ヤンこれ、まとめました   作:なかむ~

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今回の話は仕事中に即興で思いついたのを書いてみました。
内容的にどこかグダグダな部分があるかもですが、見てもらえればありがたいです。





因果はねじれ狂って

 

快晴の空の元、そこでは二人の男性が話し合っていた。

一人は凛とした顔つきの青年で、もう一人はどこか初々しさが感じられる新米の提督。

青年はある鎮守府の元提督で、自分の後輩にあたる新米提督へと最後の引継ぎを行っていた。

 

 

「ありがとうございます。 じゃあ先輩、俺もそろそろ行きますね」

 

「ああ。 俺の後釜を押し付けるようですまないが、あいつらのことよろしく頼んだぞ」

 

「はいっ!」

 

 

元気な返事とともに新米提督は後ろで控えている車へと乗り込んでいった。

 

 

 

 

 

新米提督が向かう先は、自分の先輩にあたる前任の提督が管理していた鎮守府だった。

前提督は指揮系統に関しては優秀で、同時に自分の部下である艦娘たちとも友好的な関係を築いていた。

そのため艦娘たちとともに華々しい戦果を挙げていたが、その実力が大本営の目に留まり、是非ともその手腕を生かしてほしいと最前線への異動命令が出された。

彼としては異動命令に文句はないが、後任の提督についてどうするかという問題があった。

今まで苦楽を共にしてきた艦娘に、ろくでもない提督を当てられたくない。 彼は考え、大本営に異動の条件として自分に後任の提督を選ばせてほしいと頼み、後輩である新米提督を選んだ。

新米提督とは軍学校の頃からの知り合いであり、彼の人柄もよく知っていた。

提督としての能力は秀でてはいないものの、温和で誠実な性格の彼になら自分がいた鎮守府を任せられるということで、この日自分に代わって彼に新しい提督として着任してもらうこととなったのである。

 

 

 

 

 

 

「まさか俺が先輩から推薦してもらえるなんてなー。 先輩のいた鎮守府ってどんなところだろ? 楽しみだ」

 

 

これから修学旅行に行く小学生のように、新米提督は心躍らせている。

先輩の話では自分の部下である艦娘たちも、気さくで優しい子達だからあまり気を追う必要はないと言っていた。

自分もまた、彼女たちと苦楽を共にするのだから気を引き締めないとな…!

新米提督は改めて自分に言い聞かせると、目的地である鎮守府へとやってきた。

車から降りて正門をくぐり、中に入ると中央の広場で数人の艦娘が談笑している。

ひとまず彼女たちに挨拶しようと彼は声をかけてみた。

 

 

 

 

 

 

「や、やあ。 俺は今日からこの鎮守府に着任することになった者だ。 よろしく…たの……」

 

 

だが、彼は最後まで挨拶できなかった。

なぜなら、彼が艦娘たちに声をかけた瞬間、彼女たちの様子が変わったからだ。

艦娘たちは彼を見た途端に楽しそうな表情から一変、挨拶どころかまるで汚らわしいものを見るような蔑んだ視線を向けその場を去っていった。

先輩から聞いた内容とはまるで違う反応に、彼はただ困惑するしかなかった。

 

 

 

その後、彼は新しい提督としてこの鎮守府の艦娘たちが集まった広場で挨拶したが、自分を見る艦娘たちの表情は嫌悪や敵意に満ちたものばかり。 歓迎ムードといったものは微塵も感じられなかった。

さらに執務室で荷物の整理を行っていると、前提督の秘書官を務めていた艦娘である長門から、

 

 

「貴様か、新しくここへ来た提督というのは。 先に言っておくが、貴様が何者であろうと私の目が黒いうちはここで好き勝手な真似はさせんぞ。 肝に銘じておけっ!!」

 

 

と、高圧的な態度をとられてしまい、彼はただその場で呆然とすることしかできなかった。

 

 

 

 

 

「…なんだか話で聞いていた内容とはまるで違うな。 まあ、俺もまだ新米だし、これからみんなと親睦を深めていけばいいか」

 

