その手に握る刀は何のために 作:ユウヤ
「ふぅ・・・やっと着いた・・・。」
竜車に半日揺られ、次に船に半日掛けてようやくドンドルマのある西方大陸から東方大陸のタンジアの港に到着した。そしてそこからユクモ村行きの竜車に数刻揺られてようやく目的地、ユクモ村に着いた。
「すまないが救援依頼を受けてやって来たハンターだ。ここの村長さんに会えないだろうか?」
「おぉ!!こんな辺境にご足労痛み入ります。すぐに村長にお会いしてください。」
村の門番にギルド印の入った紙を見せて話を通すとすぐに村長に会えるようだ。門番に案内されて俺は村長の前に来た。
「まさかあなたが来るとは思いませんでしたよ。お久しぶりですね、ユウヤさん。」
「お久しぶりです、村長さん。」
俺は小さい頃、両親と一緒にこの村に来たことがあるのでここの村長とは面識があった。
「あなたの活躍はこんな遠くまで届いていますよ。昔はあんなに小さかったのに今ではハンター屈指の太刀使い・刀神まで成長するとは驚きですよ。」
「その呼び方は止めてください。」
「それであなたに頼みがあるのですが、この村唯一のハンターへの指導をお願いしたいのです。まだハンターになって日が浅いのです。今までは周辺のモンスターはおとなしかったのですが今ではこの村近くまで大なり小なり近づいてくるのです。今のあの子では良くて中型が精一杯。それ以上となると到底太刀打ちできません。どうかお願いします。」
「別に構いませんよ。そのハンターさんは?」
「今は近くに巣を作り始めたドスジャギィの討伐に赴いています。そろそろ帰ってくるでしょう。」
村長がそう言っていると俺と村長の前に一人の少女が来た。どうやらこの少女が村長の言う村唯一のハンターのようだ。
「お帰りなさい、レイナ。無事ドスジャギィは討伐できたようですね。」
「はい。」
「それで、こちらの方が今日付けでユクモ村に手を貸してくれることになったハンター、刀神ことユウヤさんです。」
「だから村長さん、その呼び方は勘弁してください。えぇっとユウヤだ。よろしく頼む。」
「・・・よろしく。刀神ですって?」
「刀神の名前はロックラックで修行していたあなたでも知っているでしょう?」
「その
いきなり敵意むき出しの目を向けられたが気にしないでおく。
「だからその呼び方は止してくれ。知り合いに頼まれたって事もあるけど、実際のところこの村にはちょっと縁があってな。まぁ、そんなところだ。」
「レイナ、失礼ですよ。それでレイナ、この際あなたはユウヤさんの弟子になってみてはどうでしょう?」
「え・・・はい!?一体何を言っているんですか、村長!!」
「そう声を荒らげないで。まだあなたはハンターになって日も浅い。なにより太刀使い必須の気刃を使いこなせてないでしょう?それに年齢はあなたと同じですから気軽に聞けるはずです。」
「でも・・・。」
「許可ならユウヤさんは了承してくれています。後はあなた次第です。」
「・・・わかりました。」
「では話は決まりですね。それとユウヤさんの家はここを少し行くと空き家があります。あなたの仕事をするには十分でしょう。」
「わかりました。」
「ではレイナ、彼を案内してあげてください。」
「わかりました。こっちよ、刀神サマ?」
やはりこの子は俺に敵意を向けてくる。まぁ、当然だろうな。自分で言うのもなんだがいきなり格上が来て弟子になれと言われたんだ。そりゃぁ敵意の一つ向けたくなるだろう。それと刀神は止めて欲しい。俺はそう思いながら荷物を積んである荷車を引いて後に続いた。石を積んでいるのでかなり重い・・・。
「ここがアンタの家よ。小さいけどね。」
促されるように中に入り少し進んだところでレイナは歩を止めてこちらに振り返る。それと同時に手刀を俺の首元に突きつけてきた。
「これは忠告よ。村長はアンタのことをよく思っているようだけど、私は違う。何を考えているか知らないけど、もしそれが村に害を与えることだったらその命は無いと思いなさい!!」
「・・・。」
