はいふり「狸耳カチューシャは偉大!」   作:多聞猫

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敵武装船との戦闘後、教官艦「沖島」艦長の阿野岡俊作は仮眠を取るために仮眠室へ入った。

仮眠室は個室タイプでそれぞれドアのキーが違うため、進入することが不可能。


「沖島艦長、生死不明。捜索不可能」

阿野岡は夢を見た。忘れもしないあの裁判。

 

当時、彼は巡洋級の学生艦「神通」の副長を務めていたがある事件により乗組員が変死する事態が起こった。というのも彼以外の乗組員は死体が見つかっていなかった。

当然ながら、乗組員の両親は副長だった彼を疑った。そうして起こった裁判の様子であった。

 

横須賀高等裁判所。某日未明にて開廷。

傍聴席には乗組員の両親がほとんどであった。裁判官は彼に自分が本人か確認してきた。

「はい 東郷俊作本人です。学生艦「神通」の副長でした。」

 

そして、罪状の確認に至る。

「貴殿。東郷俊作は神通に座乗していたが武装集団と遭遇し、適切な指示を与えず。あまつさえ、艦長以下艦橋のメンバーを見殺しにし主計科及び機関科の生徒を皆殺しにしたことは相違ありませんね?」

「・・・はい。相違ありません。」

 

東郷俊作。それが阿野岡の本名だ・・・阿野岡姓は実父の弟の婿入り先で東郷家の分家となっていた。彼の父は海上安全整備局の長官で元はホワイトドルフィンの監督官だった人物である。その名の通り、かの日露戦争で大活躍した東郷平八郎の本家筋に当たる。

検察官が冒頭陳述を東郷俊作に行ってもらうことにした。

なぜなら、彼はまだ全部の内容を話しきっていないため情報が無いからである。

 

「あれは呉海洋学校の入学式の後。演習先に向かう時でした。紀伊水道を通っていた神通はその前日は顔合わせを行い、この先の冒険心で満ち溢れていました。 その後、紀伊水道を抜けようかというところで突然、目の前が濃い霧で視界がシャットアウトされました。そのとき、見張り所に私はいました。 霧が薄れてきたかと思うと目の前に座礁した大型の民間船が確認できました。私は艦橋に報告してすぐに救助に向かうという報告がありました。ですが、また霧で目の前が・・・」

「すみません・・・本題のほうをお願いします。」

「分かりました。霧が薄れるとまた目の前の様子が変わっていて、後方にはブルーマーメイド艦が1隻でそれを囲むように武装船団がいました。神通は機関が予期せぬトラブルにより完全に停止して、回避不能となりました。

そして、起こったのです・・・集中砲火が。甲板に次々に着弾して航海科の女子生徒が倒れていくのを見ることしか出来ませんでした。」

「ふむ・・・すみません。本題というのはあなたの指示した場面でお願いできませんか? 辛いのは分かりますが残されたご両親方も辛いのです。」

 

東郷俊作は目が死んでいた。それはそうだ・・・地獄を見てきたから。

艦橋への砲撃は即座に報告したが返答がまったく無く直後の着弾で艦橋は原型を留めないほどに破壊しつくされたのだから。

「はい 艦橋を砲撃され艦長が戦死されたので私が代わりに指揮を執ったころには砲雷科が2名しか残っておらず。主計科や機関科の一部は負傷した生徒の治療に当たらせたものの思わしくないということで後方のブルーマーメイドに移送することにしました。方法としてはスキッパーを使っての移動です。動けるものには泳いで渡るように指示しました。私は砲雷科の生徒と一緒に反撃を機銃で開始しました。主計科たちの支援に回りました。これにより多少の時間稼ぎができました。しかし、機銃での攻撃も限度があり敵の砲撃により砲雷科の生徒が1名吹き飛ばされ、残っていた1名も私をかばって亡くなりました。また、後方に移動していた主計科たちも敵の砲撃に遭いブルーマーメイド艦にたどり着くことなく全員死に絶えていました。」

「成程・・・独断の命令にしては慎重ですが、その作戦に問題なかったと確実に言えますか?」

「あの状況ではあれが最終手段でした。その後、また霧が出てきて気が付くとどこかの海上にいて・・・艦橋に、仲間が生きているか見に行きました。残念ながら艦橋の生徒たちも息絶えていました。艦長の遺体も見つかりませんでした」

 

 

傍聴席から一際大きい怒鳴り声で「人殺し」「悪魔」「死神」などと批判する保護者たち。だが・・・一人だけ黙ってその言葉を受け入れている親がいた。

そう、相模健太の父で相模善治という現役のホワイトドルフィンの船「せんだい」の艦長だ。相模善治はただただ息子の友人の言葉をくみ取っていく。彼は証人尋問に参加するようだ。

裁判長は騒がないように注意しつつ、弁護側は証人陳述に相模善治を呼んだ。

相模は証人台に立つとまだ批判の声をあげている親たちへの注意も込めて大声で。

「彼は人殺しなどと言われるべき人間ではありません。彼は私の息子がまだ未熟児の幼児の頃から一緒でした。彼と一緒に切磋琢磨することでどんどん成長していってくれた。今の息子があったのもすべて俊作くんのおかげです。俊作くんは最善の指示を行ったと思われます!」

