太陽と焔   作:はたけのなすび

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場面が少し戻っています。

あと、お気に入り登録が1500件突破!
ありがとうございました!
これからも見守って頂ければ幸いです。

誤字報告してくださった方、ありがとうございます。



act-3

がたがたごとごと。

鳴り響く音を、文にしてみればそんなところだろう。

馬車が道を走る音の隙間に、機械化歩兵の駆動音と、彼らの装備が擦れて立てる音も挟まって聞こえる。

馬車の外には機械化歩兵が詰め、中には近代のキャスター、ブラヴァツキー女史と機械化歩兵と比べればやや軽装だが、機関銃を装備した歩兵。

ついで隣には、バーサーカーのナイチンゲール。膝の上には毛を逆立てたフォウ。

どうやら、この布陣のまま、白斗は西部合衆国とやらの本拠地まで護送されるようだった。

 

「浮かない顔ね」

「まあ、捕まってるわけだし、元気溌剌ってのも変な話じゃないか」

 

使い魔と思われる、黒っぽい生物らしき何かを従え、魔本を構えたままのエレナに、白斗は応える。隣で銃の撃鉄を凝視しているナイチンゲールは、見ないことにした。

 

「そのわりに落ち着いてるわね、あなた」

「ヘラクレスから生身で逃げたときよりマシだから」

 

それは半分嘘で半分は本当だった。

銃口を向けられて、マシュやカルナやアーラシュと離された今の状況が、怖くないわけがない。白斗の精神は、死地に一人で笑って赴けるような大英雄とは違うから。

それよりも、自分が弱点になって、一騎当千の彼らまで手が出せなくなっていることを、不甲斐ないと思う気持ちが強いだけだ。指示する白斗が過ちをすれば、サーヴァントがいくら強くても、頼りになっても、取り返しのつかない事態を招く。

とっくに身に染みていたはずなのに、白斗は間違えた。

 

「無理に連れてきたことを、悪いとは言わないわ。この国は二つに別れて文字通りに戦争をしているの。アメリカの政府だって、当の昔にケルトに敗れたわ。どちらかに付かないと勝てないコトは、子どもでもわかるはずよ。そもそも、あたしたちが戦わなかったら、この世界はとうに滅びていたわ」

「それで君たちは、結果的にしろ、他は見捨てても仕方ないって言うんだろ?それなら、俺たちは君たちと一緒には戦えない」

 

特異点を計測してからレイシフトするカルデアは、どうしても後手に回らざるを得ない。

それは白斗も分かっている。

だけど白斗たちも、これまで回ってきた特異点での戦いを背負っている。人類史を取り戻すという誓いを、白斗は自分で自分に課している。

どちらの戦いが重いか軽いかだなんて計れないし、そもそも天秤にすら乗せられることではない。それでも、他の時代を切り捨てるということは、白斗には許容できなかった。

 

「聞く耳持たないのね。あなた、相当の頑固者って言われたコトない?」

「そんなのしょっちゅうさ」

 

頑固くらいでないと、個性の塊のようなサーヴァントたちに圧倒されてしまう。

 

「まあ、王様には一度会ってみるべきよ。おもしろいから」

 

急に、それまでの硬い表情を反転させ、見た目相応の少女のような、いたずら心溢れる顔で、エレナが笑った。

 

「おもしろい?……まあ、アメリカ大統王って名乗ってる時点で何となく想像してたけどさ」

 

終生、一人の王に仕えたアーラシュやカルナは、民の方が指導者を選ぶというアメリカの仕組みに興味があったようにも見えた。

そこへ来ての大統王である。

これはまた強烈なキャラクターの持ち主だろうなぁ、と白斗は遠い目になる。

 

「大統王…………。それが、あなた方の雇い主ですか」

 

が、隣で据わった目をした看護師が撃鉄を起こす音に、速攻で白斗の意識は現実に引き戻された。

 

「だからナイチンゲール、拳銃にすぐ手をかけるなってば!」

「…………このまま謁見して、大丈夫かしら」

 

