太陽と焔   作:はたけのなすび

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ここすき、感想、評価、マシュマロ、誤字報告ありがとうございました。

では。


太陽と焔とチェイテ以下略城の話-2

 

 

 

 

 

「今更ですけれど、藤堂くんたちはどうして姫路城にいたのですか?」

 

 城を出、まず情報収集を目的に歩きながら少女(キャスター)はふと尋ねた。

 槍を肩に担ぎ、先頭を歩いていた原田が軽く肩をすくめる。

 

「平助の探検っすよ。俺ら、解体前に城入りしましたけど、結局刑部の姫さんの引っ越し手伝いでほとんど終わったじゃないすか。で、かの播磨の白鷺城を満遍なく見たいって平助が言うんでついてきたんす。ちょうど施しの英雄さんとやり合ったとこで、のんびりしたかったってのもありましたし」

「あら。そんなにはしゃ……戦っていたんですか」

「ま、それなりには。けど、これ以上は死合いになるってとこで手ぇ引きましたよ。ただね、初見の仕込み武器は一発当てれても、それ以外がまともに通りゃしません。神秘が上ってのはああいうのを言うんでしょうね。あれで弓使いってのはまじすか?」

「まじですよ。騎兵(ライダー)も多分いけます」

 

 うへぇ、と首を縮めた原田に対して、藤堂はさっと顔を背けていた。

 その藤堂の顔を、メカエリチャンⅡ号機が覗き込む。

 

「なるほど、城を周って遊んでいたら巻き込まれたわけね」

「藤堂くんも楽しんでて嬉しいよ、俺は」

「ええ。あ、でも藤堂くんたちを近藤さんと永倉さんが探しておられましたよ」

「城の解体を肴に飲もうって話があったんすよ。こうなっちまったんでもうそれどころじゃないすけど」

「……僕らもだけど、そっちはどうなんだよ。カルナ、心配するんじゃないのか?」

「するでしょうね。避けられません。でも、已む無く離れるのは今に始まったことではありませんし、やるべきことをやっていればまた会えますよ。今までも、これからも」

 

 しかし、マスター共々行方不明になったのは今回が初である。カルナの心配は二倍どころか二乗だろうが、何とかしてもらうしかない。

 

「正直、帰ったらアルジュナ様のお小言爆発のほうがめんど……怖いですよ私は。マスター、へるぷです」

「うーん……なら、インドラ様を呼ぼうか?アグニ神は外すからさ」

「ありがとうございます。お願いします」

「相変わらず身内が絡むと人間関係がショートしてるインドね。このキャスターでまだ拗れてないほうってのが尚更駄目感あるわ」

 

 苦笑しつつ、少女(キャスター)は荒野に目をやる。

 砂と岩に覆われ、大地には緑の気配がない。だが生命体の反応は感じる。

 尤も、ユニヴァースが絡んだ世界はあまり真面目に考えると頭がこんがらがるのであるがままを受け取るのが最も楽だ。

 

「ん?」

「どうかしたか?」

「あそこのあの岩、何かに似ていませんか?」

 

 歩きながら、道端の岩を指さす。

 風化した岩は、どうもジャック・オ・ランタンに似ていた。それが、各所に点在しているのだ。

 

「…………ねぇ、メカエリチャンにキャスター、俺思うんだけど、ここもしかしてハロウィン系のユニヴァース?」

「でしょうね。きっとハロウィンみたいに陽気で楽しい住人がいるわよ」

「年がら年中ハロウィンなユニヴァースかもしれませんね。だから、エリちゃんさんが増えたとか?」

「…………!」

「平助どうどう。おまえ絶対今口開いたら止まらなくなるって。こんな荒れ地で喉枯らすな」

 

 などと言っている間に、ちらりと遠目に見えた影がある。

 歩行するタコのような外見のその何者かは道の先にふらりと現れるが、原田が黒塗りの瞳でぎろりと睨んだ瞬間、水揚げされた魚のようにはねて脱兎の如く来た道を引き返し始めた。

 

「逃がすか現地の人!皆、追いかけて話を聞いて!」

「了解っす」

 

 言うが早いか、先頭にいた原田の槍が投擲されてタコ星人(仮)の進行方向に突き刺さる。

 タコ星人は火で炙られた栗のように跳ねた。

 

「ギャーッ!お助けーッ!ちょっと身ぐるみ貰おうとしただけで悪いことしようとしたわけじゃないですーッ!」

 

 複数生えた触手のうち二本を拝むように擦り合わせるタコ生物の前に、焔の翼による低空飛行で追いついた少女(キャスター)が先回りして見下ろした。

 

