東方之短編集也   作:kokohm

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 運命を見通せる、レミリア・スカーレットのお話です



紅い吸血鬼は、運命を選ぶ

 ……これは、運命の一つ。

 

 

「――ねえ、霊夢」

「何よ、レミリア」

「たまには、ウチに来てみない」

「そうね、たまにはいいかしら」

 

 

「――ねえ、霊夢」

「何よ、レミリア」

「貴女をパーティーに招待したいわ」

「そうね、まあいいかもね」

 

 

「――ねえ、霊夢」

「何よ、レミリア」

「楽しいわね、貴女との戦いは」

「そうね、悪くないわ」

 

 

 

 

 

「――ありがとう、霊夢」

 

 

 

 その言葉に、返事はない。

 

 寿命で、彼女はとうに逝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ねえ、美鈴」

「何ですか、お嬢様」

「今日は、霊夢達が訪ねてくるわ」

「分かりました、お通ししますね」

 

 

「――ねえ、美鈴」

「何ですか、お嬢様」

「どうも、妙な陰があるわ」

「分かりました、警戒を強めておきます」

 

 

「――ねえ、美鈴」

「何ですか、お嬢様」

「今日来る客には、それなりに本気を出しなさい」

「分かりました、職務を全うさせてもらいます」

 

 

 

 

 

「――ありがとう、美鈴」

 

 

 

 もう、それに返事はない。

 

 あの子の為に、身を挺して止めたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ねえ、魔理沙」

「何だ、レミリア」

「パーティーに招待してあげるわ」

「そうだな、暇だし参加していくよ」

 

 

「――ねえ、魔理沙」

「何だ、レミリア」

「パチェを外に連れ出してくれるかしら」

「そうだな、アイツもたまには外に出ないとな」

 

 

「――ねえ、魔理沙」

「何だ、レミリア」

「フランと遊んでくれているようね」

「そうだな、私も楽しいし」

 

 

 

 

 

「――ありがとう、魔理沙」

 

 

 

 もう、それに返事はない。

 

 実験に失敗したようで、静かに事切れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ねえ、パチェ」

「何かしら、レミィ」

「本を借りていってもいいかしら」

「ええ、好きになさい」

 

 

「――ねえ、パチェ」

「何かしら、レミィ」

「明日の宴会、一緒に行きましょう」

「ええ、付き合ってあげるわ」

 

「――ねえ、パチェ」

「何かしら、レミィ」

「ゆっくりと、お話でもしましょう」

「ええ、それもいいわね」

 

 

 

 

 

「――ありがとう、パチェ」

 

 

 

 その言葉に、返事はない。

 

 少し前に身体を壊して、そのまま息を引き取った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ねえ、小悪魔」

「お呼びですか、お嬢様」

「パチェを呼んできてもらえるかしら」

「はい、少々待っていてください」

 

 

「――ねえ、小悪魔」

「お呼びですか、お嬢様」

「フランを見なかったかしら」

「はい、先程お部屋に戻られていたようでした」

 

 

「――ねえ、小悪魔」

「お呼びですか、お嬢様」

「咲夜が居ないから、代わりに紅茶を入れてくれない」

「はい、頑張って入れてきますね」

 

 

 

 

 

「――ありがとう、小悪魔」

 

 

 

 もう、それに返事はない。

 

 主の死を見届けた後、いつの間にか姿を消していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ねえ、フラン」

「なーに、お姉さま」

「少しだけ、部屋で待っていてくれるかしら」

「うん、分かった」

 

 

「――ねえ、フラン」

「なーに、お姉さま」

「霊夢たちの相手をしてもらえるかしら」

「うん、じゃあ遊んでくるねー」

 

 

「――ねえ、フラン」

「なーに、お姉さま」

「私も、ついて行っていいかしら」

「うん、一緒に遊びに行こう」

 

 

 

 

 

「――ありがとう、フラン」

 

 

 

 もう、それに返事はない。

 

 遊び相手が死んだ後、狂って暴れてついには壊れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ねえ、咲夜」

「何でしょうか、お嬢様」

「明日は魚が食べたいわ」

「かしこまりました、腕によりを振るいましょう」

 

 

「――ねえ、咲夜」

「何でしょうか、お嬢様」

「三日後に宴会を開くわ」

「かしこまりました、準備を進めておきます」

 

 

「――ねえ、咲夜」

「何でしょうか、お嬢様」

「紅茶が飲みたいわ」

「かしこまりました、すぐにご用意します」

 

 

 

 

 

「――ありがとう、咲夜」

 

 

 

 もう、それに返事はない。

 

 つい昨日、目覚めぬ眠りにゆるりと落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 友も、家族も、従者も。皆、皆、いなくなった。

 

 

 

 

 

「――こんなにも月が紅いから……」

 

 

 

 

 

 ――私はもう、ひとりぼっち。

 

 

 

 

 廃れた紅い屋敷の奥の、煤けた紅い玉座に腰掛け、彼女はゆっくり目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――お嬢様?」

 

 

 

 その言葉に、ゆっくりと目を開ける。

 

 

 

「……咲夜」

 

 

 

 

 

 気付けば、楽しげな声が辺りに響いている。

 

 

 

 

 

「ほらほら、あんたも飲む飲む!」

「あ、えっと、はい。じゃあ頂きます」

「魔理沙、そろそろ本を返しなさい」

「はっはっは、宴会の場でそんな無粋なことを言うなよ。大丈夫、死んだら返すって」

「死ぬと返しに来られないと思うのですが……」

「ねーねー、そんなことよりフランと一緒に遊ぼうよー」

 

 

 

 

 

 いつもと変わらぬその光景に、彼女はにこりと笑って答える。

 

 

 

 

 

「何でもないわ。ただ、運命を見ていただけよ」

「運命、ですか」

「ええ。……一つの、選択の末よ。――ワインを」

「こちらに」

 

 

 

 

「――ありがとう、咲夜」

 

 

 

 

 咲夜から受け取った真っ赤なワインを、レミリア・スカーレットはとても美味しそうに飲み干す。

 

 

 

 

「――もったいないお言葉です」

 

 

 

 

 そんなメイドの返答に、紅い吸血鬼は満足げに笑った。

 

 

 

 




 今回から新しく書いたお話です。最初はサッドエンドで終わるはずだったのに、何故か目を開けた後からの分を追加していた。ま、それもまたよし。
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