デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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相性最悪です!

相性最悪です!

 

Side空

 

一夏さんとの試合を終えて、部活をしていた他の人達も合流した。

 

「藍さん、英霊と勝負させてもらえませんか?」

 

「うーん、ちょっと待っててくれるかな? …………。うん、いいよ。彼らも君と戦いたいって言ってる」

 

俺の唐突な頼みを藍さんは快く承諾してくれた。

数秒程黙り込んだのは、英霊達と念話でもしたからだろう。

 

「ありがとうございます」

 

お礼を言いつつ、周りに被害が出ないように結界を張った。

 

「どういたしまして。それじゃ、ジークフリート。まずはあなたからね」

 

「了解した」

 

藍さんの背後にヴァーリのようにダークカラーの強い銀色の髪をした長身の男性が現れた。彼を見た瞬間、背筋に悪寒が走り、全身に鳥肌が立った。

 

ジークフリートと言えば……竜殺しの英霊!

 

中世の叙事詩「ニーベルンゲンの歌」に登場する大英雄。邪竜ファヴニールを倒した人でもある。

そして厄介なのは、彼が竜殺しであるということはドライグやアルビオンの力がある俺との相性は最悪と言っていい。

 

『一撃でも喰らったらヤバいぞ』

 

「(わかってる)」

 

竜殺しがドラゴンにとって危険な存在とわかってはいるが、相手は伝説の英霊。攻撃すべてを躱すのは不可能だ。

 

「どうやら君は竜の特性を持っているようだな。……今回は見送るか?」

 

あれ? この声……サーゼクスさんと似てる……? いや、そんなことはいいか。

 

「いいえ。相性最悪の敵と戦うときのためになりますから、是非ともやらせてください」

 

「わかった。だが、竜殺しの宝具は使わない」

 

条件を付けてから、ジークフリートの話に出てくる剣―――バルムンクを構えた。

たったそれだけのことなのに、悪寒がより一層酷くなる。膝が震えだす。呼吸が荒くなる。

怖い。今目の前にいる男性に恐怖を抱いている。

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)禁手化(バランス・ブレイク)ッ!」

 

《Welsh Dragon Balance Breaker‼》

 

「赤いドラゴン……? (ああ、なるほど、『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』の力か)」

 

藍さんに審判を頼み、試合開始の合図をしてもらった。

 

「試合、開始!」

 

《BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼‼‼‼‼》

 

全身に魔力強化を施し、一気に倍加をする。

相手との距離を縮め、相手のお腹目掛けて右ストレートを放つ。

 

「…………え?」

 

しかし、俺の拳は見えない何かに防がれてしまった。

俺の動きが硬直するもジークフリートさんは攻撃をしてこなかった。

 

『空、今すぐ離れなさい!』

 

琴里の声に我に返り、すぐに離れた。

 

……今のは……?

 

「“悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)”。俺の宝具の一つだ。大抵の攻撃は効かない」

 

顔に出ていたのか、ジークフリートさんは律義に答えてくれた。

 

「だったら……!」

 

《BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼‼‼‼‼》

 

さっきよりも多くの倍加をして蹴りを入れる。

この攻撃は不可視の鎧では防げないと考えたのか、バルムンクの腹で受け止めた。

2、3m後ずさるも、ダメージを与えられた気が全然しない。

それどころか、バルムンクに触れた足部分に纏っていたシューズが壊れていた。

魔力を使ってすぐにシューズを修復した。

 

あの鎧を破るなら『透過』を使うのが一番かな。それか…………いや、あの技はダメだ。

 

透過以外のもう一つの案が浮かんだが、選択肢から外した。

当てることが出来れば確実にあの鎧を破壊して勝てる技。だが、あまりにも危険すぎるのだ。あらゆるものを焼き尽くす絶技―――――燚焱の炎火(いつえきのえんか)は。

 

はぁ……これは相当厳しい戦いだなぁ……。

 

《BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼‼‼‼‼》

 

倍加をしてから拳に炎の龍を纏わせながら突っ込んでいく。

 

「何度も突っ込んでくるだけの手は通じないぞ」

 

俺の頭目掛けてバルムンクを振り下ろしてきた。

 

「わかってますよ。ドライグ!」

 

《Penetrate‼》

 

宝玉からドライグの声が響き渡り、バルムンクの斬撃を()()()()()

 

「ッ!」

 

《Penetrate‼》

 

「紅天龍撃拳!」

 

二度目の透過は鎧を貫くために発動。炎の龍はジークフリートさんの腹に喰らいついた。

 

「グッ……!」

 

追撃はせずに距離を取って相手の様子を窺う。

苦悶の声が口から漏れ出たことから、今の一撃は効いたようだ。

 

「……ここまでにしておこう。これ以上君と戦えば、戦いたがっている他の英霊達に文句を言われそうだ」

 

「え!? ジークフリートさん、全然攻撃してないじゃないですか!」

 

「すまない。俺が君を剣でなく拳で攻撃したとしても、それは大ダメージになるだろう。それに子供だと侮っていたが、今の戦いを見て、君相手に手加減せずに戦うのは難しいとわかった。中途半端で本当にすまない」

