはどの勢力にも属してない街で異能に関わる人も少ないです。それにバラキエルさんが仕事で忙しくても、ヴァーリや俺が近くにいればご家族を守りやすいでしょうしね」
「……なるほど。それはいい案かもしれんな。……朱璃」
「私はあなたに付いて行きますわ。だってあなたの妻なんだから」
「……そうか。では、近いうちに引っ越しをするとしよう!」
おしどり夫婦というかなんというか……見ていて、良い家族だなって思える光景だな。
襲撃があった日から一週間ほどして、バラキエルさん達は海鳴市に引っ越してきた。住居はヴァーリの住む家を改造して、一緒に住むことになった。
それから今まで学校に行けていなかった朱乃が、一つ上の学年に夏休み明けから編入することになった。