太陽と焔   作:はたけのなすび

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では。


太陽と焔と雷霆降臨-4

 

 

 

 

 結果、どうなったかと言うと。

  

「カルナ、お願い!」

「承知した」

 

 カルナから放たれた光線(ビーム)が、森を舐めつくそうとしていた炎の舌を消し飛ばす。

 ほとんどの炎はそれだけで消えるが、まだ幾らか燻る土の上の火に上から大木が撓るほどの大量の水が降り注いだ。

 小さな少女が、握った直剣から放った呪術である。

 体が小さくなったのに武器の大きさが変わらなかったため、大剣使いのようになっている少女は背中に回した鞘に剣を収め、マスターを見上げた。

 

「燃える音はもうしません」

「うん。ありがとう二人とも!魔力は大丈夫?」

「問題ない」

「同じく」

 

 よかったと笑うマスターの横顔を、小さな少女はじっと見上げる。すぐにその視線に気がついた少年は、足元の碧眼と視線を合わせた。

 

「キャスター、どうかした?」

「いえ。……いえ、はい。すみません。マスターが森の火事を消すのに積極的だと思ってしまって」

 

 ここはあくまで模型のようなものだ。

 燃えたところで構わないという見方もできるし、森から出る選択肢もあった。

 なのに、カルデアのマスターは火を消し森が燃えるのを止める道を、迷いもせず選んだのだ。

 立香は少し気恥ずかしげに頬をかいていた。

 

「えっと、まず危ないし。キャスターがそうしてほしそうに見えたのもあって……」

「……え?」

「違った?」

「……違い、ませんね」

 

 いつも通りのつもりを見破られたのかと気恥しさ半分、頼もしいと感じる想い半分で、少女はマスターを見上げて頷いた。

 

「……はい。かつての私は、火事を止めたかった。だから正直、二度も同じ場所が燃えるのはあまり見たくありませんでした。仮初めの、生命がひとつもない場所であっても」

「あ、キャスターって前、森育ちって言ってたけどまさか、ここなの?」

 

 その問いには、かぶりを振った。

 

「いえ、別の森です。でも、カーンダヴァには顔見知りのナーガ族がいくらかいました」

「……」

「水のナーガ族に火はつらいものです。目の前で、日に当たった蚯蚓のように死んでいくのは見過ごせませんでしたが……結局、無駄でしたね」

「え、キャスターも火事のとき森にいたの⁉」

「はい?はい、いました。だから覚えています」

 

 森を焼き払うアルジュナとクリシュナの姿を見たとき、火を消し止めるのは無理だと悟った。神に愛された者たちがいるならば、森の破壊は既に定められた運命なのだと。

 彼らにも、理由がある。

 人の都を作るために、未開の森は消されなければならなかったし、そも、パーンダヴァたちがカーンダヴァのような辺境に追放されたのは、ドゥリーヨダナや彼の父王が企んだことで、カルナも少女(キャスター)もそちら側にいた。

 

 正しさではなく、強いか弱いかがあの場では指標になっていた。

 できたのは、火から生命を逃がすことだけだ。火に落ちても死なない自分しか、いつもと変わらず動ける者がいなかった。

 

 森のナーガ族に友を持つインドラ神の雷雨は、降り注いで火を消そうとしていたが、クリシュナの矢は黒雲すら吹き飛ばし、炎は森を焼き続けた。

 

 アグニ神は、どうだっただろうか。

 近くにいたのだろうか。

 

 伝承を紐解けば、彼はバラモンの姿でアルジュナとクリシュナの前に降臨していたらしいが、生憎記憶にはない。

 恐らくいたはいたのだろうが、余裕がなくて探してもいなかった。

 ()に頼んで火を消してもらう発想は、不思議となかった。多分、今も無い。

 ともあれ、己の記憶でも、伝わった物語(マハーバーラタ)でも、カーンダヴァの森は炎神に捧げられて消え、パーンダヴァは土地を拓いて都を築き、繁栄した。

 それだけのことで、別に恨みと言うほどの事件ではなくなってしまった。

 そう言えるのは、自分があの火事で決定的なものは失わなかったからだろうか。

 

 何か言いたげな視線をよこすカルナが口を開く前に、少女(キャスター)は鋭い視線を向けた。

 

