その手に握る刀は何のために 作:ユウヤ
特異個体と呼ばれるドスファンゴの狩猟と小さな祭りが終わった夜。
私は自室で悩んでいた。
恐らくは同年代と思われるハンター、ユウヤについてだった。
『ユウ』という単語について私個人として縁があるわけだけど、『ユウ』すなわち『英雄・勇気』と『ユウ』という発音は地域、大陸を超えても共通する不思議な単語である。
タンジアのハンター養成のギルドでも『ユウ』という単語が付いた名前を目にすることはあった。
でも、その時は何も感じなかった。
だけど、村にユウヤが来てからは私の行動は何かがおかしいのだ。理性?感情?そんなことよりまず行動に出てしまう。抑えきれない謎の衝動。
最初の時は突然の来訪、それも実力のある人物としてユウヤは来た。
当時の私としては今まで目指していた村の守り人としての地位が奪われるのではないかと警戒し、失礼なことばかりした。
その後紆余曲折あったものの、打ち解けるとまではわからないが、私はアイツといるとなぜか安心してしまう。
養成ギルドにいた同年代の子女たちはハンターになるというよりハンターを目指す男子を捕まえてなんちゃらと考えている数が多かった。
だから日々素振りをして汗臭く、鍛錬に励む私は鼻つまみ者だった。別段他の人のことや外聞なんてことにとやかく言うつもりはない。せいぜい生まれ育った故郷が守れればそれでいい。だからそのために励み、一歩踏み出せた。
だからこそ、恋なんぞにうつつを抜かす暇など無い。だからこそ、私の気持ちがわからないのだ。
特に、付き合ってもらっている修行終わりに温泉に浸かった後、何の運命かほぼほぼラフな姿で鉢合わせてそのままドリンクを飲む。それも同じミルクコーヒー。飲む動作も似ていて、だから最初は気味が悪いと思ったけど・・・
「なんで今はそれが楽しいと思うんだろ・・・」
両親を失い、その両親が守ってきた村を守るべく修行してきた毎日。何かを楽しむ、なんて余裕はなかった。だからこそ・・・
「楽しい今を守りたい・・・でもそれって・・・」
楽しい=アイツの隣で何でもいいから何かをするということ・・・
「わからなzzz・・・」
そこまで考えていたけど、眠ってしまった。だから次の日の朝。相談に乗ってくれる番頭さんにちょっとぼかして聞いてみた。
「ニャニャ、ニャるほど。ようやく、レイナさんにも余裕ができたってことだニャ」
「余裕・・・」
「ふーむ、となると原因はユウヤさんかニャ?」
「ななっ」
「ニャーこればっかりは言い表すのは難しいニャ。だけど今の村の状況はわかってるニャ?」
「わかってる。渓流の奥にジンオウガが住み着いて、アイツはそれに対処するべくやってきた。だから、全てが終わったら・・・帰っちゃう・・・」
そう言い、最後の言葉は震えていた。
「ニャー今のままだとそうなるだろうニャ」
「今のまま?だったら・・・変えられるの!?」
「確かにユウヤさんが活躍していたのは遠いメゼポルタの町」
「行ったことが無いからわかんないけど、すごく遠いってことか」
「でも、そんなところから称号持ちなんて人を呼ぶくらいなら、同じ額で大人数を雇った方が良いとは思わないかニャ?」
「まぁ・・・そうだけど」
「と、いうことはユウヤさん、ニャーんか怪しいと思わないかニャ?」
「怪しいって・・・そんなまさか」
「危険って意味じゃないニャ。人を探しているって聞いたことはあるけど、誰かはわかんないニャ」
「人を探している?」
「ユウヤさん自身、どんな過去があるかはわからニャいし今更変えることはできない」
「・・・」
「だけど、全てが片付いた後、何かしらユクモ村にとどまる理由ができたとすれば?」
「・・・それって」
「引き続き村の守りを依頼するにしろ、修行をつけてもらうにしろ理由はいくらでも用意できるニャ」
「なら・・・」
「だけど、それは一時しのぎニャ。ここに来たのも大方ギルドの要請。またギルドで何かあればユウヤさんはそれに従うニャ」
「結局・・・」
「・・・用は番になってここを二人の帰るべき場所にすればいいわけニャ。まぁ、それは当人たち次第だけどニャ」
「つが・・・そっ」
「否定よりも照れだ多めニャ。後はユウヤさん次第ニャね~」
既に未来の妄想に染まっているレイナを他所に焚きつけた番頭さんは笑っていた。