その手に握る刀は何のために   作:ユウヤ

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第十四話 退かぬ決意 進む覚悟

村長が驚愕の余りに倒れた。これだけで一大事という言葉でくくれないほどのことが起きたということだけが分かった。呼吸も置いて走ってきたユウヤたちのアイルー。その話によると現れたジンオウガはギルドが総力を挙げて行った消耗戦でギリギリ討伐できたというほど強大な個体だという。その個体は一時期噂になったジンオウガだろう。遠く離れたタンジアの港にまで届くほどの強大さ。強大であるがゆえに伝えられるごとに噂は大きくなるが、それでも老齢の古龍ですら圧倒すると言われるほど。どれだけの人数を投入したかもわからない消耗戦。正直どうすればいいのかはわからない。ただ村長が一言言った。

 

「逃げる、しかありません」

 

いつも非難するときは必ず村長の説明が入る。だがそれすらなしにただ『逃げるしかない』と村長が言った。

未曾有の事態に大慌てで逃亡準備が始まった。そんな中異様な光景が繰り広げられていた。

 

 

「「「「「じゃーんけん・・・ぽん」」」」」

 

ユウヤのアイルーたちが呑気にじゃんけんをしていたのだ。

 

「ニャァ・・・負けたニャ」

 

「こればっかりは運のツキ・・・どっちが良いか魔では判別付かないけど、後はよろしくニャ」

 

そう言ってアーノルド・ショット・ローラ・ボンドが再び渓流へと走っていった。そしてマギーが残ってユウヤの工房に走っていった。私はとりあえず近いマギーを追った。

 

「・・・何をしているの?」

 

「見ての通り手紙ニャ。オイラの話だけじゃすぐにギルドの連中は動かないニャ。だから『刀神』の印を押して手紙を書けばギルドの連中も重い腰がなんて言ってる場合じゃなくなるのニャ」

 

「・・・さっきのじゃけんってもしかして・・・」

 

「全員がご主人のところに戻っても事態を正確に、より遠くへ救援を乞うことはできないニャ。だから貧乏くじを誰かが引くしかニャい。それがオイラというわけニャ」

 

そんな絶望溢れるマギーを見て私は二歩、下がるしかなかった。だけど、後ろ、やや下から押された。

 

「いいのかニャ?」

 

「番頭さん・・・」

 

「レイナさんは、どうするニャ?」

 

「どうするって・・・噂じゃ古龍の何倍も強いって・・・」

 

「うん、噂ではそうニャ。並みのハンターが何十人と戦ってやっと倒せた相手。それを今はユウヤさん一人が相手にしているニャ」

 

「アイツは私の何倍も・・・何十倍も強い!!だけど・・・私は・・・」

 

「・・・気持ちは、どうなのニャ?」

 

「・・・行きたい!!でも、足で纏いに・・・」

 

「それで、思い人を失って、村を捨てて、この先、どうするのニャ」

 

「っ!!でも、私のランクじゃ到底・・・」

 

「・・・元々の依頼、討伐対象はジンオウガ。()()()()()()()()。それに今は村は大慌てで逃げ支度。村長もあまりの事態に全部は見られない。だからちょっと一人応援に行ったってバレないニャ」

 

「!!」

 

「例え足手まといでも、死ぬかもしれなくても、置いていってほしくないのなら、わかるニャ?」

 

「・・・うん!!」

 

私は急いで家に戻って飾ってあった一振りの太刀を背負う。私がハンターの免許皆伝でもらった太刀とは別。母さんが使っていた太刀。そして両親の唯一の遺品。それを背負って私は村を飛び出した。

 

―――――――――

 

「ぜぇ・・・はぁ・・・」

 

アーノルドたちを送り出して少し。一瞬で趨勢は決していた。まず勝てない。どれだけ閃を放ってもあの前足に攻撃が防がれる。攻撃も行い、さらに防御まで重厚。勝ち筋が見えなかった。

そして一瞬、息を整えようとした矢先、目の前にジンオウガの前足が迫っていた。

 

「こんな・・・終わりか・・・」

 

だが振り上げられた前足は降りてくることなく、ジンオウガは一瞬で体勢を直して飛びのいた。その直後、俺の目の前が爆発した。

 

「・・・なんで!!」

 

そこには、見送ったはずのアーノルドたちがいた。だが、マギーだけいなかった。

 

「どうして・・・」

 

「マギーには貧乏くじを引かせたニャ。ご主人は一人で戦うつもりらしいなら、ボクらはボクらで勝手にやらせてもらうニャ」

 

そのアーノルドの言葉の直後、ジンオウガの頭上及び背中が爆発し煙とは違う白い霧に包まれた。

だがすぐにジンオウガが霧を突っ切って襲ってきた。それを俺とアーノルドはギリギリで避けた。

 