「以前も言いましたが、あれは全員の運が悪かっただけで、ナーガたちに私を巻き込むつもりはありませんでしたよ」

「知っている。オレはあのとき、帰ってきたなり倒れたおまえに染み付いていた煙と灰、脂の臭いを嗅いだだけだ。焼ける森も、見ていない」

 

 それもまた、カルナがいないところで関わり、終わっていた出来事だ。

 何かまだ言いたげに口を開きかけたカルナだが、急に表情を引き締めた。

 

「マスター、()()ぞ」

 

 カルナが示す方向。

 火が消し止められた線の縁に立って穴の底を見下ろしている、ほっそりとした人影がいた。

 ()()が顔を上げ、視線が合う。

 ()()()()()()に、少女(キャスター)の眉が顰められた。

 

「やっぱり……」

「キャスター……」

「はい。インド異聞帯にいたアグニ神ですね。私の殻を借りているようです」

 

 そんなことのためにこちらの力を削るな本当に。自前で用意できるだろう。

 

 傍迷惑な降臨の仕方に、つい片眼がひくひくと痙攣する。

 そして、こちらが向こうに気がついたならば逆も然り。

 どんな力を使ったのか、ふわりと飛んで一行の目の前に着地した自分の姿を、幼い少女は目を眇めたまま見上げる。

 

「やぁ、天文台のマスターだね。久しぶり!」

 

 自分の顔で朗らかな笑顔を向けられると、違和感が凄まじかった。

 同じ少女の顔を使っているのに、笑顔がらしくない。

 カルナが無言で神の視線に割り込んでくるのを見つつ、陰から観察する。

 とはいえ、先の一言ではっきりした。

 

 ()は、インド異聞帯と地続きだ。

 少なくとも、彼処の記憶を持っている神である。

 

「……お久しぶりです、アグニ神……でいいんでしょうか?」

 

 インドラ神相手だろうと、人好きのする態度を崩さない立香の珍しい硬い声を気にしたふうもなく、少女のカタチのアグニ神は続ける。

 

「ああ、そうだよ。一体誰が、ボクの邪魔をしたかと思ったけどキミならいいさ!彼処とあの子の介錯をしてくれたからね」

「なら、あの森を燃やそうとしたのはあなたなんですね?この特異点も?」

「特異点?人間はここをそう呼ぶのかい?ボクは、インドラがつくった裂け目をすこぅし引っ掻いたのさ。それで入れたから来たんだ。あいつも息子に会いに来たんだろう?」

 

 なるほど、無自覚にやらかしてくれたほうか。

 

「はい。そうですけど、でもあの、アグニ神────」

(ボク)に、否を言うのかい?」

 

 ず、と空気に質量が加わる。

 空気に灰の香りが混ざり、産毛に熱気が籠もった。

 

「マスター」

 

 手のひらから出した冷風で立香を熱から遮断し、カルナの横をすり抜ける。

 目の前に出てきた、自分の殻と同じ顔の子どもには興味を惹かれたのか、アグニ神の金眼がきろりと据えられた。

 

 そう言えば、アグニ神が表に出ているとき、己の眼は金色になるのだと思い出した。

 何年も何年も、水を覗けばそこにあった色なのに、まだ見慣れなかった。

 

「キミか、()()()()()。やっぱり来てくれたんだね。まぁ、またキミから借りて来たんだから来るよね」

「アグニ神、それは私の名ではありません」

「それはキミが名乗らなかったからだよ。人の仔なのに名がないのは不便だろう?」

 

 即答されては言葉に詰まるが、勝手に違う名をつけないでほしいのだ。

 あちらからすれば、見分けをつける記号は確かに必要だが、名は重い。揺らぐ。

 

「アグニ神、あなたが被っているのは、私の姿でございましょう?今回は如何されましたか?それに、カルナとアルジュナ・オルタ様からも力を持ち去ったのは何故でしょう?返していただきたいのですが」

「キミは本当に(ボク)に問いをよく投げるねぇ。アルジュナの神代でも変わらなかった。あの黒いアルジュナはどこへ行ったの?」

「カルデアにいます。あなたが借りて行った力には、頓着していないと仰っています」

「元々、(ボク)を取り込んで得たものだしね。ちょっと返してと言ったら、あの子なら返してくれるよね」

「……」

 

