その手に握る刀は何のために   作:ユウヤ

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第三話 猛る猪と迫る影

ユクモ村に来て二日目の朝、俺は朝食と手早く済ませて昨日村長から貰った川原を整備をしていた。午前は少し身体を動かせるような広さを確保するため地ならしをした。元々平らだったので時間はかからなかった。今は少し休もうと思って川に釣り糸を垂れていた。釣り糸を垂らしながら夜までの予定を考えていた。

 

「今のところサシミウオが二匹とハリマグロ一匹か。まぁ一時間未満でこれは結構良いな。」

 

目の前の水面には多くの魚が遊泳していた。それを見て次はどいつが釣れるかなと思っていたその時だった。

 

ドボンッ

 

いきなり重い音と共に水面に波紋が立つ。おかげで撒き餌に寄ってきた魚が逃げてしまった。どうやら背後から石を投げられたようだ。犯人を見るため俺は背後を向いた。

 

「何のマネだ?」

 

石を投げ入れた犯人はレイナだった。そのレイナは挑発的な目を向けてくる。おかげで俺の機嫌は一瞬で斜めになる。

 

「別にぃ?それよりも村長が呼んでいるわ。依頼よ、依頼。着いて来なさい。」

 

俺は苛立ちを抑えつつ釣り糸を回収する。家に立ち寄り、釣ってきた三匹を氷結晶でできた保存箱に移してから村長の下に向かった。

 

「いきなりお呼びしてすみません。今朝渓流に竹を取りに行った村人の報告でファンゴの群れが山を降りてきたそうです。群れの中にはドスファンゴもいたとのこと。これでは村人は渓流に出かけることができません。ユウヤさん、レイナを連れてドスファンゴを討伐してきてもらえないでしょうか?」

 

「お前は良いのか?」

 

「すーっごく癪だけど仕方ないわ。今はアンタのほうが上だからね。すぐに準備してきなさいよ。遅かったら私一人で行くからね。」

 

「では、よろしくお願いします。」

 

集合は十分後となった。ドスファンゴなら特別これと言って準備をする必要は無いだろうと思い俺は武器箱から鬼哭斬破刀・真打を取り出して背負う。単純火力なら一瞬に終わるだろうが今回は俺は手を出さない予定だ。防具は軽装と言うことで籠手と具足を着けるだけにした。まぁ、そんなことをすれば当然・・・。

 

「何その格好。舐めてんの?」

 

「俺の装備は手入れが大変なんでな。それにどっちにしろ一人で狩るつもりだったんだろ?それなら俺は別段装備は最低限で良いだろ?」

 

当然レイナに喧嘩を売ったことになってしまう。加えてレイナの本心を当ててみるとどうやら図星だったらしく舌打ちをしていた。

 

「・・・行くわよ。」

 

「りょーかい。」

 

そう言って先行するレイナの後に続くように村を出た。

 

「さっきあんな事言ったんだから手は出さないでよね。」

 

「一々しつこいな。」

 

売り言葉に買い言葉。どうも俺とレイナは相容れぬ性格のようだ。その後も俺たちは言い争いながらドスファンゴがいそうな場所に向かった。

 

「・・・いたぞ。」

 

地図で言うとエリア7に入ると俺はドスファンゴの気配を感じ取った。遅れてレイナも気配を感じ取ったようでユクモノカサを被り直し、背中の太刀を抜き放つ。さらに進むとドスファンゴと数頭のファンゴの群れを確認できた。

 

「ドスファンゴには手は出さんが取り巻きのファンゴくらいだったら良いだろ?」

 

「好きにすれば。くれぐれも邪魔はしないでよね!!」

 

そう言い放ってレイナは群れの中心に突っ込んでいった。

 

「いくらなんでも無謀すぎる。」

 

そう思いつつ俺もファンゴ目掛けて突撃した。

 

 

 

「ふぅ・・・ファンゴは片付いたな。後は・・・。」

 

視線を狩り終えたファンゴから遠くでドスファンゴと戦っているレイナに向ける。動きは雑に見えるが理にかなっている。そう思っているとドスファンゴはレイナの攻撃で転倒した。その隙にレイナは気刃斬りを放つ。村長の言うとおり気刃を完全に習得できて無いようで最後の振り下ろしの前に気刃が解けてしまう。原因はいくつかあるが一番有力なのは集中力の持続性だろう。レイナもこれに当てはまる。

 

「っと、そろそろ終わりか・・・。」

 

最初から猛ラッシュをかけていたおかげで気刃が決まらなくともかなりのダメージを与えていたらしく、ドスファンゴは逃亡を図る。

 

「問題はあるが一番は本人次第だから・・・って、マズイ!!」

 

いきなり大きな気配を感じ取った俺は急いで逃亡するドスファンゴを追うレイナ目掛けて走った。

 

「伏せろ!!」

 

「ちょ!?何すんのさ!!キャァ!!」

 

レイナの抗議は無視で俺はレイナを巻き込んで転がり込む。その上をものすごいスピードで何者かが通過し、逃げるドスファンゴにトドメを刺す。それを見ていると腕の中にいたレイナが暴れだす。