 

不安な気持ちを抑えながら、新米提督は自分にそう言い聞かせると、再び荷物の整理を再開するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから彼はこの鎮守府で提督として働き始めたが、そこから先は散々だった。

執務を行えば、秘書艦を務める艦娘から「仕事が遅い」だの、「よくお前みたいなやつが提督になれたな」となじられた。

新米だし、まだ勝手がわからないのだから仕方ないじゃないか。

内心そう思いつつも、提督は少しでも作業を早く終わらせようと努力したが、それでも彼女たちの罵倒は止まらなかった。

さらに出撃や遠征は艦娘たちが勝手に行い、戦果や遠征の報告は来るものの、簡潔……というよりあまりにおざなりなものだった。

報告が済めばさっさとその場を立ち去り、遠征の報告書はぞんざいに机に投げ捨てる。

一応自分が指揮を取ろうかと言ったこともあったが、

 

 

「アンタに指示されるくらいなら、死んだ方がマシよ」

 

 

とまで言われてしまい、彼は何も言う事が出来なかった。

 

 

 

 

食事は一応出してもらえるものの、他の艦娘たちに比べ提督のはあまりに質素だった。

ある時はおにぎり一個だけ。 またある時はパン一つだけという、まるで一昔前の囚人に出すような食事内容だった。

いくら自分が新米だからといっても、あまりに理不尽な扱いに提督は徐々に衰弱していく。

だが、そんな仕打ちを受けながらも彼は必死にあがいた。

少しでも彼女たちの事を知れればと、話をしようとしたり宴会でやらないかと持ち掛けたりもしたが、そのたびに帰ってくる返事は、

 

 

 

 

 

「結構です。 貴方と話すことは何もないので」

 

 

 

「冗談じゃない。 お前のような奴がいたら酒がまずくなるだけだ」

 

 

 

などと辛辣なものばかり。 先輩から聞いていた話とはまるで違っており、彼はそのたびに自分の部屋で小さく溜息を吐くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼がこの鎮守府に来てから一か月。

日々理不尽な対応に限界が来たのか、提督は思い切って尋ねてみた。

 

 

 

 

 

「何故なんだ…… 何故、こんな仕打ちをするんだっ!?」

 

 

 

 

「皆、俺に何の恨みがあってこんな扱いをするんだ!? 俺が……俺が一体何をしたというんだ!!」

 

 

 

 

 

今までの思いをぶちまけるかの如く大声で叫ぶ提督。

目にうっすらと涙をためながら、彼は肩で息をする。

秘書艦である長門は、彼の叫びを聞いたとたん……

 

 

 

 

 

「何を…だと……?」

 

 

 

 

 

いきなり提督の胸ぐらをつかみ上げ、そのまま宙に持ち上げる。 目を吊り上げ、憎悪にたぎった表情を見せ、彼女は提督を睨みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様こそ、今まで自分がしたことを分かっているのか!? 一体何をしたと、どの口がほざくんだ!!」

 

 

 

 

 

そう叫び、長門は提督を壁にたたきつける。 痛みに悶える提督を彼女は冷徹な目で見下しながら言う。

 

 

 

 

 

「お前のような奴に提督を名乗る資格はない。 さっさとここから出ていけ、命が惜しければな……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、彼は前任の提督に軍をやめることを伝えた。

すでに大本営にも連絡はしており、後任の提督は他の者にしてほしいと彼は話すが、前任の提督は彼女たちが彼にしてきたことを聞いて動揺を隠せなかった。

 

 

「なんてことだ…… あいつらはそんな悪い奴じゃない、何か原因があるはずだ。 俺も今回の事について調べてみるから今一度考え直してくれないか?」

 

 

しかし、後輩である彼は意見を変えなかった。

 

 

「いいえ… 俺はもう提督としてやっていく自信がないんです。 他の鎮守府に移ったとしても、また艦娘たちからあんな目にあわされるんじゃないかと思うと体が拒否してしまうんです……」

 

 