 ─────面倒くさくなってきた(はぐらかすな馬鹿野郎)

 

 かちりと目が据わるのを自覚したと同時に、カルナが前に出ていた。

 

「アグニ神、余分な前置きは不要だ。現界した理由は何だ?済ませたい要件があるならば聞こう」

 

 カルナを見るなり、アグニの眼の金色が一層硬質になる。

 何故だか、異聞帯でもアグニはカルナに対して棘があった。アルジュナを好いているからかとも思ったが、理由は判然としていない。

 ともあれ、アグニは立香や少女(キャスター)に向けるのとは違う硬化した声をカルナに向けた。

 

「それを解決するのを手伝ったら、取ったものを返せと言いたいのかい、施しの英雄?いつになく必死のようだけど、タパティーがいるせいかい?」

「それは、彼女の名ではない」

「キミもその仔も、揃って言い張るなら名前を告げなよ。名乗りを許しているのに告げないなら、(ボク)は好きに呼ぶだけだ」

 

 ────まぁ、そうもなるか。

 

 世界からの忘却の呪いは、アグニ神にも効いている。効いているから、名乗ったところで聞き取れないし記憶もできない。

 インド異聞帯で、何度試そうと駄目だったのだ。

 ならばクラス名(キャスター)で呼べばいいと言ったし頼んだが、結局神の好みの名が優先された。

 

 ────そういうことをされると、在り方が歪みそうで嫌なのだが。

 

「でも、キミたちがボクを手伝うならこの体もヴァイカルタナのものも、黒いアルジュナのものも全部返してあげるよ。お手伝いの内容、聴くかい?」

「お願いします」

 

 実質、選択肢が存在していない。

 警戒心も顕なサーヴァント二騎と共に、迷いなく応えた人間のマスターに肩をすくめ、人の器を借りた神は口を開いた。

 

(ボク)は、探してる人間がひとりいるんだよ。だけど、全然見つからない。色々とがたがたになった影響だろうけど、お陰で苦労してるんだ。その仔を見つけるの、手伝ってよ」

「……名前、は?」

「抜けちゃった。それも含めて探してるのさ、力が戻れば思い出せるだろうかと、キミたちから借りたり、(ボク)に力を戻してくれた、あの美味しかった森を再現して試してたんだけど、うまくいく気がしないんだよ」

 

 インドラ神と比べれば、気弱とすら言っていい物言いだった。

 今の己の無力さを曝け出すのにも、人を利用するのにも、躊躇いがない。

 気配からして、基礎は汎人類史のアグニ神だろうに、異聞帯のアグニ神が混ざって随分とぐちゃぐちゃだ。

 娘の姿を勝手に借りた、ボクっ娘の父親なんてキツすぎる!と、ガネーシャ神ならあけすけに言ってくれそうだ。少女(キャスター)も正直どうかと思う。

 

 しかし神話再現を試みたり、カルデアに干渉したりと力は残っているし、理性もある。

 

 このアグニ神が、見つけ出せない誰かとは、さて誰だろうか。嫌な予感がする。

 

「もう少し手がかりとか、ヒントはないですか?」

「ひんと……うーん……んー、あ、そうだ!」

 

 ぽん、と子どものようにアグニは手を打った。

 

「多分、ボクの仔どもだよ!ひとり、抜けてしまった気がして、探しに来たんだ!」

「ちょっと待ってもらっていいですか?」

 

 間髪入れずに返したカルデアのマスターに、神は、いいよ、と笑って応じた。

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

 

「どうしようか。アグニ神が探してるのって、キャスターじゃない?」

 

 ひとまず作戦会議である。

 一旦カルデアへ戻り、アグニの話を司令室の全員に伝えた立香は、最後にそう締めくくった。

 

「……恐らくそうだろうな。名がアグニ神の記憶に残っていないのも当然だ。神々自ら呪いをかけ、世界から消している。つまりは、消した事実も忘れているのだ。目の前にいたところで、気がつけるはずもない」

 

 謂わば、アグニ神は自縄自縛している。

 カルナの言葉に、立香は腕を組んだ。

 

