太陽と焔   作:はたけのなすび

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ここすき、感想、評価、マシュマロ、誤字報告ありがとうございました。

では。


太陽と焔とチェイテ以下略城の話-1

 

 

 

 

「御内儀」

 

 耳慣れない呼び掛けは、一度少女(キャスター)の耳を素通りした。

 

「御内儀、カルナ殿の御内儀」

 

 その声に、ようやく少女(キャスター)は振り返った。

 

「あら、近藤さんに永倉さん」

 

 サーヴァントや何ともわからぬハロウィンの生命体たちで賑わう城下町でのことだった。

 雑踏の中でこそ目立つ浅葱の羽織と白い襟巻きを身に着けた青年に、少女(キャスター)は目を瞬いた。

 新選組局長、近藤勇である。

 隣に、若いほうの永倉新八を連れた彼は、涼やかな細面で軽く会釈をした。

 

「御内儀に少しお尋ねしたいのだが、平助と原田君をご存知ないだろうか?」

「藤堂くんでしたら、ジークくんと二人で三つ東の筋のお菓子の屋台の前におられましたよ。チェイテピラミッド姫路城印限定版ノクナレア推薦チョコ饅頭の屋台です」

「ちぇい────なるほど、祭りを楽しんでいた、と」

「ええ」

 

 菓子の名前を言うのはさらりと諦めたらしい近藤勇に穏やかな笑みで応じる少女(キャスター)の傍らから、クリームヒルトが顔を出した。

 

「情報が抜けているわよ。あなたとカルナ、その二人に菓子を買ってあげたでしょう」

「欲張って四つ買ったら多すぎたので、二つ引き取ってもらっただけです」

「子どもに菓子を買い与えた程度、隠すことでないわ。あなたたちは気前が良すぎよ」

「クリームヒルト様、藤堂くんは十五歳ほどで成人の社会において二十歳超えられてますよ……」

「あなたの魂的な年齢から見たら、ハンスも藤堂も私も、全員大差ないでしょう」

 

 ジークの代金分をあとから押し付けてきた王妃の言葉は、ツッコミ待ちだろうか。

 その疑問は口の中に含んで、少女(キャスター)は眉を下げた。

 

「原田さんのほうも藤堂くんと一緒におられましたが、カルナに手合わせを申し込んでそのまま二人して西の通りの方へ流れて行きました」

「何してんだあいつらは」

「皆、祭りを楽しんでいる証だろう。……しかし、あの施しの英雄との手合わせとは、是非見に行きたい」

「……」

 

 子どものように目を輝かせる近藤勇は、なるほど局長であれど中身は武辺一辺倒の剛の者であった。

 原田左之助がカルナに勝負を申し込んだのは、藤堂のからかいに乗ったからなのだがそこまでは言わなくていいだろう。

 チェイテピラミッド姫路城がついに解体されるので、特異点は見納めの祭りで賑わっている。

 多少地形が吹っ飛んで変わっても、気づかれまい。多分。うん。恐らく。

 

「では、歓談中に失礼した。感謝いたす」

「邪魔したな、焔の姐さんに王妃様。ありがとよ」

 

 そのまま近藤勇と永倉新八は立ち去り、少女(キャスター)は首を傾げた。

 

「何故私は姐さんなのでしょうか。あの呼び方、新選組の皆さんの流行りですか?」

「いつだかの特異点で、彼らの目の前で城門を消し飛ばしたからではないの?第一、手が早いのよ、あなた」

「森丸ごと消している方が隣にいたのに?」

「大英雄アルジュナなら当然よ。でも薬師が同じことをしたらどう思うかしら」

「…………だから、人間無骨の森さんには人間破城槌と言われるのですね、私」

「別にいいじゃないの。藤堂というあの子は、あなたたちに随分懐いているようだし。あなた、子どもに怖がられるような中身はしていないもの」

「……ありがとうございます」

 

 藤堂平助は子どもではないのだが、ジーク=ハンス化計画をまったく諦めないクリームヒルトには通用しないだろう。

 尤も藤堂平助も、「子ども扱いするな!」と言いつつ、きらきらした目でチョコクリーム入りの饅頭を頬張っているのをクリームヒルトに見られているので、説得力には欠けている。ジークがジークフリートに変身する様子にも目を輝かせていたので尚の事だ。

