アリスは落ち着くと謝罪してきた。
「申し訳ございません。マスターの時間を私なんかの為に使わせてしまいました」
「別に構わないわ。ただ、アリスも人間になっていくのだから、私の命令を完璧に行うのもいいけど、時と場合によっては柔軟性を持つように」
「柔軟性ですか?」
「例えばさっきの場合、私はここで待つようにと言ったでしょ?」
「はい。だから言われた場所に寸分狂わずいました」
「そこ、私は寸分狂わず待てとは言ってないわ。この近くで私が気づくところならどこでもいいの。後、人が集まって来たでしょ?」
「そうです。立っているとどんどん集まって来て。・・・怖かったです」
「怖かったなら、逃げればいいじゃない?いったん逃げて、また戻って来る。最終的には私と合流できればいいのだから」
「っは!それが柔軟性というものなのですね!分かりました、マスター!」
「それじゃあ、ちょっと時間をくったけど、理事長室に行きましょう」
アリスに少しお勉強をした私は『ナビゲーション』を頼りに理事長室に向かった。
『マップ』で理事長先生が中にいることを確認すると、「ノックして、もしも~し」とドアを開けるのを我慢してノックだけをした。
「どうぞ」
「「失礼します」」
理事長先生に入室許可を貰うとアリスと二人して挨拶をして入る。
私は言葉だけだったがアリスはキッチリとお辞儀までする。
「それで、何の用ですか?若麻績さん。と・・・ホワイトシルバーさん」
「アリスの編入試験の結果を教えて貰いたいです」
「何故今それを?通知書は送るはずだが?」
「合格ですね。アリスは本人立っての希望により、A組ではなくE組に編入ということを理事長先生にお伝えします」
こちらの要件を伝える。
理事長先生の意志なんか関係ない。
「アリスさんは若麻績さんが用意した暗殺者、かな?」
「いいえ、ただの編入生という扱いでお願いします」
「・・・さっきから要件を突き付けるだけで、それが通るとでも?」
「アリス!」
「分かりました」
アリスは私の思考を読み取って、理事長室から出ていきアタッシュケースを持ってきた。
持ってきたアタッシュケースをアリスは理事長先生に見せるように開けた。
「一億あります。入学金やらなんやらです。アリスは明日から登校させますのでよろしくお願いいたします。要件は以上です」
言うだけ言って部屋を出る。
「ふぅ、疲れた」
「お疲れ様です」
私が溜息を吐くとアリスが労ってくれる。
さぁ、帰って読書をしよう。