「何故何も聞いていないのに自白しているんですか、悪事に向いていませんよ、あなた」

「えっ、ご、ごめんなさい……?」

「ですが、助かりました。あなたがこちらの主への害意を口にしたお陰で、私にはあなたを尋問する際の容赦を無くせます。……はい、ですのでこちらの質問には正直に答えなさい、異星のひと。さもなくば火干しにますよ」

「ぎゃわーっ!」

「キャスターストップーッ!」

 

 下から見上げると、光が灯っていない少女(キャスター)の冷え冷えとした碧眼に見下ろされたタコ星人が飛び上がり、駆けつけた立香に縋り付く。

 ぺらぺらとこの星の情報を喋ってくれそうなその姿に、少女(キャスター)は静かに下がり。

 何か言いたげな藤堂と目が合った。

 

「?」

「……あんた、今の脅し見せかけだろう?ああ言っとけば、あの蛸が止めに入ったマスターに恩を感じると踏んで」

「……」

「助かるけどさ、あんまり鞭役ばっかりやるなよ。向いてないんだから」

「……はい、あなたもね」

「ん?」

 

 復讐者(アヴェンジャー)の少年に軽い微笑みを返し、少女(キャスター)は立香とタコ星人の会話を聞く。

 

 彼曰く。

 

 ここは、火星でなくカ星(カボチャ星=パンプキンプラネット)。

 自分は、一度滅びかけた古代人の生き残り(割とたくさんいるらしい)。

 街と呼ぶべきものは、アマゾネス・ドットコムの倉庫(不法滞在者のるつぼ)。

 

 だ、そうだった。

 ああそういうユニヴァースね、と少女(キャスター)は頷く。

 

「火星でなくてカ星なのは残念ですね。火の星だったら、無理くりアグニ神と縁付けて力を借りられたかもしれませんが、すっかりカボチャ星なら難しいです」

「でも、カボチャだらけのハロウィンスターであるのは間違いなかったわね。それよりキャスター、あなたカルデアと通信できるの?」

「こちらに私と縁の深い方がいれば、媒介にして何とか。ただ、媒介にできるのは血縁関係か、他人であるならカルナぐらい縁が深くないと」

「……難しいわね。あなたの血縁なんて、あの無駄に美少年化したお騒がせ神だけじゃない」

「そうなんですよね……この世界にもあの神がいたとして、顔を合わせれば拗れそうで会いたくなくて……また斬首騒動なんてしたくありませんから……」

「あ、あのー、姐さん?神様って何のことですか?」

「こちらの話です。知らないほうが幸せですよ、フレッカスさん。あと姐さんはやめてくださいね?」

「はいーっ!」

 

 にっこりと少女(キャスター)が笑顔を貼り付けると、タコ星人もとい古代人フレッカスは飛び上がった。

 槍をぶん投げた原田と、真顔で脅した少女(キャスター)が特に怖くなったらしく、一番まともそうに見えたらしい立香の方へすり寄っている。

 その原田は、ちょいちょいと手招きしていた。

 

「で、焔の姐さん」

「はい、なんですか?」

「アマゾネス・ドットコムてのはなんすか?」

「あー……ユニヴァースにある会社のひとつです。そちらの時代、飛脚という運送業の方がおられましたか?

「うす」

「では、その飛脚が宇宙規模になったとお考えください。構成員はアマゾネスの皆さんで、局長にあたるCEOは、バーサーカーのペンテシレイア様のそっくりさんです」

「アマゾネスってあの、女ばっかりの戦士集団か?あれが配達員だって?」

「はい。以前カルデアでもひと騒動ありましたよ」

「何でもありか!」

「グレートラッキーも使ってるらしいですよ、便利だそうで」

 

 この辺りで、Ⅱ号機の機械仕掛けの目がぎらりと光った。

 

「そこの便利キャスターに新選組漫才コンビ。解説はそこまで。街に行くわよ」

「はい」

「ああ」

「漫才じゃ、ない……!」

 

 ともかく。

 

 現地人フレッカスの案内で、辿り着いたのは見た目は完全に倉庫だった。

 四角く、窓もろくにない巨大建造物の中は、野放図に増やしていったと思しい住居や住人がひしめいている。

 ドゥリーヨダナと似た外見のサーヴァントからはきっちりと目を逸らし、少女(キャスター)はマスターについて進んだ。

 

 尚、侵入早々にフレッカスは元同僚らしい別の古代人に連れて行かれた。

 どうやら金を返さずにいたらしい。自業自得であるが、チッと原田が舌を打った。

 

