「はじめまして。今日も世界は平和です」
「どうした?頭打った?」
ひどい会話から始まるが、それがこの小説である。
いやはやしかし、今日は特に平和に感じてしまう。
季節は夏である。夏真っ盛り、は少し前に過ぎてしまったが、まだ秋とは言えないと思う。十分暖かいし。
場所は僕の家。木造で風通しが良いので夏涼しい。冬は熱魔法をかけておくから普通に暖かいし、なかなかの住み心地だと思うよ?まあ、毎日毎日魔法をかけ直すのはめんどくさいけどね。
時間帯は朝の・・・、9時だね、うん。ほんのり暖かくなるくらいの時間。僕は好きだな。
さて、いきなり「今日も世界は平和です」なんて言ったのは僕だけど、ひどい突っ込みをしたのはもちろん僕じゃない(独り言なんて事実だったら悲しすぎる。僕はまだ16だよ?)。
突っ込みをしたのは、{ジータ}。驚かないで欲しい、ジータはカラスだ。・・・え、カラスが話せるはずがないって?まあ、{魔法の世界}とは言ったものの、そこら辺の動物全てが人語を話せるわけじゃないのは確かだ。そう、ジータはカラスじゃない。・・・え?言ってることが綺麗に矛盾してる?そりゃあ意図的にやってるからね。結論を言うと、ジータはカラスの姿をした{妖怪}なのである。
おや、妖怪という単語が出てきたぞ(自分で出したんだけどね)。
・・・さて、さらにめんどくさい説明をここでしなければならない。妖怪を説明するためには魔法の説明が必要だからだ。読むのがだるい人は後で読むか無視して飛ばすかして構わないけどね。大体、本とかって細かい設定無視して読んでも後で大体理解できるからね。
あ、この間には僕とジータのシーンは止まるのでよろしくね(そもそもまだ動いてないようなものだけどね)。
本当にめんどくさいよ?いい?(はよしろ)
コホン。
では、始めるよ。
この世界は、{魔法の世界}って呼ばれてる。その呼び名の通りに、この世界は魔力で満ち溢れている。そんな、あたりを漂っている魔力を拝借し、僕のような人間は魔法として使用するんだ。
ここからが厄介だ。魔法は、熱魔法・電撃魔法・水魔法・分裂魔法・生誕魔法・殺戮魔法・大地魔法・変化魔法・風魔法・魔封じ魔法の9つの属性に分類されている。
熱魔法。炎魔法とも言われているね。僕は前記の通り、冬の暖房として一番お世話になる。
電撃魔法。僕が一番得意な魔法なんだ。戦闘用に使われる魔法の大半はこれ。重機などの動力源にも使えるね。
水魔法。まんま、水を巧みに操ることができる魔法。私生活において、実用性が一番ありそうだね。
分裂魔法。ものすごく危険な魔法。なにせ、対象物を分裂させることができるから。さながら破壊魔法とも呼ばれる。
生誕魔法、殺戮魔法はもともと命魔法っていうひとつの区切りだったんだけど、いつの間にか変わってた。生命に関する魔法。
大地魔法。自然の恩恵を最大限活かす魔法。一番力強い魔法だね。だって、自然の力をまんま使ってるんだから。
変化魔法。物を変化させることができる。中には腕を鋼鉄のような硬さにして戦うみたいな器用なことをする人もいるね。
風魔法。風を司る。僕が電撃の次に得意な魔法。空も飛べるはず。
そして、魔封じ魔法。おまえは何を言っているんだ、と言いたくなるほど名称内で矛盾が起こっているけど、これは本当に魔法を封じる魔法なんだ。正直言って、これを使う人を見たことがない。
次に説明するのは、魔法を使う人々のこと。まあ、僕のような人のことさ。
魔法を使う人の総称は、{魔術者}っていう。そしてその中がさらに4つに分かれているんだ。
1つ目、魔法使い。主に見習いの魔術者を指す。僕の魔法使い歴は3年。基本的には6年かかるね。僕は運が良くて、魔法にすぐ馴染めた。
2つ目、魔道士。自分で魔法を使えるようになった人を指す。魔道士は自分の流派を開いて弟子に魔法を教える権利がある。
3つ目、魔術師。妖怪とかを操って戦うようになった人を指す。完全に指令に回る感じだね。
4つ目。・・・正直、これは微妙なラインだけど、魔剣士っていう役柄もある。魔法と剣を両方使う人たちだ。
そして、魔術者は生まれつき得意な属性、不得意な属性を持っている。僕が得意なのは電撃魔法と風魔法。苦手なのは命魔法2つだ。
この二つを踏まえる。妖怪というのは、魔法から生まれた生命だ。そして、熱の妖怪、電撃の妖怪、水の妖怪といったように生まれた魔法属性によって呼び方が変わる。ジータは、生誕魔法と殺戮魔法の2つから生まれたという特殊な妖怪なのである。
