その手に握る刀は何のために   作:ユウヤ

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第五話 響く悲鳴

朝早く、ほとりでは木刀同士がぶつかる音が響いていた。ユウヤとレイナが打ち合っていたのだ。二人とも動き易く、最低限の甲が付いているユクモの装備を着込んでトレーニングをしていた。ただユクモノハカマは裾が大きく少し邪魔なので裾をズボンのように細い物に替えている。

 

「つぁ!!」

 

「どうした、もう終わりか?」

 

「っ!!まだまだっ!!」

 

刀神の名の通り太刀使いの頂点に君臨するユウヤと新米ハンターのレイナでは天地の差があるのは新米ハンターですらわかることだ。当然、今のように軍配はユウヤに上がる。だがレイナは果敢にユウヤへ立ち向かった。そして二人がトレーニングを始めて一週間が過ぎていた。同時に狩猟へ一週間行っていなかった。正確に言えば中型種の狩猟に行っていなだけで、渓流へ小型モンスターの討伐依頼と並行してユウヤの渓流ツアーに数回行ったくらいだった。

 

「そろそろ、休憩にしよう。腹減ったしな。」

 

「あ、私も。」

 

「じゃぁ、今日も家で食ってくか?」

 

「えぇ、そうするわ。」

 

そう言って二人はユウヤの家へと向かった。家について数分で料理ができあがる。料理と言っても冷凍してある野菜を炒めて、釣った魚を捌いて刺身にするといった簡単なものだった。

 

「今日はちょっと多めにしてみた。今日はアオアシラの狩猟に行くからな。」

 

「ありがと。じゃぁ、いただくわ。」

 

「いただきます。」

 

レイナに続いてユウヤも食事を始めた。朝からトレーニングをするとなると食後は腹具合を考えると却下。だが朝の涼しい中でトレーニングをするのは気持ちがいい、ということで朝は簡単な打ち合いをしていた。当然食事前に動けば腹が減る。だがレイナは料理はあまりしないほうであり、トレーニングをするようになって毎朝というかいつの間にか毎食全てユウヤの家で食べている。まぁ、レイナ自身狩りの方に力を入れていたせいで家事能力はまったくもって無いに等しい状態だったのだ。

 

「ふ~ぅ食べた食べた。おいしかったわ。」

 

「お粗末様。」

 

食事を終えてユウヤはそのまま食器を片付けていた。そして休憩を挟むとレイナは狩りの準備をするために自宅に戻った。同じくユウヤも同様に装備を整えていた。

 

「先日の事もあるし、ちゃんとしていかないとな。」

 

先日の事とは一週間前、ドスファンゴ狩猟の途中でリオレイアの乱入を受けた事だ。よくよく考えたらこの地域はギルドの支援が無い場所だ。通常のクエストならギルドから気球の支援を受けることができる。もし不測の事態が起きた場合はすぐに知らせてくれるのだが、ユクモ村など村からのギルドを介さない直接依頼での狩猟はギルドの支援が無いのでその場の判断で動く必要がある。となれば準備は万全にしなければならない。そう思いユウヤは装備を着込み、愛刀の鬼哭斬破刀・真打を背負い、補助用の小太刀を腰に挿す。装備を着込み終えて村長の下へ向かった。数分後同じようにレイナも村長のところへ来た。

 

「ごめん、遅れ・・・た!?」

 

「ん、どうした?」

 

「な、何なのよその装備は!?タンジアの港の工房カタログでも見たことないわ!!」

 

「そう言えば最初の時は籠手と具足だけだったからな。これが俺の装備だ。」

 

「まぁ、良いわ。それじゃ村長、行って来ます。」

 

「はい、行ってらっしゃい。」

 

「二人とも、頼んだぞー。」

 

村長や村人たちの見送りを受けて二人はユクモ村を出発した。

 

「それで、アオアシラだが、俺は何度か戦ったことがあるがレイナはどうなんだ?」

 

「私は討伐が一回、撃退を数回ってくらいしか。」

 

「そうか・・・まぁ、なんとかなる。俺は渓流には詳しくないんだが、どの辺りに出るんだ?」

 

「地図で言うと1と3と4以外の全エリアを徘徊しているわ。」

 

「結構広いな。確かエリア5と9にはアオアシラの好物のハチミツが採れる大きな蜂の巣があったな。そこに当たりをつけるか。」

 

「それが良いわね。」

 

そう言って二人はベースキャンプを出て、エリア5へと移動した移動する最中、ユウヤは一つ気になったことをたずねる。

 

「そういえばユクモ村には他のハンターはいないらしいが、レイナが訓練を受けている間はどうしていたんだ?」

 

