新学期を迎えるのに、なぜか心の中に謎の余裕があるんですよね。
分かりますか? 学生の皆さん? (*・ω・)?
sideアキ
Bクラスとの交渉もうまく成立し、後はAクラスに宣戦布告をするだけとなった。
「よし、今からAクラスに宣戦布告をするぞ、形式は一騎打ちだ
明久行ってこい」
一騎打ちか……確かにAクラス全体が圧倒的に有利だ。
いくら試召戦争を経験したFクラスでもさすがにAクラスに勝つことはまず無い。
だから勝率が比較的に高い一騎打ちこそがAクラスに対抗できる手段だ。
「ん? ちょっと待って、もしかしてこのままの格好でいくつもり?」
「それ以外に何があるんだ?」
まさか、疑問形で返されるとは思ってもなかったよ。
メイド服姿で当たり前のように宣戦布告をさせるとは……。
雄二の頭の中で僕は仮装するマスコット的な存在なのかな?
「とにかく、事は早めに済ませたい。早く行くんだ」
雄二が強引にグイグイと背中を押してくる。
「分かったよ…………うぅ……恥ずかしい……」
「安心しろ、お前が仮装してるのは今や日常風景だ」
それでも恥ずかしいという気持ちは否めないんだよ……。
まったく……雄二は女の子でも人使いが荒いんだから。
恥ずかしい気持ちを抑えながら僕はメイド服姿でAクラスに向かう。
★
廊下を通る生徒の視線を浴びて、それに逃げるような速度で歩く。
そして、いつの間にかAクラスの教室の前にいた。
ふぅー……落ち着け……これはただの仮装。仮装なんだ。
ただの場違いな服装なんだ……いや、そこが恥ずかしいんだけどね……。
もういいや。
ここまで来たら後に引けないし。
よーし……行くぞ!
ガラッ
「失礼します、Fクラスの吉井アキです」
僕がAクラスの扉を開けると、ザワザワしていたAクラスの空気が、まるで映像を停止するかのようにピタッと止んで、視線が一斉に僕の方に向く。
うぅ……視線が痛い……晒し者になりに来た気分……。
「お、おい、俺は夢でも見ているのか? 本物のメイドがここに……」
「ああ、俺もだ……すげー綺麗だな……」
「か、可愛い……もう私、レズでいいや……」
な、なんだよ! そんなにおかしかったのか?
悪かったな、メイド服が似合わなくて。
うーん、でもそれを考えるとちょっとショックだ……。
似合っていても複雑だし……でも、だからと言って、似合わないのもな……。
「あれれ~? カワイイ女の子が来たかと思えば吉井クンじゃない」
「あ、こんにちは……工藤さん……」
目の前に工藤さんがやって来た。
「どうしたの、その恰好? あ! もしかしてボクのこと、誘ってる?」
ニヤニヤしながら、僕の身体を見回してくる。
「え、何が?」
いったい何を誘ってると言うのだ?
「ははっ、相変わらず天然でカワイイな~。吉井クンは」
そう言いながら、工藤さんは僕にギュッと抱きしめてきた。
「く、工藤さん……いきなりどうしたの?」
「あまりにもカワイイから居ても立ってもいられなくて。
あぁ~、やっぱり吉井クンを抱きしめている時が一番の幸せだよ……」
抱きしめているだけなのに、そこまで幸せなのか。
工藤さんは女の子を抱きしめる趣味にでも目覚めたのだろうか。
「愛子、そんなにくっついたら吉井くんが苦しいわよ。離してあげなさい」
次は横から木下さんが出てきた。
「ム~、吉井クンは嫌がってないよ。嫌じゃないよね、吉井クン?」
嫌という訳ではないけど、流石にここまでベタベタされるのは、ちょっと気恥ずかしいからそろそろ離してほしい。
「とにかく同意を得てようが得てなかろうが、離しなさい。吉井くんはこんなことをしにここへ来た訳じゃないんだから」
「はーい、……あ~あ、もうちょっと、くっついていたかったのに……」
工藤さんはふてくされた顔をしながら、抱きしめていた手を離す。
「ところで吉井くん、その服装は?」
「これ? それは雄二に着て行けって言われたから着てきただけだよ……おかげで恥ずかしい目に遭っているけど」
「そうなのね…………(坂本君、いい仕事してくれるじゃない)」
木下さんまで、工藤さんと同じような目つきで僕の身体を見つめる。
やっぱり、この衣装、着てこなければよかったかも……。
「誰かと思えば吉井くんか。ここに来るなんて珍しいじゃないか」
「……吉井、らしくない」
「あ、久保くん、それに霧島さんまで……」
横から学年次席と主席の優秀コンビの久保くんと霧島さんがいた。
「もしかして、観察処分者としての仕事でここに来たのかしら?」
あ、いけない、ついうっかりここに来た目的を忘れてたよ。
「そういうことで来た訳じゃないよ、木下さん。実はね――――」
雄二に言われた通り、僕は宣戦布告内容を告げる。
「という訳で、僕たちFクラスはAクラスに一騎打ちを申し込むよ……。
ルールはお互い代表を5人ずつ出して、先に3勝した方の勝ちってことでいいかな?」
「なるほど、それなら科目選択はどうするんだい?」
と久保くん。
「えーと5人だから3と2に分かれるね……どうしたらいいかな?」
このことは雄二からは聞いていない。
あらかじめ、細かいところまで内容を決めておけばよかった。
「別にそっちが3でこっちが2で構わないわ。Aクラス対Fクラスなのだから、多少のハンデは必要よ」
と木下さん。
「ありがとう……じゃあ、内容はこれでいいかな?」
「……ちょっと待って」
と霧島さん。
「……私から1つだけ提案がある」
「提案? 提案っていったい何?」
Aクラス代表でもある霧島さんから提案があるとは、いったいどんな提案なのだろう。
「……もし負けたらなんでも言うことを3つ聞くこと……これを追加して」
なるほど、これは勝負でよくあるパータンのやつだ。
「3つね……勝った数だけ言うことを聞く訳か……全然問題ないよ」
これくらいの提案なら雄二は受け入れてくれるだろう。
「それじゃあ、色々とよろしくね」
と工藤さん。
「うーん、それは僕が言うべき言葉だけど……まぁこちらもよろしく」
こうしてAクラスへの宣戦布告が完了した。
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