その手に握る刀は何のために 作:ユウヤ
一瞬で距離を詰めたレイナが死角であろう横合いからジンオウガの角めがけて太刀を振り下ろした。そして太刀が纏っている気刃の色は赤だった。
「れ・・・レイナ・・・」
「おれ・・・折れろぉぉぉぉぉ!!」
上から振り下ろした太刀にレイナはそのまま峰へ片腕を叩きつけた。体重、腕力が極度にかかり、超帯電状態で柔らかくなったと思われる角はその渾身の一手で折れた。
「ゴァァァァァァ!?」
突如としてジンオウガの頭部分で莫大な電気を纏った爆発を起こし、ジンオウガすらのけぞりそして転がりまわっていた。
「痛てて・・・ちょっと痺れた程度か」
「レイナ、大丈夫か!!つーかなんで来たんだ!!」
「う、うっさい!!こっちだって事情があるの!!」
「だからって、普通のジンオウガにすら「うっさい!!」っ」
「ここで逃げたとしてもまた戦うことになる。なら、手負いの今、なんとしてでも仕留めないと。そうでしょ?」
「だが・・・」
「アンタ、リンって奴を探してんでしょ」
「んなっ・・・なぜそれを・・・」
「一つ質問。アンタは『ユクモ村のリン』を実際に見たことがあるの?伝え聞いたの?どっち?」
「・・・見た。つーか会って話した。だけどそれは今関係「なら話は早いわ」?」
「・・・お母さん。少しの間だけでいい。母さんが守ってくれた村と私。そして私が守りたい物を・・・もう一度だけ守って」
その瞬間、レイナの持つ刀が再び赤色の気刃を纏った。
「長くは持たない。だから、いっきに決着をつけるわよ」
「っ!!後からきていいとこだけ持っていきやがって。わかった。終わったら知ってること全部話せ」
「「シッ」」
合わせなくてもわかる息の合ったタイミングでの突貫。目指すは何とか立ち直ったジンオウガの頭。
「っらぁ!!」
まず俺が一手早く太刀を振り込んでジンオウガの防御を誘う。そしてそれは上手く引っかかった。
「せい!!」
そしてレイナの二ノ太刀がジンオウガの頭を捕えた。
「グァ!!」
だがジンオウガも抵抗を見せ、折れた方の角で強引に頭をレイナの太刀から守り、カウンターの電気放出をするが片角が折れて放出が上手くいかないのか再び電気の爆発を起こした。だが今度はのけぞるほどではなかった。こちらは電気放出前に距離を取る。
「どうすればいい?」
「恐らく電気放出自体で寿命自体に直接ダメージがあるはず。だがどれだけ必要かわからない以上、まだ残っている方の角を狙う。そうすればさらに機能不全を起こしてダメージを与えられるはずだ」
「なら今度は私が先ね」
「防御に回るとはいえ、かなり腕力があるから気を付けろよ」
「「ッ」」
そして再び同時に突貫。今度は宣言通りレイナが先に防御を誘う一太刀を放ちジンオウガが引っかかる。
だがその間に俺はさらに踏み込みジンオウガの側面にまで進んでから太刀を振るった。
「これなら反対の角も使えんぞ!!」
言葉通り、ジンオウガは頭をひねってでも残りの角を守ろうとするも俺の太刀の方が早く、残りの歪な方の角を切断した。そしてさらに角が電気を放出し暴発する。
「グァァァァァ!!」
恐らく制御器官の角を両方欠損し、残る背中の帯電殻だけでは足りないのだろう。既にジンオウガの足は震えているように見えた。だが、その目の闘志は消えるどころかさらに燃えているように見えた。
「ガァァァァァ!!」
ジンオウガは両前足を叩きつけるように前に出し、おそらく最大限電気を放出し始めた。
「な、なにをするつもりなの・・・?」
「恐らく、俺たちを近づけさせないつもりだ。例え自身の方が先に倒れることになろうとも」
「・・・っ」
「どれだけ持つかはわからん。だからと言って逃げては意味が無い。ここで、仕留める!!」
俺は手に持つ『祈刀・凛然』に一気に気刃を集中させる。こんな機会、それこそメゼポルタで本当の極限個体を討伐した時以来だ。事前に防具に仕込んであるモンスターの増幅器官。それが俺の気刃に反応して防具が展開されて一気に気刃増幅の手助けとなる。
「ちょっ!?なんなのその姿!!」
レイナからすれば俺もプチジンオウガじみてるだろう。そして俺は刺突の構えを取る。近寄れないならこの距離で放てる技に全てをかける。が、何故かレイナも同じ構えを取った。
「・・・ひと時の赤の気刃と言えど、教えていない俺独自の技を見様見真似で放てるわけねーぞ」
「そりゃやってみないとわからないでしょ。で、コツは?」
「・・・とりあえず気刃を太刀と体にに纏わせる時の感覚を最大限太刀だけに集中させろ」
「ぬ・・・おぉ?ちょっ、抑えきれない、タスケ」
「・・・マジでやりやがったが、そうなるよな。とりあえず二人分あるなら威力は十分だ。一気に突き出せ!!」
俺とレイナの二人揃っての気刃突破。レイナの方は不安定ながらもそれなりの衝撃波を発生させた。
そして甲殻同士の間隔を開いて最大限電気を放出しているジンオウガはほぼ無防備。
そこに俺たちの気刃突破が迫る。
「グルアァァァァァ!?」
予想していない攻撃。すり減った肉体と精神への耐えきれない双撃。そして制御できない電気放出がさらに手を付けられなくなった刹那。ジンオウガからここ一番で全周囲に衝撃波が出るほどの電気放出が起こる。
「ぬぅ・・・」
「きゃぁぁぁぁ!?」
だが電気放出が止むとジンオウガは力尽きたのか倒れた。元々いたであろう雷光虫は途中の変化を感じて逃げてしまったのか、雷光虫霧散での討伐確認ができずにいた。
「倒したの・・・?」
「多分、な・・・」
衝撃波に備えて低くしていた姿勢を戻して背後から近寄り、トドメの一撃をジンオウガの首に放ち、両断した。いくら何でも首なしで動かないだろ?動かないでくれ・・・。
「ふぅ・・・あれ・・・」
それと同時にレイナの張っていた気が解けたのか気刃も消え、そして倒れそうになる。
「しまっ・・・!!」
「・・・ふん!!」
全力で駆け出して倒れるのを防ごうと手を伸ばす前にレイナはさらに横に足を出して自力で踏ん張りやがった。
「・・・無理、しなくていいぞ」
「大丈夫。歩けるから」
「そうか」
お互いの無事を確認して太刀を仕舞う。が、
「「「「ニャー!!」」」」
「おわっ!?」
突然の裏切り、もとい四人のアイルーによる突撃を受けて倒れてしまう。
「お前らなぁ・・・」
「心配したニャ!!」
「・・・すまんな」
「まぁ、無事で何よりニャ。それよりも、マギーが発つ前に村に戻るニャ」
「・・・そうだな」
とりあえず、言われた通り全員がフラフラとしながら村を目指した。
ここまで書きましたが、何か相違点、感想等ありましたら一言でも書いていただければ今後のエネルギーにできます。よろしくお願いいたします