太陽と焔   作:はたけのなすび

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ここすき、感想、評価、誤字報告、ありがとうございます。

では。


太陽と焔と雷霆降臨-7

 

 

 

 

 母は、金色の髪をしていたと思う。

 もう顔も思い出せなくなってしまったし、心労を映し取ったような白髪をしていたような記憶があるから、確かではない。

 

 ともあれその金糸の髪は娘には受け継がれなかった。

 代わりに瞳と肌の色、顔の造りは似ていた。

 長ずれば、女になれば、おまえも美しくなるだろうと言われたことはある。

 それぐらいしか価値がない、という欲が透けた言葉だった。

 

 けれど、ある時を境に体は成長を止めた。

 女とも少女ともつかない外見のまま、姿が変わらなくなった。

 人でないモノの血が流れているのなら、そういうこともあるだろうと、受け入れて終わった。

 実の父が、神だろうが羅刹だろうが夜叉だろうがアスラだろうが、誰でもよかったのだ。関係がなくなっていたから。

 

 今ならわかるけれど、肉体の成長を堰き止めたのは自分自身だった。

 母のようになりたくない、母のように────望まない愛を受けたくない。

 美しいから、女だからそんな目に遭うというならば─────何にもなりたくない。

 

 無意識の拒絶。

 母を犯した父への、恐怖。

 それが絡みついて、時を止めた。

 老いを拒むよりも前の段階、成熟を迎える前の時間で、体が止まった。

 

 有り得た未来を己で摘み取り、押し潰した。わかったのは、異聞帯を経てからだ。

 ならばそれを受け入れ、身に纏えばどうなるか。

 

 その答えは、アグニを見れば明らかだった。

 

 焔に乗り、宙を駆けていた炎神の足が、止まる。

 

 彼の目には、今、かつて愛して死なせた、人間の女が映っている。

 

 驚愕、混乱、困惑と理解不能。

 見過ごせない感情が混ざり合い、神の動きが止まる。

 人に恋をし愛を囁く、心を持つ神であるからこその動揺だった。

 

 ならばこそ、発動できる()がある。

 少女(キャスター)は、剣を握った腕を空へ掲げた。

 

「────戦場で、あなたは呪い()に足を取られた」

 

 一言一言に魔力を込め、術と成す。

 

 呪文を歌うように呟く少女(キャスター)の手の中で、黒き最後の神だった青年から借り受けた力が輝き、形を変える。

 

「────戦場で、あなたは、身内()の裏切りに遭った」

 

 光を感じながらも、少女(キャスター)は呪文を続ける。呪いを紡ぎ歌うことはやめない。

 

「────戦場で、あなたは神弓(ガーンディーヴァ)に狙われた」

 

 神代を、かつての神話の時代(マハーバーラタ)を再現したとアグニは、言った。

 ならばそれを、利用する。

 アグニが奪い、自らの血肉にした力の中には、カルナがいる。

 それを、それだけを、撃ち抜けば、一体化した神にも攻撃は通るだろう。

 物理も毒も効かないならば、因果を辿るのが有効だから。

 

「────戦場で、あなたを討った半神は、かつて神を助けて弓を得た」

 

 サーヴァントにとって、死因は弱点だ。

 歴史に記された英雄の死因は確定し、覆らない。まして、何千年と語り継がれた物語であれば多くの人々の心に刻まれ、強固な因果となる。

 その物語をなぞり、条件を満たせば、()()ができる。

 

 それがたとえ、()()()()()の末路であろうとも。

 

 使えるならば、利用する。

 

 アルジュナ・オルタ(神性の統合者)から授かった力は、弓の形へと変わる。

 白く輝く長弓ガーンディーヴァは、成熟した今の体でも手に余るほど強い。

 

 なんでこんなものを、あの英雄は軽々と引けたのだろう。

 人の首を刎ね飛ばす矢を放つ剛弓など、自分がまともに扱えるわけがない。

 だが、一矢でいいのだ。

 

 それだけで、太陽神の子の首は落ちて、あの戦いも終わったのだから。

 

 白く輝く弓に剣が形を変えた矢を番え、引き絞る。

 矢の先には未だ動きを止めた【神】がいた。

 カルナの末期の有り様は、アグニをも絡め取って動きを封じる。

 自分の姿をした神の、その裡にある見間違えようのない黄金のきらめきに、照準を合わせた。

 

「────運命は此処に定まった」

 

 弾けて、墜ちろ、と。

 

 少女(キャスター)は矢を放った。

 

 空間を引き裂くように、矢が飛ぶ。

 飛んで、飛んで、少女のカタチをした神へ、矢は()()()