その言葉に、前提督は何も言えなかった。 彼の容姿は一か月前と比べて、まるで別人のようになっていた。

顔には細かい傷がつき、目は澱んで生気がない。 体も少しやせ細っており、あの時目を輝かせていた頃の面影は欠片もなくなっていたのだ。

 

 

「先輩、せっかく推薦してもらったのにすみません…… 先輩には悪いんですが、俺はもう軍に戻るつもりはありません」

 

 

そう言うと、彼は荷物をまとめ鎮守府を去っていき、前提督は何も言えずただ彼を見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それ以来、軍をやめた彼は別の仕事を見つけ一般人として暮らしていた。

鎮守府でひどい仕打ちを受け、初めはやつれていた彼も、今では少しずつだが肉体的にも精神的にも回復していた。

その後、先輩である前提督からこれといった連絡はなかったが、彼も自分から前提督へ連絡を取ろうとは思わなかった。

もう自分は軍とは無縁の人間。 これからはもうあそこと関わることはないだろう。

そんなある日の事。

 

 

 

 

 

「…おや?」

 

 

仕事から帰った彼が、玄関先のポストに入れられていた手紙に気づく。

家に戻り中身を確認すると、それは軍にいた時の知り合いである前提督から宛てられたものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内容は例の鎮守府の一件についてで、彼が鎮守府に着任するあの日、何の手違いか彼のプロフィールが書かれた書類と解任されたあるブラック鎮守府の提督のプロフィールが書かれた書類が間違って送られてしまった。 その結果、艦娘たちは新米提督であるはずの彼を元ブラック鎮守府の提督だと誤解してしまったのだ。

そのせいで艦娘たちは彼に関わろうとはせず、徹底的に毛嫌いし挙句にこのようなことになってしまった。

前提督がその鎮守府に確認し、事実を知った彼は艦娘たちを激しく叱責した。

彼はブラック鎮守府どころか未だ提督の経験がない新米だが、自分が推薦した信頼できる人物であることを説明。 艦娘たちもそのことを知って、今は反省しているとの事。

ついては艦娘たちが今回の件への謝罪と、改めて自分たちの提督として戻ってきてほしいという旨が載せられていた。

その証拠に前提督とは別にもう一枚、長門が書いた謝罪の手紙が同封されていた。

手違いとはいえ、提督である彼に散々ひどい仕打ちをしてしまい申し訳ないという内容が、達筆で書かれていた。

 

 

「………」

 

 

彼は手紙を読み終え、しばらく無言のままそれを眺めていたが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…もう自分には関係のないことだ」

 

 

その手紙をゴミ箱に放り投げ、もう戻るつもりはないという返事だけ向こうへ送り返したのだった。

 

 

 

 

 

 

しかし、それからというものの艦娘たちの手紙は毎日送られてきた。

ある時は戦艦や空母が書いたであろう、丁寧な字体と内容のもの。

またある時は駆逐や軽巡が書いたのか、可愛らしい丸文字に親しみを込めた文体のものまで多種多様だった。

手紙の書き方に差異はあれど、皆共通して書かれていたのは彼への謝罪ともう一度自分たちの提督として戻ってきてほしいというもの。

何枚も何枚も送られ続ける手紙を見る彼は、ある決意を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追い出されてから2か月後、青年は再び元いた鎮守府へと戻ってきた。

広場にいた艦娘たちは彼が戻ってきてくれたことに喜びを露わにし、青年は秘書艦の長門に皆を集めてほしいと頼む。

現在提督代理を務める長門は、彼が戻ってきたことを知りそれを了承。 広場に彼女たちを集合させ、やってきた青年へ深く頭を下げた。

 

 

「提督… このたびは貴方へ散々ひどい振舞いをしたこと、心から申し訳なく思っています。 この長門、誠意を持って貴方に償う所存です……」

 

「いや、いいんだ。 そのことについて俺は皆を恨んでないし、何より俺はもう提督じゃない。 実は皆に話したいことがあってきたんだ」

 

 

