これからはもっと早めに更新します。
遅れを取り戻すように頑張ります。
アキside
「まったく、なんで僕があんな目に……」
男子生徒約10名から奇妙な告白をされたその後、僕は帰宅しようと学校の門を出るところだった。
もともと男だった僕に男子生徒から告白されるのは精神的にきつい。
それに、告白されたことにより僕は大事な何かを失っている気がするのだ……。
そう考えるとなんだか泣きたくなる。
別に告白してきた男子生徒たちが悪い訳じゃないけど。
「おや、吉井くんじゃないか」
「あ、久保くん」
門を出たところで学年次席の成績を持つ優等生、久保くんが立っていた。
彼と僕は1年の時から面識があったものの、学歴の差という壁が立ちはだかり会う機会は少なかった。
会うとするなら、こういった放課後や昼休み会うくらい。
だから、こうして会えるのは久々な気もする。
「今、帰るところなのかい?」
「うん……久保くんも帰るところ?」
「そうさ、いつも大体この時間に僕は帰るよ」
久保くんは放課後、遅くまで残っていそうなイメージだが、学年次席というレッテルによる偏見だったようだ。
あ、そうだ。
せっかくだし、一緒に帰ろうかな。
女の子になっていろいろと悩みがあるし、久保くんに話したら少しは楽になるかもしれない。
「ねぇ久保くん、よかったら一緒に帰らない?」
「え? あ、うん……別に構わないが……」
ん? あまり快くなさそうだけど、嫌だったかな?
「あ、ごめん。もしかして急いでた……?」
「いや、問題ない。一緒に帰ろう(吉井くんと2人きりで帰れるとは、今日は運がいいな)」
「そっか。ありがとう」
久保くんは嬉しそうな表情をしているような気がするけど、どうしたのだろう?
そんな疑問を抱えながら僕と久保くんは学校を後にした。
★
「しかし、驚いたよ。男から女の身体になるなんて。まるで小説みたいな話が身近に起きるとは」
「だよね……おかげで慣れないことをするばかりで大変だよ……」
久保くんに悩みを相談したり、愚痴を言ったりしていた。
真面目に受け止めてくれる上に、親身になって相談に乗ってくれるので、どんなことでも相談してしまいそうだ。
「でも、悪いことばかりじゃないんだ。前より勉強とかが身に入るようになったし、分からなかった問題だってすぐに解けるようになったんだ」
「そうなのか……それはとてもいいことだと、僕は思うよ」
更に返答も優等生らしい……流石だ。
「これって、この身体になったおかげなのかな?」
脳内まで女の子になってたりするのかな?
「恐らく、そうだろう。女の子の利点が吉井くんの身体に現れたみたいだね」
「やっぱり、女の子になると頭が良くなるものなの?」
ずっと疑問に思っていたことを久保くんに投げかけてみる。
「男性と女性の脳の仕組みには違いがあるみたいで、勉強とかの記憶や集中力を必要とする作業においては女性の方が有利なんじゃないかな?」
脳の仕組みについて知っているのか。
久保くんは優等生どころか博学多才のレベルで尊敬すら覚えてしまいそうだ。
「へぇ~、そこまで僕は女の子の身体の影響が出ているのか……」
これは素直に喜びたいけど……元の姿に戻りたい願望が勝って喜べない……。
「はぁ……でも元の身体がいいかな……不便で面倒なことばかりだし……」
「例えば、それはどんなこと?」
今度は逆に久保くんが聞いてくる。
僕は今まであった女の子の苦労の数々を思い出す。
「そうだな……まず、お風呂かな」
「ふ、風呂……」
いつもクールな表情である久保くんが、赤面する。
「……あぁ! ごめん! これは話さない方が……いいよね?」
「…………そういった話題は、できれば控えてもらいたい」
しまった、相手は久保くんだからと、思わず危ない話題を切り出してしまった。
今度から男子と会話する時は気を付けよう……。
「……それで、他には?」
気を取り直したところで、久保くんが話を戻す。
「ええっと……身分証明書の変更とかかな?」
僕は自分の身分証明書や学生手帳を久保くんに見せる。
身分証明書や学生手帳は学校側が新しく作成して、性別と名前を変更している。
女の子の姿でいる間はこれを使わなければならない。
「身分証明書で性別なんて変更できるのか……初めて知ったよ」
変更されてあるらしいけど、詳細は僕もよく分からない。
「うん……性別どころか名前まで変わっちゃってるけど……」
以前から『明久』という本名から、性別に合わせて『アキ』という名前になってしまっている。
「ふーん……『アキ』……かぁ……いい名前じゃないか。これなら、いざという時にでも対応できそうだね」
身分証明書を見ながら感心している久保くん。
「使う機会があるかどうかは微妙なところだけどね」
念のために持っているだけであって、使用する機会がくるかどうかは不明。
その機会が訪れるまでに僕は元の姿に戻れているのだろうか……。
『♪~♪~♪』
久保君の制服のポケットから携帯電話の着信音が鳴る。
「あ、すまない。少し待っててくれ」
久保君はポケットに手を入れる。
出てきたのは数字キーのない画面だけの端末、スマートフォンだ。
「久保くんってスマホ持っていたんだ……」
そんなもの扱う久保くんが少し物珍しい気がする。
「高校生だし、普通に持ってるさ。必需品のようなものだね」
「へぇ~」
スマートフォンを手にしたことも使ったこともない僕は、好奇心なのか久保くんの手にするスマートフォンを見つめる。
「吉井くんは持ってないの?」
スマートフォンを見つめる僕を見て、久保くんは首を傾げる。
「うん、今の携帯で十分だと思うけど……持っておいた方がいいもの?」