 

「いいから放せ!!」

 

俺は突き飛ばされた。当然レイナは敵意どころか殺意を込めた視線を向けてくるが俺は気にせずある場所を指差す。一応俺たちとドスファンゴ以外に何かがいることはわかったらしくレイナは渋々その方向を向く。

 

「え・・・嘘、そんな!?」

 

俺が指差した場所を見てレイナは驚愕する。指差した場所いるソイツは得物を仕留め、さらに俺たちという新たな得物に狙いを定め地面に降り立つ。陸の女王、リオレイアのお出ましだった。

 

「そんな・・・。」

 

依然驚愕したレイナの表情はさらに悪化した。既にレイナは恐怖に支配されていた。その証拠にもう耐え切れなかったのか膝を突いて座り込んでしまう。それが合図となったのかリオレイアがこちらへ向かって突進してくる。

 

「ゴァァァ!!」

 

「ちぃ!!」

 

状況は悪いまではいかないが少なくとも良くは無い。そう思うと自然と舌打ち一つしたくなるのは仕方がないだろう。俺はリオレイアが迫っていると言うのにへたり込んでいるレイナを無理やり抱えリオレイアの突進をなんとかリオレイアの翼に潜り込むようにしてなんとか回避する。リオレイアとの距離が生まれるとレイナを地面に下ろすがまたレイナはへたり込んでしまう。すでにレイナの目からは闘志が消えていた。

 

「・・・仕方が無い。疲れるが一気に決めるしかないか。」

 

そう思うと俺はリオレイア目掛けて走り出した。リオレイアがこちらを向いた時には既に俺はリオレイアの懐にいた。

 

「ふっ!!」

 

俺は太刀を抜き放ち、一瞬で太刀に気を込める。そして右手だけで持ち、一気に気刃を開放し振り回す。

 

「ゴアァァァ!?」

 

いきなり何度も斬り付けられてリオレイアは思わず仰け反る。さらに俺は斬る速度を上げる。

 

「ゴアァ!!」

 

堪らなくなったのかリオレイアは大きく羽ばたいて俺から距離を取った。そして今度はこちらの番とばかりに突進してくる。だが生憎、それは俺にとって好都合だった。リオレイアがこちらの最適な間合いに入る直前に俺はその場で体ごと回転させる。

 

「気刃・・・顕現。」

 

半分ほど体が回転した瞬間、俺は呟くのと同時に最大限に気を鬼哭斬破刀に集中させた。それと同時に太刀を覆っていた気刃が巨大化し、回転を続けて迫るリオレイアの頭に叩きつける。

 

「ハァァァ!!」

 

叫びながら俺は渾身の一撃をリオレイアの頭に叩きつけた。己の突進の力と俺の技と向きが正反対の力がぶつかった時の威力は計り知れない。

 

「ガァァァァ!!」

 

ただリオレイアの断末魔がその衝撃の威力を物語っていた。断末魔が止むとリオレイアは地面に倒れた。

 

「ふぅ・・・。」

 

リオレイアの絶命と周囲にほかにモンスターがいないことを確認して俺は右手の鬼神斬破刀を鞘にしまう。そして今も震えているレイナのところへ向かう。

 

「大丈夫・・・ではないな。立てるか?」

 

「立て・・・っ!!」

 

リオレイアが討伐されたことで少しは威勢は戻ったようだが体の方は無理のようだった。

 

「はぁ・・・仕方が無い。ほら。」

 

「は、はぁ!?何するつもり!?」

 

俺はレイナの隣に回りレイナの脇を俺の肩に乗せて立たせる。当然いきなりのことでレイナが黙っているはずもなく抗議を始める。

 

「威勢は戻ったようだが体の方は限界だろう?」

 

「・・・。」

 

だが、図星なのか黙り込む。それを確認して俺たちは歩き出した。行きとは違って時間はかかったが無事にユクモ村に帰って来ることができた。当然俺たちの姿、特にレイナの様子を見た村人たちは驚きをあらわにする。当然依頼を出した村長も例外ではなかった。

 

「レイナ!?一体何があったのですか?」

 

「狩猟の最中にリオレイアが乱入してきてこうなった。リオレイアも依頼にあったドスファンゴも討伐してあります。」

 

「リオレイアが・・・。確かにリオレイアが住み着く時もありましたが、とにかく二人が無事に帰ってきてくれたので良かったです。お疲れのところすみませんが彼女を家まで送ってくれませんか?」

 

「も、もう一人で歩けるから!!放しなさい!!つ、疲れたからもう休む!!」

 

そう言ってレイナはふらつきながら帰っていった。

 

「大丈夫・・・なんですかね?」

 

「まぁ、大丈夫でしょう。」

 

「それじゃ、俺はドスファンゴの群れとリオレイアの回収に行ってきます。」

 

「よろしくお願いします。」

 

そう言って俺は村人さんに手伝ってもらいファンゴの群れとリオレイアを回収し、ギルドへの報告書を書いて郵便箱のところへ提出した。その後は温泉で疲れを癒し、久々の大立ち回りの疲労ですぐに寝てしまった。

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