明久「僕が女の子に!?」   作:白アリ1号

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76話 鈍感な優等生:後編

side久保

 

 

「…………ということがあって、あの時は打ち上げに参加しなかったんだ」

 

学園祭であった、あの出来事を話し終わった後、女子一同は絶句状態だった。

 

「も、もう一度だけ聞くけれど……それって、本当なの……?」

 

驚きのあまり、身体を震わせている木下さんが恐る恐る尋ねてくる。

 

「嘘なんかついてどうするというのさ……話せることはすべて話したつもりだけど」

 

「そうなのね……まさか吉井くんが……」

 

木下さんがここまで驚いているのは無理もないだろう。

 

次に横で佐山さんが口を開いて、

 

「久保くん……多分それアキちゃんと脈アリだと思うよ」

 

「は、はぁ……? なんで急にそんな話になるんだい?」

 

「いや……だって……ねぇ?」

 

佐山さんがそう言うと、女子のみんなはウンウンと頷く。

 

「わざわざ水着姿を見せてあげるなんて……それって、吉井くんがかなり久保くんのことを信用している証拠よ」

 

と櫻井さん。

 

「そうだよ! いくら友達だからって、人前で恥ずかしい格好を2人きりの状況で見せるのは久保くんに気があるんだよ!」

 

と続いて浜崎さんまで。

 

「いや、それはないと思う。アキちゃんは日頃のお礼にと言っていたから……好意があってやったのはありえないと思うけど……」

 

僕がそう言った瞬間、みんなが僕を非難のまなざしで見つめてきた。

 

ど、どうしたというのだ? 僕が何かおかしいことを言ったのだろうか?

 

「久保クン……流石にその考えはないと思うなー……」

 

「アキちゃん……かわいそうです……」

 

工藤さんと佐藤さんがそう言ったものの、僕にはどういう意味なのかサッパリだ。

 

「な、何がおかしいんだ? 間違ったことは言ってないはずだけど……」

 

すると、みんなは呆れた表情をする。

 

「いろいろ言いたいことがあるのだけれど……もういいわ……次の質問をするわね」

 

なんで今日の木下さんは僕に対してこんな態度をするんだろうか……。

 

「それで……その後が気になるわね。吉井くんを連れて帰っていたそうだけど、何もなかったんでしょうね?」

 

「いや何度も言ってる通り、特には……」

 

「じゃあ、明確に正確に適確に説明してもらおうかしら。できるわよね? 嘘じゃないんでしょう?」

 

なぜそこまで念を押すように言うんだ……木下さんはどうしてアキちゃんのことになるとこんなに変貌するんだろう……。

 

「わ、わかったよ……説明するから落ち着いて」

 

そうして、女子一同が僕の話に興味津々な様子で耳を傾けた。

 

「あの後は吉井くんを背負ってそのまま酔いが覚めるまで、自分の家にいさせたんだよ……あ、もちろん親はいたから僕の家でやましいことは一切行っていないし行うこともできない」

 

「ふ~ん……それで、酔いが覚めてどうなったの?」

 

「今から説明するよ木下さん……それから、女の子に夜道を1人で歩かせる訳にはいかないと、吉井くんを家まで送ってあげた……これだけだよ」

 

簡潔に説明して、誰もが理解してくれただろうと思っていたのだが……

 

「納得いかないわ……本当にそれだけなの?」

 

木下さんは話に噛み付いてくるばかりだ。

 

「うーん……これだけだとやっぱり脈ナシっぽい?」

 

「変に期待しすぎちゃったのがいけないかもしれないわね」

 

「えぇ~……つまんな~い」

 

佐山さんと櫻井さんに浜崎さんはなぜかガッカリしていた。

 

「でも、吉井くんの家まで送り届けてから……あ、今のは聞かなかったことにしてくれ!」

 

しまった、これは誤解されるから話さないと決めていたのに、3人の反応を見てつい口走ってしまった。

 

しかしながら、それを聞いた木下さん。

怖い笑みを漏らし、容赦なく問い詰めてくる。

 

「まだ何かあるつもりね。言いなさい。そして、正直に全部ぶちまけるのよ」

 

「ちょっと待って! これは本当に……!」

 

「この際、隠し事は無しですよ! 安心してください、他言はしませんから」

 

佐藤さんにも言われ、そしてみんなも僕の返答を待ち望んでいる……そんな気がした。

 

「わかったよ……じ、実は送ってあげた後のことなんだけど……」

 

もしかしたら吉井くんのあの行為にはどんな意味があったのか、彼女たちならわかる気がすると、赤裸々に告白することにした。

 

 

 

 

「「「えええええぇぇぇ!!!???」」」

 

教室に彼女たちの驚きの声が響く。

 

周りにいた生徒は、何があったのかとその様子を不思議な目で見ている。

 

「く、久保くん! よかったじゃん! それ絶対に相思相愛(?)ってやつだよ!」

 

「まさか2人の関係がここまで進んでいるなんて……」

 

「アキちゃんにも久保くんにもついに春が来たのかな!?」

 

「おめでとう、久保クン! ちょっと悔しいけどね……」

 

「う、嘘……久保くんと……そんなっ……!」

 

「アキちゃんの運命の相手は久保くん……だった訳ですか……」

 

と1人1人変な解釈をされてしまった……。

どんな受け取り方をしたのだろうか?