彼は長門から艦娘たちへ顔を向け、自分がここへ来た訳を話した。

 

 

「皆、久しぶりだな。 あれから皆が送ってきてくれた手紙、毎日読んでいたよ。 それで、俺もこの鎮守府の提督へ戻ってもいいと思っている」

 

 

その言葉を聞き、皆嬉しそうに顔を綻ばせ騒ぎ始める。

しかし、青年はそれについては条件があると前置きし、その条件を伝える。 それは、あまりに信じられない内容だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただし、俺がこの鎮守府に着任したからにはお前たちには休みなく働いてもらう。 出撃すれば大破しようが敵を殲滅するまで帰還命令は出さないし、遠征は朝から晩まで補給も行わずに行ってもらう。 それでも俺をこの鎮守府の提督として迎え入れるつもりならここへ戻ってやってもいい。 どうだ、引き受けるかっ!?」

 

 

その条件を突き付けた途端、一斉に無言になる艦娘たち。 それを見て、青年は心の中でつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これでいい、と……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女たちの謝罪の手紙を見た彼は、今までの行いについては許すつもりでいた。

しかし、もう提督として戻るつもりのない彼は、どうにか艦娘たちに諦めてほしいと思い、このようなブラック鎮守府まがいの条件を突き付けることで自分に見切りをつけてもらおうと考えたのだ。

初めは正直に自分はもう戻るつもりはないという事を伝えるつもりだったが、手紙だけでもここまで誠心誠意に謝る彼女たちがこれしきの事で素直に諦めるとは思えず、代わりにこのような方法をとる事にした。

先輩である前提督には申し訳ないと思ったが、彼女たちのためにもこうした方がいい。

彼はそう感じ、その場を去ろうとしたが、

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、了解したぞ提督。 私達も、それが貴方への償いとなるなら安いものだ!」

 

 

長門たちは自分に見切りをつけるどころか、この条件を快く引き受けてしまい、代わりに彼に再び提督となってもらうことを要求。

次の日からこの鎮守府では、異様な光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『提督、こちら敵艦隊を殲滅。 私は大破してしまったが、もうすぐ敵の主力と遭遇できるからこのまま進撃するぞ』

 

「何を言っている長門… 大破者が出たんならすぐに戻るんだ!」

 

『心配いらんさ。 たとえ轟沈しようとも、我々は必ず敵を全滅させる。 大丈夫だ』

 

「そう言う事を言っているんじゃない! たった一度の戦果でお前たちを轟沈させては割に合わないと言っているんだ。 いいから早く全員帰還しろ、これは命令だっ!!」

 

『むう… 了解した、提督。 これより全艦帰還する……』

 

 

無線越しに渋々了承する長門の声を聞いて、提督となった彼は深い溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

あれからというものの、彼が提督として戻ってきたこの鎮守府は大変なことになっていた。

出撃すれば、大破者が出ても彼女たちは敵を全滅させるまで進撃することをやめず、遠征をすれば朝から晩まで補給もしないで際限なく働こうとするので、そのたびに彼はどうにか彼女たちを止めるのに必死になっていた。

前に遠征から戻ってきた雷と電に、今日はもうみんなに休むよう伝えたこともあったのだが、

 

 

 

 

 

「これぐらい、司令官にしてきたことを考えればどうってことないわ! だから、司令官はもっと私たちを頼ってほしいの。 司令官のためなら、私たちどうなろうと構わないんだからっ♪」

 

 

 

 

「はわわわっ!? 司令官さんに余計な心配させるなんて、電は悪い子なのです! すみません司令官さん、すぐに電は解体してもらいますので、ごめんなさいなのですっ!!」

 

 

 

 

そんなことを言い出す二人を、提督は慌てて引き留める。

 

 

「べ、別にお前たちを心配していってるわけじゃない! 疲労がたまったお前たちを遠征に出したら大成功しにくくなるから、かえって作業効率が悪くなると言ってるんだ!」

 

 

