本好きと暗殺教室   作:与麻奴良 カクヤ

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ありがとうございます。
あと少しですが、頑張っていきたいと思います。


196 「49時間目 進路相談の時間」

 本来、進路相談をしなければならない日に、E組だけの卒業アルバムに載せる写真を撮りに外国まで行ってしまった為、その日は進路相談が出来ずしまいに終わってしまった。

 

 そんなこともあってか、次の日に進路相談が行われた。

 

 

 教室の黒板には

 

 『進路相談final~言えた者から帰ってよし!!~』

 

 と書かれてある。

 

 

 殺せんせーが文字を書き、教室を出ると、クラスから一人、一人、また一人と教室を出て行き、進路相談を終えて、帰っていった。

 

 もう、この教室に残っている人数は二人、生徒人数でいえばAIの律を入れて三人。

 

 

「アリスさん、昨日は凄かったですね」

 

「私も初めて見たものばかりでした。知識としては知っていても、見たことのない物ばかりでしたから。・・・マスターと一緒に見たかったです」

 

「マスター・・・!そう言えばアリスさんも私と境遇が似ていないことも無いですね」

 

「確か、律さんも人に作られた存在でしたね?」

 

「はい!そうです」

 

 

 教室に残っていた二人の内の一人、アリスが律と喋っている。

 

 話は昨日の、一日で三十ヵ国を回った話から二人の境遇の話に変わっていった。

 

 

 律は人工知能、アリスはホムンクルス。

 

 科学技術、錬金術(管理者権限)と正反対の分野ではあるが、どちらも人の手で造られた存在同士。

 

 何か通じるものがあるのか、二人は気が合った。

 

 

 ガラガラー

 

 

「「!?」」

 

「ごめん。邪魔したかな?」

 

 

 ドアが開く音が聞こえてアリスと律が音のした方を向くと、アリスの他に進路相談が終わっていないもう一人、渚が謝ってきた。

 

 二人は顔を見合わせると同時に言った。

 

 

「「いいえ」」

 

「良かった。じゃ、僕は先生の所に行くから」

 

「そうですか。では、また明日です。さようなら」

 

「うん、アリスさんも律も、さようなら」

 

「はい!さようなら」

 

 

 アリスと律は渚と挨拶を交わして、閉まるドアを見送った。

 

 渚が去ってから沈黙が続く。

 

 

 律の目から見て、アリスは何か思っている風に見えたが、律はこんな時に何を話せばいいのか分からない。

 

 そう言えば、と不意にアリスが律に話題を振った。

 

 

「律さんはここを卒業したら、どうするつもりですか?」

 

「私はネットで活動しつつ、見聞を広めたり皆さんが困った時に役に立ちたいと思っています」

 

「・・・そう、ですか」

 

「?アリスさんはどうするつもりですか?」

 

 

 聞き返す律にアリスは中々答えれない。

 

 

「・・・私は、生まれてからまだ二か月程しか経っていません。一つの事以外にやりたいことが見つからないのです」

 

 

 重々しく話すアリス。

 

 そんなアリスに律は

 

 

「でしたら、その一つの事を全力でやったらいいのではないでしょうか?」

 

「全力で?」

 

「そうです。私は応援しますよ」

 

「・・・・・・ありがとうございます。私も進路相談に行って来ますね」

 

 

 アリスは律に微笑むと鞄を持って教室から出ていく。

 

 廊下を歩いて向かったアリスは教務員室に着くと、コンコンとドアをノックした。

 

 どうぞ、と殺せんせーが返事をするとアリスは教務員室に入った。

 

 

「失礼します」

 

「さて、ホワイトシルバーさん。貴女は何か、なりたいものを見つけましたか?」

 

「いいえ、先生。なりたいものは見つけれませんでした」

 

「そうですか」

 

 

 将来の目標が決まっていないのはアリスともう一人だけ。

 

 殺せんせーは考える。

 

 どうしたらいいのか?を。

 

 しかしその考えは、アリスが続けた言葉で一つ無駄になる。

 

 

「でも、やりたいことは見つけています」

 

「教えてください」

 

「私は、私という存在を造って下さったマスターに恩返しをしたいです」

 

 

 アリスは真剣な表情で殺せんせーに言った。

 

 殺せんせーの頭はそのためにどうすればいいのか?と考えを張り巡らせる。

 

 

「その為にはまず、若麻績さんを止めなくてはなりませんねぇ」

 

「殺せんせー・・・マスターを助けてくれませんか?もちろん、私も最大限に努力します。お願いします」

 

 

 アリスは殺せんせーに頭を下げて、懇願した。

 

 殺せんせーはアリスの頭を自身の触手で撫でた。

 

 

「大丈夫です。貴女も若麻績さんも私の生徒です。絶対に見捨てません」

 

「ありがとうございます」

 

 

 殺せんせーが見捨てないと言うと、アリスは再びお礼を言った。

 

 

 ここでアリスの進路相談を終え、若麻績風月の話題になる。

 

「それでは、若麻績さんの事ですが、彼女が教室に来なくなってから二回程暗殺を受けました」

 

「っ!」

 

「一度目は超遠方からの狙撃、私の視線が弾にいってる隙に接近戦を仕掛けてきました。何となく思いついたから実行した、と彼女は言っていました」

 

「何処までやられましたか?」

 

「接近戦で一度二度ナイフを振るうと暗殺を辞めました。触手は無傷です」

 

「マスターらしいです」

 

 

 アリスの脳内に、暗殺を辞めた風月が「疲れた」と言ってるシーンが思い浮かぶ。

 

 アリスの表情が変ったのを見て、殺せんせーもニヤニヤしながら話を続ける。

 

 

「二度目の戦闘は面白かったですよ。先生、思わず魔王の格好に着替えてしまいました」

 

「・・・マスター」

 

 

 二度目はお遊びの様な戦闘だったらしい。

 

 創造の武器をふんだんに使ったライトノベル風の戦闘がアリスの頭の中に蘇る。

 

 魔法剣を振るうマスターと触手モンスター殺せんせーの高速戦闘、カオスだ。

 

 

 アリスは頭を左右にブンブンと降ってカオスな戦闘をかき消した。

 

 

「これまでの暗殺間隔を見ると、一週間以内にくるでしょう」

 

「一週間ですか」

 

「ええ、それも二回とも深夜でした」

 

「深夜、マスターが選びそうな時間です」

 

「そうですかっと、長引きました。あまり引き留めても悪いですし、また明日にしましょう」

 

「はい。さようなら、殺せんせー」

 

 

 アリスは再びお辞儀をして、教務員室を出た。

 

 

「烏間先生、お疲れ様です」

 

「あぁ、帰りか。気をつけてな」

 

「はい、また明日」

 

 

 途中で烏間先生にあったので挨拶をして帰る、アリス。

 

 アリスは本校舎の正門を出て、政府に用意された近場のマンションに帰って行った。

 

 

 アリスはいつも通り、夕飯の支度を始めた。

 

 

「っは!!」

 

 

 その時だった、何かが降ってくる!アリスがそう感づいたのは。

 

 急いでベランダに這い出て、空を見上げると空が一瞬、光った。

 

 

「まさか!マスターが!!?」

 

 

 次の瞬間、宇宙からの高速レーザーが椚ヶ丘中学校旧校舎に降りかかった。

 

 


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