 

「ええっと……つまり吉井くんから抱きついてきたってこと?」

 

「うん、あれは今でも忘れられない……」

 

木下さんの問いに答える。

 

「そりゃそうよね……アキちゃんからそんなことされたら、むしろ覚えていたい……」

 

どこか羨ましそうにしている佐山さん。

 

「でも、ずっと気になることがあって……なんで吉井くんはあんなことしたか……誰かわからないかな? 教えて欲しい」

 

「……えぇ? な、なんで私たちに聞くの? わかっていることだろうに……」

 

「ごめん、佐山さん……でも本当なんだ……」

 

すると、みんなは先程よりも増した呆れ顔。

 

「久保くん……あなたの脳内はどうなっているのかしら?」

 

「久保くんって、学年次席なんだよね……? なんで気づかないのかな?」

 

櫻井さんと浜崎さんからそう言われたけど、逆になぜ2人はそんな反応をとるのだ……?

 

「これが学年次席かぁ~……いろんな意味で残念だよぉ……」

 

ため息をつく佐山さん。

 

とても失礼なことを言われている気がするが、聞かなかったことにしよう。

 

「難儀なものだねぇ、久保クンは」

 

「ますますアキちゃんに同情しちゃいます……」

 

工藤さんと佐藤さんまで僕を……。

 

なんでみんなはわかるんだ? 僕がおかしいのか?

 

「なんか、聞いててだんだん腹が立ってきたわね……久保くん、ちょっと一発殴られたら自分の状況に気づくのかしら?」

 

「木下さん、その振り上げている手を下ろすんだ」

 

攻撃態勢をとるなんて、僕は彼女を不愉快にさせてしまったのだろうか?

僕の発言は彼女たちにどう映っているのか気になるところだが。

 

「はぁ……吉井くんからそういう風に見られてるだけでも腹立たしいけど、女の子の好意に気づけないっていうのが実に殴りたくなる要因ね。そんな人は馬に蹴られて死ねばいいのに……」

 

「木下さん……さっきから酷い言葉が混じっている気がするんだけど……」

 

「アンタのその鈍感さに比べたらまだ優しいくらいだわ」

 

辛辣すぎる……。

 

「鈍感って……じゃあ、なんで吉井くんが僕にあんなことをしたのか説明して欲しいものだよ。わかるのだったら是非とも願いたい」

 

これで悩みの種が消え去るだろうと思いきや、

 

「つくづくアンタってバカねぇ……言える訳ないじゃない……」

 

まさか木下さんからの罵倒が返ってくるとは思わなかった。

そして、佐山さんがそれをなだめるように、

 

「久保くん、女の子には言えない事情があるんだよ。察してあげるのもかっこいい男に近づく一歩かもしれないよ?」

 

「むっ……そうか……そんなに言えない理由があるのなら、追求しないでおこう」

 

性別の違いから生じる価値観や考えなので、知りすぎるのもよくないと諦めることにした。

女子だからこそ、アキちゃんのことについて彼女らは理解できたのかもしれない。

 

にしても、どんなことを考えているのか……女子の脳内を覗いてみたいものだ。

 

「それじゃあ、昼休みも終わることだし、アタシたちはこれで失礼するわ」

 

と木下さんが言った頃には、昼休みが終わる手前まで来ていた。

 

「まだ聞きたいことは沢山ありますけど、それはまた別の機会にしましょう」

 

とメモのような手帳をどこかにしまいこむ佐藤さん。

結局そのメモには何が書いてあるのか、僕は知る由もなかった。

 

女子一同は僕の席から離れて、それぞれ自分の席に着く。

 

「言い忘れていたけど、一つ忠告しておくことがあるわ」

 

「な、なんだい……木下さん」

 

「正直、久保くんは悪くないと思うわ……ええ、そうよ。学力は誰よりも優れている上に人望もあって、紳士的な性格……申し分ないと言えるわね」

 

さっきまで僕のことを散々言ってくれたのに、急に褒めだした。

 

素直に嬉しいが、いきなりどうしたんだろうか。

 

「久保くん、あなたは吉井くんと恋仲の関係になる気はあるのかしら? もちろんあるわよね?」

 

「なんでそれを前提に……まぁ確かに、叶わぬ恋かもしれないが、もしそうなれるならなりたいけれど……」

 

「なら今以上に精進なさい。吉井くんにとって相応しい相手になれるようになりなさい。

そうすれば、アンタと吉井くんが付き合うことを許すわ」

 

なぜ木下さんとの許諾が必要なのか……そしてなぜ僕とアキちゃんが付き合うことになっているのだろう。

 

「まぁせいぜい頑張りなさい。その鈍感さをさっさと直してアプローチしないと、アタシの義妹として迎え入れるわよ?」

 

ニヤリと笑って、自分の席へと戻っていった。

 

……木下さんはどういうつもりだったんだろうか。

ダメだ……今日はいろいろと悩むことが多すぎて、授業が身に入りそうにない。




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さて、もうすぐで強化合宿編ですよ~
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