次の艦これのアプデでは、再びサンマ漁が行われるそうですが、個人的には磯風邂逅があったように浦波の邂逅ポイントも増やしてほしいところです。
ここはとある鎮守府。
いつもの日課である出撃メンバーの出迎えを終えた提督は、傍らにいる秘書艦と歩きながら談笑していた。
「今日もみんな無事に戻ってこれたようで何よりだ。 まあ、中にはまだ不満そうな子もいたけど…」
「姉さんに至っては『今日はもう出撃ないの? これじゃ夜戦したりないよー!』ってごねてましたしね。 本当に、困ったものです」
秘書艦である神通は、出撃から戻ってきた姉の姿に溜息を吐く。 三度の飯より夜戦好きな姉らしい不満だったが、その姿を提督に見られるのは妹として恥ずかしい限りだった。
「まあ、その分川内は本当によく夜戦で活躍してくれてるからね。 次の演習では夜戦を想定したものにするからと、川内に伝えておいてくれ」
「あ、ありがとうございます、提督。 姉さんのためにわざわざそんな計らいをしていただき、申し訳ないです…」
「そんなことないさ。 俺にとっても可愛くて優秀な秘書艦のためなら、これくらいお安い御用だ」
「も、もう提督ったら…///」
顔を赤くしながらも嬉しそうに頬を緩ませる神通の姿に、提督もクスリと笑みをこぼす。
そんなのんびりしたやり取りをしていると、目的地である執務室の扉の前に二人はやってきた。
「今日も一日お疲れさま、神通。 仕事はこれで終わりだから、君も戻って休むといいよ」
「はい。 こちらこそ、ありがとうございました。 では、失礼します」
神通は丁寧に提督に頭を下げ、彼が執務室へ戻っていくのを見送った。
その後、神通も廊下を通って寮へ戻って………行かなかった。
提督が執務室に戻ったのを確認し、いったん足音を響かせながら廊下を歩いた神通は、十メートルほど歩いた後に今度は足音を立てないよう慎重に廊下を進みながら執務室の扉へとやってきた。
息を殺し、静かに扉に聞き耳を立てる。 扉の向こう、執務室からはかすかにだが、提督が誰かと話をする声が聞こえてきた。
『……そうですか。 今夜中に……はい』
『…分かっています。 この……ついては……彼女たちに悟られないよう、慎重に……。 …はい……はい』
扉越しに聞こえてくる提督の言葉。 それを聞いた神通は目を見開いた。
正直、この場で提督に詰め寄りたい気持ちを抑えながら、彼女は扉を離れ急いで食堂へ駆け込んだ。
食堂には、なぜかこの鎮守府の艦娘たちが全員集まっており、その中には先ほど出撃してきたばかりの川内の姿もあった。
艦娘たちは真剣そのものの眼差しで駆け込んできた神通を見つめ、神通は息を切らせながらも先ほど聞いたことを皆に報告した。
「…それで、どうだったの神通?」
「…はい、姉さん。 青葉さんの情報通りでした。 確かに、提督は今夜ここを出るとおっしゃってました!」
その途端、食堂内はどよめき、今にも泣きだしそうな顔をする者ややりきれない怒りに拳を震わせる者など様々な様相を呈していた。
「提督さん… どうして、阿賀野達に相談してくれなかったの?」
「落ち着いて、阿賀野姉。 優しい提督の事だもの、きっと私たちに余計な心配をかけたくなかったのよ。 そうでなければ、大本営が裏で何か卑怯な真似して口止めしているに決まってるわ」
涙を流しながら悲しむ阿賀野を励ます矢矧。 彼女もまた、泣きたい気持ちを抑えて大本営へと強い怒りを向ける。
「くそ、大本営め…! ついに、この鎮守府にも目をつけてきたのか!」
「前々から噂で聞いていたが、まさかここも狙われるとはな。 だが、私達も大人しくしているつもりはないぞ」
怒りをあらわにしながら拳を壁に打ち込む長門や武蔵。
その衝撃で壁に小さな穴が開いたが、気に留める者は誰もいなかった。
「情けない話です。 私がついていながら今になるまで気づかなかったなんて…」