はい、説明を一旦終わりにしよう。この小説ではちまちま説明が入るから、そこんとこ夜露死苦。
てなわけで、場面再開。
ジータに突っ込まれた。
「いやあ、今日は実にのどかだなあと思ってね~」
「だったら{リフォース}に{杖}でも作って売りに行ったらどうよ」
・・・また説明かよ。
リフォースっていう単語が出てきたけど、ここでは村の名前と解釈して頂ければ結構。僕の家はリフォースから少し離れているけど、一応リフォースの範囲内に収まっている。いつもお世話になっている村だ。
杖ってのは、魔法の杖。僕は魔道士だから、魔法道具も作れる。中でも魔法の杖を作るのが得意だから、僕はそれを作ってリフォースに売っている。ほかに魔道士によって作られるものって言ったら、魔法の指輪とか、バンダナとか、護石とかだね。
「んー、でも今日は休みたいところだね。昨日頑張って作業したから」
「じゃあ休めばいいだろ」
「どうやって休もうか・・・」
「寝ればいいじゃねえか」
「どうやって寝ようか・・・」
「ベッドで寝ればいいじゃねえか」
「どうやって・・・、えっと・・・」
「無理やり考えなくていいんだぞ?」
「・・・負けたよ」
「勝ったよ」
なんてくだらない会話をする。やっぱりのどかだなあ・・・。
「・・・そうだ。暇だし、{シャル}のところに行こうそうしよう」
「・・・あいつも大変だな」
シャル。
僕の小さい時からの親友。よく昔から遊んでた。今でもシャルの家にお邪魔することがある。そうするとだいたいいつでもアイツは机に伏せて寝ている。で、適当に起こしていろいろと駄弁ったり遊んだりする。
あと、アイツは剣士なんだ。めちゃくちゃ強いらしい。戦ってるところを見てみたこともあるけど、正直にかっこよかった。
「そうと決まれば素早く行動だね」
僕は荷物をまとめる。
作るんだから、僕自身も魔法の杖を持っているよ?もちろんさ。1メートルほどの長い杖と、懐にしまえる30センチくらいの短い杖。名前は特にないけど、ながづえ、みじかづえとでも呼んでおくか。その2本を、一応護身用に持っていく。あとはいろいろバッグに詰め込んで、と。
「よし。じゃあジータ。しっかり肩に捕まっててね!」
「・・・いや、置いてかれても俺自身で移動できるからいいけど」
「短杖をこう振って~」
指揮棒の如く振る。
「ワープ。シャルの家」
僕たちは風に包まれた。そしてその場から消え去った。
・・・あ、ワープしれっとしちゃったけど、これは風魔法の一種。見覚えのある所に行けるんだ。感覚が楽しいから、ぜひみんなもワープしてみてね♪
__________
実は上にあるアンダーバーは適当に引いてあるんだよね。え、知ってる?そうか・・・。
よく考えると、上にあるアンダーバーっていうのも不思議な言い回しだけどね。
そんな訳でシャル宅の玄関前。
「さて、今日はどうやって起こそうかなあ」
リアクションが楽しみだ。
「いつもそんな感じだよな」
知ったこっちゃない。
ノックもせずに扉を開ける。
「寝起きドッキリの企画で~す」ボソ
ところがどっこい、その企画は一瞬で断たれることになった。
「え・・・」
僕は驚いて声も出ない。
すなわち、シャルが起きていたのである。
シャルは僕と同じ16歳。僕の髪色はスカイブルーで、シャルはブラウンだ。長さは、男にしてみれば長いほうかな?瞳は、僕が茶色、シャルは赤色だ。
そしてシャルは、剣を左腰に納めていた。そう、剣士なんだ(大事なことだから二回言ったよ)
「よお、{レイ}、ジータ。・・・なんで口あけてんの?」
ここで僕の名前が出た。僕の名はレイ、以後よろしく。
「・・・お前が起きていることに驚きを隠せないらしい」
ジータが代弁した。
「そうだよ!なんで起きちゃってんの!?せっかく寝起きドッキリ楽しみにしてたのに」
「お前の寝起きドッキリは毎回悪趣味だろーが!こっちとしてはあんな目に遭いたくないんだよ!!」
「そうだっけ?」キョトン
「まあ、それはいい。・・・何、俺が起きてる理由か?」
「ああ、それはいい」
「いいんかい!!」
「委員会?」
「委員会ではないぞ。・・・俺が起きている理由はな」
「もったいぶらないではよ言え」
「お前がもったいぶらせてるんだろーが!」
「ほら早く!」
「・・・。どうやら、世間的な規模の大問題が発生したらしい」
「え・・・」
僕は漫才を止めてしまった(いや、漫才のつもりはないんだけどね・・・)。
