―黒と緑の物語― ~OVER LORD&ARROW~   作:NEW WINDのN

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オリジナルモブキャラメインのお話になります。そういう話は好きではないという方は飛ばしてください。

飛ばしても話はつながるようにしていますので。




幕間『冒険者達の戦い』※モブメイン 読み飛ばし可

 

 王都を包む炎の壁へと、冒険者たちは緊張の面持ちで進んでいくそして、炎の壁へと近づくにつれ顔色がどんどん悪くなっていく。それも当然だろう。近づけば近づくほど死地へと向かうことになるのだから。

 

「なんだって、こんな時に王都に来ちまったかな」

 (シルバー)プレートを身に着けた背の低い冒険者が、己の運命を嘆く。

「そんなこと言っている場合じゃねえだろう!」

 立派な体格の(ゴールド)級冒険者が厳しい声を出す。

「……もしこの王都が堕ちたら、次は俺たちの街エ・ランテルが狙われるかもしれないんだぞ」

「そうだよ。それに僕たちだって王国の冒険者だ。今は王国の危機なんだよ。アローさんやモモンさんだけに任せておけない。僕だって……アローさんに褒めてもらった弓の腕前で役に立ってみせるんだ」

 先日エ・ランテルで行われた“漆黒との触れ合いイベント”。その中で、アローの弓矢教室に参加した(アイアン)の彼は、アローに「とても筋がいい」と褒められ、すっかりその気になって主武器を弓に変更していた。もちろん

 SCHWARZ(シュヴァルツ)で購入した“緑衣の弓矢神”仕様の弓である。ちょっとだけ奮発して中級者向けを購入したのは、内緒だ。

 

 

「おしゃべりはそこまでだ。来るぞ! 覚悟決めろよ!」

「はい。コタッツさん!」

 たまたま一緒に王都へと遊びに来ていた白金(プラチナ)級冒険者コタッツの指示が飛ぶ。

 臨時パーティの前に獰猛な獣が現れる。大型の犬のような姿をしており、口からは赤い炎のようなものが見えている。その数は見える限りで10体。当然ただの獣ではない。

 

地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)だ。口から吐いてくる炎に気をつけろ!」

「おう!」

 (アイアン)級冒険者が放った矢が、先頭の開始を告げる一撃となった。そしてその初撃は見事に、地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)の眉間を貫き、ドサッという音と共に地獄へと送り返してみせた。(アイアン)の攻撃でも通用するという事実に、周囲の冒険者たちの士気が上がる。

 

地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)なんて怖くない、怖くないんだっ!」

 次々と放つ矢が的確に地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)の眉間を貫いていく。

「すげえ……」

「弓の才能があるっていうのは、本当だったらしいな! 続くぞ!」

「「はい。コタッツさん」」

 

 彼らは被害を出すことなく地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)をあっという間に撃破してみせる。だが、まだ戦いは始まったばかりだった。

 

「油断するな! 気を引き締めていくぞ!」 

「おうっ!!」

 今度は先程の倍を超える20体以上の地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)が姿を見せた。

 

 

 

 

 ◆◇◆ ◆◇◆

 

 

 

 

「でりゃああああああっ……」

 白金(プラチナ)プレートを下げた魔法詠唱者(マジックキャスター)らしい衣服……ローブを身に纏った男が、一回り大きな地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)……上位地獄の猟犬(グレーターヘル・ハウンド)を蹴りとばして止めを刺した。

 “蹴って唱える”魔法詠唱者(マジャックキャスター)・モンク、カタッターレである。彼の装備している最高の逸品は、マジックブーツで、蹴り技の威力・速度・命中率を高める効果がある。

 

「私の蹴りを受けて起き上った人間(やつ)はいないんだぜ」

 笑みを浮かべて上位地獄の猟犬(グレーターヘル・ハウンド)の死体を見下ろす。

 

