その手に握る刀は何のために 作:ユウヤ
いきなり現れたソイツは悠々と地面に降り立った。飛龍種リオレイア。中型クラスしか見たことが無い私が恐怖するのに時間はかからなかった。膝を突いて地面に座り込んでしまう。
「ゴァァァ!!」
私が怯えている間に狙いを正確に定めたリオレイアがこちらへと突進してくる。立とうとしても足が震えてもがくこともできなかった。
「ちぃっ!!」
ユウヤの舌打ちが聞こえたときには私はユウヤに担がれていた。そして迫りくるリオレイアの突進を翼の下を潜ることで回避したのだ。信じられないと思っていると今度はリオレイアに向かってユウヤが走り出した。いくらなんでも無謀すぎる。まともな防具を身につけてないのに飛龍を相手取るなんてという私の考えは即座に砕け散る。
「ふっ!!」
一気にリオレイアの懐へ到達したユウヤは背負った太刀を右手で抜刀しそのまま片手で振り回し始めたのだ。加えて太刀が纏う光は紅、太刀使いでも実力者だけが使えると言う気刃の最高レベルの色だった。出鱈目な斬撃はリオレイアが仰け反ったことでさらに加速していく。
「ゴァァァ!!」
怒涛の連撃から逃げるようにリオレイアは大きく羽ばたいて距離を取る。そして反撃にユウヤへ向かって突進を始める。だが当のユウヤはただ太刀を構えているだけだった。またあのふざけた回避をするのかと思っているといきなり太刀を構えながら回り始めた。
「気刃・・・顕現。」
ユウヤが何か呟いたと思った瞬間、いきなりユウヤの太刀が纏っていた気刃が巨大化したのだ。いくらなんでも出鱈目にもほどがある。そしてその巨大な刃を片手でリオレイアの突進を受ける前に叩き付けた。
「ガァァァァ!!」
離れていても耳を塞いでしまいそうな断末魔を上げてリオレイアは倒れた。もう、目の前の事に頭が追いつかなくなり私の頭の中は真っ白になった。
「大丈夫・・・ではないな。立てるか?」
呆けているといつの間にかユウヤが目の前に屈んでいた。
「立て・・・っ!!」
恐怖で座り込むという失態をあろうことか一番見られたくない奴に見られてしまったことを今更ながら実感した。そしてまだ立てないというおまけもついてきた。
「はぁ・・・仕方が無い。ほら。」
「は、はぁ!?何するつもり!?」
呆れるような声が聞こえるといきなりユウヤは私の脇に肩を入れて無理やり立たせたのだ。
「威勢は戻ったようだが体の方は限界だろう?」
「・・・。」
抗議したかったが図星を突かれて何も言えなくなった。そのままユウヤは私に肩を貸して歩いてユクモ村を目指した。
「レイナちゃん、大丈夫かい?」
「どこか怪我でもしたの?」
当然こんな格好で村に入ればみんなが心配する。私は恥ずかしくて終始俯いていた。
「レイナ!?一体何があったのですか?」
村長も心配したのか珍しく声が大きかった。
「狩猟の最中にリオレイアが乱入してきてこうなった。リオレイアも依頼にあったドスファンゴも討伐してあります。」
「リオレイアが・・・。確かにたまにリオレイアが住み着く時もありましたが、とにかく二人が無事に帰ってきてくれたので良かったです。お疲れのところすみませんが彼女を家まで送ってくれませんか?」
村長とユウヤが会話している間に私はなんとか足を動かせるまでになった。
「も、もう一人で歩けるから!!放しなさい!!つ、疲れたからもう休む!!」
そしてユウヤの腕をなんとか振り払って私は逃げるように家へと帰った。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
私は着ていた装備を脱ぎ捨ててベットに倒れこんだ。今日は散々な日だった。嫌いなアイツと一緒に狩に出かけ、いきなり大物が乱入。加えてアイツはそれを数分とかからずに倒して見せた。そう思うと悔しいにもほどがあった。そして自分が惨めに思えた。あれだけ罵詈雑言を浴びせたのにも関わらずアイツは私を助けてくれた。ただ単についでだったかもしれない。でもそのついでが私を助けたのだ。そしてリオレイアを攻撃していた時、特に最後の一撃を放ったときのアイツの背中は輝いていた。いつか私もあんな風になりたいと思った。
「だけど、無理だよね。あれだけ言ったんだから。」
そう。私はユウヤに向けてありとあらゆる暴言を吐いたのだ。そんな都合のいい話があるわけがない。
「でも助けてもらったお礼と二日間のことは謝らない、と・・・zzz。」
ベットに寝ていたせいか一気に疲労が押し寄せてきて私はそのまま寝てしまった。
「はっ!!・・・もう朝か・・・。」
次に私が言葉を発した時は既に日が昇っていた。昨日はあのまま寝てしまったので私はまず集会浴場の温泉に浸かって昨日の汗と汚れを流した。そして景気づけにコーヒー牛乳の一気飲みをする。
「でもやっぱ、結局はここ次第か・・・。」
私は胸を叩きながら呟いた。そう、私は今からいつもはやらないことをする。だからこそ、いつもやっていることをして自身を鼓舞しようと思ったのだが、そんなんで変われるわけが無い。
「やることは、やらないとね。」
そう思って私はアイツの家に向かった。だが家にユウヤはいなかった。どこへ行ったのか探しに行くことにした。まずは昨日ユウヤがいた川原に行った。そして一歩踏み出そうとした瞬間、私の足は止まった。ユウヤを見た瞬間固まったのだ。だが今からの事への恐怖ではなかった。ユウヤはほとりの中心で演舞をしていた。それに見惚れてしまったのだ。綺麗や美しいじゃ表現できないほどその舞はすごかったのだ。そして時間は経ち、演舞は終わる。そしてユウヤは私に気づき、こちらへやってくる。
「どうした?こんな早くに。何かあったのか?」
「え、えぇ・・・。その!!今までごめんなさい!!それから・・・助けてくれてありがとうございました!!」
「・・・何だ、そんなことか。」
「へ?」
「いやぁ、お前が真面目な顔しているからまーた無理難題、たとえば昨日の技を教えろとか言うのかと思っていたからさ。」
「・・・もしそうだったら?」
「まぁ、断る理由もないし受けていたが?」
「何で?」
「は?」
「何でアンタはそんなに優しいの!?私はアンタを悪者呼ばわりした!!加えて罵倒した!!それなのに!!」
「・・・はぁ・・・何を言っているんだ。」
「ふぇ?」
「別に俺はお前がしてきたことに別段文句を言う気は無い。村を守る者なら当然の行いだと思う。」
「でも・・・。」
「ほれ。」
そう言ってユウヤは私に一本の木刀を差し出す。
「これを握るか握らないかはお前次第だ。」
ユウヤの言葉の意味は『教わりたいならこの木刀を取れ』ということだろうか?私は戸惑いながら木刀にを掴もうとする。すると少しユウヤは木刀を私から遠ざけた。
「え?」
「言っとくけど、修行は甘くはないぞ?」
そう言ったユウヤの顔は明らかに挑発していた。それだけで私は動けた。
「上等!!」
そう言って私はユウヤから奪い取るように木刀を取った。それが私の新しい一歩だった。