 尤も、それは原田左之助の仕込み武器で目をぎらつかせたカルナも同じである。

 

 揃いも揃って、童心はなるほど確かに死んでいない。

 一方、クリームヒルトは近藤勇によって憤りを思い出したようだった。

 

「祭りだからはしゃぎたくなるのはわかりますけれど、時と場合を選んでほしいものだわ、あのハラキリランサー。乗っかる太陽の英雄様も英雄様だけれど!」

「私は十分カルナとお祭り楽しみましたし、クリームヒルト様ともお祭りを周れて嬉しいです。カルナも楽しそうなので良いではありませんか」

「あなたは!全員に!甘やかしが!過ぎるの!」

「いひゃいでう」

 

 片頬をクリームヒルトに摘まれながら、少女(キャスター)は笑った。

 チェイテピラミッド姫路城というすっ飛び建築物を中心に据えているとはいえ、平和な祭りは楽しい。

 解体イベントは絶対何事もなくは終わらない、というガネーシャ神からの予言もあるにはあるが、その時が来るまでは祭りを楽しむことはできる。

 頬を引っ張り終えたクリームヒルトは、夜空に聳える三段重ねの建造物を見上げた。

 

「でも、チェイテピラミッド姫路城もいよいよなくなるとなると感慨……感慨…………不思議と別に感慨深くはならないわね。そも素直に解体されるのかしら」

「されないそうですよ。ガネーシャ神曰く、絶対何かあるので注意〜とのことです」

「やっぱり……」

「ちなみに、次のチェイテ以下略城がどのような形になるかをドゥリーヨダナ様が賭けにして儲けておられました」

「何やってるのよ!!」

「賭けをやるなら一番儲かる胴元が良かったそうです。あ、カルナも私も賭けていませんよ。賭け事はキライです」

「当たり前です。唐変木に重ねて賭け事までしていたら、追いバルムンクしているところよ」

 

 そんなわんこそば(マスターの故郷の謎料理)みたいな魔剣でいいのか。

 チェイテピラミッド姫路城を背景にさんざめく街を歩いていると、ふと誰かを探しているような素振りのマスター、藤丸立香が目に入る。

 エリザベート・バートリーの派生サーヴァントの一人、メカエリチャンⅡ号機も共にいた。

 

「クリームヒルト様……」

「……わかったわよ。声をかけたいのね。いいでしょう。マスターの問題解決を手伝うのもサーヴァントですから」

「ありがとうございます」

「その代わり、あとで私のお茶に付き合いなさい。カルナはどっちでもいいけれど、あの小さい子も呼んで構いませんので」

「藤堂くんは小さくありませんよ……」

 

 身長はともかく、中身は違うだろうに。

 さておき、少女(キャスター)は立香へ手を振った。

 

「マスター、Ⅱ号機さん、こんばんは。どうかされましたか?お困りごとなら手伝いますよ」

「キャスターにクリームヒルト!ごめんありがとう!実はエリちゃんが見当たらないんだ。オリジナルの!」

「あらまぁ」

「はい」

 

 チェイテピラミッド姫路城の解体には、各パーツの主が必要だと言うのに肝心のエリザベートの不在は困る。

 他のエリちゃんはいるが、原初(オリジナル)のエリザベート・バートリーだけがいないのだと、メカエリチャンⅡ号機は告げた。

 

「では探しましょうか。チェイテピラミッド姫路城の中は?」

「まだ!今からそこに行こうとしてたんだ。キャスター、空からお城全体を見てくれない?クリームヒルトは外回りを!」

「しょうがないわね。確かに土台の城主がいなくては危ないわ。手分けして捕まえるわよ」

「はい」

 

 マスターとメカエリチャンⅡ号機は城の中、少女(キャスター)は空から城を俯瞰、クリームヒルトは地上を。

 三方向に別れての捜索に、少女(キャスター)は背中から焔の翼を広げて飛んだ。

 神代ジェットですね!お揃いです!と水着の沖田総司に言われた飛び方である。

 見た目は似ているので、否定しづらくはあった。

 城下町を足元に眺めて飛び回るが、チェイテ城の尖塔にも、ピラミッドの壁面にも、姫路城の鯱にもエリザベートはいない。

 

「おかしいですね……」

 

