本好きと暗殺教室   作:与麻奴良 カクヤ

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193 「47時間目 岡島大河、バレンタインデーの時間」

 この日の彼は期待していた。

 

 誰か一人は自分宛のチョコがあるのでは?と期待して、朝から変な気配を漂わせていた。

 

 故に、ある事実に気が付かなかった。

 

 

「俺宛のチョコが見当たらねえ!絶対にあるはずなのに!!さては、山にでも隠しやがったな!!見とけよ渚!!俺はこのまま0個で終わらさねえ!!!」

 

 

 2月14日の放課後、呼び出しがあるかも!と教室に残っていた彼、岡島大河は悟った。

 

 誰も自分へ呼び出しをしない。

 

 そう悟ると同じく教室に残っていたクラスメート、潮田渚に向かって、絶対にチョコがあるはずだ!と叫んだ後、涙ながらに走った。

 

 

「ちくしょお!!!俺のチョコは何処だあああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 チョコを求めて、裏山を走る岡島。

 

 そんな彼に声がかかる。

 

 

「ふぅ、やっと見つけました。岡島君」

 

「ん!今、女子の声が!!俺のチョコは!?」

 

「後ろです」

 

 

 岡島は今、全力疾走をしている。

 

 そんな彼の後ろを、付いて走れる女子がどれだけいるだろうか?

 

 岡島は止まる。

 

 自分に声を掛けてくれた女子と向き合う為に。

 

 

「あ、アリス・・・さん」

 

「やっと追いつけれました。はい、どうぞ」

 

 

 岡島を呼び止めたのは、最近になって編入して来た外国人。

 

 ということになっている人工生命体、アリス・ホワイトシルバーだった。

 

 彼女が持っているのは、高級チョコメーカーのロゴマークが入った紙袋。

 

 ロゴマーク通りならば、紙袋の中身はチョコレート。

 

 彼女はその紙袋を岡島に差し出した。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」

 

 

 彼は涙した。

 

 先ほどの悲し泣きとは違う、嬉し泣きだ。

 

 バレンタインデー、この日に高級なチョコレートを男性に渡す女性。

 

 彼はこの意味は一つしか考えていなかった。

 

 

(あのアリス・ホワイトシルバーが俺にチョコを渡してくれた!!これは、俺のことが好きだと言う告白で間違いない!!)

 

 

 こんな可愛い子が俺の彼女、そんな脳内お花畑を想像している岡島にアリス・ホワイトシルバーは言った。

 

 

「今日中に渡せれて良かったです。これで全部です」

 

「へ?全部って?」

 

 

 彼女言った言葉に疑問が生じた岡島は、雄叫びも辞めて聞き返す。

 

 

「今日はバレンタインデーですから。日頃の感謝を込めて、クラスの皆さん全員にチョコレートを配っていました。岡島君だけ、何やら気が経っていましたので最後になってしまいましたが、これで皆さんに渡せれて、ほっとしてます」

 

「クラスの皆さん?」

 

「はい?」

 

「俺だけ高級チョコだとか!?」

 

「皆さん平等に同じチョコレートですが・・・?」

 

「あ、あははははh」

 

 

 お花畑終了

 

 

 岡島は朝から、アリスがチョコを配っているのを見ていなかった。

 

 そんな、彼のミスがこの結果を産んだのであった。

 

 

「でも、チョコが一個、貰えたわけだし!!義理でも嬉しいぃぃぃ!!!!」

 

 

 家に持ち帰った岡島はそのチョコを、それはそれは大切に食べたのは別な話し。

 


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