 

「……わかりました」

 

納得いかないところも少々あるが、渋々頷いた。

 

「すまない。……だが、もしも次の機会があれば、()()()()と戦いたいものだ」

 

! あらら、流石は英霊。見抜かれてるか……。

 

ジークフリートさんはその場で虚空に溶けるように消えていき、入れ替わるようにして紫色の髪の女性が現れた。

 

「ジークフリートの次はこのスカサハが相手をしよう」

 

スカサハ……? 聞いたことのない名前かも。

 

「(ドライグ達は知ってる?)」

 

『ケルト・アルスターの戦士であり、女王でもある奴だ。確か……あの槍は愛弟子のクー・フーリンに渡した槍―――ゲイ・ボルクのはずだ。だが、形が少し違う気もするな……。(竜殺しの次は神殺しだと!?)』

 

クー・フーリンとゲイ・ボルクならケルト神話の戦士であることを知っている。その人物の師匠ということは相当な強さのはずだ。

 

この人も怖いな……。

 

ジークフリートさんと対峙した時とは、また違った怖さをスカサハと名乗った女性から感じる。

 

「言っておくが―――――」

 

朱い閃光が頬をかすめる。

一拍置いてアリーナの壁に何かが衝突する音が響いた。スカサハさんが槍を投擲したのだ。

 

「スカサハ!? 試合はまだ始まってないんだよ!?」

 

「私はジークフリートのように手加減をするつもりは一切ない。本気で来なければ死ぬと思え」

 

藍さんが咎めるのを無視して俺に語りかける。

目が本気だ。この人は容赦なく俺を殺しに来る気だ。

 

「さあ、力を見せるがいい」

 

「はい! (十香、行くよ!)」

 

『うむ! あの女に私達の絆を見せてやろうではないか!』

 

 

 

「―――――我、目覚めるは」

 

 

 

深呼吸をして、呪文(うた)を紡ぐ。

 

 

 

「―――――剣姫の精霊と共に歩むものなり」

 

 

 

周囲の空間が歪み出す。

 

 

 

「―――――聖と魔を今こそ合わせ、星の剣をこの手に取ろう」

 

 

 

足元に無数の聖剣と魔剣が突き刺さり、それらすべてが白と黒の光の粒子になり混ざっていく。

 

 

 

「―――――我、全てを切り裂く星剣の龍精霊と成りて」

 

 

 

紫色の光が俺の体を覆っていき、霊装を形成する。

 

 

 

「―――――汝の絶望を、宵闇の世界へと葬り去ろう」

 

 

 

《Sword Brave Dragon Elemental Over Drive‼‼》

 

 

 

光が収まると右手に十香の天使―――〈鏖殺公(サンダルフォン)〉。

左手には黒い柄、夜色の宝玉がはめ込まれている紫の刀身、蒼い刃の剣―――〈龍星剣(りゅうせいけん)夜刀(やと)〉が握られていた。

髪は夜色に変わる。

霊装は紫色の鎧に黒と白のラインや宝玉が足や腕部分に新たに加わった。

側頭部には紫水晶の角、腰あたりから紫色の尻尾、背中からは淡く虹色に光り輝く翼が生えていた。

そして、頭の上には金色の宝冠が煌いていた。

 

「……その力……! ハ……ハハハ、フハハハハハ! そうかそうか、お主はただのドラゴンではないということか! 随分長いこと生きていたが、これほど珍しい存在は初めて見たぞ」

 

転生者だから特典次第では珍しくもなるだろう。だが、彼女の言っていることは俺の思っていることとは違う気がする。

 

「マスター、試合開始の合図を!」

 

「うん。試合、開始!」

 

先程と同じように朱い槍を投擲してきた。しかし数は一本ではなく六本だ。

 

「それっ!」

 

「剣よ!」

 

俺も同じ数の剣を作り出し、飛来する朱い槍を迎え撃つ。

 

「ほう、エミヤのようなことが出来るのか」

 

エミヤ? 藍さんのこと……? でも、藍さんのことはマスターって呼んでたから別の人かな?

 

スカサハさんとの距離を詰めて、剣と槍がぶつかる。

膨大な霊力と魔力にものを言わせて、力づくで押し始めた。

 

「でやぁあああッ!」

 

剣を振るう最中、空中に大量の剣を作り出して射出。そこに霊力による斬撃を加える。

亜空間から取り出した槍で射出した剣すべてを相殺、斬撃は二本の槍によって薙ぎ払われた。

その間に地面を蹴りつけ、上から剣を叩きつける。槍で受け止められるが衝撃が地面に伝い、ひび割れた。

 

もっとだ……! もっと速く!