 呪術で探そうにも、チェイテピラミッド姫路城が内包するエリザ粒子とかいう謎エネルギーのせいで呪術の効きが明らかに悪い。

 いやそれにしても、手応えがなさすぎる。

 

「…………まさか、本当にこの特異点にもカルデアにもいない?」

 

 エリザベート・バートリーのすっ飛び具合は、毎回更新されている。まず増えるばかりで減ることがないのだ。

 

 カルデアから遠く離れた次元へ旅立って、また増えるのは大いにあり得る。

 

 それに少女(キャスター)も、意図せず異聞帯へ召喚された過去がある。エリザベートに同じことがないとは言えなかった。

 

「うわっ!」

 

 などと、姫路城の天守の真横に浮いて考えていると間近で驚く声が聞こえた。

 ふと横を見れば、白がかった薄青の少年がいた。目と口を満月にして、彼は天守閣の内側から、少女(キャスター)を見ていた。

 

「藤堂くん、どうされたんですか?」

「こっちの台詞だよ!え、浮い……と、飛んでる!?」

「飛べると言ってませんでしたか?」

「聞いてたけど、実際に見るのとは話が違うだろ……」

「確かに」

 

 天守閣と同じ高さを飛び回る少女など、見ようによっては完全に妖怪である。

 

「おい平助、いきなりデカい声出してどうし────うわ焔さん!何してんすか!」

「うーん同じ反応」

 

 藤堂平助のさらに後ろから現れて仰け反った原田左之助に、少女(キャスター)は青い瞳を向けた。

 

「チェイテ城の城主のエリザベート・バートリーさん、通称エリちゃんが行方不明になってしまいまして。彼女がいないと城の解体がままなりませんので、マスターたちと探していたのです」

「そいつ、同じ顔でたくさんいるやつっすよね?頭から角生やして歌歌ってる、あの小さくて赤いの」

「はい。探しているのはその中のオリジナル。ランサー・エリちゃんです」

「沖田君でも二人なのに何人いるんだよ……。でも僕たちも城の中を歩き回ってたけど、誰も見なかったぞ」

「こちらも空から探しているのですけど、見つからないんですよね。私のように、どこかへ流されたか攫われたかも……」

「え?」

「ランサー・エリちゃんは逞しくも脆いので、早く見つけ─────」

 

 そこまでを言ったときだ。

 城の中、具体的には天守閣の奥の間に何かが現れるのを感じた。

 焔の翼を即畳み、反転した少女(キャスター)は藤堂の横をすり抜けて直線に飛ぶ。

 

「マスター!」

 

 転がり込んだ姫路城主の部屋には、メカエリチャンⅡ号機とマスター、それにホログラムの形をした何者か。

 ホログラム────のサーヴァントと今契約したかのように輝く令呪を掲げた立香が見え、少女(キャスター)は目を細めた。

 

「マスター、またどなたかと仮契約しましたね!」

「キャスター!今すごい勢いで吹っ飛ばされてきたけど大丈夫?」

「吹っ飛ばされたのではなく、吹っ飛んで来たのです!それよりマスター、この城から奇妙な反応があります。離脱を」

 

 人の心配より自分を心配してほしいと思いつつ、立香を見る少女(キャスター)だが、直後地響きによろけた。

 城全体が、揺れている。

 

『勘の良いサーヴァントがいるようですね、ですがこちらにも事情があるので、皆様には来ていただきます』

 

 淑やかな少女の声に、少女(キャスター)はそちらを見る。

 ホログラムとして映る紅い髪の少女の顔には、エリザベート・バートリーの面影があった。

 

 と、いうか、本人そのものである。

 少女(キャスター)の目と口が、ぽかんと開いた。

 

「またハロウィンにかこつけて増えたんですかこの方ーーーーーー!!しかも次元が違うーーーーー!!」

「カルデア屈指のボケ属性サーヴァントに全力ツッコミさせるとはさすがね。まったく嬉しくないけれど」

「キャスターがツッコミしてるの、俺久しぶりに見たかも」

「おい!一体どうしたんだよ大声出して!地震だぞ!」

「マスター、とっとと逃げんぞ!」

 

 冷静なⅡ号機とのんびりしたマスターの言葉とほぼ同時に藤堂と原田まで駆け込み、一気に狭くなった部屋が一際強く揺さぶられる。

 マスターが転ばないよう庇いながら、少女(キャスター)は窓の外を見る。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()、凄まじい速さで後ろへ引き千切られていく夜空が見て取れて、少女(キャスター)は遠い目になり思う。