「相変わらずその靴は強烈ですね。しかも自分で支援魔法かけて強化しているのだから、タチが悪い」

 両手にはめたガントレットを鮮血に染めた筋骨隆々な男が声をかけてきた。彼もカタッターレと同じく白金(プラチナ)プレートの冒険者だ。

「タチが悪いとは失礼だな。誰かと思えば“ナグロスじゃねえか」

「お久しぶりです」

「おう。しばらく前に合同チームで一緒に冒険して以来じゃねえのか? あれ以来なかなか合同チーム組んでくれなかったしなー」

「ははっ……あなたが酔うと歌うあの“褒め殺しソング”を聞きたくなかったんでねえ」

 ナグロスは日焼けした顔をクシャクシャにして笑う。

 

「ちっ、酒場のおねーちゃんたちには、評判がいいんだけどな」

「ははっ……、カタッターレ、右へ飛んでください!」

「おうっ!」

 カタッターレが飛んだところへ、ナグロスが突っ込み右のガントレットで、噛みつこうとしていた上位地獄の猟犬(グレーターヘル・ハウンド)を打ん殴る!  

「ぎゃうっ……」

 今度こそ絶命した上位地獄の猟犬(グレーターヘル・ハウンド)

「あなたの蹴りを受けて起き上った人間(やつ)はいないんじゃなかったですか?」

「ふん。そいつは人間じゃねえからなっ!」

 二人は笑いあう。戦場での束の間の笑いだった。

 

「ところで、お仲間はどうしたよ?」

「治療の為に下がっています。今この戦線はかなりキツイ戦いですからね」

 ここで唸り声が聞こえてきた。どうやら、今倒したのと同じ上位地獄の猟犬(グレーターヘル・ハウンド)が3体ほどやってきたようだ。

「チッ、またいらっしゃったようだぜ」

「“(おとこ)なら拳で語る”しかありませんね」

 ナグロスが両手のガントレットを打ち鳴らす。

「いくか!」

「ええっ! 王都のために!」

二人のストライカーが、突撃を敢行する。

 

 

「そうは行かない、突撃は俺の専売特許だぜ!」

 右に漆黒モデルの直剣、左に刀を持った二刀流の(ゴールド)プレート戦士が二人のストライカーよりも早く上位地獄の猟犬(グレーターヘル・ハウンド)へと突っ込んでいった。

「うおおおおおおおおっ!!」

 右の直剣で上位地獄の猟犬(グレーターヘル・ハウンド)の背中を切り裂き、左の刀を大きく開いた口から差し込む。

「しゃあああっ!!」

 さらに戻した剣で上位地獄の猟犬(グレーターヘル・ハウンド)の首を掻き切ってみせた。

「リュウマか。さすがにやるな」

「ああ。二刀流の戦士だったよな。もうすぐ白金(プラチナ)プレートになるって噂は、間違っていなかったってところか」

 こんな会話をしながらも、カタッターレは蹴りで上位地獄の猟犬(グレーターヘル・ハウンド)の右前足をへし折り、ナグロスはガントレットで殴り続けている。

(それにしても両刀使いか……ちっ、俺もやりたかったなぁ……)

 ナグロスは元々剣を使っていたのだが、まだ冒険者に成りたての頃に武器を失い、仕方なくガントレットで殴ってゴブリンを殺す羽目になった。その時つけられた二つ名が“鉄拳”である。

 

(俺はカッコイイ魔剣使いになりたかったんだけどなぁ……こっちの方が馴染んでしまったんだよなっ!)

 突っ込んできた上位地獄の猟犬(グレーターヘル・ハウンド)の顎をガントレットで砕き、倒れたところへ馬乗りになって殴る! 殴る! 殴る!

 

「まだまだやれるぞっ! 着いてこい!」

「おーっ!!」

 

 この戦線は3人の冒険者たちに引っ張られて押しているが、相手は次々に湧いてくる。

 

 

 冒険者たちは一人、また一人と傷つき倒れ、後方で衛兵たちが維持している防衛ラインへと退いていった。

 




 前話に引き続き今回登場のゲストキャラの紹介です。

 ”蹴って唱える”カタッターレ(毒々鰻様 提案)
 ”鉄拳”のナグロス(炬燵猫鍋氏様 提案)
 ”両刀使い”のリュウマ(丸藤ケモニング様 提案)

  
 上記3キャラクターは、以前募集させていただいた新シーズンの登場人物案にて応募いただいたものになります。

 またコタッツはシーズン3第11話『展示』にも登場しています。

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