それからの白斗は、ナイチンゲールを何とか宥めて、ともかく大統王の話を聞くまでは、拳銃をぶちかまさないよう約束してもらうことに必死になった。

着いたわよ、というエレナの言葉に答えたときには、白斗の精神的疲労はかなり溜まっていたのだった。

 

 

 

 

 

そして、ナイチンゲールと白斗は、マシュたちと会えないままに、大統王に謁見する運びとなったのだが。

 

「おおおおおおお!」

 

姿を見る前から、部屋の外から響く大声に、白斗はとても嫌な予感がした。

 

「ついにあの天使と対面する時が来たのだな!この瞬間をどれほど待ち焦がれたことか!ケルトどもを駆逐した後に招く予定だったが、早まったのならそれはそれでよし!うむ、予定が早まるのは良いことだ!納期の延期に比べればたいへん良い!」

 

どうしよう、マシュに会いたくなってきた、と続く大声で鼓膜がビリビリするのを感じながら、白斗は思う。

通信機の向こうでドクターも固まっている。

何というか、全然似ていないはずなのに、バーサーカー・ランスロットのうなり声を思い出しそうになった。

しかも、エレナに言わせれば、あれが独り言だそうだ。

果たして、現れた人影に白斗は絶句した。

 

「 ――――率直に言って大義である!みんな、はじめまして、おめでとう!アメリカ大統王、トーマス・アルバ・エジソンである!」

 

頭から上がライオンの、赤と青のツートンカラーの大男。

色々言いたいことがあったが、ともかく第一印象はこれだった。

ナイチンゲールすら、白斗の隣で絶句している。

 

「もう一度言おう!大義である、と!」

「ね、驚くでしょう、この人?」

 

大統王の大声に被せるようにして、いたずらの成功した子どものようにエレナは笑う。

白斗には笑う余裕がなかった。

 

「いやいやいやいやいや!ちょっと待ってよ!ライオンがエジソンで、大統王で、あれ、発明王じゃ…………?」

『白斗くん、ともかく落ち着こう!いや、ボクも正直何がなんだ分からないが、君を見てたらまだ冷静でいられるよ!』

 

エジソンって、99%の努力とか1%の閃き云々とか、そういう名言を残した人じゃなかったっけ、と白斗の頭が現実逃避に入り始める。

だが、眼前のライオン、もとい大統王はからからと大声で笑った。

 

「如何にも!今は発明王ではなく、大統王だが、私は紛れもない、トーマス・アルバ・エジソンである!」

「…………ちょっと待ってくれ、あなたは生前からそのサバンナっぽい頭だったのか?ていうか、あなたはサーヴァントで人間…………ですよね?」

「人間だとも。人間とは理性と知性を持つ獣の上位存在である。私が獅子の頭になっていたところで、それが変わるわけでもなく、私は紛れもない、アメリカ大統王、ケルトを駆逐する使命を帯びた、サーヴァントにしてジェントルマンである!」

 

雷を迸らせてエジソンは断言する。

己は人間で、支障がないのなら頭が獅子になっていようと、大して違いはないのだ、と。

 

「ご、合理的というか豪快というか……」

『ま、まあ、バベッジ教授の例もあるしね』

 

特異点を巡るようになって初めてかもしれないが、ドクターの言葉が頼もしい。

そのドクターの声に、エジソンが耳ざとく反応した。

 

「ん?今の声は魔術的通信か?電話で事足りる時代に生きているだろうに、そのような不便なものに未だ絡めとられているとは、生粋の魔術師はやはり非合理的であるな。せっかくの霊界チャンネルの使い方を、間違えておる」

『え、いやあの、電話回線は同じ空間にしか繋がりませんよね?これは魔術と科学を用いた超航法的な感じで、ふわーっと泳いで、異なる空間とも会話しているというか…………』

 

ドクター頑張れ、と白斗は無言で応援を送った。カルデアのシステムは、正直説明がふわふわなのだ。特にフェイトやシバはそうだ。

魔術と科学を交差させて始まるシステムは、どうもメディアすらもて余す部分があるようだし。

 

「はいはい、カルデアの優男もミスタ・エジソンもそこまでよ。そろそろ本題に入らないと、ナイチンゲールが切れちゃうわよ」

『優男……。声だけなのに何でボクはディスられてるんだ。冬木のキャスターちゃんは何も言わなかったのに…………』

 

