―黒と緑の物語― ~OVER LORD&ARROW~   作:NEW WINDのN

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オリジナルモブキャラメインのお話になります。そういう話は好きではないという方は飛ばしてください。

飛ばしても話はつながるようにしていますので。




幕間『もう1つの戦線』※モブメイン 読み飛ばし可

 

「さあ、急いで中へ入ってください」

 木材や、木箱、周囲の店舗から拾ってきた看板やレンガなどで築き上げた即席のバリケードを少しずらして、傷ついた冒険者たちを中へ迎え入れる。

 時を経ることに運ばれてくる冒険者たちは増えており、最初は(カッパー)(アイアン)といった低級の冒険者たちがほとんどだったが、徐々にランクが上がってきている。

 そして運ばれてくる冒険者たちはみな重傷であり、回復のためにさらに後ろへ控えている信仰系魔法詠唱者(マジックキャスター)の元へと送られていくことになる。

 

白金(プラチナ)まで、やられはじめたのか……」

 今後退してきたのは白金(プラチナ)プレートの冒険者だった。それに気付いた 衛兵隊長……アザン・ロンブルハートの無精ひげの生えた顔が、険しくなった。

 

「すまん。相手は地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)が主力だ。そんなに強くはないが数が多い。口から吐く炎に気を付けてくれ。他にも大型のタイプもいるそいつらは強敵だ」

「コタッツさん、王都の所属ではないのに……」

「私は“王国の冒険者”だよ。それに悪魔退治なら、俺達冒険者の専門さ。それよりも、私の前に運ばれてきた若手たちはどうした? (ゴールド)(シルバー)(アイアン)の3人組なのだが……」

 コタッツの右腕は大きなダメージを受けており、動かないように見える。

「ああ。それでしたら先程後方へさがりましたよ。かなりの重傷でしたが、すぐに命に係わるものでは、ありませんでした。それよりも、あなたの方がよっぽど重傷ですよ」

 ロンブルハートはコタッツの腕を見て顔を顰める。

 

「そうか、あいつらは無事か。それならよかった。あいつらは無事に連れて帰りたかったからな。ロンブルハート隊長、回復して戻ってくるまで、なんとかこの戦線を支えてくれ」

「わかりました。我々がなんとか支えてみせましょう」

「頼んだよ」

 ロンブルハートは、腰に下げた魔法の剣の柄をぎゅっと強く握りこむ。

(そろそろ、ここも戦場になるか。可愛い部下たち(あいつら)を危険な目には合わせたくはなかったのだが)

 この魔法の剣は祖母から貰った愛用品だ。いつもは心強く感じているものだが、今日はどことなく心もとなく感じる。王都を包む空気は重く、時たま吹く風が運んでくるのは血の匂いだけだった。

(武技〈能力向上〉と〈死線の一閃〉があれば部下たちを守れると思っていたのだがなあ……)

 何しろ白金(プラチナ)がやられるような相手だ。かなりの強敵であるのは間違いがない。

 

「敵影! 隊長。敵が来ます」

 斥候役の兵から報告が入った。

「来たかっ! 我々の任務はここの死守だ。地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)は炎を吐いてくるぞっ! 気を引き締めろ!」

「おう! 隊長の指示に従って防衛するぞっ!」

「いいか、我らが~~~ここを守らねば戦線は崩壊する。それはつまりモモンさんやアローさんの邪魔になるということだ。我らがここを守ることに意味があるゥ! 死守するぞ! 弓隊構え! まだだ、まだ打つなよ! 射程距離に入るまで待機……カウントダウン5・4・3・2・1 放て~~!!」

 20人の弓兵が一斉に矢を打ち込む。2体ほどの行動を止めることができた。

「第2射用意! ノーカウント! 放てっ!!」  

 撃ち漏らした地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)が、バリケード目がけて突っ込んでくる。

「来るぞ!〈能力向上〉」

 ロンブルハート隊長は自慢の武技を使用し、戦闘力を引き上げると先頭で向かってくる地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)の一頭へ狙いを定め槍を、突き出し刺し殺す。

「ここが我らの戦場だ! 槍衾用意! 突き出せっ!!」

 40人の衛兵たちが一斉に槍を繰り出す。次々に地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)が地に伏せる。

 

 だが、左側の槍衾があっさりと破られてしまった。ロンブルハートはいそぎ左側の戦線へと駆けつけて槍を振るう。

 

「隊長、6人チームの兵士がやられました」

「そうか。パイン兄弟達か」

「はい」

「残念だ。……ジェイムズ、こっちの戦線をフォローしてやってくれ」

 ロンブルハートは、一人の青年兵に指示を出す。

「…………」

 ジェイムズと呼ばれた青年兵は、首肯しそれを受託する。

「相変わらず静かだな」

「それでも彼の槍術は、我々の中では抜きんでておる。6人の穴を埋められるのは彼にしかできないだろうな」

「隊長、右側から火がっ!」

「チッ、ジェイムズ後は頼む!!」

 ロンブルハートは、今度は崩れ始めた右側の戦線へと走り出した。

 