 

 白く細い首を、剣の矢が切り裂いて断ち切る。

 

 されど首は落ちて転がらず、すぐさま焔が動いて繋がるのは視えた。

 それでいい。撃つべきものは既に撃った。

 後ろで斬首を見ていたマスターが、声を張り上げる。

 

「カルナ、お願い!」

 

 承知した、と念話が届くとほぼ同時、カルナが拳を掲げるのが見えた。

 インドラから借り受けた力、槍の形であったもの(ヴァサヴィ・シャクティ)がそこに宿っている。

 

 ただ、それの意味するところは。

 

「マスター、離脱します!」

「うん、お願い!」

 

 弓を放り捨て、再びマスターを抱える。

 役目を終えたガーンディーヴァは溶けるように魔力へ還るから、気にする必要はない。

 背中から焔の翼が吹き上がり、少女(キャスター)が飛び立って弾丸のように空の彼方へ離れた瞬間、マスターとサーヴァントの背後で、神殺しの力が炸裂した。

 

 容赦ない爆風と熱波が、空に逃げても追いついてくる。

 轟と響く炎の渦に吹き飛ばされかけて、翼で空気を掴み、留まる。

 

「ッ……!」

「い、いつもより強くないかなッ?」

「カルナのやる気とインドラ神の物見遊山心が上乗せされているのではないかとッ!マスター口を閉じて!舌を噛みますよ!」

 

 このままでは、余波で立香が焼ける。

 四枚羽のうちの二枚を背後に伸ばして防御壁を展開するが、壁ごと押し切られて空へ押し上げられる。

 

 この力の中心にいるカルナだが、ひとまず無事であるのは感じ取れた。

 弓で切り離したカルナの力、即ち黄金の鎧は、即座に本来の宿主へ還ったのだ。

 それがなければ、カルナでも消し飛ばされる規模の爆発だった。

 

 これで効いていなければいよいよ打つ手がなくなる、と少女(キャスター)が臍を噛んだときだ。

 びり、と全身に痺れるような衝撃が走った。

 

「つッ……く、ぅ……!」

「キャスター!」

「だい……大丈夫です、マスター……」

 

 衝撃は数秒で収まり、目を開ければ元の形と大きさに縮んだ腕が見えた。

 体が、元の少女のそれになっている。これがやはり、一番落ち着くのだ。自分で自分を呪った末の姿だとしても。

 抱えたままのマスターが、朗らかな声を上げた。

 

「キャスター、いつもの姿だよ!」

「はい。ステータスもちゃんと元に戻ってます。一応成功ですね」

「なら、カルナも?ちゃんと霊基の反応はあるし」

「はい。大丈夫だったようです。念話で盛んに無事アピールしてきています。アルジュナ・オルタ様のところにも、多分力は還っているでしょう」

 

 翼をはためかせ、空から地上を見下ろす。

 

 大きく抉れたクレーターの中心に、二つの小さな人影が見えた。

 ここが、アグニの創り上げた謎の空間で本当に良かった。

 白紙化しているとはいえ、現代の大地を神殺しの力で抉ったり、マグマをぶち上げて壊すのはよろしくない。

 本当に、よろしくない。

 

「キャスター、行こう。降りられる?」

「はい。わかりました」

 

 マスターに促され。神話の戦いもかくやという破壊痕のただ中に翼を向けた。

 地上に足をつけて翼を消し、マスターを降ろす。

 黄金の鎧と槍を手にした、【ランサー】の姿となったカルナは、気配に気づいたようで振り返った。

 

「成功したようだな。いい矢だった」

「はい、ありがとうございます。……では、そこに直ってください。見た目だけ繕って、中身のぼろぼろを隠せると思いましたか?」

「まだ戦いは終わっていない。不要な気遣いを向けるな」

()()()()()()()()()()()?」

 

 破壊の中心に座り込み、神とは思えぬ憔悴をしているアグニを見下ろす。

 少女(キャスター)の器を被れなくなったからか、アグニの形は少年に転じていた。

 伝承では太ったバラモンの姿をしていると思うのだが、趣向を変えたのだろうか。

 赤い肌に黒い髪の少年は、少女(キャスター)の声にぴくりと肩を震わせた。

 

 神の金色の瞳に、青い瞳が映る。

 

「おまえは……きみは、()()()()()?」

 

 おや、と思った。

 ()()()()()()()()だ。

 カルナと己以外、口に出すことも、耳にすることもできなくなった呪い名を、今、この神は口にした。

 どうしてだろうと寸の間考え、ああ、と納得する。

 