「あぁ、そのことね。私がタンジアの訓練所に行ってた間はなんとか村のみんなで集めたお金を使ってハンターを雇っていたんだけど、最近渓流のすっごく奥でジンオウガを見つけた頃からハンターが来なくなってさ、それでタンジアのギルドに頼み込んで緊急依頼を出してもらったの。まさかドンドルマまで行くとは思っていなかったけどね。」

 

「なるほどな・・・いたぞ。」

 

いきなりユウヤが止まったのに合わせてレイナも止まる。視線の先には蜂の巣の目の前に堂々と座ってハチミツを食べるアオアシラの姿があった。

 

「どう攻めるの?」

 

「見た感じ下位個体だな。俺が行ってすぐ終わらせるのもアリだが、それじゃぁダメだ。せっかく一週間トレーニングしたんだからいざ実戦って感じだ。攻め方は回避重視の挟撃撹乱、アオアシラを挟んで左右から隙を突くといった感じだな。」

 

「了解。」

 

「それじゃ、俺は配置は基本俺がレイナに合わせるから好きに動け。それから俺は小太刀で攻撃する。さすがにコイツじゃすぐに終わっちまうからな。それじゃ、切り込むぞ!!」

 

そう言ってユウヤは小太刀を抜き放ってそのままアオアシラに接近する。それを応用にレイナも駆け出す。

 

「ゴモ?ゴモァァァ!!」

 

アオアシラも接近する二人に気づいて立ち上がり威嚇をし、接近してくるユウヤを引き裂こうと腕を振り下ろすがユウヤは滑り込むように迫る腕を回避しアオアシラの後ろを取り、小太刀に気刃を纏わせて一閃する。小太刀に使っている素材は鉄刀と同じなので当然威力は小さい。だがアオアシラの気を引くには十分だった。

 

「はぁぁぁ!!」

 

アオアシラはユウヤに振り向いたおかげでレイナに背中を晒してしまい、そこをレイナが鉄刀を抜き放って斬りつけた。傷は浅いようでアオアシラは少し唸るだけだった。そして今度はレイナに反応し、両腕で掴みかかるように切り裂こうとする。

 

「っ!!」

 

だがレイナは事前に回避行動を取っていたので軽々と回避する。そして当然背中はユウヤに向けられる。

 

「はっ!!」

 

ユウヤは一瞬でアオアシラの背中に横薙ぎに一閃し、さらに返す刀で同じ場所を二度斬りつける。だが一方的に攻め立てられたアオアシラの怒りは最高潮に達する。

 

「グモァァァ!!」

 

飛龍ほどの音量ではないがアオアシラの咆哮が轟いた。だが二人はアオアシラの怒りに怯むことなく、交互に斬りつけてアオアシラを撹乱することで無駄なく、安全にダメージを蓄積していった。レイナも次第に気刃を開放してさらにダメージは増えていった。アオアシラも反撃をするが事前に回避前提で動いているので易々と回避されていき隙が生まれる。アオアシラの行動一つ一つがアオアシラ自身を追い詰めることになっていた。ついにアオアシラも命の危機を感じ、逃亡を図る。

 

「待て!!」

 

「待つのはお前だ。」

 

そう言ってユウヤはアオアシラを追撃しようとするレイナを止める。

 

「連続して気刃を使ったから息が乱れている。少し休憩を挟んだ方がいい。」

 

「わかった。」

 

少々休憩を挟んで二人はアオアシラを追った。隣のエリア6に来るとアオアシラはエリアの真ん中に待ち構えたかのように立っていた。覚悟を決めたのか、自信があるのかはわからないが二人にとっては好都合だった。

 

「相手が弱っているとはいえ何があるかはわからん。さっき同様回避重視で行くぞ。」

 

「オッケー!!」

 

返事をすると同時に今度はレイナが先陣を切った。だがユウヤの様に軽業をできるわけではないので回り込むようにして接近していった。当然アオアシラはレイナを追うように回転するので自然と背中はユウヤに向けられる。ユウヤは自分に背中が向けられた瞬間、駆け出す。

 

「ふっ!!」

 

加速をつけた袈裟斬りは易々とアオアシラの毛皮を引き裂いていく。既にアオアシラの背中は切り傷だらけで残っている毛には血が大量に染み込んでいた。

 

「グモァァァ!?」

 

だがここでアオアシラは驚きの行動を見せたのだ。ユウヤに傷をえぐられて悲鳴を上げたがそれを耐えて最初から狙っているレイナに向けて腕を振るったのだ。

 

「きゃっ!?」

 