 

 

「ぬんっ!!」

 ジェイムズは槍を繰り出し、地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)を突き倒す。

(もしかしたら、あの技を使う時は今日なのかもしれないな)

 槍を繰り出しながら、ジェイムズはそんな思いにとらわれる。彼は子供のころ近所に住んでいた奇妙な老人から槍術を教わっており、その時にけっして使ってはいけないといわれて〈生命燃焼〉という武技を伝授されている。

(使ってはいけないのに、なぜ教えてくれたのだろう)

 子供の時から何度も考えてきたことだ。当然今もその答えは出ていない。

 〈生命燃焼〉それは、使用すれば、ほんの一時だけ人間を超えた戦闘力を得ることができおるが、その代償として使用後に必ず死に至るという捨て身の武技である。

(……使いたくはないが、使わずに人生が終わってしまうのも、どうかと思っていたのだが。今日は使うことになるかもしれない)

 ジェイムズは一心不乱に槍をふるう。彼が槍を振るうたびに地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)が倒れていくが、その横で仲間が次々と倒れていく。

 

 

「バリケードが破られたぞ!」

「冒険者はまだかっ!! このままではっ!!」

「まだだ、あきらめるなっつ!」

 ロンブルハートが、槍を棄て魔法の剣を抜いた。

「ここを守るのだっ!!」

 だが、その意気込みを打ち消すように悪魔の軍団が現れる。

「くっ! 部下は守らればならん!〈死線の一閃〉」

 ロンブルハートの魔法の剣が煌めき、蛙と人が融合したような悪魔の体に傷をつけた。

 だが、それだけだった。

 

「くっ……やはり我々の力ではここまでなのかっ!」

「……さがってください! ここは任せてください!」

 槍を構えたジェイムズがロンブルハートを突き飛ばす。

「……今まで、ありがとうございました」

 ジェイムズはそう言い残し、蛙と人が融合したような悪魔へと近づいていく。

「よせ、よすんだジェイムズ! 逃げてくれっ!!」

 ロンブルハートの声にジェイムズは反応しなかった。

 

(ここで使うしかないか……それも悪くない)

 ジェイムズは体内の気を高めていくが、その途中で蛙と人が融合したような悪魔が襲いかかってきた。

「く……〈生命燃〉」

 最後まで言い切る前に、緑色の矢がジェイムズの顔の真横を通過し、悪魔へと突き刺さる。2発、3発と続けざまに急所へと突き刺さり悪魔が呪のような声を上げながら仰向けに崩れ落ちた。

 

「冒険者アローだ。ここは任せておけ」

 緑のフードの男アローが、颯爽と登場し言葉を発しながら矢を連射。次々に悪魔たちが地獄へと戻ることになった。

 

「ふん。地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)上位地獄の猟犬(グレーターヘル・ハウンド)。それに地獄の番犬(ガルム)か。話にならんな」

 周囲を囲む獣たちへアローが突っ込んでいく。

「せいっ!!」

 拳一撃で地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)の頭が潰れ、蹴り一撃でより大型の上位地獄の猟犬(グレーターヘル・ハウンド)の体が、真っ二つにへし折れる。

「ガルルルルルッ!」

 一番大型の地獄の番犬(ガルム)が、その巨体を活かした超強烈な体当たり(ガルムズ・ディナー)でアローにぶち当たる。

「ふふ……そんな攻撃は効かん」

 軽々と受け止め、その鋭い牙が生える顎を膝蹴りで打ち砕く。

「すげええっ……全部一撃だ」

 ロンブルハートとジェイムズは唖然、茫然としていた。

 

 

 なお、別の場所では同じようにモモンが悪魔たちを蹴散らし、何人もの兵士と冒険者を死の危機から救っていた。

 

 

「いくぞっ!!!」

「おおっ!!」

 アローは、弓を天空へと突き上げながら、叫ぶ。

 

「アローさんに続けっ!!」

 先頭に立って突撃するアローを冒険者達が追うが次第に距離が開いていく。

 

 

「アダマンタイトは遠いなぁ」

 1人の冒険者のつぶやきに、皆が頷いた。

 

 敵の首魁ヤルダバオト、そしてその腹心であるブラック・バトラーが、いると予想される地点まで、あと少しのところまで迫っていた。

 

 

 






今回のゲストキャラクター紹介

 衛兵隊長 アザン・ロンブルハート (丸藤ケモニング様 提案)
 衛兵ジェイムズ (炬燵猫鍋氏様 提案)
 やられ役 パイン兄弟(トックメイ様 提案)

 上記以外ですと、コタッツさんも前回に引き続きの登場となります。

 
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