そしてシャルをまじまじと見る。目が本気だった。ジョークではなさそうだ。
「・・・何事?」
「リフォースからの伝達なんだけどね・・・。レイ、{300年前に起きた大事件}、知ってるか?」
「もちろん」
「それの現況となった怪物も知ってる?」
「・・・{魔神}。だけど・・・、まさか・・・」
「遠方の村が、魔神によって滅んだらしい」
「・・・」
言葉が詰まってしまった。
・・・説明がいるだろう。
魔神・・・、そして、300年前に起きた大事件。
約300年前の話。8月(ジータは8月って言ってた)。突如、この大陸の真ん中のほとんどを占める{エスピカル平原}で、大爆発が発生した。広大なエスピカル平原だったからあまり人が巻き込まれることはなかったんだけど、爆風の範囲にいた動物や植物は全て焼け払われていた。そしてなにより、魔法の世界の魔力が大いに乱れた。そのせいで自然界が狂いだした。
そしてその3日後、一つの小さな帝国が滅んだ。当時の人々はそれを3日前に起きた爆発の影響だと思い、それほど気にしてなかったのだが、その数時間後にはその考えも覆されていた。その帝国は、謎の怪物によって全滅していたのだ。その証拠に、興味本位でその帝国に行った人が、{人の残骸を喰らう化物}を見たのだ。
当時各帝国はその事実に震え上がった。すぐに「人喰いを生かしてはいけない!殺せ!」という声明を見せたが、それが余計なちょっかいだった。駆けつけた計50万人の軍勢はものの30分で滅ぶこととなった。
クマじゃないけど、人の味を覚えた怪物は、さらに人を喰らっていったらしい。老若男女関係なく、だ。
そこで、各国は協力し、当時の精鋭魔術者を集めた。交渉に出た者の真っ青な顔を見て、ただ事ではないと思った魔術者たちは、素直に交渉を承諾したらしい。
彼らに与えられた任務は、{魔神の封印}だった。魔神は魔力の塊だったらしい、魔術者全員で魔封じ魔法をかければいいのでは、という提案だ。どれほど危険かは計り知れないけど、これくらいしか手段はない。
結果的に言えば、魔神を封じることはできた。全員の力を合わせ、魔神はその場から消え去ったらしい。だが、魔力を振り絞った戦いだったため、その場の魔術者は全員が魔力の反動で死んでしまった。
世界で活躍してた魔術者が死に、提案をした帝国はひどく嘆き悲しんだ。だが周りの国々は、最善手だったと誉め讃えた。そして、魔術者たちの偉業を忘れてはならないと言い、{英雄の地}として、エスピカル平原の南端に全員を埋め、墓を建てた。
その魔神が、復活した。
その衝撃は、あまりに大きすぎて、むしろリアクションにならない。
「・・・魔神、ねえ」
ジータが呟いた。
「過去には魔術者の手によって封印されたはずなのに・・・。今回はどうやって止めるんだよ。正直、昔のほうが魔術者は優秀だったぞ?」
「・・・僕は?」
訊いてみた。
「レイは、・・・なかなかの逸材だとは思うが、昔に比べたらなんとも言い難いな」
「そう・・・」
会話が続かない。
「・・・なあ、話の続きしていいか?」
「え?」
まだ続いていたようだ。
「絶望しようが発狂しようが気にしないけど、現実を放棄してはいけないと思う。少なくとも今は大問題を抱えているから、それをどうにかしないとだな。そこで、リフォースに提案して、何らか対策をしようと思うのですよ」
「何をするの?」
「まずは・・・、帝国と手を組む」
「同盟か。分かるよ、協力し合いたいんだね。・・・どこと手を組むのさ」
「出来ることなら、{ビリーズ帝国}と手を組みたい」
ビリーズ帝国は、この世界最大の帝国。そして、最強の帝国。ただ、武力を以て領土を奪い取るという、非常に危ない考えを持っている国だ。仮にビリーズと手を組んだとしたら、戦力は大幅に上がるが、裏切られた際のリスクも跳ね上がる。
「まあ、ビリーズと手を組むのは難しいだろうけど、案は出すだけだそう。・・・レイ、今から村長に言いに行こうと思うんだけど、一緒に来る?」
「え、じゃあいくよ。暇だし。なんならワープしようか?」
「あいや、徒歩で行く。道中を見ておきたいんだ」
「なるほどね。了解」
魔神の復活によって自然に影響が及んでいるのかを見ておきたいのだろう。
「それじゃあ、参りますか」
シャルが歩みを始めた。
「・・・うーっ、いたずらしたかったなあ~」ムゥゥゥ
「おい、何つぶやいてんだよ。頬を膨らませるな」
主人公ですがプロローグ役です。レイ君ありがとう御座いました。