デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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妻は夫よりも強いです!

妻は夫よりも強いです!

 

Side空

 

十香の鉄拳制裁を喰らってからお昼ご飯を食べた後、夕飯まで自由行動となった。

その時間を利用して、俺は恭也さん、士郎さん、ヴァーリ、シグナムさん、美由希さん、ザフィーラさん、バラキエルさん、クロノ、サーゼクスさん達と共に山の中を歩いていた。

実は俺達が転移した場所は一つの島らしく、海だけでなく山や川などの自然がいっぱいだ。

それを聞いた俺達は山の中で修行をする、という話になった。

 

「ここら辺がいいだろう」

 

山の中を歩くこと数十分、開けた場所を見つけた。

 

「各自準備体操や柔軟をしてから組み手を最初にやろう」

 

士郎さんの指示に従い、準備体操と柔軟をしっかりとやってから各々が木製の武器を持って立ち会う。

 

「よし、いきなり飛ばすのもなんだから軽めでやろうか」

 

「はい!」

 

俺の相手をしてくれるのは士郎さんだ。その実力は、未だに俺が魔法と剣の両方を使っても勝てないほど強い。そもそも二刀流の使い方を士郎さんや恭也さんに教わったのだから勝てないのも最もなことなのだが。

 

「先攻は譲るよ」

 

「はいっ、行きます!」

 

互いに木刀を二本構えて、俺から先に動く。

右手に持つ木刀で上から下への袈裟斬り。一歩後ろに下がることで容易に躱されるが、木刀を返して逆袈裟斬りで追撃。その攻撃は二本の木刀で防がれる。最後に左手に持つ木刀で突く。だが、士郎さんにその程度が効くはずがない。

子供の体格でのリーチは短い。それは戦闘においてかなりの不利になる。

 

「届かない、か……」

 

よって、俺の突きはバックステップで躱され、(くう)を切る。

 

「今度はこちらからだ」

 

士郎さんは俺がした動きをそのままコピーして攻撃する。

その時に俺と士郎さんの差が出る。

さっき言ったリーチがその一つだが、もう二つある。―――――筋力と剣術だ。

 

「……ッ」

 

俺よりも力強く、それでいて俺よりも洗練された剣術。

士郎さんと同じように防ぐが、防いだ両手がジンジンと痺れる。

最後の突きは士郎さんが上手く木刀に当ててくれたおかげで軽く吹き飛ぶだけに留まった。

 

「うん、ここまでにしておこうか」

 

「はーい」

 

それからも俺が攻撃しては士郎さんが真似をして攻撃し、俺が吹き飛ぶのを数十回繰り返して一時間ほどでストップする。

 

「やっぱまだまだ師匠には敵わないってことか」

 

「ハハハ、簡単に抜かれたら私の面目丸潰れだからね。まだまだ空君には負けていられないさ。まあ、流石に神器(セイクリッド・ギア)を使われたら勝てないだろうけどね」

 

……それでも勝てないイメージが浮かぶのは俺だけなんだろうか?

 

「ときに空君」

 

「何ですか?」

 

「これは僕の勝手な想像なんだが、君は前世で剣術はやっていたんじゃないかい?」

 

俺が剣術? うーん、どうなんだろ?

 

「どうしてそう思うんですか?」

 

「君の扱う剣の中には時々独特の癖、とでも言えばいいのかな? ともかくそんなものがある」

 

癖……俺自身は特に何も感じてないから体が剣を覚えてるってことか。

 

「ああ、勘違いしないでほしい。決して悪い癖ではないよ」

 

士郎さんからの評価を聞き、皆と合流。

 

「次は“ドロケイ”をしようか」

 

士郎さんの口から出たのは子供がよくやる遊びだった。

ちなみに提案したのは俺とヴァーリ。

 

『空さん空さん。ドロケイってなんですか?』

 

「泥棒と警察の二チームに分かれてやるんですけど、警察が泥棒を全員捕まえたら警察の勝ち。制限時間まで逃げ切ったら泥棒の勝ちっていうルールの子供が外でやる遊びの一つですよ」

 

オリヴィエさんに説明を求められたので小声で短く説明する。

 