ドクターの叫びは置いておいて、ともあれ、どうにかこうにか本題に移った。

 

「率直に言おう。最後のマスターよ、時代に逆行するケルトを駆逐するため、四つの時代を修正してきた力を活かし、我々と共に戦おう」

 

アメリカは、知性ある人々が作り上げた国。

それを、プラナリアの如く沸いて出るケルトが蹂躙し、アメリカ政府も他の主要国家もすでに亡い。

エジソンの作り上げた新国家体制で戦線は押し戻され、アメリカにおけるケルト側と、エジソン側の勢力は拮抗している。が、完全に勝利するには至っていない。

大量生産できる兵を擁するエジソンたちが勝てない理由。それは、サーヴァントの不足だという。

軍隊を揃えても、ケルトの名高いサーヴァントが一体いれば、それだけで基地は奪われる。

つまり、エジソン、エレナ、ジークフリートしかいないアメリカ西部合衆国には、エースがいない状況なのだ。

 

「それで俺たちに協力しろと」

「そうだ。インドの大英雄カルナ、東方の音に聞こえた弓兵アーラシュ。それにあの盾のお嬢さん。いずれも一騎当千の強者だろう。こちらに召喚されているサーヴァントのほとんどは散り散りで、こちらに協力する素振りすら見せぬ。アメリカを救うべき、この状況において尚、だ!」

 

獅子の咆哮が謁見の部屋を揺るがす。

やっぱりバーサーカー・ランスロットに似てないかこの人、と白斗は思った。

 

「……あなたが本当に世界を救うというなら、俺たちも協力するのに吝かじゃない」

「ほう」

 

人のそれとは違う、ライオンの瞳孔から目をそらさず、白斗は言葉を紡ぐ。

 

「だから、エジソン大統王。俺たちに教えてほしい。あなたはどうやって、どんな方法で、この世界を救うつもりなんだ?」

「私も知りたく思います。ミスタ・エジソン。―――――ここの機械化兵団とやら。あれは、あなたの発案ですか?あれが、あなたのいう新体制の結晶だと?」

 

ナイチンゲールも問う。

エジソンはそれに答えた。

彼の語る、この国の目指すところは、詰まるところは総力戦体制である。老若男女一丸となって国家に全力で奉仕し、軍を生み出す。

それでもってケルトを駆逐したあとは、自分が聖杯を手に入れ、このアメリカを残すことで世界を救う、と彼は言った。

他の時代は滅びるだろう、という予想を付け加えて。

 

「大統王、それでは時代を修正するつもりはないのか?」

「必要あるまい。私が聖杯を使えば、このアメリカという国は残るのだ。他の時間軸とは全く違う場に、人類の知性が総動員された輝かしい国が残る。どこに問題があるのだ?」

「大有りだよ。他の時代はどうするつもりなんだ、あなたは」

「そうです。そのために、戦線を拡大するつもりですか。傷付いた兵士たちを切り捨てて」

 

ああ駄目だ、やはり、この人とは相容れない、と白斗は悟る。目指す場所が、違うのだ。

白斗とナイチンゲールの言葉に、どうしたことか、目に見えてエジソンが動揺した。顔色は、ふさふさの毛のせいでもちろん見えないのだが、人の顔だったなら、脂汗でもかいていたかもしれない。

 

「私とて、切り捨てたくて切り捨てるわけではない……。しかし……」

「落ち着いて、エジソン。二人が言っているのは彼らの意見よ。告発でも何でもないわ」

「…………承知している。今のはいつもの頭痛だ。―――――ナイチンゲール嬢、それに最後のマスターよ。今の私にとって、この国が全てだ。王たる者、第一にこの国を守る使命がある」

 

そう言って、白斗とナイチンゲールを見下ろすエジソンの瞳には、揺らいでいたにしろ、強く硬い光があった。

だからこそ、白斗の答えはもう決まっている。

隣のナイチンゲールと目が合う。

 

