sideアキ
入浴を済ませた後、僕たちは部屋に戻って就寝の準備を始めていた。
「さて……アキちゃん、一緒に寝よ?」
布団を敷き終えた佐山さんはグイグイと僕の手を引っ張る。
「アキちゃん、アキちゃん! 私におっぱい枕やってー!」
「え? なにそれ……って、ひゃああ!?」
突如、浜崎さんは僕に抱き着いたかと思いきや、胸に顔をうずめてくる。
「うぇへへ……風呂上がりのアキちゃんのおっぱい最&高」
「あぁー! 何してんの朱莉! そして最高をH●GH&LOWみたいに言うなー!」
すぐに止めに来てくれた佐山さん……かと思いきや、
「それ次に私にもやらせて~!」
「いいよ~。私が満足するまでちょっと待ってて~」
「なんで浜崎さんが決めてるの!?」
浜崎さんにされるがまま、佐山さんにもやりたい放題。
寝る前もなかなかしんどい……。
「ふんっ……どうせウチには枕にできるような胸なんてないわよ……」
なんでそんなに美波は不機嫌なんだ……疲れているのかな?
「2人とも落ち着いて。こんな遅い時間に騒いでたら先生が来るわよ」
佐山さんと浜崎さんを怒り口調で止めてくれた櫻井さん。
この中で唯一まともなのは櫻井さんだな……。
「それじゃあ、明日も早いことだし……今から誰がアキちゃんと一緒に寝るか決めましょう」
え? 櫻井さんもそれ考えてたの?
「決めるって、どう決めるのよ?」
美波は首を傾げる。
「ここは平等にくじ引きで決めませんか? それなら全員納得できるのでは……」
まず先に横から提案したのは佐藤さんだった。
「ん~……それでいいんじゃないかなぁ?」
「まぁそれでいいけど」
佐山さんと浜崎さんは何一つ文句を言わずに賛成。
「それで決まりね。勝っても負けても恨みっこなしよ」
櫻井さんもウンウンと頷いている。
「それじゃあ、ウチらも参加しましょう」
「アキちゃんと一緒に寝られるなら、参加せずにはいられませんね」
美波と姫路さんも参戦。
残ることとなった僕はというと……
「えっと……僕も参加していいのかな……?」
「あ、アキちゃんは優勝景品だから待っててね」
いつの間にか、佐山さんから景品扱いされていた……。
「では、今から私が持ってきたこのトランプをくじとして代用します。人数分のカードの中から、スペードの1を引いた人がアキちゃんと一緒に寝る権利を獲得できます……ルールはこれでよろしいですか?」
「わかった。スペードの1ね……この勝負、貰った!」
「緊張してきた……絶対に勝ってやるんだから!」
「私もいる限り、勝てるとは限らないわよ……?」
「ウチも勝負事には負けたくないから……負ける訳にはいかないわ」
「アキちゃんと一緒に寝る権利は私が貰います!」
それぞれトランプに手をかける。
「行きますよ? 一斉に引きますよ。せーの……!
「「「せーの!!!」」」
佐藤さんの合図とともにカードが一斉に引かれた。
★
「ふっふ~ん……計算通り! やったぜ☆」
見事に僕と一緒に寝る権利を獲得した佐山さんはスペードの1を掲げながらピースサイン。
「うぐぐぐっ……五月に権利を剥奪されたぁ……!!」
「朱莉、それは剥奪の意味を間違えているわよ……」
心底、悔しそうにしている浜崎さんと櫻井さん。
「平等に決めたので、仕方のないことですよ」
と言う佐藤さんも少し残念そうな表情。
「はぁ……アキと一緒に寝る権利は安くないようね……」
「明日があります! 明日もまたやりましょう!」
やれやれとハズレくじを引いた美波と、明日の勝負に懸ける姫路さん。
こんなことを明日もやる気なのか……?
