デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

94 / 118
ランスター兄妹です!

ランスター兄妹です!

 

Side空

 

―――なぁにこれぇ?

 

それが今一番言いたいことだ。

気が付くと俺はトレーニングルームにいた。

そして、桜色、黄色、白色の砲撃が俺に向かって真っすぐに飛んできている状況だ。

避けようにも今からでは九喇嘛モードでも間に合わない。防ごうにもこの砲撃の威力は抑えきれずに当たる。この場合、やられる覚悟で受けるしかないだろう。

そんな状況下でもう一度言わせてもらいたい。

 

―――なぁにこれぇ?

 

無駄な足掻きとわかっていながら防御魔法を展開し、瞬時に壊され、意識は飛んでいった。

 

 

 

 

 

「そんなことになってたんだ」

 

アザゼルさんの実験によって、俺が前世の姿に戻されてから何があったかを起きてから聞かされた。

 

―――桜木遥。

 

それが俺の本来の名前。

ヴァーリや十香達が俺が遥に戻っている間に戦ったらしいが、誰も手も足も出なかったそうだ。あのオリヴィエさんでさえもだ。負けたのがショックでかなり拗ねていたらしい。

しかし、遥がやったことはそれだけでなかった。

 

「世界最強を家に招いたって嘘だよね?」

 

「嘘じゃないわよ。……いや、嘘であってほしいんだけど。ほら、あそこ見てみなさい」

 

琴里が指差した方向を見れば、紅い髪の女性と黒い髪の少女がカードゲームに熱中していた。

彼女達から感じる力は今までにないくらい絶大なものだ。

本当かどうかは今一ピンとこないが、琴里がわざわざ嘘を吐く理由が見当たらない。未だに信じられないが彼女達は本当にこの世界の最強の存在なのだろう。

 

最強の存在がカードゲームってシュール過ぎる……。

 

「何やってんだ、()は……」

 

「ホント呆れるわ。やっぱり前世が前世なら記憶が無くても変なところは変わらないってことかしら?」

 

変なところと言われて心当たりが在り過ぎて、琴里から目を逸らすことしかできなかった。

 

 

 

 

 

「こんにちは、ティーダさん」

 

「おう、空。今日もよろしく頼むな」

 

アースラでティーダさんと出会った。今日は以前から約束していた、ティーダさんとの定期的な練習の日だ。

 

「今日もいつも通りのメニューか?」

 

ティーダさんの言ういつも通りのメニューとは、目隠しを付けながら魔力弾の回避、またはそれを撃ち返すこと。それから、ゆっくり攻撃の組み手だ。

 

「いえ、今日はメニューを変え……ん? 君は誰?」

 

「―――!」

 

ティーダさんの後ろにいた女の子に声を掛けたら、ティーダさんの背中に隠れてしまった。

どういうことかティーダさんに目線だけで尋ねると頬を掻きながら答えてくれた。

 

「俺の妹だ。名前はティアナって言うんだけど、人見知りが激しくてな……。ティアナ、自己紹介してくれ」

 

「……ティアナ、です」

 

ティーダさんの制服のズボンをギュッと握りしめ、目線は俺と全く合わせずに名前を名乗った。

 

「龍神空です。よろしくね」

 

握手を求めたが、ティーダさんの背中の方に引っ込んでしまった。

 

「……悪いな」

 

「いえ、大丈夫です」

 

ティアナのことは一旦おいて置き、ティーダさんの練習メニューの説明に入る。

 

「今日は俺以外の人と戦ってもらいます。場所もアースラじゃなくて地球です」

 

いつもは俺が相手になっているのだが、たまには別の人とも戦うのも勉強になるはずだ。

 

「了解。……ティアナも地球にいいか?」

 

「もちろんです」

 

知らない人ばかりの場所に一人でいさせるのは可愛そうだ。

リンディさんから許可をもらい、ティーダさんとティアナと共に地球に転移した。

 

「本日、ティーダさんの練習相手になってもらう高町恭也さんです」

 

高町家の道場に連れていき、ティーダさんの相手を紹介する。

 

「よろしく頼む」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

軽い自己紹介をしてから、早速練習に入る。

 

「今回は目隠しはないですし、速度はゆっくりでもない戦闘訓練です。……本気でやらないと痛い目見ますからね?」

 

最後にティーダさんに忠告をしてから道場を後にする。

後のことは恭也さんがどうにかしてくれるだろう。

 

「俺は俺で頑張らないと!」

 

誰もいない山奥に転移し、人払いの結界を張りめぐらせてから修行に入る。

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side恭也

 

「―――ここらで一旦休憩に入ろう」

 

「は、はいッ!」

 

ティーダとの組手を中断して休憩をすることにした。

覇気を使っての組手は、空に教わってから日々の鍛錬にも入れているが、まだまだ空達のように自然体でやるのは難しい。それに集中力を普段の組手よりも使うから、身体的な疲労よりも精神的な疲労が大きい。

 

……覚えたてのティーダはもっと疲れてるだろうな。

 