「エジソン大統王。俺たちは、あなたに協力できない。俺たちは世界を救いたい。あなたは愛国者としてこの国だけを救いたい。だから、俺たちは相容れない。聖杯は諦めろ」

「貴方の愛国心は理解できます。しかし、あなたのような目をした長は、兵士を死地に追い込むでしょう。協力はできかねます」

 

きっぱりと、白斗とナイチンゲールは断った。

 

「意外だな。裏で何を企むにしろ、手をとるとは思っていたのだが。―――――だが、君たちがそういうなら、私はここで、君たちを断罪せねばなるまい。エレナ」

「はーい、了解よ」

 

直後、機械化歩兵の銃口と、エレナの作り出した無数の光弾が白斗とナイチンゲールに向けられた。

白斗は動けず、ナイチンゲールは動いた瞬間に、光弾が直撃して拳銃を弾き飛ばされ、膝をついた。

 

「まあ、分かってたコトだけどね。あなたたちを、地下牢に移すわ」

 

その一言を合図に、白斗たちは囚われたのだった。

 

 

 

 

 

#####

 

 

 

 

「まさか、マスターも同じところに閉じ込めるとはな」

 

アメリカ西部合衆国本拠地に作られた地下牢。薄暗く湿っぽい鉄格子の中、五人の人間がいた。

正確に言うなら、真から人間と言えるのは一人だけだったが。

 

「うん。俺も正直意外だった」

 

その人間、最後のマスターの白斗は、フォウを肩に乗せたまま、カルナの言葉に頷いた。

頭から上がライオン、という強烈なインパクトを持つアメリカ大統王、トーマス・アルバ・エジソンの共闘の誘いを蹴った白斗は、当然ながら囚われることになった。

てっきり、サーヴァントたちからは離されて閉じ込められると思っていたのだが、入れられた先の地下牢に、他の全員がいたのを見て、白斗は驚いた。

それに、装備も何もかも、一切取り上げられていない。

 

『でもその空間、何らかの手段で、魔力供給が断たれるようになっているみたいだね』

 

しかし、そこがただの牢でないことは、ドクターからの通信ですぐに分かった。

 

「はい。先輩から送られているはずの魔力が全く感じ取れません」

「全くだ。弓も呼び出せん。さすがキャスターってとこだな」

 

近代随一のオカルティストとして名を馳せた、ブラヴァツキー夫人ことエレナ。

エジソンに協力している彼女の手によって、作られたらしい牢は、サーヴァントへの魔力供給を削り取る、大層堅固なものだった。

現界できるぎりぎりまで魔力を絶たれては、一騎当千のサーヴァントでも手段がない。

エレナもそれが分かっているから、白斗とサーヴァントを一緒に閉じ込めて平気なのだろう。

実際、カルナやアーラシュ、マシュが格子を曲げようとしてみたが、どうにもこうにも歯が立たなかったのだ。

 

「何を呑気なことを言っているのです。曲げられないのなら、削ればいいでしょう」

 

そう言いつつ、拳銃を抜き放ったのは看護師にしてバーサーカーのナイチンゲール。

銃口が鉄格子に向けられたのを見て、白斗はまさか、と青ざめた。

 

「ちょ、ナイチンゲール!それをこんなとこで撃ったら―――――」

 

直後、発砲音が牢内に木霊する。

当たりそうになった跳弾は、マシュの盾が弾いてくれたものの、白斗は冷や汗が出た。

 

「ナイチンゲール。牢内で銃を撃つのはよせ。オレたちには通じずとも、マスターには危険だ」

「わずかですが削れました。続けましょう」

「あの、ナイチンゲールさん!?銃はやめてください!さすがにそれは無茶です!」

 

マシュの叫びも空しい。

評価規格外の狂化を持つ看護師は、言葉程度では止まらないのだ。

どうしようこれ、と白斗が遠い目になりかけたとき、

 

「…………まあ、無茶ではあるな」

 

第三者の声が、空間に響いた。

正しく、空間からにじみ出るようにして現れたのは、アーラシュのような褐色の肌をした、強面の男性。

 

「え、サーヴァント?」

『サーヴァントだって?!反応は全く無かったぞ!?』

「隠蔽の宝具かスキルでも使ってたんだろ。落ち着けよ、ドクター」

『そ、そうか…………』

 

