その手に握る刀は何のために 作:ユウヤ
「ほ、本当ですか!?」
何とかマギーが発つギリギリ前で村にたどり着き、這う這うの体で村長にジンオウガを討伐したことを報告した。安堵したのか、いつも毅然としてた村長が倒れこむほどであった。
だがそれを見て確信したのか、先代の番頭さんが逃げ支度を中断していた村の人たち全員に分かるほど大きくガッツポーズをした。その瞬間。響くような歓声が沸き上がった。安堵、喜び。その感情が爆発したのだろう。
「す、すごいわね・・・」
「あぁ、そうだな。そしていい人たちばかりだ」
逃げ支度はほぼ完了しているはず。なのに完全に逃げている人はいないように見えた。それだけ、レイナが信頼されているということなのだろう。
「・・・一応、応援に行くこと、村長さんに言ったんだよな?」
「・・・さぁ?」
「・・・は?」
はい、手のひら返します。レイナへの信頼ではなく、どうやら村長が毅然と座っていたから誰も逃げようとはしなかったのだろう。さっきのレイナへの賞賛と感動を返せ。と、目線で訴えるもどこ吹く風。
「そういえばさっき知ってること話すって」
「あ、なんか呼ばれてるよ。おそらく祭り・・・というか捨てていく荷物でなんかやるってさ。準備が整うまで休憩していいってさ。じゃ、後で」
そう言ってそそくさとレイナは逃げるようにして離れていった。
「・・・騙された?」
口にしておいてなんだが、そんなことは無いだろうと俺も自分の家に戻って寝ることにした。昼すぎに出発してもう空は夕暮れに差し掛かっていた。祭りはいつやるのだろうかと思いつつもすぐに寝てしまった。
――――――――――
そしてポンポン、と太鼓や楽器の音が耳に入って目が覚めた。完全とはいかないが疲労はほぼ無いに等しい。夕暮れ時に寝て今は夜。たった少し寝たとはいえ我ながらかなりの回復力だ。
「さしずめ俺もまだまだいけると思ってそうだけど、残念。ご主人は一日寝てたニャ」
唐突にどん底に落とされるような、というか見透かされて結構恥ずかしい。何せガッツポーズまでしてたのを見られていたのだろう。というかすぐとこに布団を敷いて五人が揃ってこっちを見て寝ころんでいたのだから・・・。
「いい人ばかりにゃ。流石に当日は疲れているだろうと。ニャら荷ほどきと準備を一日かけてやってやろうってニャったんだと」
「お、おぉ・・・」
「で、レイナさんは先に復活して待ってるニャ」
「さいで」
俺もアイルーたちと一緒に家を出た。するとそこには小さな村ながら立派な屋台が数件と祭り櫓まで作られていた。
「すげーな。規模こそ違えど建築の速さで言えばドンドルマレベルだぞ」
「そりゃどうも」
と、横からレイナがやってきた。
「さぁ、主賓の到着よー!!みんなー!!楽しんでー!!」
何故か手を掴まれそのまま上に掲げさせられた。そしてそれを合図に集まっていた村の人一同が各々の行きたいところに歩き始めた。
「じゃ、ユクモ村の祭りは初めてだろうから私自ら案内してあげる」
「おい、それよりも・・・おぉい!?」
何故か話題を進めさてもらえないが、これはこれで悪くは無いのだろうと思うも、やはり俺はレイナの手を強引に払ってしまった。
「あ・・・すまん」
でもなぜかレイナの顔は驚きよりもにやけた顔だった。
「な、なんだよ・・・」
「そんなに気になって、義理立てというか、そういう事なんだ。ま、そっちの方が嬉しいわけなんだけど、じゃ、さっさと済ませましょ」
そう言ってまた腕を掴まれて今度は川原に連れてこられた。
「で、ようやく話してくれるのか?」
だがその返答は木刀が投げられてきた。
「どういうつもりだ?」
「こっちで話した方が早いんじゃない?」
「・・・俺たちはハンター。狩りが生業なので会ってひたすら武技を磨く武芸者じゃないから剣で語り合うなんて・・・おわっ!?」
「先手必勝!!」
問答の余地なしで何度も切りかかってくるレイナ。仕方ないから経験の差で黙らせようかと思うが・・・
「おろ・・・?」
何故かレイナの剣閃を完全に捌ききれない。疲れがまだあるのか・・・感覚がつかめないでいた。
「ふふっ。何考えているか当ててあげようか?『どうして裁けないんだ』でしょ?」
「っ!?」
「そりゃそうでしょうね。修行してた時だけが私の剣を振ってる時間なわけないでしょ。私は小さいころからずっと、いつか来るかもしれない今日のこの機会のために剣を練習したんだから!!」
いつも受けていた感覚が通用しない・・・。ならば!!