「士郎殿、それは子供がやる遊びなのでは?」

 

「ああ、そうだよ」

 

バラキエルさんの意見もわかる。でも、これは普通のドロケイではないのだ。

士郎さんがどこからともなく取り出した布を目を覆うようにつける。所謂、目隠し状態。

 

「この状態でドロケイをする。相手の気配を察知する修行になるんだ」

 

「……なるほどな。これはいいかもしれん」

 

説明された内容にバラキエルさんは納得したように頷いていた。

 

「最初は慣れるのに時間が掛かるだろうから()()()()だ。……空君とヴァーリ君も当然守ってくれよ?」

 

「はーい」「ああ」

 

俺達二人に釘を刺してきたのは、俺達が見聞色の覇気の修行のために目隠しして鬼ごっこやかくれんぼをして鍛えることがあるからだ。これに関しては士郎さんや恭也さんにだって負けない……と思いたい。

 

「制限時間は五分だ。よーい、スタート」

 

警察側が俺、恭也さん、シグナムさん、ザフィーラさん、サーゼクスさん。泥棒側がヴァーリ、士郎さん、美由希さん、バラキエルさん、クロノ。

泥棒が先に逃げ、三十秒数えてから警察側が動き出す。

 

「むっ……これは難しい……」

 

「そうだな。視覚が使えないのは厳しい」

 

「空、コツはあるのか?」

 

「ありますよ。心を静めて周りの音に耳を傾けるんです」

 

『……………………』

 

四人は集中してるがイマイチらしい。

 

「ゆっくりでいいです。俺は先に行ってますね」

 

その場で立ち尽くす四人を置いて歩き出す。

 

さてさて、誰からがいいかな? …………おっ、まずは―――――士郎さんからで行こうか。

 

見聞色の覇気で士郎さんの気配を感じ取った。

 

あ、こっちに気付いた。

 

士郎さんなら覇気を使わずとも剣士としての長年の経験で気配程度ならわかるのだろう。

しかし、ここは山の中。規則性のなく生えてる木や地面から突き出した根っこがあって複雑な地形となってる。

そんな中でどこに障害物があるかまでは士郎さんでは無理だろう。

 

「泥棒つーかまえたーっ♪」

 

逃げてる最中に時々障害物にぶつかる士郎さんとの距離を縮め、お腹にかるくタッチ。

 

「むむっ……空君の方が上手だね」

 

「伊達に四年間使ってませんよ」

 

士郎さんを連れて、捕まえた泥棒を入れておく刑務所になってる場所に士郎さんを入れる。

それからバラキエルさんや美由希さん、クロノも順調に捕まえた。

だが、最後の一人――――俺の親友(ヴァーリ)は簡単には捕まえられない。

結局時間切れで警察側の負けだ。

 

「皆さん、ある程度は見聞色の覇気出来るようになりました?」

 

反応はまばらで首を傾げるものやそこそこといった風に頷くものだったりだ。それに比例して服や顔が汚れてるものが何人かいた。

次は警察側と泥棒側が入れ替わり、走りもありでやることになった。

走ることが出来るようになったことでヴァーリが数分も経たずに俺以外の三人を捕まえる。

俺は何とか逃げ切って泥棒側が勝った。

それから何度か繰り返していくうちに他の六人も慣れてきたのか、ようやくまともな勝負が出来るようになった。

 

 

 

 

 

「で、士郎さん。何か言うことは?」

「私が納得するような言い分はあるのかしら、あなた?」

「魔王の自覚をお持ちですか、サーゼクス?」

 

『ハハハ、年甲斐もなく夢中になってはしゃいでしまったよ……ごめんなさい反省してますのでどうか許してください』

 

いくら剣術が強い士郎さんや堕天使の幹部のバラキエルさん、ましてや魔王であるサーゼクスさんでも自分の妻には勝てないってことか……。

 

現在、士郎さん含め山で修行していた俺達は正座中だ。

何故かこうなったのかというと、あまりにドロケイに夢中になりすぎて夕飯の時間に遅れてしまったからだ。

そしてホテルに戻ればロビーには桃子さんと朱璃さんとグレイフィアさんがいた。

それを見た俺達は反射的に正座してしまい、今に至るわけだ。

 