()()()()()()()()()

 

 娘と母の名は、同じだった。

 母に貰った、最期の贈りものだ。

 

 娘の名ではなく、その母親としての名は、世界の記録に残っていたらしい。

 果たして神は、信じがたいものを見るような何とも人間じみた顔で少女(キャスター)を─────ユーデリカを見上げた。

 

「母……じゃあ、おまえは、(ボク)のむす、め?」

「はい。とはいえあなたに実感はなく、記憶もないでしょう。私の呪いは、あなたにも作用した。だから、仔の存在を思い出せても、あなたはソレを正しく認識できない」

 

 だが。

 

「母様を経由すれば、存在を思い出すことはできるのですね。かつて愛した人間を、あなたは忘れていなかった、と」

「忘れない……!忘れてなどないよ。アレはボクのものだった!……でも、そうだ。ボクのものだったのに、いなくなった。……魂が、消えたんだ!」

「消えていません」

 

 何故なら。

 

「母様は故郷の西の国へ、魂だけになって帰られました。だから、あなたの手元に魂は残らなかったし、彼女は最初からあなたのものではない。生まれてから死ぬまでも、死んだあとでもそうです」

「……おまえが、そうしたのかい?……ああそうだ、思い出したよ。……ボクの手元にあるとき西風が吹いて、魂を運んで行った。……あの風を吹かせた人間が誰であれ、(ボク)はその者の願いを天へ運ばず叶えないと()()()()()

「短絡的な言葉だ。誰が死者を弔ったか確かめもせず、娘を呪ったのか」

 

 カルナの指摘にアグニの眼が燃え上がるが、すぐに収まる。

 燻ぶる火種のように、アグニは静かだった。

 少女(キャスター)は目を瞬いた。

 

 まさか、そんな幼い頃に呪われていたとは。

 

 まったく気が付かなかったのだ。

 幼すぎて呪いとともに成長し、そのままになったのだろう。

 

「口から吐いた言葉は、神であっても覆せない。だからボクの呪いはボクにも消せなかった。……魂を送り出したのが、彼女の娘……(ボク)の娘でもある半人と気がついたのはそのあとだ」

「そうですか。……ああ、だから私がいくら願っても、あなたは現れなかったのですね。()()()()()()()()()()という私の願いを、あなた自身が聞かなかったから」

 

 願いを天へ運ぶアグニに見限られたなら、どれだけ祈ろうが届きはしない。

 怪物でも何でもいい。この世に【父】がいるなら、何者かを知りたいという言葉は、届かず燃え尽きていたのだ。

 周囲を燃やす焔なんて要らない力を返したいから、会いたかった。

 

 けれど、父の影すら目にはできず。

 

 そのうち、願うのも止めてしまった。

 

 そうか。

 あの虚しさの源も、何もかも。 

 

「あなたですか。……アグニの父様?」

 

 神の前に膝をついて、小柄な少年の形を見下ろす。そう呼ぶ資格があるのかも、もうよくわからない。

 呼びたいのだろうか。

 誰かを父と呼びたかった気はするけれど、なんだか、ここまで燻った神を見たら、どうでも良くなってしまった。

 

 ぱりん、と殻が割れた音がした、気がする。

 

 水を浴びた焚き火みたいだと思う。多分それ以上の感情は、持てない。

 もう、自分がこの父たる神について思い悩むことも、思い煩うことも、感傷に浸ることもない気がした。

 

「……用は済みましたか?あなたは、無くした仔を取り戻したいと仰いましたけど」

「……」

「あなたは別に、無くしてなどいなかった。ずっと近くにいたのに、気がつかなかっただけです」

 

 自らが吐いた、二つの呪いの言葉が原因で因果は巡り、ここに結実した。

 最早、手出しすべきではない。

 

 神は、悔やむのだろうか。

 まず、悔やめるのだろうか。

 悔やんだところで何も取り戻せない、当然の事実があるだけだ。

 愛した女の魂は遥かに離れ、娘は自らの手で切り捨てたのだから。

 

「では、さようなら、アグニ神」

 

 最後になるだろう神への拝礼をしてから、少女(キャスター)は立ち上がった。

 アグニ神は動かず、ただ座り込んで少女を見上げている。体の輪郭が、魔力へ還りかけている。

 神代から離れたこの時代では、やはり長くは留まれないらしい。

 本体に何ら影響はないだろうが、首を一度落とされ、神殺しの槍の力を浴びてもいるのだから、現界に限度が来たのだろう。

 

 カルナの影が、背中に差した。

 

「もういいのか?」

「もう、いいのです」

 