「そんなに落ち込まないでよ神通。 このことは今まで提督が隠していたんだし、気づけなかったのは私達だって同じだよ」
「そういう意味ではこの件にいち早く気付いた青葉のお手柄と言う事ですね♪」
「そうですね… 青葉さんがこっそり執務室に盗撮用のカメラを仕掛けてくれたおかげですね……」
「あっ… いや、それは…その……」
「その件については後でじっくりと締め上げてあげます。 覚悟しておいてください……」
「あ、あわわわ……」
自らの失態に落ち込みながらも、今回の事件にいち早く気付いた青葉を睨み付ける神通。
それぞれが思い思いの感情をぶつける中、食堂の前で待機していた大淀は手を叩き声を張り上げた。
「皆さん落ち着いてください! 気持ちは分かりますが今は落ち込んでる場合でも憤っている場合でもありません。 今言えることは、このままでは提督が大本営に引き抜かれてしまうという事です。 それだけは何としても阻止しなければなりません」
大淀の言葉に食堂中にいた艦娘たちは、みんな真剣な表情を見せる。
彼女の言う通り、このままでは提督がここを去ってしまう。
そんなことをさせないためにも、自分たちがやらなきゃいけないんだと強く決意した。
「今提督を守れるのは私たちだけです。 皆さん、なんとしても大本営の魔の手から提督を守りますよ!!」
食堂中に響き渡る大淀の声。
彼女の言葉に他の者達も声を張り上げ、食堂は大いににぎわったのであった。
彼女たち艦娘は深海棲艦に対抗すべく突如人類の前に現れた者達。 いわば人間ではない、人外の存在だった。
そんな彼女たちを深海棲艦と順調に戦えるよう組織されたのが、海軍が統括する大本営。
だが、あくまで大本営は艦娘たちを兵器としてみなし、効率よく深海棲艦達を駆逐するための道具として扱っていた。
そんな大本営の考えを汲んだ提督たちもおり、そう言った者たちが管理する鎮守府は後にブラック鎮守府などと呼ばれていた。
来る日も来る日も戦果を稼ぐために酷使され、必要無くなれば解体されほんのわずかな資材と引き換えにその生涯を終える。
過酷な日々を送る艦娘たちは、次はいつ自分がそうなるのかと希望のない明日におびえながら毎日を過ごしていた。
しかし、そんな艦娘の在り方に終止符を打った者がいる。 それが提督だった。
彼は、自分たちのために戦ってくれている艦娘たちを道具として扱うのはおかしいと大本営に訴え、彼なりの艦隊指揮でその考えを否定してやろうとした。
指揮系統に関しては、戦果より艦娘たちの安否を優先した戦い方をさせる。 その方が結果的に被害は少なくなるし、彼女たちの士気も上がる分敵を駆逐するのに効率がいい。
提督はそのやり方で結果を出し、大本営を説得。
同時に、彼のやり方に賛同する提督も徐々に増えていき、ついに彼は大本営の考えを改めることに成功した。
それ以来、大本営には彼の考えを尊重する者が責任者として勤めており、艦娘たちも待遇を改善されたことで笑顔を取り戻していったのであった。
ちなみに、大本営を説得した彼は、今回の一件を元に大本営に所属しないかと薦められたが、彼は自分のために頑張ってくれた艦娘たちを置いてはいけないと言って、自分の所属する鎮守府に残る決断をした。
自分達のためにここまで尽力してくれた彼を、艦娘たちは上官ではなく一人の素敵な異性として見るようになり、彼が提督を務めるこの鎮守府は艦娘たちにとって楽園のようだと言われてきた。
だがある日の事。 突然大本営の人間がここを訪れることがあった。
提督のもとを訪ね、少し話をしていくだけだが、艦娘たちにとってはそれが気になっていた。
噂では、いまだ艦娘を兵器として見る人間が大本営に残っており、そういった連中が彼に報復を企てているのではないかと囁かれている。
現に、突如提督が鎮守府から姿を消したという事件はあって、今回大本営の人間がここへ訪れるのもそれが目的ではないかと思われた。