 

 絶対絶対絶対に、カルナにまた怒られる事件に飛び込んでしまったらしい、と。

 

「……でもこれ、私本当に悪くないですからね」

 

 空の彼方に運ばれながら言い訳がましく呟く少女(キャスター)を、柱に掴まりながら藤堂平助が見ていた。

 

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 姫路城天守閣の中にて。

 カルデアのマスター、藤丸立香は一応深刻な顔で口を開いた。

 

「えーと、状況を整理しようか。俺たちは、特異点から飛び出していけ宇宙の彼方になって……別の星に着陸した」

「やってくれたのはカルデアでは未確認のエリザベートさんで、曰くこの星に迷い込んだオリジナル・エリちゃんが出奔して行方不明なので探してほしい、そのためにマスターが必要だった、と」

「ええ。……だからエリザ粒子が充満したチェイテピラミッド姫路城をロケット代わりにして物理的に招いたというわけね」

 

 この辺りで、原田左之助が首をコキリと鳴らした。

 

「ま、結論はエリちゃんてのをとっとと見つけてさっさと帰りましょうってことでどうすか、大将?……にしても、インドの皆さん方が言ってたように、只事じゃすまなくなっちまいましたね」

 

 ここらで、ついに藤堂平助がブッチキレた。

 

「原田さんなんでそんなに冷静なんですか!!!あとキャスター!インドのサーヴァントってならこれ予想できてたのか!」

「故郷インド勢への無茶振りやめてください。ドゥリーヨダナ様の予想ギャンブルでも、五稜郭が刺さるか、城ごと浮遊して怪獣大決戦になるかが二大予想図でした。ロケットになるは誰も考えていません」

「いや空には浮いたじゃないすか。微妙に当ててるの凄いっすよ。俺は五稜郭に賭けちまいましたけど」

「あんた何やってんだ!!!勝手な!金策!!禁止!!!」

 

 怒涛のツッコミだった。

 またしてもぜーはー肩で息をする藤堂の背中を擦りつつ、少女(キャスター)は首を傾げた。

 マスターと四騎のサーヴァントが陥った状況は、まァそういうことである。

 

 チェイテピラミッド姫路城に乗ったまま空の彼方に打ち上げられ、地球から離れた別の惑星に着陸しましたとさ。

 

 いや冗談では済まなかった。

 

「残念ながら、通信が届きません。マスターのバイタルは送れているようですが、レイシフトで今すぐ帰るのは無理かと」

「エリちゃんを見つけたら、さっきの謎のエリザベートが帰してくれるかな?」

「マスター、今なんて言った?誰って?」

「え、謎のエリザベート」

「……そっちのエリザベートは?」

「メイガス・エイジス・エリザベート・チャンネルⅡさんです。Ⅱ号機さんと呼ばれるのがお好きです」

「そうよ。私のことはメカエリチャンとは呼ばないで。人斬りサークルの八番担当」

「……僕らが探さないといけないのは?」

「ランサーのエリザベート・バートリーだろ。最初のエリザベートってやつ。平助、覚えとけよ」

 

 ツッコミどころが多すぎて最早何も言えない。あと魁の僕より先に順応するな原田さん。

 そういう顔になった藤堂平助だった。

 

「藤堂くん、原田さん。何とかなりますよ。数千年彷徨ってもカルデアに帰れたりしますから。……あ、マスターには肉体の寿命がありますから、早く帰らないと駄目ですが」

「キャスターも皆も早く帰らないと駄目だよね!!特にカルナ!!!」

「わかっています。冗談です」

「この場で顔色一つ変えない冗談はどうかと思うわよ。まずはオリジンのエリザベートを探しましょう」

「うん。宇宙服礼装あってよかったよ。皆は、外大丈夫そう?」

 

 赤茶けた大地の広がる外は地球とは似ても似つかない。敢えて言うなら、火星っぽい外見の謎の惑星である。

 が、窓の外から感じる空気は問題なさそうだった。

 

「マスター、恐らくここはサーヴァント・ユニヴァースの時系列かと思います。外での活動に支障はないかと」

「さー……何て?」

 

 初見らしい藤堂と原田に、少女(キャスター)は向き直った。

 