「蛸野郎、すぐいなくなっちまいましたね。情報吐いてくれてたのに勿体ねぇや」

「お喋りでしたね。でもあいつが古代ってなら、今この辺りにいるサーヴァントが現代人ってわけですか?」

「はい。それと、この世界の住人はほぼサーヴァント化していて、フレッカスさんやマスターのような霊長になり得る他種は少ないそうです。……マスターが喚ばれたのも、恐らくはそこに原因があると思われます」

 

 原田と藤堂の目つきが、す、と剣呑になった。

 

「行方不明の最初のエリザベートを見つけてほしいって話で終わらねえ可能性があるって思ってるんすか?」

「今までこういう事件が起きた際、当初提示された依頼には大体裏がありました。……極論、謎のエリザベートさんがマスター殺害を目論んでも驚けません。そも、マスターを勝手に呼んだこと自体、割と怒ってますよ、私」

「……ふざけた世界なのに、そういう化かし合いは変わらないんだな」

「人が集まりゃそうもなるだろうよ。……でも姐さん、あんた感情隠すの上手いっすね。怒ってんのがわからねぇんだから。忍びか潜入でもやってたんすか?」

「やっていません。バレるからやるなとドゥリーヨダナ様に言われていました」

「原田さん、このひとはそういうのてんから駄目ですよ。確かに我慢強いけど、一線越えたら弾正します。斎藤さんじゃなく永倉さん寄りなんで」

「そっちなのかよ!?」

 

 何だと思っていたのか。

 無茶振りのドゥリーヨダナでも、本格的な間諜と暗殺の仕事だけは少女(キャスター)に振らなかったというのに。 

 

「原田さん、私、生前敵に追い詰められて自爆したんですよ?そんな感情任せに、潜入任務は向いていません。呪術で完全に気配遮断したほうがまだましです」

「うわ。あんた、本気で破城槌みたいな人生送ってたんすか」

「だとしても、人間破城槌はやめてくださいね。ノッブ様の御家中には言われてしまいましたけど」

「人間無骨に人間破城槌って言われるのはもう大概なんだよ!確かにあんたもカルナも戦国時代の人間みたいな者だけどさ!」

 

 本当に真剣に人と相対してくれるな。

 忘却補正のある復讐者のサーヴァントだからというより、地金の性根が真面目な気がしてきた。

 そんなキャスターの肩に、Ⅱ号機の指がぷすぷすと刺さった。

 

「口を開けばぐだぐだ漫才になってるそこのインドと新選組?情報収集のために酒場に行くって話は、聞いてるのかしら?」

「すみません。聞いています」

「よろしい。では行きますよ」

 

 Ⅱ号機がいてくれてよかったと思いながら、彼女とマスターについて向かった酒場は混沌としていた。

 尤も、原田左之助の眼光の鋭さと上背のために絡んで来る輩はいなかった。彼がいなかった場合、外見だけは少年少女の一団になっていたのでこうはいかなかっただろう。

 カウンター内にいる古代火星人の店主に、Ⅱ号機が写真を見せつつ近寄る。

 

「ねえ、私たちこの子を探しているのだけれど見ていないかしら?」

「あーと……げ、げぇ!ししし、知らないなぁ!」

「いや知ってんだろ。どこで見た?」

「ひーっ!何かでかいやつが来たぁ!」

 

 カウンター越しでも十分通用する原田左之助の威圧だった。

 その背後で、少女(キャスター)は首をことりと傾ける。

 

「上背と体格のある男性は、ああいうときいいですよね。私だったらまず舐められます」

「……それは僕もだ。まったく、原田さんも永倉さんも無駄なぐらいデカいんだから」

「聞こえてんぞ平助。ンだとオラァ」

 

 ぐるりと振り返った原田に藤堂は素っ気なく肩をすくめた。

 その騒ぎに惹かれるように周囲のサーヴァントたちも現れるが、エリザベート・バートリーの写真を見るや全員後ずさった。

 

「知ってるよねこれ!すみません!この子俺たちの仲間なんです!知ってる人がいたら教えてください!」

「こちらは彼女の保護者と言うか……とにかく、居場所を教えていただけたら連れて帰ります」

「え、この歩く騒音スピーカーを⁉」

 

 住民サーヴァントの反応に、ああやっぱりと少女(キャスター)は思う。

 カルデアと契約したランサー・エリザベート・バートリーの自認は、アイドルなのだ。

 それがなければ、虐殺者である反英雄、血の伯爵夫人として歴史に刻まれた彼女はああも輝けなかっただろう。

 少女(キャスター)も、そちらの怪物的な側面が露わになった彼女とは、味方になれたか怪しい。女子どもを傷つける輩に対し、ほとんど本能的な嫌悪を覚える癖があるのは自覚している。