「レイナ!!」

 

レイナは攻撃の準備をしていたのでまともに回避できなかった。真正面から受けたが、爪ではなく前腕の甲殻で掬い上げられるように当たったので吹き飛ばされるだけで済んだ。

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

いきなりレイナの悲鳴が上がったのだ。ちょうどアオアシラがレイナに被っているのでユウヤには何があったかわからなかった。当然、危険を排除するために小太刀をしまい、鬼哭斬破刀・真打を抜刀し斬りかかろうとした時。

 

「こんの・・・野郎がぁ!!」

 

今度はレイナの怒声が轟いたのだ。何があったのかはわからないがかなり怒っていることは確かだった。

 

「レイナ、大丈夫か!?」

 

「えぇ、なんとか。でも、ちょっと手を出すのは待って。」

 

「ガァ!?」

 

レイナの声が聞こえたと思った瞬間、今度はアオアシラの悲鳴が聞こえた。どうやらレイナが思いっきり斬りかかったのだ。気刃も発動して、さらに怒りが上乗せされて刀身が纏う光の色は白に変化していた。アオアシラはレイナの怒涛の斬撃を受けて体勢を崩す。レイナはアオアシラの体勢が崩れたのを見るや一気に鉄刀を振り回した。レイナが鉄刀を一振りするとアオアシラの悲鳴がほとばしる。一週間ユウヤと打ち合ったことで、レイナの剣速は格段に速くなっていた。そして最後の振り下ろしも決まるとアオアシラの声は聞こえなくなっていた。アオアシラを討伐したのだ。

 

「ふぅ、一時は驚いたがなんとかなったな。おつか・・・れ。」

 

「いやぁぁぁ!!」

 

「っ!?」

 

当然レイナは座り込んで今日一番の悲鳴を上げ、ユウヤは第六感に従って全力で首を逸らした。だがそんなことでレイナは黙るわけがない。よくよく考えればすぐにわかるはずだった。先ほどレイナが発した二度目の悲鳴の原因だ。レイナはアオアシラの腕甲に当たって吹き飛ばされたのだ。アオアシラの腕甲には棘が生えているので布で作られたユクモノ装備は耐え切れない。事実、腕甲の棘はレイナの胴装備を引き裂いただろう。これがレイナの二度目の悲鳴の原因だと思う。そして、怒りに任せてアオアシラを倒したのは良いのだが、激しく動いていたのでさらにユクモノドウギの破れ目はさらに大きくなるだろう。そして先ほどまでユウヤの視界を遮っていたアオアシラは倒れる。つまり俺の推測が当たった場合・・・。

 

「こんの、変態!!見たでしょ!?」

 

「見てない!!見てない!!」

 

ユウヤは必死に否定するがレイナは止まらない。かれこれ数分言い合っていたが、さすがになれない動きをしたせいで疲労が溜まっていたレイナが折れることで一旦収まった。

 

「・・・何か覆うものある?」

 

「確か応急措置用の包帯があったはずだ・・・ほれ。」

 

ユウヤはレイナに包帯を渡す。当然レイナに背を向けてだ。レイナはなんとか包帯で大事な部分を隠してやっとユクモ村に帰れるようになった。だが事情を知らない村人は包帯を巻いているレイナを見れば当然心配してしまう。それをのらりくらりで流して村長に報告をする。

 

「それにしても・・・その装備が破れたのは残念ですね・・・。」

 

「うん・・・お母さんに貰った大切な物なのに・・・。」

 

「・・・。」

 

どうやらレイナが着ているユクモノ装備は母親から貰ったものらしい。涙を流すあたりとても大切だったのだろう。ユウヤは無言でレイナを見ていた。ふと村長はユウヤを見て何かを思いついたかのように手を叩いた。

 

「でも心配は要りませんよ。ユウヤさんが作り直してくれますよ。」

 

「えっ!?ユウヤはハンターでしょ?」

 

「ユウヤさんの刀神と言う名の意味はただ強いだけではありません。刀に関わる全てに精通しているから刀神と呼ばれているのです。それにレイナは中型のモンスターを複数体討伐していますよね?この際、その装備を元にして新しい装備に作り変えてもらってはどうでしょうか?」

 

「そんなことできるの?」

 

「素材があればできる。」

 

「じゃぁ、頼むわ。」

 

「じゃぁ、今ある素材を・・・っとその前に討伐したアオアシラを持ってこないとな。せっかく討伐したのにジャギィの餌にされるのはもったいない。」

 

レイナは普段着の和服に着替え、ユウヤはそのままでアオアシラの亡骸を回収しに行った。

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