慌てるドクターと大して驚いていないアーラシュの声を横目に、その男性のサーヴァントは牢の中を一瞥すると、あっさり扉を開けた。

 

「そら、これで魔力供給も復活するだろう」

「あ、ありがとう。でもあなたは誰だ?」

 

フィン・マックールと、ディルムッド・オディナの軍と戦っていた軍勢を率いていたサーヴァントだとは分かるのだが。

 

「確かに名を明かさねば信用もされないな。―――――ジェロニモだ。ジェロニモと呼んでくれ」

『アパッチ族の戦士、ジェロニモか!確かに彼なら、エジソンの味方にはならないね!』

 

ジェロニモは、同じ大地にかつて住んでいた者で、エジソンは彼らから土地を奪って住み着いた者の子孫。

それは確かに相容れないだろう。同じ大地を愛しているからこそ、尚更に。

白斗たちは牢から出た。

 

「機械化歩兵の見張りはすぐ倒せる。が、それをすれば、すぐにでもあの竜殺しに気づかれるだろう」

「彼はオレが抑えよう。マスターたちはその間に逃げてくれ」

「でも、それではカルナさんが……」

「問題はない。殿は慣れている」

 

判断は任せるが、というようにカルナは白斗を見た。

しばし考え、白斗は答えを出した。

 

「殿はカルナに任せる。でも、後で絶対追い付いてくること」

「心得た」

 

かつて共に戦ったジークフリートがどれだけ強いか、白斗はよく知っている。この場で彼を敵と見なさないといけないのは、正直に言えば辛い。

俯きそうになる白斗の肩を、そのとき、アーラシュが軽く叩いた。

 

「マスター、あんたのその葛藤は大事だ。大事だが、今、俺たちに指示できるのは、マスターだけだ」

 

あんたのすべきことは、何だ、とアーラシュは口に出さずに白斗に問う。

もちろん、アーラシュは答えを出さない。それは、白斗の内にあると信じてくれているからだ。

 

「分かってるさ。行こう」

 

白斗の言葉を皮切りに、全員が動き始めた。

機械化歩兵をマシュが盾で殴り飛ばし、アーラシュの矢が貫く。

ナイチンゲールは拳銃を撃とうとして、カルナとジェロニモに止められつつ、とにかく一行は一団になって地下の道を駆け抜けた。

やがて、先に光が見え始める。

 

『出口のところに、超級サーヴァント反応!ジークフリートだ!』

「了解、ドクター!アーラシュ、先制で頼む!」

「ほいよ」

 

アーラシュの矢が放たれ、入り口で待ち構えていただろうサーヴァントに直撃する。

一撃で山をも削り取る矢が、ジークフリートを吹き飛ばしたその隙に、白斗たちはその横を駆け抜けた。

場に残るのは、黄金の鎧を纏った槍兵一人。

そして、アーラシュの矢の直撃を喰らっても、瞬く間に戻ってきた幻想の魔剣を構える竜殺しだ。

 

「……フランスでのときより、容赦がなくなっていないだろうか?あのマスターは」

「それだけお前の腕を知っているのだろう」

 

または、なりふり構っていないともいう。

神に与えられた槍を顕現させたカルナに、ジークフリートはバルムンクを向けた。

 

「正直なところ、あのマスターたちは逃がしても構わなかったのだがな」

「ほう」

「まあ、ここまでされては俺も退けまい。それに、私欲だが、貴公ともう一度戦いたいと思っていたのは事実だ」

「そうか。だが、時間稼ぎがオレの任だ。マスターには追い付いてくるように命じられている」

 

太陽の御子は槍を、竜殺しの英雄は剣を、互いに向け合う。

すでに時は夕刻。地平線に静みかける夕日の、最後の煌めきが、剣と槍に反射したまさにその時、二人の英雄が激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少々夏バテして、萎れているなすびです。
皆様も、冷房の当たりすぎにはご注意を!

【予告】
再会まではあと五話以内です。

活動報告に番外編に関するアンケート設置したので、良ければご協力お願いします。

番外編の投稿は、本編完結してからにさせて頂くと思いますが。






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