「よーし、アキちゃん。一緒に寝よう!」
「う、うん……」
同じ布団に入ると、佐山さんはベタベタとくっ付いてくる。
「ね、寝難いからそんなに引っ付いてこないでよ……」
「ヤダよー。体操服姿のアキちゃんと寝られるのってこれ以上にない至福……!」
寝る際には全員、体操服を着用することとなっている。
そのせいか、佐山さんはいつもより臆面なく迫ってくる。
「すぅ~……ハァハァ……アキちゃんの身体って本当にいい匂い……♡」
「ひゃ……もう、嗅がないでよ……」
鼻息が当たってものすごく、くすぐったい。
「ダ―メ♡ もっとアキちゃんの匂いを嗅がせて?」
佐山さんの力には毎度のこと勝てることができず、されるがまま。
すると、
「うがぁぁぁ!! 気になって全っ然眠れない! ちょっと静かにしてよね!」
浜崎さんが僕と佐山さんの寝ている布団を勢いよくめくる。
「もう……これからがいいところだったのに……」
「このままじゃ眠れないから、眠れるまで恋バナでもするよ!」
「なんで、そんな夜の合宿でのベタなことをするのよ……」
布団から頭を出しながら櫻井さんは言う。
「だって眠れないしさ……それに、お風呂の時にアキちゃんから久保くんのことを詳しく聞いてないし」
「ちょっと、それはもういいでしょ!///」
風呂で散々、やったというのにまだ懲りてないのか。
「アキって、久保のこと好きなの? 女になると男を好きになるものなのかしら?」
「違うからね! 美波!」
美波まで完全に誤解を信じ切っている。
「そういえば、久保くんのことで思い出したんだけど……」
ニヤリと笑った櫻井さんは唐突に言う。
「久保くんってこの前、他のクラスの子に告白されてたのよねぇ」
「そ、そうなんだ……」
「へぇ……久保くんがモテてた話って本当だったんだ~」
「まぁ私もそんな気はしてたよ。学年次席で人柄もいいし」
風呂場での話を聞いていた僕と佐山さんと浜崎さんは普通に納得していた。
「確かBクラスの子に告白されてたんですよね?」
「そうそう。美穂、よく知ってるわね」
どうやら、櫻井さんだけでなく、佐藤さんまでその情報を知っていたそうだ。
「それで……久保くんはその告白してきた子と付き合ったの?」
「いや、付き合ってはいないわよ。というか、もしそうだったら私たちは既に知っているじゃない」
「あ、そっかぁ……よかったねぇ、アキちゃん。まだ久保くんは取られてなくて」
「だから、なんで僕にそういう話題を繋げようとしてくるの!」
佐山さんは風呂場の話から、ずっと僕と久保くんをくっつけようとしてくる。
こんなことしてまで僕をからかってくるなんて、工藤さんよりも悪質かもしれない。
「ん~……でも、私も久保くんのこと好きかな~。実際、1年の頃に告白しようと思ってた時期もあったし」
「「「え?」」」
浜崎さんの唐突な告白に、その場のみんなはギョッとした。
「どうしたの? みんな、そんなに驚いた顔して……」
「い、いや……それ初耳なんだけど……?」
「なんで、そんなこと隠してたのよ……全然、気付かなかったわ……」
「別に隠してたつもりはないんだけどなぁ~……」
このメンバーの中で付き合いが最も長いだろう、佐山さんと櫻井さんは驚きを隠せない。
「へぇ~……アキが好きな人って本当にモテるのね」
「身近にそれを実感させてくれる人物がいましたね……」
美波と姫路さんも横で興味本位ながら、話を聞きいていた。
「これは俗に言う……ドロッドロの恋愛関係……というものですか」
ワナワナと震えながら、外していたメガネをかけ直す佐藤さん。
「大変だよ、アキちゃん! 今度は朱莉に久保くんを取られちゃうかもしれないよ!」
「今度はじゃなくて、別にそんな気はないから! いつまでもゴリ押ししないでよ!」
「あのさぁ……みんな、勘違いしてない?」
佐山さんと僕のやり取りを見て、呆れた顔をした浜崎さんは続けて言う。
「久保くんのことはもちろん好きだったけど、それは私が1年の頃の話であって……今は付き合いたいとかそんな願望はないから」
「あ、そうだったの…………なんだぁ……ビックリした……」
「とんだ、早とちりだったわね」
「それを聞いて、安心しました……」
「ふ~ん……まぁこれでよかったんじゃない?」
「アキちゃんの恋路は邪魔されずに済みましたね」
説明を受けて、それぞれ安堵の表情を浮かべる。
なぜ、みんなは安心しているのかはよくわからないけど。
「だから、アキちゃん……私は邪魔はしないよ。むしろ応援しているから、頑張ってね!」
「浜崎さんまで!? もう、何度言ったらわかるの!」
こんなやり取りが1時間ほど続き、ようやくみんなは寝落ちして、強化合宿1日目は終了。
今年もよろしくお願いします!(`・ω・´)
書いてて気づいたのですが、佐山さんと櫻井さんと浜崎さんの3人がモブキャラじゃなくて、主要キャラになりかけているような……。(;゚Д゚)
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