はい、かなり、と言うかとんでもないくらい遅くなってからの次話です(汗)
その割には短い上に駄文ですが、区切りが微妙な感じになりそうだったので、と言う事で勘弁していただければ……(汗)
とりあえず、始まります(汗)
二月下旬―――日本のある男子学生、織斑一夏が
連日テレビや新聞、ラジオ、ネット等の各報道媒体で大きく取り上げられている彼だが、過去の第一回
そもそも、約十一年前に宇宙開発用のパワード・スーツとしてISが発表されて以降、その存在は今でこそ軍事兵器及びスポーツ競技として広まっているものの心臓部である肝心のコアがブラックボックスである所為か女性にしか動かせない事を含め、その全容は未だに明らかになっていない。そこへ織斑一夏が登場したことにより、男にでも動かせる可能性が出て来たとなるとその存在の重要性から彼を求める者が出てくるのも当然だ。
国内だけでも、実戦配備機である第二世代機『打鉄』の製造元且つ次期国家代表の有力候補に『更識家』次女を候補生として抱える倉持技研。
次点で倉持技研と第二世代機の開発競争には負けたものの、堅牢な装甲と砲戦能力を売りとする少数生産された名機、『鎧輝』を世に送り出した雷電重工。
そして現在、第三世代機の開発においてその二社よりも先を行き近々新型の発表を控え、且つデュノア社現社長の妹が所長を務めているとして注目を浴びている日ノ出研究所といった三社が織斑一夏争奪戦を繰り広げている。
……他人事とはいえ厄介な事に巻き込まれて大変だなと、顔も見た事の無い同年代の男子に憐れみを覚えずにはいられない。
そんな企業三社が織斑一夏の獲得競争に乗り出してから五日目の頃。デュノア社現社長の高天原那美の息子にして、日ノ出研究所所長の甥という面倒な事この上ない立場である俺―――『高天原凪』は現在、そんな事を考えながら訪れるのが半年ぶりとなるデュノア社の応接室のソファーに座っていた。
「しかしまあ、組織のトップ同士が姉妹だからとはいえ他国の企業に、国内コアの管理元である
此処に居ないのを良い事に身内の馬鹿二人に対し、呆れ混じりの悪態をつきながら懐から携帯端末を取り出し、此処に通されてからの時間を確認する。
「……待たされて一時間半ちょいか。流石にこれ以上待つのも面倒だが……さて」
鞄を手に取り立ち上り、扉へ向かう。
ここに通された時には四十分ほど待ってくれと秘書に言われたが、流石にこれ以上待てれる程俺は気が長い方ではない。このまま待たされるぐらいならこっちから出向いてくれる。
扉を開けすぐ横に控えていた警備の黒服が此方に向くのに対し、これ以上待つのも限界なので社長室に直接出向くと伝えてから、半年ぶりに歩く社長室までの道程を思い出しながら通路を進んでいく。
社長室というと、大抵は最上階にあったり、矢鱈豪勢な造りの家具や置物があったりというのが思いつく。実際、前デュノア社長が利用していたのは最上階にあり、且つ無駄に高価な調度品などが飾られていたそうな。
(……それに比べて、この中小企業の如く地味というか、シンプル過ぎな部屋というか……)
デスク周りは書類の山にこそ目を瞑れば割と良いモノを揃えてはいるが、それ以外の家具もシンプルなデザインの応接用テーブルとソファくらいしか見当たらず、壁に至っては無機質な白一色で壁紙どころか何の飾りすら施されていない。
一企業のトップになろうと身の回りの物は最低限に済ませている辺り、いかにもお袋らしいというか、なんというか……。
半年ぶりに端末越しではなく直接顔を合わせに来たのに、その相変わらずさに呆れ混じりの嘆息一つ。
「せめてもう少し、社長としての体面とか気にした方が良いんじゃないのか……?」
と、俺は絶賛書類の山と格闘中の部屋の
凄まじい勢いで処理され、仕分けされていく書類の山の量も残り僅かに差し掛かっていた。一体どれだけの数を熟せばあんなに速く処理出来るようになるのだろうか、書類仕事は苦手だとよく以前から零していたが一体どこが苦手なのか理解に苦しむ。
「ちゃんとその時はその時で対応しているから良いのよ……っと、これで最後!」
言い終わると同時に最後の一枚に印を押し終えると、堆く積まれている書類の山の頂に置き満足げな溜息を吐いてそのまま机に突っ伏した。
「あー、これで一生分の書類仕事を終えた気分だわぁ……」
「一体何をどうすればここまで貯まるのやら……大方また開発部か?」