提督はそんなことないぞ、と笑顔で否定していたが、どうしても艦娘たちの疑念は消えず、そんな中青葉が血相を変えながら皆の元へ駆けつけてきた。
青葉曰く、執務室で大本営が提督をここから連れ出そうとしていることが事実であると発覚し、急いで皆に知らせに来たのだ。
ただ、彼女がそれを知りえた理由が、大好きな提督を盗撮するため内緒で取り付けた盗撮用カメラを視聴中、例の提督連れ出しの件を聞いてしまったというもので、青葉にはこの件が片付いたら皆からきつい取り調べが行われることが確定した。
そして、皆は彼を大本営から守るべく、密かに準備をしていたのであった。
時刻は夕方。 東から出た太陽が西に沈み始めるころ、鎮守府の食堂では夕食を取りに来た艦娘たちでにぎわっていた。
はた目から見ればいつも通りワイワイにぎわっているように見えるだけだが、今日は事情が違う。
今夜は提督を守るべく大本営の連中と戦うことになる。
そのために、今のうちに英気を養っておかなければならない。
艦娘たちは決意を胸に抱きつつ、提督には悟られないよう自然に振る舞うのであった。
そんな中で、執務室からやってきた提督はいつものように食事を受け取り、適当なテーブルに着いた。
他の艦娘たちは、提督の姿を見るや否や我先にと彼の隣を確保しようとしたが、たまたま近くにいた艦娘が彼の隣をとる事に成功した。
「提督、隣いいかしら?」
「ああ、いいぞ……って、お前が俺の隣に来るなんて珍しいな、山城」
提督の隣に座った艦娘、山城は「意外だ……」という表情を見せる提督と周囲からの嫉妬の視線を気にすることなく提督にぶぜんとした顔を向ける。
「別に、私が提督の隣に来たっていいでしょ。 たまにはそんな気分にもなるわ」
「まあ、それもそうだが…」
提督はばつが悪そうに頭を掻く。
山城はよく姉の扶桑と一緒にいたので、彼女一人だけいるのは珍しい。 何かあったのか? そう提督が尋ねようとしたとき、
「……提督。 急にいなくなったりしないでね」
「ど、どうしたいきなり…?」
「そ、その… 貴方がいなくなったら姉様が悲しむから、突然いなくならないでってことよ! そんな深く考えないでちょうだいっ!」
すでに食事を終えていた山城は顔を赤くしながら食堂を去っていき、テーブルには唖然とした提督だけが残されていた。
「山城…」
「…提督」
食堂を去った山城は、明かりのついていない廊下で壁に寄りかかり懐から一枚の写真を取り出す。
それは執務室で自分と提督が写った写真で、彼女が初めて秘書艦を務めた日に提督が記念に撮ろうと言って映したものだった。
山城は提督の事が好きだった。
他の戦艦たちに比べはるかに劣る実力に、不幸戦艦などという不名誉な呼ばれ方をされてた彼女はすっかり自信を無くしていた。
しかし、そんな自分を提督は励まし、勇気づけてくれた。
初めはそんなのやるだけ無駄だと思っていた山城だったが、彼の指揮に従い戦っていくうちに少しずつだが彼女の実力も上がってきた。
そのことが徐々に山城にとっても自信につながり、今では姉の扶桑と共に主力艦隊の一角として胸を張れるだけの自信と実力をつけていた。
それも全ては提督のおかげだった。
ある日、たまには体を休めた方がいいと言われ、初めて秘書艦業務を務めることになった。
慣れないながらも提督の指導により少しずつ手順を覚え、執務が終わる夕方ごろには十分自力でこなせるほどになった。
初めてなのによく頑張ってくれたから何かお礼をしなきゃな。 提督がそういうと、山城は顔を赤くしながらも自分と一緒の写真を撮らせてほしいとお願いした。
その頼みに提督二つ返事で了承。 こうして撮った写真がこれだった。
山城にとって、これは宝物だ。
自分をここまで変えてくれた大切な人との宝物。
姉の扶桑も大事だが、きっと提督は姉と同じかそれ以上の存在。
だから、それを奪うような奴は誰であろうと許せない。
何としてでも、彼をここから連れ出させはしない。 絶対に……!