「うっ・・・いつもの勘から本来の勘に切り替えたわね。そうこなくっちゃ!!」
ただのじゃれ合いで済ませるはずが、何故か本気のぶつかり合いに発展していた。
勘だが今降参したら何もつかめず終わるだろう。その前に降参するのが何故か悔しい思いでいっぱいである。
「・・・懐かしい感じだ」
その言葉を区切りに一瞬レイナは笑ったように見えたがすぐに本気の顔に戻ってさらに剣閃が鋭くなる。
だが、何とか一撃を完全に弾くことができ、さらに追撃、トドメが届く。
「届く?残念!!」
だが、俺の木刀が届く前に俺の視界は一気に回転した。その上頭部に衝撃を受けた。レイナのタックルを受けて二人もろとも倒れたらしい。
「これも・・・覚えている・・・?」
「んな・・・まさか・・・」
「アンタが知っているリンていう女の子、実は私の事って言ったら信じてくれる?」
レイナが起き上がるのに合わせて俺も起き上がるが、ちょっと顔を合わせずらかった。頭の整理も追い付いていない。
「その・・・本当なんだよな?」
「・・・うん」
「当人から託されて真似してる、わけじゃないんだな?」
「うん」
「じゃぁ、リンってどうして名乗ってたんだ?」
「その・・・さ、レイナって、リオレイアに似ていてなんかやだなって。まるで狩りの対象みたいでさ。だから・・・その」
「いつ、その、俺に気が付いたんだ?」
「その・・・昨日さ、私の防具の様子を見にアンタの工房に入ったとき、アンタが寝言で『リン』って呼んだのよ。それにアンタが『ユウ』ならさらに説明がつくわけで。最後にジンオウガに挑む前に確かめたってわけ」
「そういうことか・・・はぁ・・・」
「ちょ、大丈夫?もしかしてさっきの頭痛かった!?」
「いんや。世界は広いようで実際はとっても狭いんだなって」
「何さ。哲学?」
俺が寝ころんだのを見て大丈夫だと思ったのか、リン、いいやレイナも横に寝転んだ。
「最初からここに来ておけばと思ったが、すぐに来てもまた文字通りの泥仕合になりそうだな」
「そうね・・・ねぇ、もしかして・・・」
「あぁ、俺の両親ももういない」
「そう・・・」
「忘れるなんてできないけど、今はその・・・再会の喜びに浸っていいか?」
「うん、私も・・・そうする」
どっちから手を寄せたなんてわかんない。
だけど俺たちは同じタイミングで手を握った。
「夜空、綺麗でしょ?」
「あぁ、そうだな」
「ねぇ・・・村に近づいたジンオウガは討伐。つまりユウの依頼は完全に終わったのよね?」
「・・・そうだな」
「・・・もう、出ていくの・・・?」
「正直に言っていいか?」
「・・・うん」
「俺さ、メゼポルタに作ってた工房の設備もほとんど売り払って、鍛冶を教わった師匠直伝の炉用の石と武具だけ持って村に来たんだよな。当然素材はギルド倉庫にあるからまぁ、いいんだが・・・。そのさ、拒絶されない限り骨をここに埋める覚悟で来たんだよ」
「・・・へ?」
「いやさ、ハンターっていつ死ぬかすらわからないんだ。だからもし、リン・・・レイナが死んでいたら俺が代わりに村を守るって勝手に覚悟決めてたから・・・その・・・」
「・・・そう。なら、好きなだけいれば?」
「いいのか?」
「だけどその代わり」
唐突に顔を強引にレイナの方に向けられてレイナもこっちを見てた。
「絶対に、離れないで・・・置いていかないで」
そういったレイナの手は震えていた。俺はその手を握って向き合う。
「あぁ、離れないし、離さない。そっちこそ、勝手に置いていくようなこと、しないでくれよ?」
「うん・・・うん!!」
そのまま二人で笑顔を浮かべていたわけだけど・・・
なーぜかいつの間にか剣呑な雰囲気になってしまった
「まだ?」
「は?顔向けて来たの、そっちだろ」
無言の見つめ合い。
「臆病野郎」
「後出しずる女」
悪口こそ言い合うも
自然と顔は近づいていた
――確かに唇に暖かい感触が残ったのは覚えている――
その後どれだけ呆然としていたかわからない
だが突然打ちあがった花火で余韻は消え去った
とりあえずお互い恥ずかしそうに起き上がるもしっかりと手を握って村の明かりに向かって歩き出した
二人の過去については中盤でやろうかと思いましたが、開けていた間隔でかなりのモンスターも増えたので中盤にたくさん小話を差す前に先に決着に変更しました。
今後はユクモ村を中心に本当は出現しないモンスターも生態系に合わせて出しながら
本当の敵に向けさせようと思います。今後ともよろしくお願いいたします