「それにお前らのような駆逐艦を解体して手に入る資材などたかが知れている! そんなこと考える暇があったら、今日はもう体を休めて明日の遠征を大成功させてこい。 これは命令だ、分かったな!?」

 

 

そこまで言って、ようやく彼女たちは自ら遠征を切り上げ休んでくれた。

これは命令だ。 こうでも言わなければ、彼女たちは自分を酷使することをやめないのだ。

そしてそれは日常にも及んでいた。

食事については出撃や遠征を優先するあまり、彼女たちはほとんど食べずに出ており、それを彼は命令という形でどうにかちゃんとした食事をさせていた。

執務をさせれば自分にやらせず、すべて彼女たちがこなそうとするので、彼は命令だと言って何とか自分にもやらせるよう彼女たちに言い聞かせた。

休みに関しても、この日は出撃や遠征を禁ずるとまで言わなければ彼女たちは休もうとせず、よしんば休んだとしても提督である自分の身の回りの世話をしたいというものが後を絶たなかった。

 

 

 

 

 

 

「テートク、私の用意した紅茶飲んでないみたいですケド… もしかして私の紅茶は嫌いでしたか…!? sorryネ、すぐに片付けますカラ…!!」

 

「だ、誰もいらないとは言ってないだろ! …金剛の紅茶はおいしいから飲むのが惜しかっただけだ。 だから片付けずにそこにおいておけ」

 

「は、はいっ! 了解デース♪」

 

「提督、私の出したお茶菓子はどうでしたか? もしお口に合わないのであれば、もう出しませんので……」

 

「なに言っているんだ。 加賀の用意してくれたお茶菓子はおいしいぞ、だから明日も用意しろ。 これは命令だ」

 

「わ、分かりました! では、明日も用意しますね」

 

「司令、少し装備についてご確認してほしいことが……って、休憩中に申し訳ありません! すぐに下がりますので……!!」

 

「…今は休憩中だが、午後から俺もやることがなくて暇になる。 だから不知火、お前には午後から俺と一緒に装備の点検に付き合ってもらう、いいな?」

 

「あっ、はい司令っ! 不知火でよろしければご一緒します!!」

 

 

金剛たちとの休憩を終えた提督はひときわ大きなため息を吐き、外を眺める。

しばらく無言のまま眺めていたが、控えめなノックの後一人の人物が執務室にやってくる。

提督が振り向くと、そこには前提督が悲しげな顔で彼を見つめていた。

 

 

 

 

 

「…すまない。 こんな形で俺の元部下たちの面倒を見てもうことになってしまって」

 

「…いいんですよ先輩。 元はといえば俺がまいた種なんですから」

 

 

提督としてはこんな命令という形で彼女たちを使役したくはなかったのだが、こうでもしなければ彼女たちは自分で自分を殺しかねない。

そうさせないためにも彼は今、この鎮守府のストッパー役として彼女たちの面倒を見ている。

前提督もそのことを知っていたがゆえに、彼を責めるようなことはしなかったのである。

 

 

「俺の方こそすみません… 先輩の艦娘たちをこのような目に合わせてしまって……」

 

「いいや… 皆はどうあってもお前に提督として戻ってほしがっていた。 あそこで断ったところで、皆はどうなろうとお前を提督として引き込もうとしてた。 お前や皆の事に気づいてやれなかった、俺の落ち度だよ……」

 

「そう…ですか……」

 

 

提督はそう言うと、重い腰を上げて執務室の扉に向かう。

これから不知火と一緒に装備の点検に行かなくてはないけないから、といって彼はその場を後にした。

一人残された前提督は、青い海が広がる窓を見ながらぼんやりと考える。

一体どこから狂ってしまったのだろう…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が断られるつもりでブラック鎮守府まがいの条件を突き付けたとこからか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

艦娘たちが彼を元ブラック鎮守府の提督だと誤解してしまったとこからか…?

 

 

 

 

 

 

 

それとも、自分が彼を後任の提督として推薦したとこからか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今となってはどうしようもないこの問題。

彼の疑問に答えてくれる者は、この場には誰もいなかった……

 

 

 

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