「サーヴァント・ユニヴァースです。要は謎の並行世界と考えてください。住人はほとんどがサーヴァントで私たちとそっくりな存在もいますが、全員基本はっちゃけています。カルデアだと謎のヒロインXさんたちや、蘭丸Xさんがそんな感じの世界出身です」

「あの織田信長の小姓だけど小姓じゃないやつか。……え、あいつの故郷がこの星ってことすか?」

「蘭丸Xさんの故郷は、この宇宙の無数にある星のどれか一つです。……あ、いえ、蘭丸Xさんはぐだぐだ時空の方だったから違ったかもしれませんが……うーん……まぁともかく、ギャラクティカ謙信、スペース信玄、それに宇宙海賊スペーストシゾーなんて方々もいらっしゃいますよ」

 

 途端、藤堂平助の目がカチリと据わった。

 

「わかったこの星で同じ顔を見かけても僕は絶対にそいつを他人と思う誰と会ってもそうするからな」

「ノンブレスで言い切るほど?グレートラッキーに出会っても、呑気に挨拶できたこのキャスターくらい動じないほうが楽よ」

「グレートラッキーって誰だ……!」

「サーヴァント・ユニヴァースのカルナだよ。こっちのキャスターと銀河の端と端レベルで生き別れてしまったから、星を巡りつつ探してるって言ってたな」

「合間にアルジュナ様のそっくりさんとのバトルも差し挟みつつ、旅人をしていると言ってましたね」

 

 グレートラッキーは、以前謎のヒロインX周りの騒動でカルデアに迷い込んで来たことがある。

 ひと目でお互い並行世界の別人とわかったので特に支障はなかったのだが、変わった事件ではあった。

 あのカルナのそっくりさんは、いい加減少女(キャスター)のそっくりさんに出会えたのだろうか。

 

「グレートラッキーがいたら、エリちゃん探しを手伝ってくれるかな?」

「いればね。確かに妻の並行存在には弱かったけど、銀河は広いのよ。偶然には期待しないほうがいいわ、マスター」

「そうだよね……。……早く会えてるといいけどな」

「はい。グレートラッキーの幸運が名前負けしていないことを祈りましょう」

 

 ひょい、と原田左之助が手を挙げた。

 

「今はそのグレートラッキーより、マスターが帰れるかってのが重要っすよ。星でサーヴァント一人だけを探すってのは大事じゃないすか」

「全く手がかりがないわけじゃないわ。私には、エリザベート専用探知術式が搭載されているの。キャスター、あなたデータを入力する際に手伝ってくれたから知っているでしょう?」

「はい。エリザベートさん全員分を入れていますので、原初のランサーも当然探せます」

「……」

 

 体力を温存したいのか、唇を引き結んだ藤堂平助は頭を振った。

 

「……なら、まず城を出てエリザベートってやつを探そう。その、原初ってやつを見つければ帰れる可能性が高まるんだろ」

「うん。……原初のエリちゃんってちょっとカッコいいね」

「言ってる場合か?」

 

 据わった目つきのままの藤堂の肩を、原田がとんとんと叩いた。

 

「平助落ち着けって。来ちまったもんはしょうがねぇんだ。腹括ろうや」

「原田さん慣れるの早くありませんか!このひと並みに!」

 

 何故そこでこっちを指し示すのだ、と少女(キャスター)は目を細める。

 一方の原田左之助は、飄々と嘯いた。

 

「おまえがそんだけ騒いでたら、却って落ち着けたわ。ありがとさんな、平助」

「なんだよそれっ……!ああもうっ……!」

「まずはあなたの言うように外に出て動きましょうよ、藤堂くん。あと、ユニヴァースの世界に来てしまった以上、今後さらにツッコミどころ満載の状況になると思いますから、体力は温存しないと」

「……」

 

 絶対に体力をそんなこと(ツッコミ)で無駄に消費したくない、と顔に出ている藤堂平助はやはり一本気だと少女(キャスター)は思った。

 

 




ハロウィンイベントのリクエストいただいたこともあり、書いてみました。

母親との関係が色々あった藤堂&主人公と、終わりのエリちゃんの絡みが見たかった欲もあります。

カルデアではヴリトラが爆笑していることでしょう。

SN編の方は今週更新多分ないです。
仕事が色々ありまして、ご理解いただければ幸いです。
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