本好きと暗殺教室   作:与麻奴良 カクヤ

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祝五十話!!


198 「50時間目 最後の登校の時間」

 レーザーが殺せんせーに放たれた直後、最終暗殺の指令本部では暗殺の結果を確認されていた。

 

「信じられん!!?あれをかわすか?」

「音もなく光速で降ってくるレーザーだぞ!?」

 

 結果は失敗。光の速さを前触れもない状況で避けていた。

 指令本部にいる人は奴の勘の鋭さを呆れて称えていた。

 しかし、本当に勘だけだったのであろうか?そのことを知る者は本人以外いない。

 

 

 

 

 

 時はレーザー発射の数分前まで遡る。

 

 進路相談も一人を残し終わり、烏間先生と少しだけ会話をした後の事だった。

 E組だけの卒業アルバムの作成をしていた殺せんせーは誰一人として気配のなかった教室に突如、人の気配を感じ取った。

 どういう訳か、気配は感じ取ったが殺気は感じられない。

 

 殺せんせーは気配の方向に目を向けて、止まった。

 これがもし、暗殺の為の計画なら殺せんせーの命は既に失われていただろう。

 

 硬直時間は僅かコンマ一秒、直ぐに何事もなかったかのように会話を始める。

 

「今晩、若麻績さん。こんな時間に久しぶりの登校ですか?」

 

 右から4列目、左から3列目の五番目、クラスで一か月程空白だった席。

 その席の持ち主、若麻績風月が座って本を読んでいた。

 

「そうなるわね」

 

 本から目を離さないで風月は答えた。

 その答えに、殺せんせーは涙した。

 

「おぉ!!やっと戻ってくれますか!先生は嬉しいです。でもなぜ今になって戻って来てくれたのですか?」

「最後になると思ったからよ。ところで先生はやり残したことがある?」

 

 しっかりと会話をしながらも、目はしっかりと本に向けられている。

 風月の質問に殺せんせーは答える。

 

「もちろんですとも。まだアルバムも作り終えてませんし、アリスさんとの約束もあります。若麻績さんには」

「今すぐに死にたくないなら、ここから避けた方が良いわ」

 

 風月が殺せんせーの話を遮って警告を発した瞬間、宇宙からのレーザーが校舎を貫いた。

 殺せんせーは咄嗟に窓に向かって全速力で移動して、ガラスを突き破ってレーザー圏外に脱出した。

 

 大切な生徒である風月を置き去りにする程、殺せんせーには余裕なかった。

 殺せんせーは助かった、と分かった途端に風月の存在を思い出す。

 

「わ、若麻績さん!!無事ですか!!?」

 

 口ではそう言いつつも、殺せんせーの体は逃げ場を求めて、動く。

 殺せんせーは逃げろと言う本能に逆らえない。

 心の底で、若麻績さんなら大丈夫だろう、と思ってもいたからだ。

 

 殺せんせーの前にバリアーが現れる。

 殺せんせーがバリアー触れると、触れた部分が溶けてしまう。

 

「よく避けたわ」

「若麻績さん!無事でしたか!?」

 

 殺せんせーの前に風月がテレポートで現れた。

 やはり本を読んでいる状態だ。

 殺せんせーは風月の無事を確認でき、ホッとする。

 

「冷静になれば分かる事よ。あのレーザーは触手だけを溶かす物。私が何もしなくても無事なのは当然のこと」

 

 風月はまるでこの作戦を知っているかのように説明する。

 それもそのはず、風月はこの作戦を知っていた。

 作戦に関わらない人間がどうやって国家機密レベルの情報を手に入れる事が出来たのか?

 それはもちろん、管理者権限を使って誰にも気づかれずに情報を入手しただけである。

 

「ふぅ、そうですか。しかし、若麻績さんは何故、私を助ける様な行動を取ったのですか?」

「こんな作戦で死なれても面白くないからよ」

 

 私が楽しくいたぶる為に助けただけ。

 そんな意味合いを込めて、風月は返した。

 

 その時、風月の手には本を持っていなかった。

 代わりにラノベで見かける創造上の剣が一振り、手に持っていた。

 

 服装もいつも間に変わっている。

 制服だった物が愛用のヒーリングコートに変わっていた。

 

「そろそろ殺さないといけない時間かしら?」

「どういう事ですか?」

 

 風月は自分の知ってる作戦情報を殺せんせーに話した。

 一週間後にはバリアー全体を覆いつくすレーザーが放たれる計画である事を。

 今回の暗殺で殺せんせーの存在を世間に発表する事を。

 クラス全員は監禁される予定である事を。

 

 一つ一つ丁寧に、警備の配置に至るまで管理者権限で得た計画を全てを風月は話した。

 殺せんせーは聞き終えると

 

「万事休すですねぇ。ならば、今出来る事をやりましょう」

「何を?」

「生憎ですが、私はマッハ二十です。やれることなど幾らでもります」

 

 殺せんせーはそう言うと、教室の中に入っていった。

 風月もゆっくりと後を追った。

 

 

 

 

 

「何それ?」

 

 教室に戻った殺せんせーのしている事を見た風月は一言、あっけとした表情で言った。

 殺せんせーは何本もの触手を使いこなして、アルバム作成をしていた。

 

「命の危機的な状況に陥って、やるべき事というのが下らないアルバム作り!?」

「えぇそうですとも。もちろん、もう一つありますよ」

「何?このバリアを壊す打算であるの?」

 

 殺せんせーに剣を向けて問う風月に、殺せんせーは触手を止め、風月の目を見て言った。

 

「いいえ、若麻績さん。貴女の進路相談です」

 

 殺せんせーの答えを聞いた風月は剣を鞘に戻して、笑った。

 

「っふ、うふふ!!あははははは!!進路相談!?必要ないでしょ?勉強も運動も出来ない私に進路なんて無いわよ!!私は管理者権限の力で誰にも邪魔されずに生きていく。それで十分じゃない!!どうせ私なんか、生きていても何もできずに死んでいくだけの存在だったのだから!!!力を得た今、本を読んで暮らすだけじゃいけないの!!??」

 

 自分のどうしょうもない持論を荒々と叫んだ風月は、はぁはぁと息を上げる。

 風月の本音を聞いた殺せんせーは静かに言った。

 

「先生は教えたはずです、第二の刃を持てと。若麻績さんの管理者権限と言う不思議な力は立派な第一の刃です。今のクラスで言う、暗殺に当たります。ならば、その力が無くなった時の事を考えましょう。第二の刃を携えるのです」

 

 殺せんせーが言う、管理者権限に頼るな、と。

 その言葉は風月の怒りを沸き上がらせる。

 

「第二の刃を持て、違う力も持て。出来る奴らはいつもそう言う。それが出来ないから一つの事、読書だけに目を向けているでしょう!!読書以外、何もいらないのよ!!」

 

 感情に任せた言葉を言い切ったと同時に、風月は納めたばかりの剣を鞘から抜き床を蹴った。

 

「今なら誰にも邪魔されないわ!!これで最後よ、先生!!」

「若麻績さん。貴女を止めます!!」

 

 卒業まで後一週間、風月による最終暗殺が始まった。

 

 


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