A-RISE "記憶の物語"   作:反時計回り

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合格者の願い

 

 

オーディションの結果、今回のA-RISEのメンバーは『統堂英玲奈』『優木あんじゅ』そして『綺羅ツバサ』の三人になったようだ。

 

「おめでとう、やっぱり合格したね」

 

放課後、少し冷たい風が頬を撫でる屋上で俺は綺羅さんと話していた。綺羅さんが合格することを、確信していた俺は全く心配していなかったが当の本人はそうでもなかったようだ。

 

「ありがとう、本当によかったわ。でも、とても緊張したわ。んー、疲れたー」

 

本当に緊張していたようだ。顔がこわばっている。オーディション担当の先生があの人なのだから仕方がない。今年も何人か泣かされたようだ。

 

「お疲れみたいだね」

 

疲れたーと言いながら伸びをする綺羅さんは少し子供っぽい。オーディションで疲れがたまっていたからだろうか、前より素が出ているように感じる。

 

「それはそうと、私合格したわよ?」

 

夕日をぼんやり眺めていた俺に綺羅さんはそう言った。俺にマネージャーになれる準備はできているか、と聞いているのだろう。もちろん俺はアイドルのマネージャーなんてやったことはない。知識も皆無だ。それでも、綺羅さんは俺を誘ってくれた。もともと何か部活には入ろうと思っていた。たがら、断る理由はない。家に帰るのは出来る限り遅くしたいし。

 

「ああ、できてるよ。でも、あと二人にも許可はとらないとダメだよね?」

 

メンバーが全員同意しないのならマネージャーをつけることはできない。それがこの学校のルールだ。

 

「ええ、もうとってあるわ」

 

先ほどオーディションを終えたばかりなのにもう許可を取ったのか。行動が早いのがこの子の長所なんだろう。統堂さんと優木さん驚いただろうな、と思いながら答える。

 

「わかった。なるよ、マネージャー。……これからよろしくね、綺羅さん」

 

そう言うと、綺羅さんはニヤリと微笑んでからこういった。何かを企んでいる顔というのはこのことを言うのだろう。

 

「これからマネージャーなんだから綺羅さんは少し他人行儀すぎると思うの」

 

「……わかったよ。……綺羅。これでいいかい?」

 

女子を呼び捨てにするのは初めてだ。今後呼び捨てにしないとダメと思うと変に緊張するが、マネージャーとしてアイドルの頼みは聞かないとダメだろう。そう覚悟を決めていると綺羅の不機嫌そうな顔が目に映った。

 

「……ツバサ」

 

「……ん?」

 

「ツバサとよんで」

 

……名前を呼び捨てか、少しハードルが高すぎるような気もするけど、先ほど覚悟を決めたばかりだ。呼ばないわけにはいかないだろう。

 

「…………………ツバサ」

 

覚悟は決めていてもやはり恥ずかしいものは恥ずかしい。名前を呼ぶのに時間がかかってしまったのも仕方ないだろう。女子を呼び捨てにするのは妹以外で初めてなのだ。

 

「ん、それでよし!これからよろしくね、優斗くん」

 

そう言ってツバサは嬉しそうに笑った。そんな顔を向けてもらえるほど何かしたかなあ、そう思いつつも嬉しく感じてしまう自分の単純さに呆れながら、ツバサと一緒にしばらく夕日を眺めていた。

 

 

その後、ツバサと今後について話し、後のメンバーは明日紹介してくれることになった。随分長いこと話し込んでいたようで、帰路に着く頃にはもう完全に日が沈んでいた。そのことで担任に怒られたのは仕方ないだろう。だけど、入学して間もないのに既に問題児扱いを受けているのは納得できない。卒業に対する不安が俺の中で高まっていくのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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