「キャスター、アグニ神が今になって君を探す理由に心当たりは?向こうは、会いたくなったから来たとしか言ってなかったけど」

「人理焼却と漂白の不安定さと、異聞帯の記憶の混入に、インドラ神の顕現が引き金でしょうね。元々、インド異聞帯でも何かを探そうとする素振りは見せていました」

「インドラ神が個人的な願望も込みでカルデアに顕現したのだから、己も構わないと考えたか?」

 

 こくり、とカルナの腕に乗ったまま少女(キャスター)は頷いた。

 

「どうしましょうか。あのままだと、私が娘だと告げても無理です」

「そうなんですか?」

 

 マシュに、少女(キャスター)は頷いた。

 

「異聞帯で、最初のユガが一巡するまでの間ずっと言っても、聞く耳持てずでした。さすがにあれは諦めます」

 

 まだ、インド異聞帯のユガの回転が、千年単位であった頃なのだ。それだけの年月言って無理ならば、諦めざるを得なかった。

 カルナは、少女(キャスター)を腕に乗せたまま素っ気なく頷いた。

 

「呪いには何柱も加わっている。アグニ神が強大であっても、一柱では足りない」

「補足すると、私でも呪いの緩和や解呪は無理です。私は異聞帯で、彼女は汎人類史の存在ですから」

「極めて似ていても、絶妙に違いますから仕方がありませんよ。でもありがとうございます。アルジュナ様」

「いえ」

 

 アルジュナ・オルタはふわりと浮遊したまま頷く。

 立香の手が、するりと伸びた。

 

「あのさ、キャスターにかけられてる呪いって解けないのかな?それを何とかしたら、アグニ神はキャスターが誰か解るよね」

「はい?」

「……あなたの状態は、元々神罰でしょう。罪に対し罰があるなら、罰に対して赦しもあって然るべきでは?」

 

 弓のアルジュナの言葉に、少女(キャスター)は頬をかいた。

 確かにそれは、正論ではある。

 罪には罰を、罰には赦しがなければ、刑罰は成り立たない。

 だが、自分の場合はそうとも言えなかった。

 

「……無くもない、が」

 

 代わりに応えたのは、カルナだった。

 だが、顔があからさまに苦々しい。

 負の感情を持つこと自体が珍しいカルナの、滅多にない顰め面だった。

 

「敢えてわかりやすく例えて言うが、彼女への罰に対し刑期はあった。あったが、意味がなくなっている」

「えーと……」

「簡単に言えば、罰の長さは私がどこまで手放さないでいられるか、だったんです」

「?」

 

 立香やマシュ、ゴルドルフだけでなく、アルジュナも首を傾げる。少女(キャスター)は平坦に続けた。

 

「私が私たるすべてを、自ら捨てて闇に呑まれ、闇に下るのを無我の境地で受け入れるコトができれば、刑は終わりです。インド異聞帯で、カルデアが来る前にアグニ神が言っていました」

 

 もし、こういう罰を下すとすれば何を以て罪の終わりとするのかと尋ねてみたら、そう言われたのだ。

 アグニ神は、その罪人が誰を示すかを知ろうとはしなかったが。

 それを聞いているカルナも続けた。

 

「意味するところは、個我の放棄だ。無明の闇に、人はいずれ耐えられなくなって潰され我は消える。だが消えるのは、神から見た悪心(・・)を備えた人の部分だけだ。残った純粋な部分を、アグニ神が吸収すれば、何もかもあるべき場所に収まる───はず、だった」

 

 が、しかし。

 

「私が、耐えられてしまったんです。孤独とか、暗闇とか、そういうものに。多分、そこが計画外だったかと」

「ひとえに神の計り間違いだ。結果、数千年間呪いは続き、人理焼却という未曾有の事態に巻き込まれ、召喚される機会を得た。それは喜ばしいが、呪い自体は未だ終わる目処がない」

「……つまり、彼女の心が折れるまでが罰で、折れればアグニ神と一体化して罪は昇華されるはずだったと?」

「そうだ。アグニ神は、呪いの終わりを定めていないわけではなかったのだろう。浅慮だが、情のない神ではないからな」

「だが、それでは永遠に終わらないだろうが!」

 

 む、と少女が幼い顔を顰めた。

 

「人をなんだと思っているんですか、アルジュナ様。永遠なんてあり得ないでしょう」

「そのあり得ないを未だ続けているのがおまえだ。アシュヴァッターマンの三千年の彷徨すら、とうに越えた自覚はないのか?」

「それはその……過ぎてしまえば、千も万も変わらないのでは……?」

 

