それではどうぞ
sideアキ
着替えも終わった、日焼け止めも塗った。
僕たち女子一同は先に着替え終わっているであろう、男性陣の元へと向かう。
途中、太陽光で熱された砂浜で足の裏が焼けそうになる。
あっつい! 砂浜ではなく、別の所で合流するべきだったかも……。
「おーい、雄二!」
「お、明久やっと来たk(ズブっ)ギャー! 目がああぁぁぁ!!」
「……雄二は見ちゃ駄目」
いつの間にか、僕の後ろにいたはずである霧島さんが、振り向こうとした雄二の目を潰していた。
「何しやがる、翔子!?」
「…………吉井の姿は雄二に見せられない」
「明久ぁ! お前のせいだからなぁぁ!?」
えぇ……なんて理不尽な……。
僕はただの傍観者だぞ……。
「…………そ、それは犯罪級」(ダバダバダバ)
「うわぁ!? 雄二に続いてムッツリーニまで凄いことに!?」
ムッツリーニも目どころか、いろんな意味でやられていた。
下手したら軽く致死量行きそう……。
丁重に扱わなきゃ生死に関わる問題だよ、これ。
「あ、吉井く……ん……」
「ん? 久保くん……どうしたの?」
今、僕を見た瞬間、目を逸らしたような……。
気分でも悪くなったのか……いや、僕の格好がおかしかったり……?
「あ、あのー、この水着、変だった……?」
「な、何が変だというのかな?」
「こういう水着着るの初めてだから、おかしいんじゃないかなって……」
「え? いや、よく似合っているよ? 女の子らしくて、可愛いと思う……」
「えっ…………あ、ありがとう……///」
不覚にも久保くんから言われた言葉にドキッとしてしまった。
僕は赤くなった顔を隠すようにそっぽを向いた。
なんで可愛いって言われたくらいで、こんなにドキドキしてるんだろう……。
調子狂うな……。
「アキちゃんよ、とっても似合っているぞい」
秀吉みたいに、女子から言われてもなんともないのはなんでだろうか……。
「ありがとう。秀吉も似合っているよ、その水着」
「……女性用の水着を着ているワシにその言葉はいらぬぞ」
何を言うか、女の子は女性用の水着を着るからこそ似合うんだろうに。
「あははっ、吉井クンはモテモテだね」
「またまた工藤さん、そんな冗談はいいよ……」
「いや吉井くん、愛子の言っていることは本当よ」
「えぇ? 木下さんまで……?」
なぜ木下さんまでそんなことを?
2人は僕をからかっているんだよね……?
「アキ……あんたは神々しく輝いているわ……」
方にポンッと手を置かれる。
「美波まで……いったい、どうしたの?」
「……何でもない」
そう言って、美波はその辺に座り込んだ。
どこか、遠くを見るような目で……。
ところで、美波は何が言いたかったのだろうか……。
「……吉井」
「ん? どうしたの霧島さん?」
「……少しだけ失礼」
ふにゅ
「うひゃあ!? ちょっと、霧島さん!?」
「……すごい」
いきなり、僕の前に立った霧島さんは僕の胸を鷲摑みする。
「あ、アキちゃん、私も!」
今度は後ろから姫路さんが、僕の腰に手を回す。
「ひゃん、姫路さんまで!? さっきから、なんなの?」
「……いえ、なんでも……ないです……」
姫路さんは暗い声で答えると、美波が座っている場所の隣に座り込んだ。
「あ、瑞希……いらしゃい……」
「美波ちゃん……海って残酷ですね……」
「違うのよ瑞希、残酷なのはきっと神様なのよ……」
2人は鬱な表情でどこか遠くを眺めている。
さっきまで、上機嫌だった2人はどこへやら……。
「元気を出すのじゃ、せっかくの海であろう?」
「しっかりしてください! お姉さま!」
清水さんは美波の肩を揺さぶって、秀吉が姫路さんの横で、フォローする。
こういう役がいてくれて、助かった。
「全員揃ったようだな……うぅ……やっと視力が回復して――」
「……雄二は見ちゃ駄目」(ブスッ)
「ぐああぁっ! またか!? またなのか!?」
あ、またもや雄二が霧島さんに……。
雄二も海を楽しめるのだろうか……。
今のところムッツリーニの次に危ない気がする。
「くっ……これじゃ俺が損しているだけじゃねぇか……‼ だったら……!」
雄二が海に飛び込んで、みんなに向かって水をかける。
「うわっ! 何するの雄二!?」
「ふん、どうした明久? やっぱ、女になったお前は俺の敵ではないな」
「なんだと! 面白い……受けて立つ!」
売り言葉に買い言葉。
いくら女の子になったからといって、舐めてもらっては困る。
僕も海に飛び込んで雄二に水を思いっきりかける。
その度に僕の大きな胸がぶるんぶるん揺れる。
「……ぐはッ!?」(ブシャーーー!!)
どこかで誰かが逝ってしまったような声が聞こえたが、気にしない。
「くっ……やるな明久!」
「ふふん、僕を誰だと思って……ひゃあ!?」
横から工藤さんや霧島さん、木下さんまでもが、僕と雄二めがけて水を浴びせかけてくる。
「2人だけじゃつまんないし、ボクも混ぜてよ♪」
「……私も」
「アタシも参加するわ……ここでも手加減はしないわよ」
Aクラスの女子も参戦か……これは乱戦になりそうだ。
「私も参加させていただきます」
「ウチもやるわ、覚悟してなさい!」
「美春もやりますわ! 援護はお任せください!」
姫路さんと美波と清水さんのコンビまでも参戦。
「よーし、それなら、はぁ!」
僕は両手で水をかいて、激しく水をかける。
「やれやれ……男は坂本くんだけじゃ荷が重そうだし、僕たちも行くとしようじゃないか」
「そうじゃの、ワシらも行くぞい」
ここで久保くんと秀吉が乱入。
僕たちの水かけ合いのバトルはさらにヒートアップ。
どこからともなく水しぶきが飛び交い、容赦なく水が体中にかかる。
でも、真夏の炎天下の中ではとても気持ちがいい。
「うわっ!?」
僕あまりに夢中だったのか、海中の砂に足を取られてしまい、倒れそうになる。
「吉井くん!」
横にいた久保くんがとっさに僕へと手を伸ばす。
なんとか間に合ったが、僕は久保くんと抱き合うような格好になっていた。
「よ、吉井くん、大丈夫……?」
「え……あっ……うん///」
顔が至近距離というくらいに近づいており、お互いを見つめ合うその状態が少しの間続いた。
「おらおら、さっきまでの勢いはどうしたぁ!?」
雄二に横から容赦なく水をかけられて、我に返った僕と久保くんはまた、水のかけ合いを再開。
女の子になったことを忘れて思いっきり楽しむことができたんだけど、不思議なことに僕はモヤモヤした気持ちでいっぱいだった。
できた……。(´・ω・ `)