 

幾度も幾度も剣と槍がぶつかり合う。その度に火花が散り、互いにかすり傷が生まれていく。堅牢な防御力を誇るはずの霊装も朱い槍の前では形無しだ。

 

「(こやつ、剣を振るう度に太刀筋が速く、綺麗になっていく……。まるで剣舞だな。それにこの力、間違いなく……)」

 

俺の中の()()に反応するように剣の宝玉が輝きを増し、より速く、力強くなっていく。

 

「お前の力をもっと見せてみろ!」

 

攻撃が速くなっても、それでもまだ彼女には届かない。笑いながら防がれている。

 

「はああああああッ!」

 

霊力と魔力を放出して、相手を吹き飛ばす。もちろんこの程度が英霊相手にダメージになるはずもない。

 

「剣よ、集え!」

 

大量に創り出した剣が一か所に集まっていき、刃が天に向く巨大な剣となる。

 

「落ちろ!」

 

グルン、と180度回転して、重力に従って落下する。

 

「刺し穿ち……突き穿つ! 『貫き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)!』」

 

巨大な剣に対してスカサハさんは朱い槍を投擲した。朱い閃光は剣の中心を貫き、真っ二つに分断した。

 

「フッ、呆気な―――――」

 

「終わってないですよ。剣の雨よ!」

 

「!」

 

巨大な剣は確かに貫かれた。だが、それは集合した剣の一部に過ぎない。分離すれば集まる前の剣に戻るだけだ。

剣を指揮棒に見立てて振り下ろすと、剣は分解され、雨となって降り注いだ。

 

「―――……深淵の叡智」

 

ボソッ、と呟いていたので良く聞き取れなかったが、次の瞬間、驚くべきことが起こった。棒立ちのスカサハさんに、数えるのも億劫になりそうな量の剣の雨は一本も当たらなかったのだ。まるで剣の方から彼女を避けていくようだった。

 

「いやはや、今のは驚かされた。束ねて一つに、壊されれば残りで。うむ、実に見事だ。もうネタ切れか?」

 

「……あるにはありますけど、ここでは使えません」

 

結界は張ってあるが、恐らく壊れてこの学園に被害が出てしまう。

 

「そうか。ならばここまでだな」

 

終わりを告げられると力が一気に抜けた。

 

「久々にいい汗を掻いた。シャワーでも浴びるとするか。……どうだ? お主も一緒に浴びるか?」

 

悪戯な笑みで俺を誘ってきた。

 

「え、俺は―――――」

 

『あの女殺す』

 

「大丈夫です! (冗談に決まってるでしょ!? 落ち着いて!)」

 

十香達が物騒なこと言い出したので、全力で遠慮した。言い出さなくても遠慮するのだが。

 

「ではな」

 

スカサハさんはジークフリートさんと同じようにその場から消えていった。

 

「流石に、もうキツイかな……。藍さん、ありがとうございました」

 

龍精霊化を解くと疲れが一気にやって来た。

 

「ううん、こちらこそすごい試合を見せてもらったよ。まだ他の英霊とも試合する?」

 

「今日はここまでに―――――」

 

「セイバァァァアアアアアアアアアアアッ!」

 

帰ろうとしたら、突如青い何かが叫びながら俺の目の前に飛来してきた。

 

「そこの君」

 

「あ、はい」

 

青いジャージを来た十香と同じ年頃ぐらいの少女に鋭い目つきで話しかけられて思わずたじろぐ。

 

アホ毛が帽子から突き出てるのはツッコまない方がいいのかな?

 

「君はセイバーのクラスに成り得る素質があるようだ」

 

「?」

 

セイバー? 素質? よくわからないけどお礼でも言っておけばいいのかな? 

 

「えっと、ありがとうござ―――――」

 

「だからこの場で殺す」

 

…………ん? 

 

「え、あの、どういう―――――」

 

「問答無用! 私以外のセイバー死ね!」

 

ヤバい。どうしよう。話が通じない。というか聞いてもらえないんだけど。

 

いきなり現れてまさかの殺害宣言。

手に持っている黄金の剣と漆黒の剣で襲い掛かって来た。

先程の試合でほとんど力を使ってしまったので、これ以上の戦闘は無理に等しい。

 

こうなったら……。

 

精一杯力を振り絞り、体を動かす。剣を振り上げた瞬間を狙って抱き着く。

 

 

 

「お姉ちゃん、大好きー!」

 

 

 

甘えるような声音を出すと少女の動きが止まった。

 

『ブフォッ!?』

 

中にいるドライグ達や試合を見ていた一夏さん達が噴き出した。

チラリと様子を窺ってみたら微かに震えていた。

 

し、失敗したかな?

 

「か、可愛い……!」

 

不安に駆られたが杞憂に終わった。

少女に突き放されることなく、逆に痛いくらい強烈に抱き締められた。

 

「………そうですね。彼が素質があるからと言って実際英霊ではないのですし、今回は見送っても大丈夫でしょう。それに『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』の力は私と関係がないわけでもありませんから、私が“姉”というのもあながち間違いでもないかもしれませんね」

 

『ん? 俺と関係のある…………いや、歴代の赤龍帝にあんな可笑しな奴はいなかった。それ以外だとアーサー王ぐらいだが、あいつは男だしな……』

 

どうやらドライグにはこの少女に心当たりはないようだ。

 

「コホン……ともかく、これから私のことは姉と思って接しなさい。いいですね?」

 

「あ、はい」

 

自分でやっておいてあれなんだけど、途轍もなく面倒なことになってしまった気がする。

 

 

 

 

 

「さあ、私と一緒にセイバーを消しに行きますよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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