 最悪の返しである。

 視線が四方八方から飛んでくるのを感じて、少女(キャスター)は縮こまった。

 カルナの言葉は、容赦がなかった。

 

「おまえは心が折れる折れない以前に、折れ方を忘れている。動く足があるなら前へ進み、朽ちていない手があるなら惑う誰かに伸ばす。元からその傾向はあったが、サーヴァントとなり多くの戦いを経て、一層意志が固まった。最早、その行いは呼吸のようなものだろう。ゆえに、呪いに終わりが見えない。武人ですら苦行と呼ぶ行いが、おまえには何の苦にも枷にもなりはしない」

「……」

 

 少女(キャスター)は、きちりと口を噤んだ。

 糾弾しているように聞こえるが、カルナの言葉の裏には己への自責があった。

 少女(キャスター)が頑固で強情で決めたことを曲げられないのは、カルナと出会うより前からなのだ。

 カルナが気にすることではないとは言わないが、気に病むべきではないと思う。

 

「……なら、キャスターの呪いは解けないというか、解いたらマズい?」

「はい。元々の条件的に、下手に満たすとアグニ神に一体化、もとい吸収される可能性もあります。私はカルナのように、死後一体化して尚、スーリヤ様と別個に世界へ記録されるような者ではありませんから、吸収すなわち個の抹消かと」

 

 結論は。

 

「呪いはこのままにしておかなければ、彼女が彼女でいられなくなる可能性がある。マスター、取り方を誤れば崩れる積み木細工のようなものだ」

「いやそこまで繊細ではな────はい、すみません。黙ります」

 

 なんで睨まれないといけないのか。

 とはいえ、未だ呪いの話はカルナにとっては色々と、呑めないものであるのだ。

 少女(キャスター)が自分の意志で選んだからと、あの末路を何とか、ぎりぎり飲み、尊重こそしてくれているが、己への自罰的な思考はあるし、呪いに至っては肯んじるどころか隙あらば燃やしたいぐらいには思っているようだった。

 

 アルジュナは少女(キャスター)の状態を罰と言い、カルナは呪いと言う。

 言葉の違いが、そのまま認識の差だ。

 

 聖杯に願って、おまえのあの結末を変えたいとは思わないが、選択肢として頭に浮かんだことはあると言われた時はどうしようかと頭を抱えそうになった。

 過去は変わらない。

 未来は生者のためにある。

 それをサーヴァントたる規則(ルール)として己に定めているカルナだが、逆に言えば態々定めなければ破る可能性があるのだ。

 

 それぐらいには、呪いにもアグニ神にも思うところがあるカルナが、今回異聞帯との混在とは言え、【アグニ神】に出会った。

 しかも、向こうは少女(キャスター)の皮を借りた上に、己の呪いで忘れた娘を、今更思い出したいし、取り戻したいと訪れた。

 

 基本的には穏やかだが、戦士(クシャトリヤ)らしく血の気が多く、こと戦闘に関してはすぐに飛び込むカルナの気質は、知っている。

 しかも今は、修行時代の【若さ】が濃いサンタさん状態。

 

 今更ながら、少女(キャスター)は自分を抱えたままのカルナを振り仰ぎ見た。

 

「カルナ、アグニ神を何も考えずに倒そうとしないでくださいね?ただ立ち向かっても解決しません」

「しない」

「それならいいのですが……」

「おまえから借りている姿形を、迂闊には損なえない。拳でどうにかなるならとうにしている」

「器が私でなかったら、即殴りかかっていると聞こえるのですが?」

「……」

「こら!目を逸らさない!二人揃って神罰くらいたいのですか!あなたの呪いまみれは生前だけにしてください!」

 

 ぺちん、と小さな子どもの手が施しの英雄の前髪を払ったのだった。

 




自分の体を勝手に使った挙句、ボクっ娘と化した父親を前にする主人公でした。

マシュマロでカルデア医療班とのリクエスト頂きましたので、本編終わったら書きたいと思います。
偶然にもアスクレピオスと主人公のパラメータほぼ同じになっていて、面白かったです。

主人公
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力A+ 幸運D+ 宝具A

アスクレピオス
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力A 幸運D 宝具A+

でした。
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