 

 

 

 

 

寝ている阿野岡は突然の大声での報告で目を覚ました。

「艦長。艦長、報告します! 前方に漂流船を発見。直ちに艦橋へ来てください。」

 

阿野岡は仮眠室を足早に飛び出すと艦橋に走った。

艦橋には副長以下乗組員がいて、艦長を待っていた。

「すまない 遅れたな。で、漂流船からの応答は?」

「ありません。どうやら、損傷しているらしく雑音しか聞こえません。黒煙も吹き出していると思われます。」

「接舷してくれ。生存者を探すんだ・・・どこの船だろうか」

 

 

前方に見えている船はつい今しがたまで戦闘でもしていたかのような状態で海に浮かんでいた。どことなく見たことがあるような船だと感じた。いや、間違いであってほしかった。

「霧が立ち込めているようで近づきにくく、接触の恐れがあります。」

「わかった。スキッパーにより乗船する。準備してくれ」

「「了解」」

 

 

「沖島」は他の人に任せて、副長と艦長以下数名で漂流船の捜索を行うことになった。

スキッパーにより船にロープを投げ、手すりに括り付けると艦長たちは捜索に入ったが・・・その凄惨な状態に目を覆うばかりだ。なぜなら、甲板上には人の死体が五体不満足で転がっていたからだ。胸のあたりに穴が空いている生徒、腕や足が亡くなっていたり顔の判別が不可能なくらい焼けているものもあった。

死体は女子生徒だらけで男子も一名乗艦していたようで、腕がなくなっている状態だった。・・・健太、お前なのか・・・俺が「死神」のせいで・・・。

 

艦長は艦員たちに捜索するよう指示すると自分は・・・手すりにもたれかかっていた。

そう、その油断があったせいだった誰に刺されたかも分からないほど静かだった。

腹部に温かい血の感じがした。複数回刺され、そのまま海に落とされた。

水音がして艦員たちが探し回るが艦長を見つけることはできなかった。

 

<教官艦「沖島」 艦長 阿野岡俊作 漂流船から転落。生死不明>

 

 

「沖島」は艦長生死不明と学校へ連絡を入れた。校長の宗谷真雪はまさか、といった感じで驚きの表情をした。この事はすぐさま、娘の真霜、真冬にメールを送信して伝えた。

 

弁天 艦内。

真冬はこっそりと艦橋から抜け出し、母真雪からのメールを確認した。

子供のころ兄貴と慕っていた人物の突然の訃報は真冬にもショックを与えた。生死不明・・・死んでないかもしれないと淡い気持ちを抱きながら壁を殴りつけながら、泣いた。だが、すぐにハッとした・・・沖島からの定時報告がなかったぞ。なぜ・・・先に学校へ報告したんだ。沖島で何かが起こっていると考えた。

 

 

情報調査隊 真冬監督官室

 

真霜は少し仮眠をとっていたので、メールを確認するのに少し時間があった。短い睡眠だったが懐かしい夢を見ていた。それは妹のましろが母に帽子を被せてもらったものの風に飛ばされ、無くしてしまったことだ。あれは忘れもしない・・・真霜がまだ横須賀女子の入学式前のことだ。前述のようにましろが帽子を無くして母に大泣きしていたのは鮮明に覚えている・・・そして、初めて彼に会ったのもその日だった。

 

 

真霜は目覚めて、すぐにメールが来ていることに気がついた。内容は、阿野岡俊作が漂流船(おそらく、神通と思われる。)から転落して生死が分からないとの事だった。真霜は真冬と違い、悲しそうにしたものの泣くことはなかったがすぐさま、部下の平賀に捜索隊の手配を要請した。しかし、平賀は現在・・・晴風の確保のためオーシャンモール四国沖店近くに居るため少なくともすぐに動けないと返答してきた。

「彼は・・・多分、そんな簡単に死なないはず。どうにかしないと・・・」

 

そんなことを考えていたものの、今日は古庄先輩に話を聞きにいく予定だったためそちらをまず優先することにした。

 

 

 

 

「沖島」 艦内。

艦長の行方が分からなくなったので、艦長の権限を副長に移行することになった。

副長は「まず学校に報告してください。学校以外に報告しなくてかまいません」という指示を出してきた。だが、乗員たちは真冬の後輩であり部下なので上司である真冬に定時報告の任務があった。仕方なく・・・携帯端末で報告しようと乗組員の一人はそっと艦橋から抜け出そうとしたが、副長に見つかってしまった。

「ふ、副長!? 何か?」

「その端末は何をするために持ってるのかしら?」

「え、いえ・・・トイレに・・・」

「そう・・・でも、用心には越したことはないから」

 