 得られたものは、あったのだろうか。

 名前が、何分の一かは世界に戻ってきたような感覚はあるが、解呪とは言い難い。

 成果と言えばそれぐらいなもので、カルデア的に見れば迷惑を被っただけのような気もする。

 

「マスター、大丈夫ですか?かなり熱かったでしょう?」

 

 神に背を向けて少女はぱたぱたと走り、(マスター)へ駆け寄る。

 固まっていた藤丸立香は、やおら少女(キャスター)の腕を掴んだ。

 

「い、今、今さ、俺聞こえたよ。キャスターの名前!■■■■■って!」

「あら」

 

 呪いをかけた神の一柱、アグニ神がその存在を思い出し、名を口にしたからだろう。思わぬところで、【名】が刻まれることとなったらしい。

 意味が取れない音を口にして、それでも少年は言った。

 

「言えないけど、でも、聞こえた!覚えたよ、俺!やっと!やっとわかったんだ!」

 

 弾けるような笑顔でキャスターの手を握ったまま、上下にぶんぶんと振るマスターに、少女の形のサーヴァントは目を丸くした。

 

「マスター、そんなに嬉しいのですか?」

「嬉しいよ!冬木でもアメリカでも、インドでも、今までずーっと知りたかったんだ!俺たちを助けてくれた、君の名前を!」

 

 口に出すことは、未だできそうにない。

 それでも。

 

「俺は覚えたから、絶対忘れない!マシュにも皆にも聞いてもらえる!」

「通信は遮断されていたのでは……?」

「音声ログは取ってるから!……映像はちょっと破損したかもだけど」

 

 あれだけドカンバコンと大地をひっくり返して暴れたから、それはそうだろう。

 親からの誕生日の贈り物を受け取った普通の子どものように、満面の笑顔のマスターにつられて、少女(キャスター)もほほ笑んだ。

 マスターに握られた手をするりと水のように抜いて、片手を胸に当てて片手で衣の裾を摘んで礼を取る。

 

「では改めて、私はサーヴァント・キャスター、真名■■■■■と申します。今後ともよろしくお願いしますね、私のマスター」

「うん、よろしくキャスター!……前も、こんなことあったね」

「そうですね。随分久しぶりですが、名乗りは何度してもいいものです」

 

 くす、とつい互いに笑ってしまう。

 この少年の召喚に応じたのはもう随分と──────本当に随分と昔、数千年は前になった。

 だとしても忘れられない輝きであるのは、彼が未来を生きる人の子であるからだろう。

 

 そういうものが見たくて、自分たちは生きていたのだから。

 

「帰りましょうか、マスター」

「うん!」

 

 後ろを振り返らず、前だけを見て歩いていくマスターとサーヴァントの背を、神の金色の瞳が追う。 

 

 追う、だけだ。

 

 既に退去を始めている炎神に向き合うことはなく、カルナは踵を返す。

 もういい、と彼女が言ったなら、それでいいのだ。

 事の因果の始まりは、人と神の、愛と呼びたくはない交わりで、その間に生まれた者は自らに絡んだ綱を断ち切った。

 

 もう二度と、思い煩うことはないだろう。

 

 死後になってしまったが、彼女はもう自由だ。

 元々、ほぼ自力で自らの解放をやり遂げてはいたのだ。今回の事件も自分の存在も、最後の一押しになっただけだろう。

 

 そんなことを思いながら離れようとしたカルナの背に、声がかかる。

 

「なぁ、施しの英雄(ダーナヴィーラ)、応えろ。……おまえと生きて、あの娘は幸せだったのかい?」

「……」

 

 脚が止まり、振り返る。

 顔を上げた神の顔は、少女のものとよく似ていた。

 

「あの娘の最期は焔だった。骨も肉も、塵すらも残さないほどの業火だった。だけど、笑っていたんだ。……どうして、微笑めたんだ?一人きりで、あんなふうに死んだのに」

 

 そうだったのか。

 初めて知る事実だった。

 

「きみは、あの子の夫だったのだろう?言えるのかい?幸せにできたのかい?」

「神たるものが、問わねばわからないのか?」

 

 純粋に、不思議だった。

 

「彼女の幸せは彼女が決める。オレは、彼女が幸多かれと想うだけだ。……オレからの恵みや施しなど、彼女は求めないし必要としていない」

 

 少女は、ひとりで生きていけるほど強いのだ。

 けれどそれは寂しいから、誰かを助け、手を差し伸べるだけで、カルナが助ける余地は元からない。……少々、人助けのために己を削る分量が多いのではと思うが。

 それでも、隣で笑ってくれるのだ。

 