 それはともかく。

 

「おい、ここにあのバット泥棒の関係者がいるってのは本当か!」

「あの騒音をどうにかしてくれるってんだろうなぁ!」

「推しのライブが始まると聞いて!」

「うぉー!パンキッシュガールが来ると聞いて!」

 

 エリザベートの名が出ただけで、あぶくの様に次から次へと言い立てられる騒ぎだった。

 

「何なんだ。エリザベートは何してたんだよ、この星で……!」

「多分、いつものアイドル活動でしょうね。ポップみゅーじっくから鞍替えでもしたのでしょうか」

「アイドルってまずどういうことだよ!」

「エリザベート・バートリーはアイドルを自認しています。こればかりは解説しきれないので、本人の歌を聴いて納得してください」

「口々に騒音って言われてる歌を……?」

 

 ツッコミはしつつも、マスターに近付く輩は手早く鞘込めしたままの刀で打ち払っていた藤堂が顔をしかめた。

 

「声は綺麗なんですよ、本当に。声は。それに稀に歌姫になられます」

 

 線の細い少女と見てか、拳を振り上げてきたバーサーカーと思しいサーヴァントのこめかみに上段回し蹴りを叩き込んで吹っ飛ばしながら、少女(キャスター)は肩をすくめた。

 弧を描いて飛んだバーサーカーが足元に落ちた少女が一人、声を上げる。

 

「ちょっと何の騒ぎよ!こんなところで争いなんて、(アタシ)が許さないわよ!」

 

 澄んだよく通るその美声に、少女(キャスター)は目を向ける。

 酒場の照明をスポットライトのように浴びて現れた、その少女の名は。

 

「エリザベートさん!見つけましたよ!」

「え、」

 

 呆気にとられるエリザベート・バートリーその人の前で、少女(キャスター)は立香を手招く。

 

「マスター、エリちゃんさんです。いましたよ。そちらの奥に」

「エリちゃんーーー!」

 

 笑顔で駆け寄る立香の顔に、エリザベートも目を丸くする。

 宝石のような瞳は束の間戸惑ったように揺れるが、たちまち芯を取り戻した。

 

「あっ……ああ、子イヌ!待ってたのよーーー!やっと会えたわーーー!」

「うん、俺も!エリちゃん、この星に迷い込んだって聞いたけど、大丈夫だった?」

「それは……それはもう大変だったのよ!でもその前にライブで再会を祝いましょうよ!」

「いえ、邪魔をしてすみませんが早く離脱しましょう。アマゾネスの皆さんが、ほら、そこに」

 

 少女(キャスター)が指で酒場の扉を指示した途端、扉が蹴破られてアマゾネスたちが雪崩れ込んで来た。

 

「全員止まれ!治安維持のため全員確保する!」

 

 女戦士の雄叫びに、少女(キャスター)はかぶりを振る。

 

「はい、順当すぎる確保理由でした」

「言ってる場合じゃないのよ、神代産ド天然。こんな容疑に付き合う義理はないわ。マスターとエリザベートを回収して離脱する。新選組の紅白二人、切り込みと魁なら道を開きなさいな」

「そうしますよっと」

「言われなくても!」

 

 槍と刀が閃く酒場を、一同は一塊になって脱出する。

 

 酒場から外へ飛び出たその刹那、ふと鋭い視線を感じて少女(キャスター)は振り返った。

 

 ────遠く、どこか遠くから矢を射られたような、鋭さが。

 

「何してるんだ!早く行くぞ!」

「っ、わ、かりました!」

 

 藤堂の声に我に返って、少女(キャスター)は走り出す。

 

 束の間感じた、親しんだ(・・・・)視線の違和感は、忙しない足音の中に消え去っていた。

 

 




SNの更新しないと昨日言いましたが、書けたので明日します。予定が変わったので書けました。

書いていて思ったんですが、主人公はドゥリーヨダナより歳上のつもりでした。
カルナとユディシュティラの間です。
主人公がドゥリーヨダナの頼み事を割合はいはいと聞いているのも、歳下だし(四捨五入すれば)苦労人だしまぁいいか感はあった設定です。
必要ない設定だったので、書かないでしょうから置いておきます。

また、カルナへの沖田さん以外の新選組勢の印象は、大英雄ともなればあの人型火攻め破城槌と所帯持てるのか…みたいな感じです。
火事が脅威の江戸時代民にとって、ボーボー燃やして平気な主人公はまぁまぁドン引き案件かなと。
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