その瞬間俺の何かが動いた。俺は本能に任せて手刀をレイナの首元に突きつけた。どうやらレイナは俺の動きが見えなかったのか、一瞬で手刀を自分の首に突きつけられていることに驚きを隠せないでいた。
「別に敵意を向けられることは構わん。それにお前が教わる気が無いなら俺も別段口を挟む気は無い。好きにしろ。」
俺がそう言い放つとレイナはバツが悪そうに腕を下ろす。俺もそれを確認して同じように腕を下ろす。
その後レイナはバツが悪そうに自分の家に帰った。俺は一人荷物を家に運び込んだ。あらかた運び込むと村長がやって来て案内したいところがあると言われてついていくと目的地は小さな川原だった。
「村長、ここは?」
「誰も使ってない場所です。あなたもこんな小さな村では色々と不便でしょうし自由に使ってくださいな。」
「それはありがたい。ご好意、感謝します。」
「それでは、がんばってください。」
そう言って村長は川原を後にした。俺は村長を見送るとすぐにこの場所を調べ始めた。川を見ると魚が悠々と泳いでいた。好物件すぎる。加えて畑にできそうな平地もあり何も困ることは無いだろう。それとどことなく懐かしい気がした。一応小さい頃にここを訪れたことがあるからその時にでも来たことがあるのだろう。俺は調べ終わるとさっそく家の改造に入る。
「まずは炉を作り直さないとな・・・。」
俺は他のハンターと違って一定の場所に腰を下ろすようなタイプではなく、各地を転戦するタイプだった。おかげで炉の作製・解体には慣れてしまった。一時間ほどして炉は出来上がった。長旅の疲れもあるがこれだけは一番最初に造っておきたいのだ。作業をしていると日が暮れてきた。俺は一旦作業を中断して夕飯の準備をした。準備とはいってもあらかじめ持ってきたパンと野菜とこんがり肉を出しただけだった。それを食べながら粗方完成した炉に火を入れて空焼きする。これで石材同士を接着するためのモルタルが乾く。そうしている内に時間は過ぎていく。長旅の疲れもあって眠気が凄い。俺は火が完全に落ちたのを確認すると着替えを持って外に出た。やっぱユクモと言ったら温泉だ。村自体は小さいが湯治場としての名は海を越えたドンドルマまで響いているのだ。長旅の疲れと先ほどまでの作業の汗を流すため集会浴場に向かった。
「ふぅぅぅぅ・・・。やっぱ懐かしいな。」
たまにお湯を掛けながら温泉を楽しんだ。そして温泉を出て着替えてちょっとした部屋に行くとやはり昔と同じようにドリンク屋のアイルーがドリンクを売っていた。
「ニャ、新しいハンターさんニャね。どうですかい?ユクモ自慢の温泉は。」
「昔来た時と変わってなかったから安心したよ。」
「それはニャンと。何時頃ですかニャ?」
「もう12年は前かなぁ。」
「それニャら先代の時ニャね。オイラは三年前に先代からこの店を引き継いだんだニャ。でも心配しニャさんニャ。品揃えは増えても減ることはニャいんだからニャ!!」
「それじゃぁ、ユクモミルクコーヒー一つ。」
「毎度ありニャ。」
やっぱ温泉と言ったらコーヒー牛乳だろう。
「あ、私もミルクコーヒー一つ。」
「毎度ニャ。」
「お?」
「げ・・・。」
「ほい、ミルクコーヒーニャ。レイナの旦那、今日もお疲れニャ。」
「え、えぇ・・・ありがと。」
「おっとハンターさん。」
「ん、俺か?」
「まだ名前を聞いてなかったニャ。オイラはモミ。よろしくニャ。」
「俺はユウヤだ。今後ともよろしく。」
そう言って俺もボンからミルクコーヒーを貰う。そして店から少し離れたところで一気飲みをする。やっぱ風呂の後はコーヒー牛乳一気飲みに限る。
「「プハァァァ!!」」
「「ん?」」
「「・・・。」」
「「ちっ・・・。」」
どうやら考えは同じだったらしく隣でレイナがコーヒー牛乳の一気飲みをしていた。それを見てなぜかレイナと行動がかぶったことに苛立ちを覚えた。いや、この場合は闘争心と言った方が良いか。どちらにせよ何故行動がかぶったことぐらいで闘争心を覚えたのか、それだけはわからなかった。その後少々にらみ合いをしたがキリがないのでさっさと空き瓶を返して家へ帰った。