『他の人達はいいわ。先に食堂に行きなさい。士郎さん(バラキエルさん/サーゼクス)はちょっとお話しましょうか』

 

あ、これ絶対詰んだやつだ。

 

残された三人に向かって心の中で合掌して食堂に向かうことにした。

 

 

 

 

 

『で、何か言うことはある?』

 

あらやだ。わたくしこのセリフに既視感があるでございますよ。

 

俺達六人を待ち構えていたのは男性陣以外のほとんどの女性陣だった。

それに対し俺達は――――

 

『ごめんなさい』

 

即座に頭を下げるだけだった。

 

「顔を上げなさい」

 

忍さんから声がかかり、言われた通りに頭を上げる。

 

「時間を守れなかった罰として帰るまで修行禁止ね」

 

『鬼だ! 鬼がここにいる!』

 

「あら、これでも優しい方なのよ? それが嫌なら帰るまで皆のどんな頼みでも聞き続け――――」

 

『天使――――いや、女神がここにいる!』

 

うん、忍さんはマジ優しいです! 最高です!

 

「……現金な人達ね。まあ、いいわ。一応反省してるみたいだから許してあげる。――――()()()

 

最後の方に何か言ってたみたいだけどよく聞き取れず、俺達は特に気にしないまま晩御飯を食べ始めるのだった。

 

 

 

 

 

晩御飯のあとはホテルの温泉に入ることにした。

“男”と書かれた青い暖簾と“女”と書かれた赤い暖簾の前で、俺は男なので当然青い暖簾をくぐろうとしたが、服を誰かにつかまれてくぐれない。

 

「……俺、風呂に入りたいんだけど」

 

『空(さん/だーりん/少年)はこっち(です/よ/だよ/なのじゃ)』

 

後ろにいた十香達精霊にジト目を向けるが、全く聞いてないみたいで無理矢理女湯の方に入れられた。

精霊一人ぐらいなら何とかなるかもしれないが、この人数に抵抗しても無駄でしかないことは一目瞭然だ。

 

「い、嫌だ! 俺は男湯に入るの!」

 

「大人しくしなさい」

 

無駄な足掻きとわかっていても抵抗したものの、あっという間に服を脱がされ、温泉へと続く扉が開く。

 

「さ、体を洗いましょうねー」

 

「じ、自分でやるから! 胸押し付けないで美九!」

 

風呂椅子に座らせられて、一糸まとわぬ美九の柔らかい体が俺の背中に直に当たる。

 

美九のスベスベした手が背中をこするとくすぐったい……!

 

「前はむくが洗うのじゃ」

 

「はッ!? ちょ、六喰!?」

 

今度は前から、美九と同じように一糸まとわぬ六喰に洗われる。

 

なんかコリコリしたのが当たってる!

 

体の隅々――――大事なところ――――まで六喰に洗われて、前以上にもうお婿に行けないとすら思った。

 

「…………ひゃ…………! ふ、二人ともくすぐったいよ!」

 

「我慢してくださいねー」「我慢するのじゃ」

 

どうやら、俺が何を言っても二人は止まる気はないらしい。

 

「……ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……! た、耐え、きった……!」

 

数分して洗い終わったころには俺の呼吸は荒かった。

二人に洗われている間、俺の中の何かが弾けそうだったが、何とか耐えた。

耐えきった自分を褒めてやりたいとさえ思える。

 

「お、俺、もう……あが―――――」

 

「まだ湯船に浸かってないわよ」

 

「…………はい」

 

(よわい)九で姉には逆らえないと悟った。

 

「七罪」

 

「……わかった。空、悪く思わないでね」

 

琴里が七罪の名前だけを呼ぶと、七罪が頷いて〈贋造魔女(ハニエル)〉を出して振るう。

すると俺の視界が眩い光に包まれる。

目が開けられるようになってから目を開けると、皆の身長が縮んでいた。

 

……違う……俺が大きくなってるんだ!

