その手に握る刀は何のために   作:ユウヤ

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第十三話 恐怖そして遭遇

轟いたというべきジンオウガの物と思われる雄たけび。餌を得た喜びか、それとも・・・。

 

ともかく俺は装備を整えていつものとは違う太刀を背負った。今でこそ『鬼哭斬破刀・真打』を好んで使っている。雷属性の性質上、龍種への有効打を持つからだ。だけど今日背負うのは『祈刀・凛然』。完全に自作の太刀。俺が最初に打った太刀でもある。あの約束以降、ハンターの技術だけでなく、鍛冶の技術も学んだ。

今度会う時に一太刀入るかはわからない。だからこそ、負けたときの言い訳用に語呂合わせで一太刀喰らわせてやると卑怯くさく打ったのだが、何故か切れ味が良く、いつの間にか雷属性に強い相手に担ぐようになり、

そこから打ち直していき完全に実践用の一振りと化していた。

 

静まり返った渓流を俺とアーノルドたちと進む。

「こうも静かだと不気味ニャ」

「よほど・・・!!」

 

会話の最中に頭上からの視線を感じた。その瞬間俺たちは上を見た。そしてヤツがいた。

「ジンオウガ・・・」

 

「・・・なんだ?」

 

「角ニャね」

 

そう、ジンオウガの象徴と言える角が異様だった。通常は一対の角が綺麗に生えているのだが、目の前のジンオウガの角は片方が短く歪に生えていた。

 

「折れた?縄張り争いに負けたのかニャ?」

 

「そうなら折れた、もしくは断面が見えるはず。あんな形になるとなると、折れてからかなり時間が経っていることになる」

 

「となると大物と見てた方がいいニャ?」

 

「油断して損はないしな」

 

全員が緊迫して武器を取る中、ジンオウガはスルリと頭上の崖から降りて来た。

 

「じゃぁ、いつも通りだ!!」

 

合言葉のような俺の言葉で戦闘は始まった。俺がジンオウガに肉薄し、その間にアーノルドたちが分析しながら立ち位置を見極める。それが俺たちの戦闘スタイルだ。

 

「ふっ!!」

 

最初から油断なしの赤の気刃を纏わせて切りかかるが、どうにも躱されてしまう。もしくはメゼポルタでみた個体以上に固い前足に意図して阻まれる。

 

「こちらの太刀を理解している、わけでもないか」

 

ジンオウガ同士の戦いは前足が基本になる。よって前足の使い方は老齢になるほど機敏に、そして予測がつかなくなる。真正面からとなると前足が邪魔になる。

 

「なら・・・」

 

今度は切りかかるのではなく、意図してジンオウガの前足に太刀ではなく身体を寄せた。その動きを理解しきれなかったのか、それとも太刀への備えなのか前足をこちらへ出しただけだった。

 

「まず一歩!!」

 

その前足を足場に俺は跳躍し狙いずらいジンオウガの弱点、背中を狙った。

 

「オォォォォ!?」

 

その一太刀は成功。深くジンオウガの背中を斬ることができた。だがその束の間、ジンオウガの本領、帯電状態を通り越した超帯電状態と化した。その余波の雷撃を受けて一瞬、手が痺れた。

 

「ちぃ・・・」

 

だが俺が受け身を取る間にアーノルドたちの遠隔攻撃が功を奏して追撃は無かった。だがさらに違和感が増した。何かが違う。だがその何かがわからないからこそ不安が掻き立てられた。

 

超帯電状態になったジンオウガは言わば本気で攻撃してくるわけで、防御よりも攻撃を優先すると経験上学んでいる。こっちの種もそうなのかはわからないから慎重に進める。

 

「グオァ!!」

 

雷撃を纏った前足による一撃。だがそれで終わりじゃなかった。

 

「なっ!?」

 

老齢の個体なら前足の衝撃に加えて纏っていた雷撃が行き場を失い弾けることが多い。だがそれにとどまらず、前足の衝撃は地面を割り、そしてそのまま前足を伝って雷撃の波があふれ出たのだ。それはどれだけ老齢の個体でも()()()ならありえないことなのだ。

 

「まさか・・・コイツ・・・」

 

そう、メゼポルタに近くにも姿を見せ始めたジンオウガ。その中で極めて強大な種がいたのだ。

それを裏付けるように、目の前のジンオウガの前足の黄色い甲殻割れて青白い光が見え始め、体の緑色の鱗も剥がれ落ち、白い鱗が混ざった斑模様と化した。

 

「極み吼えるジンオウガ・・・」

 

誰がそう呼んだか、ただ二つ名が付いたように何人ものハンターが重症を負った。到底四人パーティの固定概念に囚われていたギルドもその考えを捨てるほど強大なジンオウガ。対策として取られたのが四人パーティはそのまま、負傷したら別のハンター投入を繰り返す消耗戦だった。そのジンオウガとて生物であると信じた結果、なんとか討伐に成功した。そしてその戦いで唯一最初から最後まで戦ったのが・・・

 

「俺、だったな」

 

そのこともあって太刀使いの最上級の称号の『刀神』を得ることができたのだ。だがそれも大勢のハンターの協力あってのもの。討伐という結果もそうだ。だが今戦えるハンターは俺だけである。だからこそ、最善の手を打たなければならない。

 

「アーノルド!!」

 

俺の煙玉を最初にいくつもの煙玉、そして肉食系のモンスターの嗅覚を騙せる臭いを詰めた煙玉も多数展開し一旦撤退した。

 

「ど、どうするニャ?まさかあれが噂の・・・」

 

「恐らく。そしてアレが敗れるほどのジンオウガがまだいるということだ。雄同士の縄張り争いでも最低一頭。そして番の雌が不特定数。お前たちは急いで村に帰ってそのままギルドに報告しろ。いくら何でもメゼポルタ討伐戦の規模を揃えるのにも時間も覚悟も必要だ」

 

「ご、ご主人は・・・」

 

「知れたこと」

 

「・・・」

 

その言葉でアーノルドたちは俯く。だがジンオウガは待ってはくれない。逃がした俺たちをおびき寄せるためか遠吠えが聞こえる。

 

「行くんだ!!」

 

俺の怒声とともにアーノルドたちは村へと走った。

 

生きているかすらわからない、リンとの約束を。果たせなかったとしてもリンが生まれ育ったユクモ村を守るために俺は命を賭した覚悟でジンオウガの下へ太刀を構えて走った。

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