お袋の所為で変な方向に振り切ってしまった元善良な開発部の方々の顔を思い浮かべる。妙に元気溌剌な笑顔と奇行一歩手前のヤル気に満ち溢れているデュノア
「プラス、来月の下旬予定の欧州合同コンペの開催が上旬に早まったからその為の調整」
「まぁたやけに急だな。間に合うのか?」
「今の書類で粗方の手続きは。あとはまあ機材や機体の運び出しの手配くらいね。……と、仕事の話はこの位にしておくとして、」
ばっ、といきなり立ち上がると両手を広げ満面の笑みを浮かべ、
「さあカモン、半年ぶりの再会のハグ! 息子成分補給タイム!」
「……いい歳して恥ずかしくねぇのか、というかもうそんな年齢でも無いから」
「そっちはそうでもこっちは寂しいモノなのよ! 毎度定期報告で
知らんがな。てか溜まっているって何だ、溜まっているって。
というかクネクネするな、鼻息を荒くするな、鼻血を出すな身内とはいえ気色悪いぞオイ。てかなんだ、うらやまけしからんて。そんな事された覚えもないしされたくもない。
かの天才、もとい『天災』も相当の奇人と聞くが、優れた技術者と言うのは皆頭のネジが数本抜けた変人なのだろうか。
「で、そろそろ本題に入りたいんだが。そろそろ
「あぁん、もういけずぅ!」
もう帰っていい? 真面目な会話出来ないんだが。
そんな表情を隠しもせずに露わにすると流石に調子に乗り過ぎたと気付いたのか、お袋は咳払いを一つする。
「まあこれ以上貴方の機嫌損ねるのも嫌だし、さっさと用件済ませちゃいましょうか。―――それに、ちょーーっと見て欲しいモノもあるし」
場所、移しましょうか。
そういうとお袋は目を細めながら、薄く笑った。
■■■■
海岸沿いにあるデュノア社より2kmほど離れた山林の中。
地元の者でもめったに使わない、寂れた未舗装の道路に一台の大きな灰色のトレーラーが停まっており、その傍らに数名の女性達が立っていた。
皆二十を超えるか超えないかぐらいの容姿をしていて、其々の性格が反映された服装だったが、何処か冷たい緊張感が漂っている。
木々の間から見えるデュノア社のヘリポートに大型の輸送ヘリが降下していくのを、その若者達は無言で眺めていた。輸送ヘリが建造物の影に入って見えなくなったところで、
「護衛も無しとは、随分と危機感が無いようだな。これなら今日の仕事は楽が出来そうだ」
トレーラーの屋根の上に立ち双眼鏡でそれを眺めていたコート姿の少女が、下の路上に突っ立っている長身の女に視線を投げ掛ける。
「……だと良いんだがな」
渋い顔をして女は答えた。その場にいた面々と同様に若い容貌だが多少年上の様に見える。気の強さを窺わせる切れ長の目に、腰まで届く茶色の長髪。スレンダーな長身に型の良い胸を持つ彼女は、眉を寄せたままインカムを軽く指で叩きながら言葉を続けた。
「こちらオータム、輸送機が到着したのを確認した。予定通り十五分後に作戦を開始する。得意の潜入とはいえしくじるなよ、N」
『――――こちらN、了解した。そちらも外部からの支援、よろしく頼む』
通信相手のNと呼んだ男からの要請に軽く応え通信を終えると、オータムと呼ばれた女はトレーラーの屋根に立っていた少女に呼びかける。
「聞いてた通りだ、M。プランBの場合も考えてお前はここで待機―――場合によってはここから狙撃での援護を頼むが、初乗りだからって調子に乗るなよ?」
「新しい玩具を貰って燥ぐガキじゃないんだ、心配せずとも与えられた仕事ぐらいはこなせる」
「本当かねぇ……」と疑わしげに呟きながら他のメンバーに指示を出し始めるオータムを尻目にMと呼ばれた少女は飛び降り、トレーラーの後ろに回って両開きの扉を開けた。中には紺色に塗装された蝶を連想させる一対の推進ユニットを持つ
(よくもまあ
が、どうでもいいそんなことは。
何時、どうやって強奪したかなど気にはなるところではあるが、それは今と何の関係もない。ただ重要なのはこの機体が、自身が求めるモノを持っているか否かだ。
着ていたコートを脱ぎ捨てると、ハイレグ水着のようなISスーツを纏った姿が露わになる。
「―――これが初陣となるか分からんが、壇上に上がる時が来たぞゼフィルス……」
誰にも聞こえない程の聲で彼女が呟くと、ゼフィルスと呼ばれた機体の各部センサーが淡く瞬いた。
次話は、出来れば早めに出したいと考えております(汗)