 

胸のサイズが大きい彼女達の変化がないことを知って気が付く。

 

「……今、私達のどこ見て判断したのか問い詰めたいところだけど、時間が無くなるから早く入るわよ」

 

もはや抵抗する気力など微塵もない俺は大人しく湯船に浸かった。

だが、精霊達の攻撃はまだ終わってなどいなかった。

 

「あ、あのさ、もうちょい離れてくれると嬉しいかな……なんて……」

 

『無理(だ/です/よ/じゃ/だよ)』

 

「ですよねー」

 

はぁ……結局前と同じでこうなるのか……。決して嫌じゃない、というか男なら誰しも好きであろうシチュエーションなんだろうけど、こう……色々ヤバいんです! 今だって狂三や折紙に首筋にキスされ、両腕を八舞姉妹に抱きしめられ、前後を七罪、四糸乃、琴里、六喰に囲まれて皆の柔らかい体が密着してきて鼻血が出そうなんです!

 

「皆がどうしてこんなことするか空は分かってる?」

 

「それは…………家族だから?」

 

いや、家族にしたって行き過ぎなスキンシップだよね……。

 

「ハズレ~。全然違うよ」

 

凛祢の質問に俺の答えは不正解だった。

 

「正解は?」

 

「うーん、この際だから教えてもいっか。ね? 皆?」

 

凛祢が見回すと十香以外の精霊が頷いて俺の体から離れる。十香は十香で唇を尖らせていた。

 

 

 

『―――――私は空(さん/だーりん/少年)が好き(だ/です/ですわ/だよ/なのじゃ)』

 

 

 

「……………………そっか。そういうことか。それならこんなことする……のか?」

 

しばらく固まってから、言われた言葉の意味に気が付く。

好きだと言われて冷静でいられたのは十香に好きだと言われたからなのか、心のどこかで薄々気が付いていたのかはよくわからない。

でも―――――

 

 

 

え、今告白されたの!? え、ウソッ!? マジですかぁぁぁああああああッ!?

 

 

 

訂正。頭の中は全然冷静じゃなかった。

 

ど、どうすればいいの!? ただでさえ十香に告白されて返答を待ってとお願いしてるのにこれ以上は……! ハーレムなんて絶対ダメ……でも、ハーレム作れば皆の想いに応えられる……で、でもでも……! ああ―――――ッ!

 

「む、無理!」

 

皆に抱き着かれてことで頭に限界がきて、まともに考えられなくなって温泉から逃げ出す。

脱衣所の扉を開けて閉めたところで、意識が遠のく。

 

 

 

 

 

「……あ、あれ……ここは…………?」

 

「あ、空君! 目覚めたんだね!」

 

目を開けるとイリヤの顔が視界を覆った。

 

「……俺、どうしてこんなところに?」

 

「脱衣所で倒れてたって聞いたよ」

 

脱衣所、と言われて何があったかおおよその検討が付いた。

 

あの後、のぼせて倒れたのか……。

 

温泉の熱さだけじゃなく、精霊達のスキンシップも相まって気絶したんだろう。

 

「イリヤが看病してくれたの?」

 

「肝心なところは他の人がやってくれて私はただ見てただけなんだけどね」

 

「そっか。でも、ありがと。見るだけでも大事な役目だから」

 

「ど、どういたしまして」

 

こそばゆいのか頬を掻きながらイリヤははにかむ。

 

「あ、皆は部屋に集まって色々ゲームやってるよ! 空君も一緒に―――」

 

「ごめん、ちょっと外の風に当たってくる」

 

「……わかった。一人で大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だと思う」

 

イリヤにもう一度謝ってから外へと出る。

 

 

 

 

 

「……好き、か……」

 

夜空に浮かぶ月とそれを鏡のように映す黒い海を見ながら呟く。

 

いつまでも姉でいてくれない理由はそういうことだったのか……。

 

あの時のことを思い出してようやく合点がいった。

十香達は俺のことが異性として好き。でも、俺はなんて答えたらいいかわからない。

 

「……これって贅沢な悩み……なのかな?」

 

「――――そうね、相当贅沢な悩みね」

 

「……え?」

 

後ろから聞き覚えのない声がして振り返ると、薄い金色の長髪の一部を白いリボンでサイドテールに結い、白いセーラー服、黒いニーハイを着た少女―――――――――万由里がいた。

 

 

 

 

 

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