「あの霧・・・氷結爆弾・・・それも大型・・・」

 

「ニャー鈍るくらいは期待していたけどそううまくはいかないようニャ。なら後は・・・」

 

そのアーノルドのことは通りにローラ、ショット、ボンドがそれぞれの武器を取って俺とジンオウガの間に立った。

 

「「「「まだこんなところじゃ終われないニャ!!」」」」

 

「・・・言ってくれる、っ!!」

 

俺もその後ろで構えて、総員で戦う姿勢を見せる。その姿を見てか、一層ジンオウガの纏う電気が激しさを増した。

 

「っ!!」

 

それを合図に俺とアーノルドが駆け出し、それを迎え撃とうとジンオウガが前足を上げた。

 

「ふっ!!」

 

俺の渾身の一太刀は事前に振り上げられた前足に防がれる。だが、俺の背中を伝ってさらにアーノルドが跳躍する。

 

「足蹴に御免、されど頭を頂戴ニャ!!」

 

アーノルドが一閃しようとするも、ジンオウガが雷を放出して強引にアーノルドの身体ごと消し飛ばして攻撃自体を防ごうとした。

 

「させないニャ!!」

 

事前にアーノルドの身体に巻き付けていたロープをボンドが持ち味の腕力を活かして強引にアーノルドを引き上げた。俺は俺で何とか雷撃解放から脱出した。

 

「なんつー器用な」

 

「助かったニャ」

 

「用意しといて正解ニャ」

 

その間にショットとローラが遠隔武器で攻撃。頭を狙うも、ジンオウガは身をかがめて回避する。だが言ってしまえば弱点の頭であれアイルーの武器など強靭な甲殻で弾けるはず。そのことに違和感があった。

 

「ボンド。さっき氷結爆弾を落とす前、ヤツの上半身に違和感はなかったか?」

 

「うーん・・・なんか、背中・うなじ・頭の一つ線で電気が見えたようニャ・・・」

 

「うなじ・・・髄・・・っ!!」

 

よく見てみるとジンオウガの角が著しく帯電していた。素材に通じているならわかるが、角は帯電するような材質ではなく、余剰の電気を吐き出す噴出孔に似ているのだ。そもそも超帯電状態、つまり雷を纏うなど生物としての機能はジンオウガ自体にはほぼ無い。自身で発生した電気で雷光虫を活性化させることによって莫大な電気を纏うと言われている。そしてその電気を何らかの方法で身体能力に変えているが原理は不明。

 

というか今は関係ない。目の前のジンオウガは通常種よりもさらに膨大な電力が無理に宿っている状態の可能性が高い。実際に戦闘になるまでは普通のジンオウガと差異が無かったのも材料の一つ。仮に縄張り争いで角が折れ、巣から追い出された後、極限まで電力を貯めた末に渓流に現れ、最初に放ったのが最初に見せた前足からの雷撃で変化が起きたとすれば強引だが説明がつく。

 

年月による変化が唐突に蓄積した電気によって引き起こされ、変質したとなれば寿命、活動時間は少ない、もしくは稀に見る激昂したラージャンのように防ぐ器官が無い可能性もある。持久戦に引っ張れば勝ちの目は見えるが、それでもこちらが持つ可能性は低い。

 

「だが、論より実行だ!!」

 

どれだけ理屈を並べようとも、それが崩されたら意味が無い。戦えるだけ戦うしかどの道勝ち筋は無いのである。

 

「さすがに前足にも触れられないか・・・」

 

太刀を当てる程度なら感電しないが、直接防具の手で触れると纏った電気に感電する可能性もある。だから最初の前足を踏みつけることは無理だろう。相手も本能的に角を守りたいのか、ショットとローラの攻撃は避けている。

 

「元々絶縁体の鱗があるとはいえ頭部分は薄い。そこに過剰な電気が流れれば暴発の危険を本能で察知しているのか?」

 

「どの道、時間を稼げば村のみんなが逃げれるニャ」

 

「そうだなっ!!」

 

さらに駆け出して一閃しようとするも前足に阻まれる。そしてジンオウガの纏う電気がさらに激しさを増し、ついには纏う電気によってショットとローラの攻撃が撃ち落される、無効化され始めた。

 

「くそっ・・・」

 

攻撃が効かないと見るや、ジンオウガは最大級に電気を纏い、俺目掛けて駆け出した。止めようとショットとローラが攻撃しようとするもあふれ出る雷撃が離れている二人にも牙をむき、攻撃できずにいた。

 

「くっ!!」

 

咄嗟にアーノルドとボンドを抱えてそのまま遠くへ投げた。どの道狙いは俺だ。全く目を放してくれないからな。

 

「・・・っ」

 

「こんのぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

再び死を覚悟した矢先、聞こえるはずがない声が響き、そのまま鋭い一閃が無防備なジンオウガの真横から放たれた。

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