その手に握る刀は何のために 作:ユウヤ
第一話 ユクモ村の小さな守り手
「せい!!やぁ!!」
「グルゥ・・・フォウ!!」
私は今この渓流に住む鳥竜種の親玉、ドスジャギィを相手取っている。先日、村の人が渓流へ筍を取りに来た時に発見して私が討伐に来ていた。既に取り巻きのジャギィ・ジャギィノスは討伐している。群れで行動させると非常に厄介だからだ。
「ウォッフォ!!」
色々と考えているとドスジャギィが身体を引いて、一気に突っ込んできた。ドスジャギィの一番危険な行動、タックル。これだけは食らってはいけない行動だ。それを右に転がることで回避する。タックルで私を通り過ぎたことでドスジャギィは私に背中を見せる。その隙を逃さず無防備な背中に向けて背中の太刀を抜刀し一気に斬りつける。
「フォァァァ!?」
「やぁぁぁ!!」
ドスジャギィが私の斬撃で怯んだところをさらに追撃する。太刀使いの技、気刃斬りを放つ。
「ふっ!!せい!!やぁぁぁ!!・・・あれ?」
最後の振り下ろしの前に気刃が解けてしまったのだ。まだ私はハンターになって一年ちょっと。まだ完全に気刃は習得していない。おかげで呆けた隙にドスジャギィは逃亡してしまう。
「しまった・・・あの方向はジャギィたちの巣だったはず・・・ちょっときついわね。」
文句を垂れつつ私は回復薬を飲み、武器の切れ味を戻して準備を整えてドスジャギィが逃げた巣へ向かう。すると案の定、ドスジャギィは眠っておりその周りをジャギィやジャギィノスが囲んでいた。かなり面倒だ。だが放っておけば削った体力は完治とまではならないけど回復してしまう。ここは腹を括って突っ込むしかないようだ。
「くっ・・・はぁぁぁ!!」
掛け声と共に私はジャギィの群れに突撃する。私の声に反応してジャギィたちが私に気づいて吼える。それが広がって他のジャギィたちも私に反応する。ジャギィたちの鳴き声でドスジャギィが起きる前にできるだけ数を減らす。私は背負った太刀・鉄刀の柄に手を掛けて近づいてきたジャギィに向けて抜刀し斬りつける。それだけでは倒しきれなかったが追撃で気刃できりつけて倒す。加えて連撃で近づいてきたジャギィたちを斬り払う。しかし少し遅かった。
「フォォォ・・・フォァァァ!!」
眠っていたドスジャギィが起きてしまったのだ。加えて息が荒い、怒っているのだ。おかげでほとんどの攻撃が致命傷となる可能性が大きくなったのだ。だが私は鉄刀を握り締めてドスジャギィに突撃する。逃げた時には僅かに足を引きずっていたように見えた。そして眠っていた時間は僅か。ここで一気に決める!!
「ふっ!!せい!!はぁぁぁ・・・!!」
一気に勝負を決めるべく私は握り締めた鉄刀に気を込めそれを開放する。幸運なことに一太刀目の右袈裟斬りでドスジャギィが怯んだことでさらに左袈裟斬り、そして左右の逆袈裟斬りを放ち最後に先ほどは失敗した振り下ろし時にさらに集中して気を込めて叫びと共に放つ。
「やぁぁぁ!!」
「フォァァァ!?」
何とか成功した気刃斬りを受けてドスジャギィは断末魔のような甲高い声を上げて倒れた。何とか討伐完了だ。親玉がやられたことでまだ生きているジャギィやジャギィノスはどこかへと逃げていった。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
完全に巣が空っぽになったことを確認して私は膝をついて座り込んだ。当然息は荒い。気を使いこなせていないので疲労は余計大きくなる。少し休んで息を整えてからドスジャギィから素材を剥ぎ取ってユクモ村への帰路に着く。
ユクモ村に着くと村のみんなが村の中心、いつも村長が座っているところに集まっていた。集まっていた人の誰が気づいたのかはわからないが戻ってきた私を呼ぶ。私も何の集まりか気になってその集団に足を向ける。すると集まっていたみんなが流れるように私に道を作ってくれる。その道を歩くと予想通り村長と見慣れない人物の前に辿り着いた。
「お帰りなさい、レイナ。無事ドスジャギィは討伐できたようですね。」
「はい。」
「レイナ、こちらの方が今日付けでユクモ村に手を貸してくれることになったハンター、刀神のユウヤさんです。それでユウヤさん。こちらがレイナ。ユクモ村のハンターです。年齢は二人とも同じでしたね。」
「村長さん、その呼び方は勘弁してください。えぇっと、ユウヤだ。よろしく頼む。」
「よろしく・・・刀神ですって?」
「刀神の名前はロックラックで修行していたあなたでも知っているでしょう?」
「へ~・・・で、その
新しいハンターを募集していると言うことは知っていたけどまさか募集に応えてきたのが有名な刀神だとは思わなかった。これでは私の居る立場が消えたと宣言されたようなものだった。そんなことを思っている私のことなど知らんとばかりに刀神は口を開く。
「だからその呼び方は止してくれ。知り合いに頼まれたって事もあるけど、実際のところこの村にはちょっと縁があってな。まぁ、そんなところだ。」
私は内心思う。いくら私が修行のために数年村を空けていたとはいえその数年にコイツが村に来たなんて事は聞いたことが無い。加えて幼少からこの村に住む私の記憶にはこの人物に相当する記憶は無い。よって私はコイツに敵意を込めた視線を向ける。それに気づいたのか村長は溜息をつく。
「レイナ、失礼ですよ。それでレイナ、この際あなたはユウヤさんの弟子になってみてはどうでしょう?」
「え・・・はい!?一体何を言っているんですか、村長!!」
「そう声を荒らげないで。まだあなたはハンターになって日も浅い。なにより太刀使いにとって必須の気刃を使いこなせてないでしょう?それに年齢はあなたと同じですから気軽に聞けるはずです。」
「でも・・・。」
「許可ならユウヤさんは了承してくれています。後はあなた次第です。」
「・・・わかりました。」
「では話は決まりですね。それとユウヤさんの家はここを少し行くと空き家があります。あなたの仕事をするには十分でしょう。」
「何から何までありがとうございます。」
「それではレイナのこと、よろしくお願いしますよ。」
「え?あ、はい・・・。」
かの刀神と言われる奴がたじろぐ姿を見るのはいい気分ね。
「ではレイナ、彼を案内してあげてください。」
「わかりました。こっちよ、刀神サマ?」
嫌味、皮肉その他諸々を込めて私はコイツを呼ぶ。顔をしかめながらコイツは近くにおいてあった荷車を引いてついてくる。少し歩くコイツの家に到着する。
「ここがアンタの家よ。小さいけどね。」
ここでも私は嫌味を100%込めて言う。だが何も反応は無かった。それに苛立ちを覚えながら私は中に入るように促す。そして少し進むと私は勢いよく振り返り手刀を奴に突きつけた。
「・・・。」
「これは忠告よ。村長はアンタのことを良く思っているようだけど、私は違う。何を考えているか知らないけど、もしそれが村に害を与えることだったらその命は無いと思いなさい!!」
「・・・。」
そう言った瞬間、コイツの手刀が私の首に突きつけられていた。突きつけられるまでの動きが何も見えなかった。後悔先に立たず、まさにその言葉通り私はとんでもない奴を敵にしてしまった。