道場の床に座り込み、息を荒くするティーダを見て、少し長めに休憩にすることにした。

 

「美由希、彼に水を渡してくれ。それから妹にも……おい、ティーダ。お前の妹はどこだ?」

 

「へ? ティアナならそこに―――いない!?」

 

組手を見学していたはずのティーダの妹の姿がなかった。

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side空

 

《マスター、ティーダ様からの連絡が入っております》

 

思いの外、修行に難航しているところにブレイブが話しかけてきた。

 

「繋いで」

 

《かしこまりました》

 

ブレイブが空間ディスプレイを投影するとエイミィさんの顔が映った。

 

『空! ティアナがどっかに行っちまった! 探すのを手伝ってくれないか!』

 

詳しい事情を聞くと、練習が一段落したところでティアナがいないことに気が付いたらしい。

 

「わかりました! ティーダさんはそのままそこにいてください。俺が探してきます!」

 

『ハッ!? いや、俺も―――』

 

土地勘のないティーダさんが動き回るよりは二亜に手伝ってもらう方が断然速い。

 

「ブレイブ!」

 

《はい》

 

ティーダさんの返事を聞かずに通話を終えるなり、龍神家に転移した。

 

「二亜、ティアナの場所はどこ!?」

 

漫画を描いている二亜の部屋に勢いよく入り込んだ。

二亜や手伝っている七罪がビックリしているが気にしている暇はない。

 

「へ? ど、どういうこと?」

 

「いいから! ティアナの居場所を調べて! 名前はティアナ・ランスター!」

 

「わ、わかった!」

 

俺の切羽詰まった様子に気圧されたのか慌てて〈囁告篇帙(ラジエル)〉を出して調べ始めた。

 

「海鳴市の港近くの公園! そこにいるよ!」

 

「ありがと! お礼に今日は二亜の好きな料理作るから!」

 

魔力で身体能力を強化しながら二亜の部屋の窓から他の家の屋根に飛び移った。公道を使うよりも屋根伝いに公園に向かった方が断然早い。

 

見つけたっ!

 

公園に入ると特徴的な橙色の髪を持つ少女が目に入った。間違いなくティアナだ。

ベンチに座り込み、俯いていた。

近寄ってみたらすすり泣く声がティアナから聞こえた。

 

「迎えに来たよ」

 

「…………」

 

反応はない。

 

「迎えに来たのが君のお兄さんじゃなくてごめんね」

 

ティーダさんにティアナの居場所の座標を送ったので、時期に来るはずだ。

 

「…………」

 

「どうしてどこかに行ったの?」

 

「……わかんない」

 

やっと反応が返って来た。

 

「そっか」

 

「普段忙しい兄さんが久々に一緒にいてくれたから嬉しかった。だけど、兄さんは私を見てなかった。ちょっとくらいは気にして欲しかったのに、兄さんは練習に夢中で、それが何だか悲しくて……苦しくて……気が付いたらここにいた」

 

きっと大切なお兄さんが誰かに取られた気がして嫌だったのだろう。

 

「前はこの嫌な感じは大丈夫だったのに、今日はなんでなのかな?」

 

ああ、この子は昔のなのはにそっくりだ。本当は寂しいのに迷惑を掛けないために「良い子」であろうとした頃のなのはに。

 

「それは寂しいってことなんだよ」

 

「……寂しい?」

 

「うん、ティアナは本当はお兄さんと一緒にいたいのに無理してるだけ」

 

ティーダさんがあまりティアナにかまってあげられないのは、何か事情があるのだろう。

 

「ティアナ!」

 

「兄さん……」

 

汗だくのティーダさんが俺達のいる場所に転移してきた。

道場で練習したのなら汗を掻くのは当たり前だが、ここまで汗だくということは自分でも必死に探し回ったんだろう。

 

「ごめんな、ティアナ! 俺が全然構ってあげられなくて!」

 

「な、なんで、兄さんが謝るの? 勝手いなくなったのはわたしなのに」

 

いきなり抱き締めて謝るティーダさんに、ティアナは困惑していた。

ただひたすらに謝り倒されて、しまいには感情の整理ができなくなり、ティアナは大声を上げて泣き出してしまった。

 

 

 

 

 

「実はさ、俺とこいつ―――妹のティアナには両親がいないんだ。数年前に他界したんだよ」

 

公園のベンチで、ティーダさんが泣きつかれて眠ってしまったティアナに膝枕をしながらぽつぽつと話し出す。

 

「親の遺産だって使っていけばそのうち底を尽きる、頼れる親戚や知人がいるわけでもなかったし、いたとしても迷惑掛けるのが申し訳なくてな……。だから管理局に入って生活費を、って感じで働き始めたんだ。知ってるか? 管理局って結構稼げるんだぜ?」

 

先程の暗い話を無かったことにするかのように管理局の話を付け加えてきた。

 

「でもさ、働いてるとティアナを一人にさせちまう時間が多くて困ってたんだ。本人は強がって大丈夫そうに見せるけど、やっぱり兄貴としては心配で心配でたまらなくて……。結局、今日の出来事が起こっちまった。なあ、空、俺はどうしたらよかったのかな? これからどうすればいいのかな?」

