その手に握る刀は何のために   作:ユウヤ

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第七話 お勘定は?

「・・・きて!!あ~もう!!起きなさい!!」

 

「・・・んあ?あぁ、もう朝か・・・。」

 

本日の目覚めはレイナの怒声だった。どうやら完成した後、そのまま工房の椅子で寝てしまっていたようだ。

 

「ったぁく・・・遅い!!っと言いたいところだけど、がんばってくれたみたいだからそれでチャラよ。まぁ、下手な物だったら容赦しないけどね。」

 

「そりゃぁ手厳しいことで・・・。」

 

「それで、私の新しい装備はこれ?」

 

レイナは布に覆われた飾台を指差して聞いてくる。

 

「あぁ、見て驚くなよ?」

 

そう言って俺は飾台の布を盛大に取り払った。

 

「・・・これが、私の・・・装備?」

 

レイナは見違えた・・・というか9割強変化した自分の装備を見て唖然としていた。

 

「感想は?」

 

そう言うとレイナはいきなり俺の襟首を掴んで揺さぶってくる。

 

「ちょ、ちょっと!!これは何!?何の素材使ったのよ!!どうみても上位レベルでしょ!!」

 

襟首を捕まれた時はほとんどユクモノ装備の面影が残っていないのでそれに対しての批判の嵐か、と思っていたが実際は違って安心した。

 

「別に変なものは使ってない。ユクモノ装備をベースにドスジャギィとアオアシラの素材と鉄鉱石とマカライト鉱石しか使ってねぇ。だからお前でも着れるよ。」

 

「本当に!?」

 

「あぁ、本当だ。」

 

「でもドスジャギィとアオアシラの素材の混合装備なんてカタログじゃ見たこと無いわよ。」

 

「ある程度ギルドに腕を認められた工匠はギルドが定めていない組み合わせで装備を作ることができるんだ。ちなみに俺もその一人だ。」

 

「はぁ・・・もういいわ。それよりも私こんな装備の着方なんて知らないわよ?・・・!?まさか、覗くために!?」

 

「んなアホなことを考えるのはお前だけだ。防具は後付型だ。まずはユクモノ装備を着てからだ。」

 

そう言って飾台から鎧下着の旧ユクモノ装備を自爆して顔を真っ赤にしているレイナに渡して着替えるように促す。もちろん別室でだ。数分後、旧ユクモノ装備を着たレイナが戻って来た。

 

「それで、どれから着けるの?」

 

「まずはこの臑当を着けろ。着け方は後ろの紐で縛ればいい。」

 

「こ、こう?」

 

「もうちょい縛った方がいい。それで、次は佩楯だが、これは腰に巻きつけるように・・・まぁそんな感じで最後に腰の紐を結べばいい。」

 

レイナはその後もぎこちない仕草で鎧を着込んでいく。

 

「ほれ、最後の半首だ。」

 

そう言ってレイナに半首を渡す。頬と額に合わせるように着けて額当ての後ろに着けてある紐を縛って着込み終わる。

 

「う~ん、結構時間かかるわね。」

 

「その分下手な装備より防御力はあるんだから我慢しろ。それで、動けるか?」

 

「着込んでいるのに軽いわね。まぁ、ユクモノ装備よりは重いから慣れないわね。」

 

「まぁ、それは慣れるしかないな。さて、どうせお前の事だ。朝飯は食べずに来たんだろ?」

 

「もっちろん!!」

 

「だろうな・・・少し待ってろ。俺が作っている間に脱着しながら着方を覚えとけ。」

 

「はーい。」

 

そう告げて俺は手早く朝食の準備に取り掛かる。今日は・・・マスターベーグルに昨日の残りのシチューと簡単なサラダで良いか。そう考えて俺は料理を作り出す。たまに工房から防具と悪戦苦闘するレイナの声に苦笑いしながら手を動かした。本日何度目かのレイナの怒声が聞こえるとテーブルには本日の朝食が並んだ。

 

「お~い、できたぞ~。」

 

「わかった、すぐに行く!!」

 

そう言ってすぐにレイナはテーブルに着く。何時ものように食べながら今後どうしていくかを大まかに話す。当面の目標は渓流の奥に巣を作った番いのジンオウガの討伐。リュウヤが単身赴いて討伐するのは無理ではないのだが、その後のことを考えたら村唯一のハンターのレイナに経験を積ませた方がいいということで保留になっている。

 

「ふぅ、食べた食べた。今日の稽古は?」

 

「そうだな、新しい防具もできたことだし、慣れる為に防具を使っての組み手をするか?」

 

「そうね、いきなり実戦で『動けないで壊れました』は嫌だからね。」

 

「それじゃ何時もの場所に行くとしようか。」

 

リュウヤの言葉で二人はそれぞれの防具を着込んで毎日トレーニングをしているほとりに向かった。

 

「相変わらず威風があるわね。」

 

「よく言われる。さて、どっからでもかかって来い!!」

 

「言われなくても!!」

 

そう言ってレイナは疾走しリュウヤの顔を狙って拳を放つ。防具を着た当初は防具の重さにぎこちなさを見せていたが既に慣れたのか、軽やかな動きを見せる。そんなレイナを見てリュウヤは少し驚く。だが顔には出さず、迫るレイナの拳をいなす。

 

「まだまだ!!」

 

初撃はいなされるがレイナは負けじと拳やら足やらを繰り出してリュウヤの防御を崩そうとする。リュウヤも負け時とギアを上げてレイナの攻撃を捌いていく。そうしている内に三十分が経った。

 

「「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」」

 

三十分の激闘の末、二人は大の字に転がって荒い息をする。レイナはともかくリュウヤもだった。いくら一人で数多のモンスターを相手取ってきたリュウヤでも対人戦闘はお門違いであるからだ。だが、それ以外にも理由はあった。レイナのトレーニングを始めて一週間、たったそれだけでレイナはリュウヤの動きに慣れていたのだ。それはレイナの実力と言うことだろう。

 

「はぁ・・・はぁ・・・っにしても、一気に腕を上げたか?」

 

「そ、そりゃそうよ。と言うかアンタが腕落ちたんじゃないの?」

 

「そうかもな。それで、どうだ?防具を着てみて。」

 

二人は息を整えながら防具を外す。今は昼時、流石に熱いのだ。防具を外して二人は風に当たるため寝転がっている。

 

「流石にユクモノ装備よりは重いけど、そこまで動きにくいと言うわけではないわ。むしろ衝撃を吸収してくれるから大助かりよ。それでさ・・・。」

 

「ん?」

 

「その・・・この防具の代金はおいくらで?」

 

「朝から何を気にしていると思えば、そんなことか。」

 

「そ、そんなことじゃないわよ!!聞いた話だけどギルドが認めた名匠の装備は一つですっごい額なんでしょ?でも・・・私にはそんなお金は・・・。」

 

「あ、あぁ。別に払わなくて良い。俺の弟子ならそれ相応の装備が着たいだろ?」

 

「・・・それだけ?」

 

「それだけだ。」

 

「な~んだ、心配して損しちゃったわ。」

 

「ま、それは弟子になった記念って感じだな。まぁ、お前が新しいモンスターを狩ればその都度その装備を強くしてやるさ。」

 

「何でそこまでしてくれるのさ。」

 

「ん、そうだなぁ・・・なんでだろうねぇ。」

 

ユウヤは適当に流していたが、内心は冷や汗びっしょりだった。

 

(言えねぇ・・・昨日本当はバッチリ見ていたなんて死んでも言えない!!最低だと思うがこれしか罪滅ぼしは無いからな・・・。)

 

とまぁ、本音はマジでやばいものである・・・。

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