「提督… 貴方は私が……いえ、私たちが必ず守ります…!!」
そういうと、山城は宝物である写真を胸に抱き、強く握りしめた。
時刻は深夜。 皆が寝静まり、新しい日をまたぐ頃に提督は部屋を抜け出してきた。
白の軍服は多少目立つが、それを気にする者は誰もない。 提督が建物を出てくると、そこには二人の人影があった。
「どうも、提督殿。 お待ちしておりました」
提督に向かって丁寧に敬礼をする二人組。 その格好は隠密行動用の物らしい黒のスーツで、腰にはサイレンサー付きの拳銃が携帯してある。
提督は二人に険しい顔を見せるが、深呼吸をして気を落ち着かせると二人組に礼を返した。
「我々がここに来た理由は、もう分かっていますね?」
「ああ。 元よりこっちは承知の上だ、早く行こう」
提督の言葉に二人組も頷き、すぐに鎮守府の外へと向かおうとした、その時だった。
「そこまでです!」
突如聞こえてきた声に振り替えると、そこには艤装をつけて三人を見る艦娘たちの姿があった。
「お、お前ら!? なぜここにいるんだ!」
「もちろん、貴方を守るためですよ。 提督、大本営の人間が貴方を狙っていることは知っています。 心配しないで、貴方を引き渡したりはさせません」
そう言って、艦娘たちは笑顔で提督に手を差し伸べる。
しかし、それを見た提督は苦渋の顔を浮かべ、
「皆… 悪いが、俺はお前たちの元には戻れないんだ!」
提督は艦娘たちに背を向けそのまま走り出した。
「あっ、提督!?」
艦娘たちはすぐに提督の後を追おうと駆けだすが、
「こっちです、提督殿!」
提督と一緒にいた二人組が艦娘たちに向かって発砲し、足止め。 さらに後ろから来た別の黒スーツが提督を連れてその場から離れていった。
艦娘たちも二人組に向かって砲撃を繰り出し、真夜中の鎮守府は一瞬で砲弾の炎に照らされ昼のように辺りを照らし出した。
背後から聞こえる砲撃音と発砲音に振り向くことなく、提督は走り続ける。 今振りむいてはいけないと自分に言い聞かせるように、必死に黒スーツに先導されるままその場を駆け抜けていった。
時折自分を呼ぶ艦娘たちを隠れてやり過ごし、彼は中庭を抜けて鎮守府の外に出る。 そこから離れた道路には一台のワンボックスカーが止められていた。
「あとは乗り込むだけです。 急いでください!」
黒スーツに促されるまま、提督は荒い息のまま車に乗り込もうとしたとき、
「ガハッ!」
突然殴られ倒れこむ黒スーツ。 そして、その後ろには…
「良かった… 間に合ったみたいね、提督」
「山…城……」
他の艦娘たちとは別行動で黒スーツたちの逃げる方へ先回りしていた山城が、提督を連れてきた黒スーツを殴り昏倒させていた。
全力で走ってきたからか息を切らせながらも笑顔を見せる山城。 そんな山城とは裏腹に、提督が呆然としていると、
「そこにいたか、提督! どうやら、連れていかれずに済んだみたいだな」
「心配しましたよ。 このまま、貴方が大本営に連れて行かれたらどうしようって」
「皆……」
鎮守府にいた艦娘たちも提督の元に追いつき、無事彼女たちは提督を大本営から守り抜いたのであった。
次の日。 食堂では朝の食事を嗜みながら、艦娘たちが提督を囲んで昨夜の出来事で盛り上がっていた。
「昨夜は、提督を連れ去られなくて良かった。 山城さんがいたおかげですね」
「ああ、そうだな… 皆、昨夜は心配かけて済まなかった」
神通が提督の隣で微笑むと、向かいにいた川内は口を尖らせた。
「でもさ… どうして私たちが手を伸ばしたとき、提督は逃げたの? あたし、正直少しショックだったな」
「それは、あの時連中は拳銃を持っていた。 下手に俺が向かえばお前たちも撃たれる恐れがあったから、行けなかったんだ」
「もう、何言ってんのさ提督!? あたしたちは艦娘だよ、そんなものでやられるほどやわじゃないんだから!」
「まあ、そうなんだが… それでも、俺はお前たちが傷つく姿は見たくなかったんだ」
「提督……」
提督の言葉に、川内は何も言わず彼を見つめる。 その時の彼女の顔は、改めて目の前の男に惚れ直す一人の女の表情だった。
そんな姉の様子を察してか、神通は急いで提督を引き離し、大淀もこの場を取り繕うように話し出した。
「と、ところで皆さん! 今回の提督を拉致しようとした件ですが、これで大本営が提督を狙っていることがはっきり分かりました。 次はいつ来るかもしれませんので、今後はより警備を強化した方がよさそうです」
その言葉に、他の艦娘たちも大きく頷く。 そして、朝食の後にこれからどう警備を強化しようかという話し合いが行われ、提督はこの後も執務があるからと艦娘たちと別れ執務室へと戻っていった。
「…ふう」
食堂で見せた笑顔から一転。 提督は溜息を吐きながら、落ち込んだ表情でいつも自分が過ごしている執務室へ戻ってきた。
綺麗な青空と青い海を映し出す窓には頑丈な鉄格子ががっちりはめ込まれ、木製に見える床と壁の向こうは頑丈なコンクリートでしっかり固められていた。
いつも執務をこなすのに使っている提督机には、執務用のパソコンと筆記用具だけ。 それ以外に家具と呼べるようなものは何も置いてなかった。
まるで刑務所の牢屋みたいな執務室で、提督はパソコンを起動させ一人の男性と連絡を行った。
「……どうやら、作戦は失敗したようだね」
「本当にすみません。 俺が油断していたせいで、彼女たちにも気づかれてしまいました……」
「過ぎたことを悔やんでも仕方がないさ。 それより、今は別の方法を考えなければならない。 ……君を、ここから解放するためにもね」
「……はい」
結論から言うと、提督は鎮守府に幽閉されていた。
確かに、彼は艦娘との関係を改善させるため戦果を挙げて大本営を変えた。
だが、それゆえに艦娘たちは彼に対し強い愛情を抱き、あまつさえ自分達の元を離れることを極端に嫌がるようになった。
ある日の事。 提督が会議で大本営に行くと言ったとき、艦娘たちは猛反対した。
もしそのまま帰ってこなかったらどうする!?