「一人でいられる人間が、オレがいいと選んでくれた。それがすべてだろう。……アルジュナが築いた世界の中で、おまえはオレよりも長く彼女の側にいて、その強さを利用し続けた。だのに、理解できなかったのか?」

「……」

「おまえは、娘の母と娘自身を見るべきだった。手を出さず、呪いを吐かず、言葉をよく聞いていたなら、彼女はオレにしてくれたようにおまえと向き合ったはずだ」

 

 生前も、別に父を恨んではいなかったのだ。生命をくれたことに、感謝していたのだ。

 今は、どうだろうか。

 

「最早、彼女はおまえを見ない。声を聞こうと思わない。手遅れにしたのは、おまえ自身の盲目的な愛だ。……おまえの愛はおまえ以外を救わず、最後にはおまえすらも見捨てた」

 

 炎神が神となったアルジュナを憐れんだ感情の裏には、恐らく実の娘への思慕があったのだろう。

 永遠の孤独へ落とされた娘へかけるべき情は、矛先を失ってアルジュナへ向いた。

 少女(キャスター)も、それに気がついただろう。

 

 言わねば伝わらないだろう、とカルナは口を開いた。

 

「おまえは彼女に、嫌われている。……改善したいならば、カルデアのマスターに協力すべきだろう。既に多大なる迷惑をかけているので、取り戻せるかはおまえ自身にかかっているが」

「言うじゃないか、半人が……!」

「ちがったのか?……一般に、娘に嫌われるのは父親にとって耐え難いのではないかと思ったが。オレに鎧を請うたインドラも、神でありながら親だった。それは、オレにとって喜ばしいことだった」

 

 尤もその結果、カルナは未だ少女(キャスター)に許されていない。

 自爆宝具を封印してほしいという願いを、素気なく袖にされ続ける羽目になっている。

 こればかりはドゥリーヨダナの口車(フォロー)もまったく効かない、完全なる自業自得だった。

 

 兎も角。

 

「曲がりなりにも、おまえはオレの義父(ちち)だろう?だから親子の問題にも口を挟んだが、余計だったようだな」

「……」

「オレももう行く。新しきカルデアで、オレにも彼女にもやるべきことがある」

 

 たとえば、気難しい医者の手伝いとか、マスターの槍となることとか。

 

 やるべきことも、やれることも大いにある。

 

 そんな普通の、誰かと手を取り合える人の営みが有りさえすれば、少女(キャスター)は幸福なのだ。

 心が桁外れに強固なだけで、人に外れた精神をしてはいない。

 

「今度彼女と見えるならば、関わらず先に見守ることから始めるべきだろう。今までも干渉してはいたようだが」

「あれは……ボクにまた依代として力を貸してほしかっただけで……」

「つまり、娘と認識して護っていたわけではないのだな。では、次からは娘と認識して行えばどうだ?尤も、程々にすべきと思うが」

 

 この辺りで、口を閉じるべきだろう。

 遠くから、名を呼ぶ声がしていた。

 

「さらばだ、アグニ神。……最後になるかもしれないので伝えてはおくが、彼女がこの世へ生まれる切欠をつくったこと。その点において、オレはあなたに感謝している」

 

 言うべきは言い切ったと、カルナは今度こそ踵を返す。

 

 それが、この特異点の最後の会話となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真名限定解呪︰ユーデリカ

 

 

 

 

 

 

 

尤も、これは彼女の母親の名を借名として被った(・・・)ものであり、本名とは言い難い。

 

 

────霊基情報が更新されました。

    




主人公の名前やっと出ました。
最初から決めてはいたので、受け入れていただけたら嬉しいです。

そして戦死は哀しいし悼むが、それはそれとして利用するところはする妻&それも良しな夫です。尚周囲。

多分、真名演出が最後に入るイベントになると思われます。
しかしプリテンダー属性になってしまい、プリテンダーとしての限定星5実装かと。

自己評価が底辺+評価する人間がほぼいない+戦闘力ではないだったので特に言われませんが、大地を引き剥がしたり、自らの肉体時間を止めたり、パラシュラーマの呪いを解いたり、半神としての力はあった主人公です。
だからクリシュナが出てきてしまったんですが。

なので、真名が戻ったら星5化したらいいなと思います。
横バフ2個と選択制単体バフのスキルに、英雄(サーヴァント)特攻単体攻撃+味方に英雄特攻乗せバフのバスター宝具(今回の首落とし再現型)持ちかと。
アルジュナの胃に配慮しない宝具にはなりそうです。
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