その手に握る刀は何のために 作:ユウヤ
俺がユクモ村に来てから二週間が過ぎようとしていた。レイナの防具の銘は『ユクモノ改』に決まった。安直過ぎると言いかけたら死にかけたのは余談である・・・。
「はっ!やぁっ!」
「ふっ!せいっ!」
今日も朝から防具同士のぶつかる甲高い音が川原に響いて時は経ち、既に空は紅くなっていた。ユウヤとレイナが防具を着ての組み手をしているのだ。結果はわかっていてもレイナは諦めずに全力でユウヤに挑んでいる。ユウヤもレイナの気持ちを理解しているので手加減は失礼と考え全力でレイナを打ちのめしていた。
「はぁ・・・、やっぱ勝てない~。」
「打ち合いはともかく組み手は勝敗は重視しなくていい。組み手の目的はフットワーク、足捌きのトレーニングだからな。まぁ、勝敗にこだわるっていうなら相手を倒すと言うよりいかに相手の攻撃を避けて反撃できるかだろうな。」
「そういう割には容赦無しに私を叩き伏せてるわよね?」
「それはお前のフットワークができてない証拠だ。」
「むぅ・・・。もう一回。」
「ユウヤさん、レイナ!!大変だ!!」
レイナがもう一回と言い終わった直前で村の自衛団の長、ハルさんが血相を変えて川原に走ってきた。肩を上下させるぐらいの荒い息をしていることからかなり悪いことが起きたとわかる。
「どうしたんですか?」
「ユウヤさんはこの村の近くにアイルーたちの村があることはご存知ですか?」
「えぇ、レイナと渓流の調査に行くときに一度だけ行ったことがあります。それよりも状況を。」
「その村から救援を頼まれたんだ。村に来たアイルーの話じゃいきなり無数のジャギィが村を襲ったらしい!!アイルーたちは方々に逃げようとしたらしいが無数のジャギィたちに阻まれて村の奥にある採掘場に立て篭もっているらしいんだ!!」
「おい、レイナ!!」
「わかった!!」
俺とレイナは急いでそれぞれの自宅に駆け出した。いきなりのことでハルさんは理解できてないようだった。
「どうするんだい!?」
「もちろん助けます!!ハルさんは速達用のガーグァの手配を!!」
「わかった!!」
俺たちは急いで武器だけを持ってガーグァ便のところに集まる。防具は着けている時間も惜しく、できるだけ軽くしたほうが移動速度は上がると考えたからだ。まさかレイナも同じ考えだとは思ってなかった。あせる気持ちを抱えながら俺たちを乗せたガーグァ便は比較的舗装された道を駆けた。
「・・・これは酷い・・・。」
「あんまりよ・・・。」
現場に着いた俺たちの感想はそれに尽きた。家は跡形も無く壊れ、焚き火が引火したのか辺りには煙の臭いが立ち込めていた。そしてポツポツと倒れているジャギィが見え中には虫の息で生きているのもいた。多分アイルーたちが懸命に抵抗したのだろう。以前村長から渓流には短期であれ長期であれかなり大きいジャギイの群れが来ることがあると聞いていた。
「っと、今は原因より解決だ。アイルーたちが立て篭もっているっつー採掘場はどこだ!?」
「あっちじゃない!?」
レイナが指差したちょっとした岩肌の見える山に一か八かで賭けてみた。そして案の定数十匹のジャギィと群れの長であろう一頭のドスジャギィが僅かに見える採掘場らしい入り口付近に集まっていた。そしてようやく俺たちに気づいたのかドスジャギィの咆哮と共にジャギィたちがこちらへ駆け出す。
「レイナ・・・下がっていろ。」
「う、うん。」
レイナを数歩俺の後ろに下がらせて俺は腰を落とし、愛刀の鬼哭斬破刀・真打を抜き放って水平に構える。
「っ!!」
一定量の気を練り終わると俺は地面を蹴った。走っている間に練った気を構えた愛刀に移す。愛刀は応えるように気と共に紅い光を放つ。
「気刃・・・突破!!」
俺は肉薄したジャギィに向けて疾走の勢いを乗せた渾身の突きを放った。同時に気刃を放出させ衝撃波を生み出し、ジャギィたちをまとめて吹き飛ばした。
「走れ、レイナ!!ドスジャギィを!!」
今の一撃でジャギィたちを吹き飛ばし、ドスジャギィの周りは僅かな取り巻きだけとなり俺はレイナをドスジャギィ目掛けて走らせる。
「はぁぁぁ!!」
レイナは取り巻きには目もくれず、ドスジャギィ目掛けて一心不乱に鉄刀を振り回す。途中から白い気刃が見えていた。この前のアオアシラ戦よりも発現が早いことからトレーニングの成果が出ているのだろう。
「せい!!」
レイナの掛け声と共に振り下ろされた鉄刀がドスジャギィの胴を深く切り裂いた。ドスジャギィは倒れ、動くことは無かった。群れの長が倒されたのが効いたのか生き残っていたジャギィは蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。
「お疲れさん。」
「トレーニングした甲斐があったわ。っとそれよりも・・・。」
「あぁ、急ごう!!」
ジャギイを排除した俺たちは急いで採掘場へと向かった。
「大丈夫か!?」
「ニャッ!?」
「ハンター・・・さん?」
「助かったニャッ!!」
「助けが来たニャァ!!」
中で怯えるようにして固まっていたアイルーたちは採掘場に入ってきた俺たちを見てゆっくりと喜びと安堵の顔を見せた。幸いにも死者は出ず、怪我も噛み傷や擦り傷程度で済んだのは幸いだった。怪我をした者は俺やレイナ、元気な者で手分けしてユクモ村まで運んだ。村も酷い状況で寝る場所を確保するために全員がユクモ村に避難することになった。
「なんにせよ死者が出なかったのは何よりです。皆さんご心配なく、温泉で傷を癒してください。」
村について村長に事情を説明すると村長も快く話しを聞いてくれた。俺たちも同じように温泉で疲れを癒してそのまま眠りについた。
「っと言う訳で旦那方、よろしくニャッ!!」
「「へっ?」」
俺とレイナはいつも通りトレーニングをしようと川原に来るとアイルーが何匹か集まっていて俺たちを待っていたようだ。
どうやらあの後村長がこのまま村に定住してはどうかと提案したそうだ。アイルーの長は最初は悩んだそうだが村の状態を考え、定住することになったそうだ。そしてここにいるアイルーたちは元々オトモアイルーを目指していたそうで俺たちのオトモになりたいそうだ。
「どうする?」
「断る理由もないし、そっちのほうができなかったこともできるようになるからな。それじゃ、よろしく頼む。」
「オイラはモリー。よろしくニャ。」
俺たちはそれぞれアイルーと握手をし、自己紹介を行った。そしてめでたくアイルー部隊が結成された。