「学校だとほとんどの人が持っていると思うよ。僕のクラスだと全員が持っていたね」
「そ、そんなにいるんだ……」
普及してきたものとは聞いたが、現在はそれが流行っている時代になっていると聞いた。
僕は流行りとかそういったものには興味ないタイプなので、流行りに乗れていない自分が少し恥ずかしい気もする。
「僕も買おうかな……スマートフォン」
「……どうしたんだい? 急に」
不思議そうな目をする久保くん。
「いや、久保くんの話を聞いてたら持っておいた方がいいのかと思って……」
「そんなに焦る必要はないと思うけど…………そんなに気になるなら、今から見に行ったらどうだい?」
「え、今から?」
「うん、買う時の参考になるし、見に行く方が話が早い気がする」
今から行くって……いわゆる寄り道というやつですか。
行ってみようかな、時間は全然余裕だし。
「じゃあ……久保くんもついてきてくれるかな? 僕1人じゃ心細いし」
「もちろん、分からないことがあれば遠慮なく聞いてほしい」
★
僕と久保くんは帰り道から最寄りの家電量販店にいる。
スマートフォンの売り場に行ってみると、棚にずらりと並んでいる。
さまざまな種類のスマートフォンがあるのだが、如何せん無知な僕は何がいいのかさっぱり分からない。
お、これいいかも。
目に入った中で、僕はよさげなスマートフォンを手にしたのだが、
な、なんだこれ……デカすぎる。
僕が手にしたものは、成人男性の手でも余りそうなくらいの大きさだった。
ダメだ……この大きさは扱いきれないし、手が元より小さくなってしまった僕には尚更無理だ。
「どうだった? いいものは見つかったかい?」
「いや、何を選べばいいかすら……久保くんのおすすめは?」
「僕のおすすめ? そうだな……」
久保くんは視線を棚に向ける。
「……無難にこれがいいんじゃないか?」
久保くんは棚に指をさす。
ピンクのボディで標準的なデザインのスマートフォンだった。
「う~ん、なんだか可愛すぎないかな……無難とは言い難いような……」
「そうかな? 今の吉井くんにぴったりだけどね。
それに、防水機能も付いているしスペックも高くて、値段もいいと思うんだけど」
これのスペックってそんなに高いのだろうか?
こんなデザインで高いスペックはあまり想像できないが、外見では判断できないので僕はそのスマートフォンを手に取ってみる。
「……これどうやってつけるの?」
使っている人の見まねで画面をスライドしてみるが、画面は真っ黒。
つけ方すら分からずの初めてなので、久保くんに聞いてみる。
「これは、ここの下のボタンを押せばつくはず」
僕は久保くんに言われた通り
画面の下についているボタンを押すと、綺麗で色鮮やかな画面が映る。
「おおー、すごい」
僕は自分で操作してついた画面に、感嘆の声を上げて見つめる。
「これにしようかな……」
まだ画面をつけただけ。
それだけなのに、初めてやったが故に湧いた愛着なのか、欲しいという切実な欲望が湧いた。
「やっぱり、それにする?」
「うん、久保くんにすすめられた通り、これにしようかと……」
「そっか、じゃあ次はこれを買うための契約を……」
「ちょっと待って、それは気が早くない?」
いくらなんでも、今からは早すぎるような……。
「それにするなら、今買った方がいいと思う。まだ迷っているなら、また別の機会にするけど」
「……じゃあ、そうする」
少し悩んだが、いつまでもこうして考えている間に売り切れてしまいそうなので、思い切って買うことにした。
「そしたら……保護者の同意と身分証明が必要になるけど、大丈夫?」
大事なことを思い出したように、久保くんは尋ねてくる。
保護者の同意は……1人暮らしだから、適当に貰っていると言っておけばいいや。
身分証明書は……うん、手元にあった。
まさか、早々に使う機会が訪れるとは……。
元の姿に戻るまで使うことはないと思っていたが、思ったそばから使ってしまった。
「……全然、大丈夫だったよ」
なんの問題もなく無事契約完了してしまった。
★
「ふっふ~ん♪」
「ははっ……とてもご機嫌だね」
「えへへ……衝動買いみたいになっちゃったけど、買ってよかったよ」
「それは何よりだよ」
新しいおもちゃを買ってもらった子供のような僕を久保くんは頷きながら見る。
恥ずかしい姿を見せてしまった気がして、少し気を落ち着つかせた。
「これって、いろんなアプリがあるけど、基本的に何をするの?」
スマートフォンを買った者が言うセリフではないが、久保くんに雑談程度のような要領で聞いてみる。
「使う人によるけど、人との連絡やネットサービスの利用とかじゃないかな?」
「なるほどね……あ、そうだ」
僕は鞄から買ったばかりのスマートフォンを取り出す。
「ねぇ久保くん、よかったらメアド交換しない?」
僕は自分のスマートフォンを指さしながら言う。
「え? 本当にいいの?」
「うん、これでいつでも連絡取れるでしょ。だから……ね?」
「そ、そうだね。交換しよう」
こうしてお互いにメールアドレスを交換。
これでいつでも連絡を取ることが可能だ。
(一緒に帰る上に、メアドまで交換……今日はとことんついてるな)
「どうしたの?」
僕は久保くんの顔を覗き込む。
「いや、なんでもないさ……」
首を横に振って、いつも通りの久保くんに戻る。
さっきと様子が一転していたような……本当になんでもなかったのだろうか?
なんとか、できました。(´ ▽`)フゥ~
アキちゃんのスマートフォンが今後の展開に繫げる予定です。
ネタバレになるのでここまでしか言いません。
次回も楽しみにしてくれると嬉しいです。
誤字脱字のご指摘や感想待ってます!!(_ _ ノ)ヨロシクオネガイシマス