 

「それは―――」

 

「だったらそんな仕事辞めてしまえ」

 

「恭也さん」

 

俺を遮って恭也さんが答えてくれた。

 

「高々十七歳の奴が妹と二人で生きていくのは到底難しいだろうな。それを(こな)しているお前は素直にすごいと思う。だがな―――お前は馬鹿だ」

 

恭也さん、馬鹿は言い過ぎでしょ……。

 

「家族との時間を蔑ろにするのだけは絶対にダメだ。特に小さい子にとってはな」

 

似たような境遇にあった―――いや、なのはをそういう境遇に()()()()()()()()恭也さんだからこそ言えることだ。

 

「でも、俺には頼れる人が……」

 

「空がいる」

 

「え? 俺ですか?」「空が?」

 

突然名前を出されてティーダさんと言葉が被る。

 

「空は中々に頼れる男だぞ。こいつのおかげで俺達一家も救われたからな」

 

頭に手を置かれて軽く撫でられる。

 

あの時は流れというかなんというか、思ったことを口にしただけなんだけどなぁ。

 

「空、あとは任せた」

 

そう言い残して恭也さんは公園から立ち去った。

 

ええー……? ここにきて俺任せなんですかー? ティーダさんもなんだか期待してる目をしてるし、これはやらないといけないか……。荷が重いな。

 

こういう金銭関係は大人に相談して頼むのが最善に違いない。俺の周りには優しい人達ばかりだからきっと何とかなるに違いない。

その為には手始めに本人達との相談が必要と考え、ティアナを起こして二人と話し始めた。

 

「まずは二人のこれだけは譲れない要望をお聞きします」

 

「ティアナの傍にいられる時間を増やしたい」

 

「兄さんと出来るだけ一緒にいたい」

 

ティーダさんはシスコンでティアナはブラコンというやつだな。

 

「妹離れ出来ます?」

 

「うるせぇ! 絶対嫁には出さねぇからな!」

 

うわっ……恭也さんや雄人と同じくらいのシスコンだ。

 

「ティアナ、友達は欲しくないの?」

 

「欲しい……けど、仲良くできるかな? 私と仲良くなってくれるかな?」

 

「それはティアナ次第。全員が全員と仲良くできるわけじゃないから。でも、俺の友達は皆いい人だからきっと仲良くなれるよ」

 

幸い、俺達と歳が近い。遊び相手や話し相手には困らないはずだ。

 

「……あなたとも?」

 

不安そうな目で聞いてきた。そんなときはこっちが自信を持って答えてあげればいいだけだ。

 

「もちろん!」

 

自己紹介した時と同じくティアナに手を差し出す。すると、ティアナは恐る恐る手を伸ばす。そんなティアナの隣では微笑ましそうにティーダさんが見守っていた。

 

久々にやってみよっか。

 

「俺は空。改めてよろしくね。君の名前は?」

 

「ティアナ……ティアナ・ランスター!」

 

「うん! よろしく、ティアナ!」

 

ティアナの手を掴み握手を交わした。その時のティアナはちょっとだけ嬉しそうに笑ってくれた。

 

 

 

 

 

後日、ティーダさんとティアナの要望に応えるためにリンディさんや桃子さん、プレシアさんなどの大人達に相談しまくった。

その結果―――ティーダさんとティアナは地球に住むことになった。

まずはティーダさんの仕事だが、地上部隊からリンディさんの隊に転属することで、二人の暮らす場所はリンディさん達が使うマンションの一部屋を使うことになったのだ。

今のところ、仕事のほとんどが事務作業メインらしいからそこまでの苦労はないし、自由な時間が増えたらしい。

ちなみに二人の戸籍等はバニングス家にお願いしたら、すぐにやってくれた。その代わり、アリサのこと頼むよと念を押された。

迫力が在り過ぎて頷くことしかできませんでした。

それから、ティーダさんは十七歳ということなので、年明けには美由希さんと同じ高校に通う予定だ。ティアナも同様に聖祥の初等部の一年生として編入予定となっている。

学校に通うまではティーダさんは翠屋で社会勉強を兼ねてバイト、ティアナは龍神家に住む精霊達が勉強を教える。

なのは曰く、桃子さんがティーダさんと美由希さんをくっつけようと画策してるとか言ってた。

金銭面についてはほとんどリンディさんが負担してくれたが、ティーダさんが納得できないと言って、最終的に全額出世払いという方向になった。

 

「これで少しは兄妹の時間が増えるといいんだけど……」

 

「大丈夫ですよ」

 

ユーリが断言した。

 

「だって、空は私のお兄ちゃんですから」

 

「なんだそりゃ」

 

答えになっていない答えに苦笑いしか返すことが出来なかった。

 

「あ、ユーリも学校通う? もちろん星奈、美雷、夜空も一緒に」

 

「それはいいかもしれませんね」

 

さらに後日のこと。ユーリ達が学校に通うことが決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。