副長の霧ヶ峰葵はそう告げると目の前の女性乗組員を血まみれのナイフで刺した。

女性乗組員は刺されたショックで端末を取り落とした。

端末は副長によって粉々にされた・・・女性乗組員は出血していたが、副長が手際よく処置して他の乗組員にこれ見よがしに女性乗組員の首にナイフを突きつけながら

「あなたたちもこの端末を持ってるなら今すぐに寄越しなさい!この女のようになりたくなかったら。」

 

 

他の女性乗組員たち(現役ブルーマーメイドたち)は端末を差し出した。副長は壊せと命じ、乗組員たちは端末を処分した。しかし、副長はまだ人質にナイフを突きつけながら叫んだ。

「これより我が艦は晴風を攻撃します。指示に従わない娘は艦長のように始末しますので、注意してくださいね♪」

 

こうして、「沖島」は学校への報告後。正式に副長の独断で反乱したのだった。

 

 

 

 

その頃・・・無数にナイフで刺された艦長は海底に沈みかけていた。

「もう、俺は駄目だ。すみません・・・真雪さん。恩を返すことが出来なくなりました。・・・皆、今い・・・く」

 

そのまま意識は遠のいていくのだった。しかし、耳元に何事か囁く者がいた。

聞いたことがある声だ・・・確か、幼馴染の健太の声だ

「お前はまだ、やることが残ってる。まだこっちに来るのは早い。生きろ生きろ生きてくれ・・・俺たちに代わって海の治安を・・・俺たちみたいな学生がまた出ないように助けてやってくれ・・・頼むぞ。俊作」

「副長・・・今は艦長だっけ?ごめんなさい・・・なぜ私が謝るのかは今は言えないの。とにかくごめんなさい。とにかくあなたには生きてほしい。私たちのためにも生きて・・・真面目で勇敢なところはたった1日半の生活だったけど楽しかったよ♪」

 

健太の次に聞こえたのは・・・霧峰艦長か。そうか、俺はもう天国か地獄へ・・・。

そう思った阿野岡は気を失うのだった。

 

 

 

航洋艦「晴風」は伊201との交戦後。ウィルヘルミーナが自己紹介をしているとき。

海域から脱出してしばらくして・・・見張りの野町は何かが浮かんでいるように見えた。よくよく確認すると人のようなモノが見えた。

「艦長 漂流者と見られるモノ発見。直ちに救助を要請します」

「ええ?ホントに?分かった・・・私と、」

「よし ワシが行こう!ほれ行くぞ!」

 

 

スキッパーで漂流者に近づいたミーナと岬明乃は夜明けの日の光で漂流者の顔を確認できた。ミーナはその漂流者にキスするスレスレまで近づいて、覗き込んでいた。

「フム この男。どこかで見たことあるんだが・・・どこじゃったかの」

「? ウチの学校の教員かな。でも、入学式にいなかったような・・・」

 

岬明乃は疑問に思いながらもミーナと協力して、スキッパーに乗せると晴風に戻っていった。すぐさま、医療室に運んで鏑木美波は寝不足ながら治療させられることになった。ましろは艦橋に居たため、男の顔を確認することはなかった。

 

 

 

 

 

                   続く。

         (※真霜の夢の内容についてはこの下に書く予定。)

 

 

 

 




少し長文が長くなりそうですw

残酷な内容を書いていくかもしれませんがよーそろーw


東郷俊作・・・神通から雪風に移動する際。阿野岡に姓を変更した。東郷という名にプレッシャーを感じて、父の弟で叔父の阿野岡誠二氏に頼み。姓を使わせてもらっている。宗谷真雪には借りがあるようで、返そうと奮闘している。
なお、母親は万里小路彩。万里小路楓の叔母にあたり、俊作の従妹にあたる。
従妹・楓とのお見合いもあったが俊作が出席せず、ご破算になっている。










宗谷真霜の夢の内容。超短編。

これは9年前のこと、家族で諏訪大神社を訪ねて衣笠山公園に行ったときだ。その際、ましろはお母さんに帽子を被せてもらっていた。だけど、ましろの運の悪さは風にも嫌われたようで帽子を飛ばされてしまった。ましろは散々、探し回ったものの見つからず最後は帰宅することになった。
泣き疲れたのか、ましろはソファでお気に入りのぬいぐるみを抱きしめながら眠っていた。私はお母さんと一緒に夕飯を作っていたときだ。

インターホンが鳴ったので、お母さんに出てと頼まれたので玄関に向かい鍵を開けて扉をあけると目の前には呉海洋学校の制服を着た男性が立っていた。
左右には艦章と所属が記されたワッペンを付けていた。どこの船の所属は分からなかったけど、航海科の男子高校生ということが分かった。

何か手に持っていた、ましろが無くしたお母さんのブルーマーメイドの帽子だった。
「えっと・・・宗谷さんのお宅で間違いありませんか?」
「はい、そうですけど・・・?」
「良かった。こちらの帽子を届けに来ました。真雪さんに渡しておいてもらえますか?」

さっさと帽子を渡すと男はそそくさと去っていった。
真霜は会釈してお礼を言った後、帽子を受け取り母・真雪の元へ。

あの男性はもしかして・・・。 「完」
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