それに、もし向こうで他の艦娘に見初められたらどうする!?
提督は昔と違って今は大本営もだいぶ改善されたし、向こうでは艦娘と出会う機会はほとんどないから心配いらないと説明したが、艦娘たちはそれでも納得できなかった。
彼がここからいなくなることへの不安が彼女たちの心を掻き立て、凶行へと駆り立ててしまった。
艦娘たちは、提督が自分たちの元から離れないようにした。
業務時間中は常に秘書艦という名の見張りが彼に付き添い、正門は簡単に侵入できないよう厳重に封鎖された。
さらに塀には高圧電流を流し、侵入を防ぐと同時に中からも逃げられないようにして、執務室も安全のためと窓に鉄格子を嵌めて壁の外はコンクリートで補強していった。 すべては提督をここから出さないようにするためだった。
流石に提督も彼女たちの異常さに身の危険を感じ、艦娘たちの目を盗み大本営へと助けを求めた。
大本営に所属する大将たちも、その事実を聞いて彼を見殺しにするわけにはいかないと思い、提督を鎮守府から助け出すための作戦を起ち上げた。
昨夜、提督の元を訪れた黒スーツたちは、実は大本営が派遣した憲兵たちだった。
大本営を変えた英雄である彼を救助すべくここへ訪れたが、計画が艦娘たちに漏れてしまい返り討ちに合ってしまった。
幸い命に別状はないものの、今回の一件で艦娘たちはより警備を強化してしまい、大本営にとっては増々彼の救出が困難になってしまったのであった。
「大将… 俺のやったことは…本当に正しかったのでしょうか?」
「自分を責めないでくれ。 現に君の活動に賛同したものは大勢いるんだ。 提督も、艦娘も含めてね」
「何があろうと、我々は君を助け出す。 君をその牢獄から解放するためにも、我々も全力を尽くすよ」
「……。 はい、お願いします……」
モニター越しに映る大将の言葉。 その言葉に淡い希望を抱きながら、提督は画面の向こうの大将に深く頭を下げた。
そして、食堂では……
「やっぱり、執務室だけじゃなくこの建物全体に鉄格子を嵌めた方がいいよね。 そうすれば、侵入者も入れないし提督も逃げにくくなるしね」
「青葉の件もありますが、これからは執務室に監視カメラをつけるのも考えた方がよさそうですね。 提督は嫌がるかもしれませんが、あの人のためです」
「やっぱり、青葉のとった判断は間違っていなかったんですね! そういう事でしたら、カメラの設置と撮影は是非青葉にお任せを…!」
「それとこれとは別問題だ。 それと監視は交代で行う。 そうしなければ他の者達からも不満が出るからな」
「できることなら、ずっと提督の御傍にいられたらいいのですが、流石にそれは提督が困ってしまいますからね…」
「それでは、今後の方針は決まりましたね。 もし、また大本営から侵入者が来たときは容赦なくやってください。 でも、できれば穏便に……なるべく提督の目の届かない所で始末してください。 必要とあらば艤装の使用も許可します。 砲撃音が鳴った時は模擬実戦によるものだと私から提督に説明しますので」
「よしっ! それじゃあ皆、今日も提督のために一日がんばろー!!」
「オーッ!!」
楽園という名の牢獄に囚われた提督を守るため、今日も彼女たちは黒くよどんだ瞳で深海棲艦の掃討と侵入者の排除に励むのであった。